2016/11/05 のログ
ご案内:「路地裏」に濡鼠さんが現れました。
濡鼠 >   
「そら君達。お話をしよう」
 
 路地裏。一角。その片隅。
 煤と埃に塗れたその隅。
 路傍の柱にゃ、明滅続ける微かな光。
 襤褸街灯には、小さな蜘蛛の巣。
 その隙間から、僅か漏れる微かな光。
 
 仄僅かな光に惹かれ、一人二人と、流民が集まる。 
 

濡鼠 >  
「今日はなぁ、君達の為の話をしに来たんだ」
 
 輪の央。そこに居座るせむしが一人。
 ふっくら丸い体を丸め、裾が地を這うコートを纏い、短いその手を蠢かせる。
 その相貌はフードに覆われ、垣間見る事、叶う筈無し。
 
「しかし、お話だけをするのもなんだ。
 まずは御菓子を一つどうだい。今日も自慢の舶来品だよ」
 
 言うなり、せむしは鞄を開き、流民の群れにそれを差し出す。
 然らば、忽ち流民は血眼となり、一人、また一人と、その舶来品を手に取り、握る。
 
 舶来品は、見た所は小麦粉に似る何かであった。
 

濡鼠 >  
「そいつをツマミに何をやるかは君達次第。自由気侭の思うが儘だ。
 いや、だがしかし、それをやるなら、話くらいは聞いておくれよ。
 聞いてくれたら、最後にもう一箱。皆に振舞うつもりであるぜ」
 
 やおら、せむしは木箱に腰掛け、流民に対して話を始める。
 流民もまた、各々、思うように腰掛け、在るモノは舶来品と何かを合わせて既に喰らい、吸い、打っている。
 しかし、せむしは気にした素振りも無く、ただ鷹揚に一つ頷き、話を続ける。
 
「今日もまた、一緒に常世の話をしよう」