2016/08/17 のログ
ご案内:「路地裏」に加賀智 成臣さんが現れました。
■加賀智 成臣 > 路地裏の闇の向こうから音がする。
硬いもので肉を叩く音。何かが折れる音。割れる音。液体が溢れる音。
下卑た笑い声。複数人の靴音。話し声。
闇の中では、凄惨な光景が広がっていた。血を流して倒れる男子生徒。
その頭は割れて血が流れ、足という足、腕という腕、指という指が折り曲げられて。
異能を使ったのか、肉がところどころ焦げ、引き裂け、潰れ。
「……………。」
ひゅーひゅーと、喉笛に突き刺さった鉄パイプから風の音を響かせながら……
しかし、加賀智はそれでもなお生きていた。
ご案内:「路地裏」にレイチェルさんが現れました。
■レイチェル > 見回りの当番であったレイチェルは、落第街へと足を運んでいた。
彼女が見回りをする際は今や常のことであるが、
その気配を殺しながら、怪しげなものがないか、
見回っているのだ。
「さて、後はあそこだけか……今日は何事も無さそうでよかったぜ」
と、最後の路地へと入ろうとした時に。
痛々しい音を耳にしたレイチェルはふと立ち止まり。
その先の様子を窺うように、路地を覗き込んだ。
■加賀智 成臣 > 「(早く終わらないかなぁ)」
死にながら、そんなことを加賀智は考えていた。
その間にも、頭を鉄パイプで殴られだり、バットで叩かれたりしている。
本来ならカツアゲで済むはずだったのだが、不死性をどこかの噂で聞いたのだろう。
金額が少ないことに腹を立てたのか、元からそのつもりだったのか……
この男たち数人に、このように殺されることとなった。
よくあることだ。
特に多感な学生たちの中には、『人を殺してみたい』なんて欲求を持つ者も居ないわけではない。
「(……あ、服燃えてる……どうやって帰ろう…?)」
殺されながら、そんなことを考える。
加賀智含め加賀智を殺している男数名、レイチェルには一切気付いていない。
■レイチェル > 路地を覗けば、レイチェルはその惨状を目の当たりにする。
滅茶苦茶、であった。男数人が寄ってたかって、
一人の男子生徒を嬲っている。そしてその嬲られている生徒に、レイチェルは見覚えがあった。
胸の内が滾り、熱くなった。
余計なことに首を突っ込むな、とは言われたが。
しかし、これを放っておいて何が風紀委員か。
そんな考えが頭を過るより前に、身体が、口が、動いていた。
「おい、何してんだ、てめぇら……!」
殺していた気配が顕になる。
風紀委員の腕章を腕に着けているレイチェルは、そのままずんずんと
路地を進み、男たちに近寄っていく。
腰に手をやり、柳眉を逆立てながら。
■加賀智 成臣 > 男たちが、突如背後に現れた怒気に身を震わせる。
腕章を見た男たちは、加賀智を踏みつけ蹴飛ばし、我先にと路地裏からの脱出を試みる。
しかし、それは無理な話。路地裏の出入り口は、現在レイチェルが入ってきた場所のみなのだから。
「……………。」
加賀智は、蹴飛ばされて路地裏の奥へと転がり、レイチェルの姿を見た。
大丈夫だろうか、と心配する。なぜなら、前に似たような地獄絵図が第三者に見つかった時……
「(気が大きくなってるんだよなぁ……。)」
その時と同じように、『目』を消そうとするように。
口の端から泡を吹くほどに興奮し、目を血走らせた男が、鉄パイプを持ってレイチェルに殴りかかる。
■レイチェル > 「目撃者は消せ、か。単純明快で分かりやすいこった。嫌いじゃねぇが……」
自分たちの下に置いている人間を虐げれば、気も大きくなろうというものだ。
なら、その気を削いでやれば良い。内心溜息をつきつつ、レイチェルはその場から動かずに男に立ち向かう。
振り下ろされた鉄パイプ。少女の顔面を割るかと思われたそれはしかし、
ぴたりと動きを止める。
男がいくら力を込めようが、振り回そうとしようが、びくともしない。
鉄パイプの先端は、レイチェルの左手でしっかりと握られていた。
「詳しい話はまた聞かせて貰うとするぜ……今は、寝てな」
右手を滑らせクロークの内から非殺傷銃を抜いて、放つ。
一瞬の内に、男たち全員へ向けて、一発ずつ。
当たれば、怪我はなくとも気絶は免れまい。
■加賀智 成臣 > 鉄パイプを持った男以下数名、わけが分からないといった顔をしていた。
なにせ、全力で振り下ろした鉄パイプが、少女の細腕だけで止められているのだから。
その現象の意味を理解し、恐怖に顔を歪めた瞬間……
ほぼ同時に、弾かれるように頭を仰け反らせ……見えない何かに押し倒されるように、その場に崩れ落ちた。
「(……強いんだなぁ……
あっ、意識が……そろそろ死にそう…死なないけど。)」
薄れ行く意識の中で、レイチェルの銃の腕に感心しつつ…一旦、そこで事切れた。
レイチェルが確認しても、脈も鼓動も呼吸もないだろう。
■レイチェル > 「……あー、悪ぃ。ちょいと男4名をだな……ああ、そうだ。頼む。
全員気絶してるが、怪我はねぇ筈だ。
状況はすぐにデータで送るから、確認してそいつらから話を聞いてくれ。
データを見れば分かると思うが一人怪我人、いや死人が居る。こいつは――」
眼帯を何度かタッチすれば、誰もいない空間に向かってそう呟く。
どうやら風紀委員会と通信をしているようであった。
加賀智が最後に見たのは、そんな光景だったろう――。
■加賀智 成臣 > 「……………。」
……意識はない。返事もない。
鼓動も呼吸も反応も、何もない。しかし、その体は違った。
うじゅうじゅと傷口が蠢き、元通りに戻っていく。
火傷を受けた皮膚が波打ち、外傷なく消えていく。
緩慢ではあるが、しっかりと……その体は『蘇生』を始めていた。
■レイチェル > 「……あ、悪ぃ、追加連絡。治療は必要なさそうだ。……ああそうだ、必要ない。
それじゃあ、後は頼んだぜ。オレはここで待機してるからな」
さて、後は風紀委員達が来るまでここで待機となる。
どんどん再生していく加賀智の身体を見守りながら、レイチェルは
一つ、悲しげな溜息をつくのであった。
ご案内:「路地裏」から加賀智 成臣さんが去りました。
ご案内:「路地裏」からレイチェルさんが去りました。