2015/08/31 のログ
シイン > 「笑えない冗談だ。何処がか弱いのか。
か弱い美術教師が、そんな生徒など喰うかね?
か弱い美術教師が、私に指先の凶器を突き付けるかね?

そうだ、娘ではない。
言っただろう。経験をしてないと。
それに機械がな…子供を作れるわけがないだろう。」

至極当然のように言葉を紡いでいく。
どれもこれも当たり前で、誰が見ても、誰が判断しても当然で。

「そうか。
もし機会があるならば、なってみるといい。
本当に言葉の通りに出来るのか、私は無理だと断言しよう。
機械には無理だ。所詮は機械は"人"なのだよ。
人に創られた擬似的な。人であるが故に、決断を鈍らせ過ちを生む。」

だからこそすべてをあいせない。
だからこそすべてをびょうどうにあいせない。

「突然笑って失敬。
だがな、私はこの島がとても未来の規範となるべき街とは思えないのだよ。
未だ年月が浅いが故に、先は不透明かもしれないが思わず。

この島の闇は深すぎる。そして濃すぎる。
決して払えぬ闇だよ。
それを深めてるのは、私のような存在だがな。
その点だけは反省をしよう、二度とそのような過ちは繰り返さぬ、と。」

ヨキ > (喉を鳴らして笑う。くすくすと密やかに、誘うように)

「君は軍人だろう、シイン?こんな犬の一匹など、歯牙にも掛けないだろうに。
 ヨキにあるのは、図太い神経と丈夫な身体だけさ。

 機械にだって……子どもくらい作れる。世界中の事物はすべて、先人たちの発明の子どもさ。
 君に蓄積されたデータは、無数の子どもを産み出しうる。
 戦闘能力を持った機械。教職を務める機械。感情を持った機械……
 社会に生きるとはそういうことだ。連綿たる繋がりから独立できるものなど、居ない」

(シインの首元で、小さく鼻を鳴らす。
 機械油の匂いを、はたまた獣の鱗の匂いを確かめるように)

「命に貴賎はない。だが命に付随した価値に軽重はある。
 ヨキが二級学生を、不法入島者を食うのはそういうことだ。

 そしてシイン、君にとってもそうだったんだろう?
 君が撃った『四十万君』に――軽きを、あるいは重きを見出したから。
 鈍い決断力に、生徒を撃つような真似が出来るとは思わない」

(にたりと嗤う。日の差す学園ではおよそ見せない、裂けるように大きな口)

「闇が深いと?ふふ、全く心安らぐ話ではないか。
 光差さぬ闇が齎すのは、深く心地のよい眠りの安寧だよ。

 それこそこの島が母たる所以だ。
 このヨキは母から産まれたことがない、だがヨキを産んだこの地に安らぎを覚えるならば、それは母の胎の闇に違いないのさ。

 機械に愛や感情など無駄だ、バロム・シイン。
 『二度と過ちを繰り返さない』と―― 目を醒ましてくれてうれしいよ。

 我々はこの島の子どもにして、歯車だ。
 我々がどれほど何を為そうとも、島が未来へ歩む道程で吐き捨てた計算の、一結果に過ぎない」

(指先から針が引っ込む。
 シインの眼前で深く昏く微笑んで、その肩を叩く)

シイン > 「軍人は超人ではない。
時にしてたかが犬一匹に襲われて喰われてしまうのだよ。
私にはな。ヨキ先生。貴方が"犬"にはとてもじゃないが見えない。
犬と呼ぶには少々…いや、静かに刃を研ぎ澄ませ過ぎている。」

まるで犬の形をした化物と言う。
ハイヒールのおかげか、ほぼ彼とは同じ身長だろう。
同じ目線の位置する彼に、黄金の瞳を注視して。

「ヨキ先生。私は既に"機械"ではないよ。
だから蓄積されたデータは回収できない、とても残念だがな。」

なんせ今は龍になってしまったのだから。

「よくまぁ、そんな顔を見せれたものだ。
あの時の私はな、幻影を追ってた。幻影に惑わされて撃ってしまったのだよ。
何度と繰り返しに会話と出会いを重ねていく内にな。
殺すつもりは"最初"から無かった。そこに在ったのは命の軽重でもない。
いつまでも未練を残した鈍い愚か者の愚かな行為に過ぎない。」

結局自然と自分のことを話してしまったが、勝手に口から出てしまったのだ。
許せと言葉には出さずに、心の中で呟いた。

「なんともまぁ、私は私を狂ってると思ってたがな。
ヨキ先生、貴方も相当だ。闇を好む人など中々どうして居たものじゃない。

過ちは繰り返さないのは約束の一つだ。狂ってた、バグを抱えてた時とは違うのだ。
それならば再びと犯さないのが当然であろう?

――歯車、か。」

肩を叩かれ溜息を付かせた。
自分で思うこと事態が可笑しいが、よく彼が教師になれたものだ。
そう思わずにいられない。

ヨキ > 「刃。美しい形容をありがとう。
 君にその刃を向けずに済めばいい。
 その綺麗な靴底で薄い刃の上に立つような――
 麗しく、背筋の伸びるような間柄になれたと思わんかね、我々は?」

(剣呑な言葉を並べ立てながらに、その表情はひどく穏やかだ。
 機械ではない、という言葉に、眉を下げて肩を竦めてみせる)

「残念だな。その角が……翼が、そうさせたのかね。
 だが人でも獣でも機械でもなくば、君はいずれでもない新しい生きものなのだろう。
 この常世島に、鵺のごとき者らは多い。そうしてそのいずれもが興味深い」

(シインの独白に、我が意を得たりとばかりに笑む。
 機嫌を損ねるどころか、楽しげに)

「未練、か。心を寄せた女の面影でも見たか?
 そうだ、シイン。ヨキはこうやって君の言葉を望む。
 ヨキから求められて語るでも、制されながら言葉を選んで語るでもなく、
 君のうちから自ずと沸き立った言葉を。

 ……幻影か。君の顔を認識する機能が、狂っただけの話ではないのか。
 相手の中に、引き金を引くほどの幻影を見た――
 うらやましい。人を思うことの出来る君が」

(にやにやと緩んだ笑みのまま、すいとシインから離れる。
 彼が吐き出した溜め息に、半ば感心しながら)

「息を吐くだに――本当に、『違う生きもの』になったらしい。
 如何なものなのだね、生まれ変わった気分は?

 シイン、君は今や、日の下で大手を振って歩ける訳でもあるまい?
 ヨキは君に望むよ、君がこの落第街の秩序を守り、従って生きることを。

 この落第街で、人が人を傷つけ、薬に浸して犯し、金を奪って食うことが。
 光差す街には決して知られず、暗がりの中においてのみ完結する悪事――それが落第街の秩序だ。

 ヨキは甚だ正気さ。この常世島に、心の底より従っているに過ぎない。
 ……闇に身を浸すは、何よりの安らぎよ」

ヨキ > (引いた足が、弧を描いて踵を返す。
 人が舞い踊るかのような、筋力に統御された足の動き)

「――それではね。君の答えは、また次に。
 愉しみとして、取っておこうではないか。
 君のそのうつくしい首が落とされてしまう、その前に。

 我々のこの会話を、それぞれの首の皮としようではないか。
 それでヨキと君は、繋がっていられる」

(彼に放った恨み言と同質の、粘りつくような執着の言葉。
 指先が、流れるようにひらりと振られる。
 闇に溶けるような微笑みを浮かべて――

 路地の向こうへ姿を消す)

ご案内:「路地裏」からヨキさんが去りました。
シイン > 言葉を考えてた矢先だ。
彼は去ってしまった。少々、返事が遅すぎたか。

黒衣を引き上げて顔の半分を隠しながら、去った方向とはまた別の方へと。
彼は言った、答えはまた次に。
会話を首の皮として繋げようと。

「少し返答を練らせておこう、なに"直ぐに会える"」

歩みは始まった。

さて、どう"会おう"か。
答えは簡単だ。
彼を"追えばいい"

そして

"続けばいい"

その歩みは落第街の闇の中を追った。
カツカツとハイヒール独特の音を鳴らして。

ご案内:「路地裏」からシインさんが去りました。