2016/06/20 のログ
ご案内:「路地裏」にバラルさんが現れました。
■バラル >
噎せ返る様な血と性の臭いの中、路地裏に君臨する紫髪の少女。
何かに座ったまま、足を揺らす。
「――腹の足しにもならないわねぇ。」
揺らした足は何かに辺り、それを転がる。
薄暗い中目を凝らしてみれば、その何かは様々な装いに身を包んだ少女と認識できるだろう。
武器を握ったまま負傷し、項垂れているものもいる。
身体の一部が極端に肥大化しているものもいる。
――死んでこそいないものの、彼ら彼女らはまともな反応を返さないだろう。
ご案内:「路地裏」に鞍吹 朔さんが現れました。
■鞍吹 朔 > 「………。」
かつん。かつん。かつん。
路地裏に、足音が響く。規則正しく、一糸乱れぬ一定の調子で、地面を叩く拍子が聞こえる。
しゃりんと小気味の良い音が鳴り、足音は止まった。
その足音の主は、一人の少女。少女は一度、地面に転がる少女たちを見た後、表情を変えぬままに顔を上げた。
「貴女。『これ』は何かしら?返答次第ではこの後の対応が変わるけど。」
人差指と中指の間に挟んだスローイングナイフを、ヒュンッと音を立てて路地裏の奥の少女へ向ける。
黒く濁った左目と、白く濁った右目の奇妙なコントラストが、少女へと向けられた。
■バラル >
一人の少女を引っ掴んで盾にする。
豊満すぎる胸部にナイフが刺さっただろうか。
「かわいいでしょう?」
無邪気に、純粋に、悪魔のように。
――眼前の少女を、愚弄するかの如く揶揄った。
■鞍吹 朔 > 「!」
瞬間、クンッと手首を曲げて切っ先の方向を変える。
少女の胸にはかすり傷は付いたが、胸部に深い傷は付いていない。
とはいえ、反応しきれなかったために切れたには切れてしまったが。
「貴女みたいな下衆よりは遥かにマシ程度にはかわいいと思うわ。
私なんかにかわいいだなんて言われたくもないでしょうけど。」
目の前の少女を…否、『墨袋』を侮蔑するように見下す。
今目の前に居る人型の存在は、攻撃の対象であると判断した。『悪』であると。
瞬間、朔の姿が消え失せる。匂いも、姿も、足音も、体温も。その場に最初から居なかったかのように掻き消えた。
標的は頚椎。1歩一秒で2歩近付いて、3秒目に頚椎を突き刺して終わらせる狙い。
■バラル > 「あら?」
一秒、二秒、三秒――
呆けた声と共に無防備と言うには慢心過ぎる隙を曝す。
察知している様子は、ない。
■鞍吹 朔 > 「………。」
二歩近付く間、一瞬、迷った。
これだけの少女を一度に相手取ったのだろうか?武器を持った相手を、余裕のままに叩き潰したのだろうか?
だとしたら、呆けた様子を見せて実は何らかの対策を打っているのではないだろうか?
ぎりぎりまで気付かないふりをして、振り下ろした刃を引き寄せた少女で防ぐ算段ではないだろうか?
一瞬だが、迷ってしまった。
一歩、二歩。
三秒目の、首筋へ振り下ろそうと構えた……その途中で、三秒を迎えてしまった。
察知するには十分な時間。振り下ろしに十全に対応するには少し不十分な時間だ。
■バラル >
――"意外"、あるいは "危惧通り"
その凶刃はバラルの頚椎を容易く貫く。
ナイフが刺さったままに座ったままの姿勢で仰け反り、姿勢を崩す。
……崩してから5秒ほどが経過した・もしくはナイフを引き抜こうとした瞬間。
バラルの体がびくりと動く。否、ゆっくりと身体を起こし始める。
――首に刃が刺さったまま、血飛沫を撒き散らしながら上身を起こし切る。
起こしきってしまえば朔の両腕、あるいは刃に手を掛ける。わざとらしい程に緩やかな速度で刺さった刃を引き抜いて――
「とても、痛かったわねぇ――?」
バラルの全身から衝撃波と化した魔力が噴出する。
簡単な自販機程度なら、容易く吹き飛ばしてしまうだろう。
――バラルは、口と目を大きく見開いて笑っていた。
獰猛さ・残酷さ・純粋さ――下卑たものが供えないような、凶暴な笑みを向けた。
■鞍吹 朔 > 「………っ、!」
あっさりと。そう、異様なほどあっさりと刃はその頚椎に届いた。
反射的にナイフを捻り、骨をへし折る。
横にぐりぐりと動かし、神経も断ち切る。
最後に思い切り押し込んで、気管まで刃を貫通させる。
常人なら間違いなく即死する手際。確実に殺した。
殺したはずだった。
「……な……!?」
結果から言えば、その試みは全て失敗に終わっていた。否、『徒労』と言った方が正しい。
ゆっくりと体を起こし始めた時点でナイフを手放して距離を取った。
殺したはずなのに、死んでいない。殺しても死なない相手など、相手取ったことがなかった。
「貴女、一体……っ!?」
何者だ。最後まで質問を吐き出し切る前に、吹き荒ぶ力の嵐が辺りを揺らす。
全身を押し飛ばされるような威力の波動に耐え切れるはずもなく、その体は簡単に宙を舞った。
そのまま路地を挟むビルの壁へ叩き付けられ、地面に膝を付く。
「げほ、っ…!かはっ、かふ……」
肺の中の空気を内側から締め出されるような息苦しさ。
涙が浮かび滲んだモノクロの視界に、悍ましい笑顔を浮かべる少女が映った。
■バラル >
恐らく、転がっている少女が膝をつく際のクッションになるだろう。
柔らかい感触を足に覚えるか。
……殺した筈の立ち上がれば微かに咽る。
首を抑えながら悠然と歩く。可視化できる程の魔力を以ってして、威圧しながら迫るだろう。
よく観察していれば、咽る点・後から首を抑える点などからダメージになっているこそは伺える。
可視化できる程の濃い魔力も伺ってしまうかもしれないが。
「あら?それだけ? でももう遅いわぁ――?」
高揚を声に乗せてゆっくりと近付く。
何もしなければ、容易く貴方の目の前まで辿り着くだろう。
■鞍吹 朔 > 「ぐ、っ…!」
踏み潰した少女を気遣ったのか横に転がり、体勢を立て直す。太もものホルスターから、新しいナイフを抜き取った。
滲み、霞む視界で目の前の敵を必死に捉える。痛みと息苦しさで、額がじっとりと汗に濡れる。
息苦しいのは、背をしたたか打ち付けたことだけではない。
目の前の、この名状し難いほどに強大な魔力とプレッシャーも、その要因の一つとなっている。
ダメージは有る。だが、それを何度続ければ有効打になり得るのか。
目の前の怪物の命を破壊するまでに、体が保つのか。
そう、『怪物』。『人』でも『獣』でも『墨袋』でも、ましてや『人狼』でもない。
『怪物』に出会ったのは、初めてだった。
「…………ッッ、!」
ギリッと歯を食いしばり、痛みを噛み殺してナイフを投げる。
狙うのは足。弾丸のように、ナイフは怪物の足へと飛んで行く。
ダメージが完全に回復するには多少時間がかかる。ならば、その隙を突いて時間を稼ぐ。
『三秒』あれば、人がいる場所まで逃げるのは容易いはず。その判断だった。
■バラル > 「へぇ。まだ。――――"矛よ撃て"」
ナイフに反応して足を止める。指を繰り、声を発す。
迫ったナイフをと朔を目標に、闇色の飛礫が三つ飛来する。
一つはナイフとかち合って落下・消失、もう二つはそのまま朔へと向かう。
ナイフで打ち落とせる辺り、物質化した魔力なのだろうか。
とは言え魔法である事には違いなく、迫っている事にも違いがない。
■鞍吹 朔 > 「なっ…!?」
駈け出した瞬間に飛来する漆黒に目を見開く。
失敗した。おそらくは、冷静ではなかったのかもしれない。
これだけの強烈な魔力を垂れ流しているのに、迎撃態勢がないものだとどうして言い切れるだろうか。
弾き飛ばされたナイフに一瞬目を取られ、駆け出した体を捻って迫る漆黒の弾丸を躱す。
「……っ、ぁ…!」
しかし、避けこそしたものの、そのまま姿勢を崩した。そのまま、転がるように近くのポリバケツをひっくり返す。
ゴミが散乱して、アスファルトに散らばる。
「…っ、くそ…くそぉっ…!」
無理な避け方をし、挙句転んだせいで足を捻った。これでは、3秒あっても逃げきれない。
こうなれば、戦うしかない。
どうやって? 勝ち目は? そうする意味は?
頭のなかで言葉がかき回すように笑う。頭が、体中の痛みを集めたように熱くなる。
負けたら、辺りの少女のように辱められるのだろうか。
「殺す…殺してやる…!」
ぎらぎらと目を光らせる。しかし、その目には殺意はあれど覇気がない。
心の何処か、諦めてしまったような目。
■バラル > 「ふふん。無様ね。」
誇らしげに鼻を鳴らしてから、指を弾いて響かせる。
足首を挫いた朔を見下ろしながら、悠然と歩み因る。
――同時に、下敷きになっていた少女達が朔の足首を掴みに掛かる。
足首を掴んだ後は、腕へと殺到する。……少女然とした、細くか弱い力だ。
■鞍吹 朔 > 「………っ!」
ギリッ、と歯を鳴らす。
再びナイフを抜き取ろうとした。
「…な、っ!貴様……!」
その瞬間、腕と足へ少女たちが殺到する。
少女程度の力とはいえ、足を挫き、強化魔法の精度も全身の痛みで鈍っている朔の動きを鈍らせるには十分だった。
ナイフを抜き取ろうとするも、少女たちに抑えられてうまく抜けない。
「ぐ、うぅ…っ!
許さない…許さない!お前みたいな奴がいるから……!!」
足首を握りしめられ、挫いた足に伝わる激痛に眉をしかめながら、何とか抜いたナイフをバラルへと向ける。
しかしその手の力は弱々しい。叩けば、簡単にナイフを取り落としそうな儚さだ。
■バラル >
「なぁに?――実力こそが正義じゃない。
それなのに吠えちゃって。みっともないわねぇ。
まるで負け犬さんみたい。」
朔の眼前まで来れば、四人の少女が朔の両腕を抱えて持ち上げ起こす。
抱えられた腕はがっちり抑えられ、弱いながらも磔の如く身体を固める。
「――でもその意気は嫌いじゃないから、今回は生かしてあげる。
でも、そうねぇ――首を刺した分はお返ししなきゃ。
貴方は地味だし、んー……」
紫髪の少女は朔の身体に手を伸ばす。
その腕には闇色の魔力が満ち溢れており、分かりやすく厭な予感を与えるだろう。
何かするつもりだ、と。
■鞍吹 朔 > 「貴様、貴様ァ!殺してやる、絶対に殺してやる!
殺して、殺し、殺……ッ!」
押さえつけられながらも、諦め悪くジタバタと体を動かす。
手足は動かせないが、それでも何とか抵抗を試みようとしている。
「……っ、何をするつもりだ…!離せ、離せ……っ!」
普段の冷静で冷酷で冷徹な朔からはかけ離れた、珍しく取り乱した姿。
必死に手足を動かし、幽鬼のように手足を縛る少女たちの体をガクガクと揺らすが、脱出には至らない。
■バラル >
「精々私の恐ろしさをぴょんぴょん跳ね回って触れ回りなさい――うさぎちゃん。」
朔に魔力を注ぐ。
それは朔の身体と衣服を冒す――
――朔の装いが地味なものから派手なものへと変化する。
サッカーボールよりも大きいうさぎのしっぽのような"もこもこ"をお尻に飾った煽情的なレオタード。
白を基軸にピンクのアクセントで彩られたうさぎのカチューシャ。手より大きなカフス。
太ももは色気を振りまく黒いガーターベルトに網タイツで包まれ、足には赤いハイヒール。
どれもが肌に密着している上、レオタードに至っては脱ぐためのファスナーすらない。
魔力でコーティングされているのだろう、市販のナイフ程度では傷すら付きそうにない。
……変貌の外にあったスマートフォン、学生証、マンションの鍵、
そしてその他のものは地面に落ちてしまうか。
装いだけではない。変化は身体にも及ぶ。
簡単に言えば、胸が肥える。自分の頭よりも大きいたわわに実った胸を朔に授ける。
次いでお尻が軽く膨らみ、より女性らしい身体つきへと変貌する。
顔や髪は殆ど弄られない――が、目元や唇が少しだけ彩られる。
本人の貌そのままに、地味な雰囲気が払拭される程度だろう。
そこまで変身させてしまえば、今度は何処からか手枷と足枷を取り出す。
少女たちに指示させれば、手と手、足と足を塞ぐようにれを嵌めさせた。
鎖は無いに等しく、腕や足を広げる事すらできない。
……これにはコーティングは無く、どうにかすれば壊せるものだ。恐らくわざとそうしたものだろう。
「あら、落とし物よ。」
わざとらしくそう告げて、学生証とスマートフォンだけを胸元に捻じ込んだ。
下手に動けば落ちてしまいそうだ。
■鞍吹 朔 > 「……っ、な……!」
自らの身体の変化に、戸惑う。その姿は今や、扇情的かつ魅惑的な衣装に包まれていた。
その体はさらに目に見えた変貌を遂げ、女性的な箇所をひたすらに突き詰めたような姿へ。
頭よりも大きくなった胸は、有り体に言えばバニーガールのようなレオタードからこぼれ落ちんばかり。
「………な、ぁ……」
絶句。当然の反応だろう、自らの身体をこれほどまでに弄ばれてしまっては。
そして、直後に絶望したようにその目線を落とす。手錠や足枷にも抵抗はしない。
その時。一瞬だったが、その時だった。
バラルはおそらく、その場所を見た。
白だった。白い建物だとか、白い大地だとか、そういうものではない。どこまでも、色の無い世界。
「白」だけがそこにあった。
空と陸の境すら判別できず、そもそも自分が立っているのか浮いているのかさえ判別できない。
何も見えず、何も感じず、何も聞こえず、何も匂わず、何も味わわない。
迸る魔力の奔流すら、白の彼方へ消し飛んだ世界。自我の根本さえ削り飛び、透明になって消えていく世界。
不安もなく、安楽もなく、喜も怒も哀も楽も無い、全てが白へと還る世界。
自分の輪郭さえ曖昧になり、白に溶け、無我と無想の彼方へ
気付けば、再び意識は路地裏へ。
手錠と足枷を付け、豊満に膨れ上がった胸元に学生証とスマートフォンをねじ込んだ場面に、意識は戻る。
■バラル >
「――!」
魔力を通して心象世界に触れてしまったか。
それ自体は珍しい事ではない。白く塗りつぶされ、ある種の虚無と化した世界。
純粋と呼ぶには色の強すぎる世界。
(私に不意を打った辺りから察するに、彼女の続映かしら。
――ミニマムで無我の境地。最大で事象改竄。
要素の白紙化、なんて可能性もあるわね。)
いくつかの推察を付けるが、これを手元に置く気はない。
そうしてしまえば弄べない。己の恐ろしさを全身で触れ回して貰わなければならない。
折角魔力と呪いを与えてやったのだ、無駄にするつもりはない。
衣装と身体にしたって、汎用的な異能や魔術ではディスペル出来ないようにくみ上げた。
よほどのリスクを抱えている程の極端な力か、
強大な魔を退ける事に専門とした強い力でなければそう解けぬ様に組み上げた。
少なくとも、この力が魔に由来するものと理解した力でなければ解呪を困難を極めるだろう。
……この他に打ち克てるものを揚げるのならば、
"呪いを被る"事すら厭わない、純粋に彼女を想う"願い"程度だろう。
無論、無茶の代償は被ってしまいかねないが、時に強い力を発揮する。
簡単に言えば、王子様のキスだ。
――それらに幾度となく敗れてきた魔王は、苦々しげにそれを思い返した。
「……ふぅ。歓楽区まで送ってあげるわ。
折角の親切心だから、受け取りなさい?」
――そう言えば朔を抱える為に腕を伸ばす。
多少暴れる程度では動じないだろう。
■鞍吹 朔 > 「………………。」
朔は、何も喋らない。濁った目を、どこへともなく向けるのみ。
見れば、右目の白く濁った瞳の濁りが強くなっている気がする。
抱えられても抵抗することはなく、豊満に膨れた胸と尻を揺らし、その体を委ねる。
「…………ッあァっ!!」
だが抱えられた瞬間、手錠の付いた腕を思い切りバラルの頭へ振り下ろす。
常人なら間違いなく頭がカチ割れる程度の威力。
「ッ!……っっ、!!!」
そのまま、がつん、がつん、と何度も打ち付ける。手錠が腕に食い込み、皮膚が切れ、血が滲む。
自棄になっているわけではないが、冷静さは欠けているようだ。
無論、効くわけもない。だが、朔の何かがここで動きを止めることを許さなかった。
■バラル >
「い、痛ッ!このッ、大人しくしなさい!」
物凄く叩かれれば一瞬だけ身を丸めて顔を顰める。
あまりにも目に余ったのだろう。口元に魔力を湛えれば苛立たしげに――
――弾丸の如き乱雑さで朔の唇を狙う。
朔の口か頬にバラルの唇が当たってしまえば、軽くはあるが魅惑/混乱/睡眠/麻痺/衰弱/放心――
それこそ多様な害を備えた魔力の毒が注がれる。
■鞍吹 朔 > 「ぐ、むぐッ!?」
唇を奪われ、その体に魔毒が流し込まれる……
「ぐ、ぅうあッ!!」
が、反射的にバラルの唇を思い切り噛む。肉を引き千切らんばかりに力を込め、ぎちぎちと歯を閉じる。
そのまま、がづっ、がづっ、と手錠で殴り続ける。
何の理由かは分からないが……否。十中八九先ほど見た『白』の何かではあろうが、毒の効き目が鈍いようだ。
「ぐ、ぅ゛~~~ッッッ!!う゛ッ、うぅ゛ーッッ!!!」
獣のように唸りながら、狂気じみた攻撃を加え続ける。
■バラル >
(レジスト? 寝た子を起こした? まあいいわ。)
駄々っ子攻撃にも大分慣れてきたし、状況は圧倒的なのだ。
むきになって行使する事もない。
……暴れる朔をいなしながら歓楽街の近くまで進み、
人目に付かない建物の隙間から人目の付く所に投げ捨ててしまうだろう。
■鞍吹 朔 > 「ぐっ、が…!」
無造作に投げ捨てられ、手足を縛られているために受け身も取れずにアスファルトへ叩き付けられる。
歓楽街では、『うさぎ』など一口で食べられてしまうことだろう。
それを見越して、なのだろう。朔もそれは理解していた。
「……ッ!絶対に殺す……殺してやる!!」
ぎっ、と目線を向け、突き刺すように睨む。
悲しいかな、その体型と化粧、それと衣装のせいであまり怖くはなかったが。
もしかしたらその目には、『純白の魔力』が映ったかもしれない。
微弱で貧弱で惰弱で脆弱な魔力だが、それは確かに存在していた。
■バラル >
「落第街から逃してあげたんだから。感謝しなさい。
こっちはまだまだ平和だから、頑張れば――落第街よりは喰われずにすむかもしれないわよぉ?
――それじゃ、うさぎちゃん、チャオ♪」
投げ捨ててれば踵を返す。
歓楽街はまだ法の働く世界だ。
食べられなければ一口で喰われる事もない。
風紀委員だって助けてくれるかもしれない。
精々、好奇と嘲笑の視線、それといくらかの写メールに晒されるだけだろう。
勿論、運悪くはみ出た無法者に捕まればその限りではないが。
いずれにせよ、バラルの姿は此処にはない。
ご案内:「路地裏」からバラルさんが去りました。
■鞍吹 朔 > 「……ッッ……!!」
消えたバラルの姿を睨みながら、その場から這いずるように去ろうとする。
好奇と嘲笑の視線に晒され、下卑た笑い声が聞こえる。
しかし、それに怯むこともなく、まともに動かない体を引きずりながらその場から離れる。
途中で、手錠を使って路地裏に誘い込んできた『墨袋』を一人処理した。
住まいとしているマンションの前に帰る頃には、空が白んでいた。近所の人にも見られた気がする。
朔の黒い目は、少し灰色に。
朔の白い目は、更に純白に。
「ぺッ……絶対に、殺してやる……」
悔しさで噛みちぎった唇から溢れた血を吐き捨て、憎しみをその目に煮え滾らせて、部屋のノブへと手をかける。
しかし、そこで気付く。あの魔王は、マンションの鍵を路地裏へ捨ててきたらしい。
その場に居るわけにも行かず、その姿をマンションから消した。どこへ行ったかは、誰もわからない。
その後、当然とはいえこの時の写メは学園内へ広まることとなったのだった。
ご案内:「路地裏」から鞍吹 朔さんが去りました。
ご案内:「路地裏」に鞍吹 朔さんが現れました。
ご案内:「路地裏」から鞍吹 朔さんが去りました。