2015/08/28 のログ
■ナナミ > 「アンタも変わり者だよねェ……ケヒヒッ。」
あれだけの戦闘をして、楽しかったと言えるその精神が。
理解できないというほどでも無かったが、それでもおかしいと思う。
……まあ、一部始終見届けた自分も勿論どこかおかしいのだろう。
「もしかしたかもねェ───ま、それもこの街の常さ。」
知った様な口を利く。
まあ、あくまで傍で見てただけでもこの街の動きというのは単純で、理解に難くは無い。
実際ナナミだって一軒の露店を台無しにして来たばかりである。況や本当のこの街の住人であれば、だ。
「へェ、女の方からそんな風に声を掛けて来るなンてな。
……ますます変わり者だな。」
──だがまァ、悪い気はしないねェ。
そう嘯いて肯くと、くるりと踵を返して背を向けた。
そして一つ、深く息を吐く。
■夕霧 > 「否定はしませんけど」
ゆっくりとナナミへと追いつき横へと並ぶ。
「そもそも普通という線引きは、どこからが普通なのでしょうね?」
答えなどは無い。
そもそも人によって尺度の変わるものだ。
【彼にとって】【彼女にとって】が関の山。
答えを求めての問いではない。
「―――それに、同じ場所にずっと居るのは色々と不都合ありはりますやろ?」
知ってか知らずかくすくすと、鈴の音を転がすように笑った。
目的地は無い。
ただの散歩。
■ナナミ > 「普通ねェ──」
問いを拾って呟く。
答えを求めての物ではない事は容易に判ったし、
そもそも答えを出せる様なものでもないだろう。
なので呟いたっきり特に言葉を続けるでもなく。
ただゆっくりと足を動かし始める。
「まァ、そりゃそうだナ。
じゃァ行こうぜ……その辺、ぶらぶらと。」
願わくば先程の店主と遭遇しない事を。
風情も何もあったもんじゃない場所を女連れで歩くなんてなあ、と胸中で溜息を吐く。
■夕霧 > 「えぇ」
同意し。
ゆっくりと隣を歩く。
しばらく歩けば。
ふと、思い当たり。
「そういえばお名前聞いてませんでしたね」
とはいえ、状況も状況、場所も場所。
名乗らないのかもしれないが。
「折角ご一緒するのでお名前お聞きしてもええですか?」
と彼へと名前を問うた。
■ナナミ > 「あー……」
名を問われ、そう言えば名乗ってなかったっけ、と。
今更だし、場所も場所なのでどうしたものか、と逡巡して。
「──ナナミ。」
短く答えてから、少しだけ怪訝そうに咳払いをして。
「つーか、人に名前を訊く時にゃァ、まず自分から名乗るのが礼儀ってもんじゃァねェのかィ?」
答えてから言うのも狡いか、と思わなくも無かったが。
まあその方がこの街の住人っぽいか、と考え直して意識の外へと追い出す。
■夕霧 > 「ナナミはんですね」
にこりと笑い。
「ああ……それはすいません、うちは夕霧、言いますよ」
指摘され、なるほどと言った顔で、そう答えた。
暗い路地はやはり視線を感じる。
それでも、追って来る事は無く、ただただ目の前を何が通り過ぎるのか【危険ではないのか】そういう視線。
「そういえばうちはさっき言ったような理由でしたけど」
隣を少しだけ伺いながら。
「逆にナナミはんは何か用事とかありはったんです?」
そう、言ってから。
「ああ、住んではるのでしたら用事というワケでもなさそうですけど」
そう付け足した。
■ナナミ > 「夕霧……かァ。
──ま、ヨロシク。」
次に会う事があるかも解らないし、会う事があってもまたこの場所であるかも解らない。
それでも言っておくのが礼儀だろうか、そんな考えが透けるかのように身近な呟きだった。
(──まあ、あんな騒ぎをしてた二人のうちの一人が歩いてんだ、警戒もするわな。)
向けられる視線に辟易としながらも、僅かに同情する。
小柄なナナミを脅威と感じる住人は居ないだろうし、それでなくても人目を引きそうな肢体の女である。
──ほぼとばっちりみたいなもんじゃないか、
と人知れず憤慨してみるが、それも馬鹿馬鹿しくなってすぐに青息に変わった。
それと同時、問いが向けられて。
「──あァ?
俺ァ別に?散歩だ散歩。アンタらがドンパチやった時みてェな面白い事が落ちてねェかってよォ。」
嘘はついていない。
嘘を吐かないとならない部分は敢えて答えなかった。
■夕霧 > 「散歩でしたかぁ。なるほど」
素直に頷いた。
「このあたりは随分と懐かしい感じがしてたまに来るんですけど」
何処の路地裏も同じだ。
無関心を装いながら隣の奴が自分にとっての不利益を働くんじゃないのか、など。
常に目を光らせている。
そして美味しい話は転がっていないか、と。
「まあ、あれのお陰で、この辺りは随分歩きやすくなりました」
元々気にせず歩いていたりもしたが。
あの一件から、どこか視線がさらに遠巻きになっているようには感じた。
其の分最初に向けられる視線の集中はあるが。
「以前もそういえば散歩ということになりはりますかね」
と前回のことを思い出し、そう呟いた。
■ナナミ > 「そそ、散歩。」
研究区からここまで来るのも、散歩。
そんな事は言わなければ解らない事で、解って貰う必要性も、道理も、今は無い。
「懐かしい、ねェ。」
一体どんな生活してたんだか、と苦笑する。
まあ、ある程度発展した都市部であれば、こういった吹き溜まりの様な面もあるのだろう。
しかしそう言った部分と隣を歩く女との間に接点というものは無い様に感じられる。
──本当に、どんな生活をしていたのやら、だ。
「歩きやすく、ねェ。
元々こんな薄暗いとこじゃァなけりゃ、何か後ろめたい事でも無ェ限りは堂々と歩けたけどな。
──そうだな、あン時も散歩だ。散歩。」
軽く肩を竦める。
嘘を吐かなくとも、誤魔化しながら話すと言うのは中々神経が磨り減るものだなんて思いつつ。
■夕霧 > 「似合わん、思いますでしょ」
くすり、と苦笑をそういう意味にとったのか。
口元に軽く手を当てて笑った。
「―――以外とそういう方が色々と出来ることはありますよ」
何が、と言うことも無いが。
「目立つと言う事を最大限使う事も」
そこまで言って。
「……とはいえここで目立つ意味は今の所、余りありませんけど」
そういう意味では前回のあの大立ち回りは失敗と言う側面もあったがそもそもあれはもう避けれる事は無さそうであったので気にはしない。
軽く横を見る。
フードで相変わらず表情などは掴めないし体つきも余りはっきりとはわからない。
が、どちらかといえば柔という感じであろう。
などと適当に観察をしながら、ゆっくりゆっくり路地を進む。
■ナナミ > 「──別に。この島じゃァ誰が何してようが不思議じゃァねェ。」
嘯く。
とはいえ半分は本心で、多少夕霧に対して興味も沸いたが。
深入りするのはどうも躊躇われた。そういう世界もあるのだろう、程度に留めておく。
「まァ、アンタみてェな美人は散々目立ってきたろうからなァ。
俺みたいにちっさいのは、極力目立たない様に特化してくのさ。」
その方が都合が良いから。
気取られない、悟られない、読まれない。
それらは真正面からぶつかる事を極力回避する為に必要な技能。
小柄で腕っ節の弱いナナミの様な存在が、この街で何事も無く過ごすには必須でもあった。
周囲の視線と、隣からの視線。
それらをふわりと受け流しながら、足元に転がる空き瓶を跨ぎ越した。
■夕霧 > 「それもそうですね」
そういわれ改めて得心する。
何せ絵本やアニメなどの世界が揃って現れたようなものなのである。
現実と非現実。
一緒くたになった世界。
それが此処で。
彼の言うとおり、空を飛ぶヒーローも居る、竜も居る。
異世界から来た住人も居れば。
―――無論、現実から非現実へと引きずり込まれた者も居る。
「目立たない、ということはそれも一つの強みです」
溶け込むと言うこと。
それも必要な事。
彼の言うとおり、そういった隠密性。
それに彼は特化しているとも思えた。
受け流される視線。
気にせず視線を注ぎ続け、足元を流れる枯葉をかさり、乾いた音をたてて踏んでいく。
■ナナミ > 「──だろォ?」
ケヒヒッ。フードを被った頭が小刻みに揺れる。
様々な世界、文化、常識が流れ込んで交じり合って一緒くたになって。
何が不思議で何が不思議じゃないかすら判別が付かないだろう。
それこそ、正常異常も、日常非日常も、全部紙一枚隔てたくらいの差で簡単に引っくり返るのかもしれない。
そう考えて、ナナミは笑った。
「まァね。
誰も彼も俺のナリだけェ見て格下だと思ってくれるから遣り易いったらねェよ。」
ケヒヒッ。
とは言え、その実、隙をついて逃げるだけなのだが。
もしその強みを攻撃の手段に回したのなら。そう考えない事も無かったが、その為には更にもう一段上の技能を要するから。
まだ、それは尚早を判断して考えるのを止めているのだ。
■夕霧 > 「格下ですか」
無論、格下は存在する。
だからこそ。
「侮ればそれだけ死ぬ確立が増えるというのに」
眼を軽く細めて。
「残念な人らだったんでしょうねえ」
つい、と指で自分の胸をトントン、と指す。
「格下だろうが格上だろうが―――人なんて呆気に取られた瞬間にナイフの一突きで死にますのに」
そこまで言って。
「こっちではそんな事ほとんどありませんけど」
超人的な反応速度を持っている者も居れば、そもそもナイフすら通らない者も居る。
本土では。
何も持たない【普通の人】は。
それだけで人は死ぬのだ。
■ナナミ > 「それでもまあ──
油断ってのはするもんだろォ。」
人間四六時中気を張っている事など不可能に近いとナナミは思う。
だからこそ自分が使う様な“遣り口”が通用するのだろう、と。
「違いねェ……が。
──アンタの場合、胸よりも首を狙う方が確実そうだァな。」
ケヒヒッ。
相手に顔色を見られてないと思えば、そんな冗談も言える。
笑って誤魔化したは良いものの、柄にもないと羞恥心で頬が熱を帯びた。
「まァ、ンな冗談はさておいてェ。
不意を突かれようが単純に力比べで劣ろうが、人間呆気無く死ぬときゃ死ぬもんさ。
──だったら精々意地でも死なない様に手前の舵取るのが筋だろォ。」
それがいかに難しい事であるかも、重々承知していて。
■夕霧 > 「そう、其の通りです」
油断と言うものはしたくなくてもするもの。
古来より暗殺者とは。
相手にとっては最悪の。
己にとっては最高のタイミングで音も無く。
其の命を刈り取る者であった。
「どちらでも一緒ですよ。―――ナナミはんの言うとおり、死ぬ時はどちらでも死にます」
ころころと笑ながら首を掻っ切る仕草と、胸を貫く仕草をしながら。
「それが出来うる範囲なら、其の方がいいですなぁ。余計なものは背負い込まないに限りますし」
暗にそれが出来なかった時は―――。
其の先は言うまでも無い。
■ナナミ > 「全く以て儘ならねェなァ──」
溜息と共に吐き出す言葉。
その対象は様々で、一つ一つに言及していってはキリがなさそうだった。
そして何よりも、
「ところで何で俺ァ隣に美人侍らせてこンな剣呑な話をしてんだか。」
風情も色気もあったもんじゃねえ、と毒づく。
本音を虚勢で包んで吐き棄てる。
だからと言って色のある話をされる方が困るわけで、
「まあ、世の中にゃ背負い込まねえ方が強い奴と、
背負い込んだ方が強い奴と、どっちも居るらしいからな──」
などと独りごちてみたりする。
■夕霧 > 「正に人それぞれというヤツで」
儘ならない。
同じ対応が別の人に通じないように。
いや同じ人にすら同じ対応が通じるかすらも。
「本当に、そうならないようにするほうが、ええですなぁ」
そう、締めくくった。
「あら―――」
その言葉を聞き。
悪戯めいた笑みを少しだけ浮かべると。
すす、と少しだけ更に近づき。
「そっちの話の方が好みでした?」
ちら、とシャツで隠れていた胸元を少しだけ強調した。
■ナナミ > 「──ちっ。」
耳聡い奴め、と舌打ちと共に毒づいて。
近付かれた分だけ歩みを早める。
好みかどうかで言えば好みだが場所も状況もただただ悪い。
「──嫌いじゃァねェが、でかすぎんのはなァ?」
ふん、と鼻で笑う。
言うまでもないが、背丈の話で。
■夕霧 > 「あら、大きいのは嫌いです?」
どちらと言わず。
そう返した。
悪戯めいた笑いはそのままに、早まった分こちらも歩みを速めて。
とはいえ横に寄るのはやめて、近づく前の距離に戻ったが。
「まあこれも人それぞれですねぇ」
ふふ、と更に笑いながら。
■ナナミ > 「……だァァ、ったく!」
余計なことを口走った自分を殺す術は無いものか。
真剣にそんな事を考えたが、過ぎたことはもう、どうしようもない。
一度柄にもない事で起こした失態は、柄じゃないのを徹すのが一番だろう。
「ケッ、楽しげに笑いやがって──」
どっちが本当だか判りゃしねェ。
そう胸中で悪態を吐きながら上げていた速度を落とす。
やっぱり場所が悪い、なんて逃げ場のない狭い路地を八つ当たり気味に呪った。
■夕霧 > ナナミが元の速度に戻ったのでこちらも緩やかに速度を落とす。
「あら……気に障りました?」
笑いを引っ込めて普段どおりの表情へと戻り。
「とはいえうちは楽しませてもろてますので、笑うのも致し方ないかなぁと」
さっきよりも控えめに、また口元を少しだけ隠してくすりと柔らかく。
其の表情は、やはり此処には似合わないものなのだろう。
■ナナミ > 「いや、そういうわけじゃ……ああクソ!」
調子狂う、と吐き棄ててフード越しに頭を掻く。
まだ剣呑なやりとりの方が良かったと思っても、その流れを断ったのは間違いなく自分で。
やっぱりどうにかして過去の自分を殺す方法を得るべきでは、と本気で思う。
(──けどまあ、楽しんでるならいっか。)
それが本音かどうかは知る術は無いので言葉通りに受け取って。
やれやれ、と何度目か分からない溜息を吐き出す。
■夕霧 > その調子が狂ったという姿すらも微笑ましげに見つめて。
「楽しそうでええですなぁ」
と、フードで見えないその表情をただ少しだけうらやましそうに笑いながら。
皮肉に聞こえそうな言い分であるが、不思議と皮肉とも聞こえない声色で。
そう呟く。
「ふふ、疲れさせてしもてるならごめんなさい」
ため息を見て、そう少しだけ心配して。
■ナナミ > 「別に、これくらいで疲れるほど軟な精神してねェンで。」
ひらひらと手を振りながら応える。
謝られる謂れは無い、とでも言いたげに。
実際態度ほど疲れてはいなかったし、ナナミもナナミで楽しんではいるのだから。
「アンタみてえな別嬪侍らせて気疲れするなんざァ、世の男から刺されかねねェからな。
それに、どうせ疲れるんなら体動かしての方が道理ってもんだろ。」
ケヒヒッ。
また、柄にも無く。
どうやらこの場の雰囲気が悪く作用している様だ、と自己分析をして。
一刻も早くこの道行が終わる事を願わずには居られなかった。
■夕霧 > 「それなら安心です」
疲れていないというナナミに少しだけほっと息を吐いた。
折角お誘いして付き合ってもらっているのだ。
疲れているだけ、というのは悪いなとそんな気持ちで。
「身体を動かして、ですか」
つい、と眼をまた細めてナナミを見て。
ふふ、と笑う。
「それもそうですねぇ」
うんどう
運 動も。
うんどう
性行為も。
うんどう
殺し合いも。
どれも。
彼女にとっては同じ。
「ほんまナナミはんの言うとおりですわぁ」
表情は変わらず、柔らかな笑いのまま。
そう同意した。
■ナナミ > 「ふん。」
妙に含みのある言い方だな、と思えど口には出さず。
そもそも先の戦闘を見たときから何処かしらズレているのは承知済みだ。
それがどの程度のズレなのかまでは掴みきれていなかったし、この“散歩”の間も探り切れている気もしない。
(──っとに、変わった人だなあ。)
ふと、東雲七生として会ってみたい気にもなったが、
その時、面と向かって今までの様な話が出来る気はしなかった。
「……そろそろこの路も終わりみてェだぜ。」
フード越しに、夕霧へと振り返ってから、前方を指す。
最初のナナミの予想に反して、路地は別の通りに繋がっていた。
■夕霧 > 「そのようですねぇ」
路地に眼をやる。
次に腕時計に眼をやり、少しだけ眼を閉じて。
「それではそろそろお暇、しましょうか」
ナナミから少しだけ名残惜しそうな素振りを一つして。
一歩離れた。
「余りお付き合いさせるのも悪いですしね」
ころころと、そしてまた鈴の音を転がすように笑う。
「今日はおおきに。楽しい散歩になりましたわぁ」
軽く、会釈のように頭を下げる。
■ナナミ > 「ケッ、途中から人で遊びやがったァ癖にどの口が言いやがる。」
笑う夕霧に、鼻を鳴らして。
さっさと行け、と言わんばかりに軽く手を振った。
──それから、ああ、と思い出したように声を上げて。
「──今度会った時は、もうちっとマシな事でもしようじゃァねェの。」
ニタリ、と口元が赤く弧を描く。
同時に、その小柄な姿がわずかに揺らぐ。
僅かな血腥さが、地を這う蛇の様に夕霧の足元を這って往き
「──ま、興が乗ればだけどなァ。」
ケヒヒッ。
やはり場が悪い。
どうにも先の戦いを思い出して、その時覚えた憧れが首を擡げて仕方が無い。
嗤いを一つ零した後は、
そのままくるりと背を向け、今来た路地へと引き換えし始めた。
■夕霧 > 「ふふ。それはすいません」
笑い、そしてまた一歩と離れる。
直後ゆらりとナナミが揺らぎ。
香る匂い。
ち
そして足元を這うあかい蛇。
噛み付かんと首をもたげ、口を開き、そこで彼が止めたのか霧散する。
「あァ……」
ふふと笑い。
あの時見ていた三者の呼吸を思い出して。
「ええ、いずれ。―――興が乗れば」
一層、笑みを深くして。
「それでは」
ぺこりと、育ちがいいのを思わせる会釈をまた一つして。
ゆっくりと踵を返して。
コツ、コツとブーツの音を響かせ。
ナナミとは逆の路地へと歩いていく。
ご案内:「路地裏」から夕霧さんが去りました。
■ナナミ > 「………。」
背で遠ざかる足音を聞きながら、七生は一つ息を吐いた。
(──幾らなんでも中てられ過ぎだろ。)
それはこの街にか、それとも彼女にか。
理解しようとすれば、逆に呑まれかねない危うさを確かに感じつつ。
七生は地を蹴り、壁を蹴って、落第街の宙へと躍り出る。
その場に僅かな赤い糸の様な残滓を残して。
ご案内:「路地裏」からナナミさんが去りました。