2016/08/04 のログ
ご案内:「路地裏」に濱崎 忠信さんが現れました。
■濱崎 忠信 > 路地裏の片隅に、広がる朱。
じわりと空気を冒す、鉄錆の匂い。
最早、物言わぬ肉袋と化した『それ』からナイフを引き抜いて、少年は眉を顰めた。
夥しいまでの朱が飛び散り、少年の制服を鮮やかに彩る。
「……だから、ナイフは嫌いなんだよ」
■濱崎 忠信 > 喉を切り裂かれ、流れる朱ごと体温を失い、胡乱気な瞳を虚空に投げる『それ』を一瞥して、少年……濱崎忠信は、うち捨てられた木箱の上に腰掛けた。
ナイフにこびりついた朱がポタポタと木箱に滲みこみ、紅斑を作る。
忠信は徐に懐を弄って、何やら手に取る。
携帯端末だ。
■濱崎 忠信 > 端末を弄り、耳に押し当てて数秒後。
「ああ、俺です。今始末しました。後始末お願いします。
はい、はい、言われた通りの区画内でヤりました。
それじゃ、あとは打合せ通りにってことで」
そのまま、端末を懐にまた仕舞って、忠信は息を吐く。
頬についた朱が、耳に押し当てた携帯端末にもいくらかこびりつくが、知ったことではない。
■濱崎 忠信 > 仰向けに倒れたまま、虚ろな瞳を曇天にただ向ける『それ』に、忠信は声を掛ける。
「なぁ、アンタ。俺もアンタもここで、暫く待ちぼうけだってさ。
これじゃあ、手早く仕事した意味が何もないよな」
無論、返事が返る事はない。
■濱崎 忠信 > 忠信はただ、声を掛ける。
「アンタさ、何で始末されたと思う?」
無論、返事が返る事はない。
■濱崎 忠信 > 忠信はただ、声を掛ける。
「別に好きでそうなったわけじゃないのはわかるよ。
一応、抵抗したもんな。
それでも、今アンタはそうなってる。
でもさ、俺に『そう』されたってことは、アンタ誰かに恨まれてたってことだ。
じゃなきゃ、俺にヤられることはない。
だって、俺、そこそこの良い値段だからね。
その、そこそこの良い値段を払ってもアンタを始末したい誰かがいたから、アンタそこでそうなってんだ。
気の毒なことにな」
無論、返事が返る事はない。
■濱崎 忠信 > 忠信はただ、声を掛ける。
「ただ、気の毒でもなんでも、アンタはかなり恨まれてたって事だけは、間違いない。
何故って? アンタを『そう』したかった誰かの依頼が、巡り巡って俺にきたからさ。
俺に依頼する以上、俺は事件になるようなヤり方をする。
交通事故に見せかけてとか、消息不明にとか、跡形も残らないようにとか。
誰の記憶にも残らないようにとか、誰にも気にされないようにとか。
そういう器用な事は出来ない。
最低でも、不自然なタイミングで消えた事を不気味がられるようなヤり方しか俺はできない。
わかるか?」
無論、返事が返る事はない。
■濱崎 忠信 > 忠信はただ、声を掛ける。
「つまりさ、アンタを恨んでいた誰かさんは、アンタに『普通に消えて欲しくなかった』んだよ。
それくらい、憎かったんだろう。妬ましかったんだろう。
だから、アンタに普通の最後なんて与えたくなかった。
日常から外れた場所で非日常的に始末されて、突然、何の覚悟もなく『そう』なる恐怖を、アンタに味わってほしかったんだ。
だから、俺みたいな奴が、アンタをそういう風にしちまったんだ。
アンタをそういう風にしたいって思う誰かの意思に従ってな」
無論、返事が返る事はない。
■濱崎 忠信 > 忠信はただ、声を掛ける。
「だからって、アンタの自業自得だなんて身勝手な言い分で片付けるつもりは俺にもないぜ?
理由はどうあれ、結果が全てだ。
結果だけみりゃ、いくら言い訳並べ立てたってアンタをそうした奴が悪いし、アンタにそうなって欲しいなんて思った奴が悪いさ。
何故って?
そりゃ、簡単な話だ。
ヒトゴロシはワルイコトだからさ」
無論、返事が返る事はない。
ご案内:「路地裏」に影打 鈍さんが現れました。
■影打 鈍 > (カラン、コロン。
下駄の音が響く。
音と共に路地の奥から姿を表したのは、ゴシックとパンクと和を雑に混ぜてぶちまけたような少女。
鞘に納めたスウェプヒルトの日本刀を左手に持ち、男との距離を詰める。)
――汝がやったのか。
(死体の傍にしゃがみこみ、声だけを彼に向けた。)
■濱崎 忠信 > 下駄の音に気付いて、忠信が振り返る。
そこにいたのは、この常世島……特に路地裏では、そう珍しくもない珍妙な格好をした少女。
忠信は、右頬に朱を付けたまま、笑った。
「ああ、そうだよ。仕事なもんでね」