2016/11/11 のログ
ご案内:「路地裏」に因幡幸子さんが現れました。
因幡幸子 > ――11月。
光陰矢の如しにハロウィンが終わり、いよいよ持って身を裂くような寒さがか弱い私に襲い来る季節になりました!。
ちなみにハロウィンは真紅の鎧を身に纏い魔剣フェイカレスを携えた私が、丁々発止で八面六臂の大活躍でお菓子を大量にせしめたり
回し車に乗ったハムスターのように彼方此方を走り回ったりしたのかもしれませんが、それは今話す事ではないので詳らかにはならなかったのです。

「……で、今度は学園祭……。いやあこの島はイベント好きですね。私も嫌いじゃあありませんがー……かといって場所が場所ですし
こんな所は流石にお祭りムードもへったくれもないですね。デートスポットには当然二重バッテン!でしょうか。」

それはさておき。
私は建物に遮られて切り取られたように映る冬晴れを見上げて白く嘆息を落としました
なんだってこんな悪所に居るのかというと話せば長かったりしそうで案外短く
掻い摘んで話すなら、公園を歩いてたら知らないおじさんから荷物運びのアルバイトを頼まれたって寸法です。
私が携えたこの黒いスーツケースをこの待ち合わせ場所でやってくる人に渡すだけでポン!と出すには大概なお金が頂ける次第。
ちなみに前金で半分無事に終わったら半分です。まるで仕事人みたいですね!

「しかし待ち合わせの人きませんね。仕事にルーズな人は嫌われない世界なんでしょうか?」

白い耳を左右に揺らしてぷんすこと憤るのも無理からぬ事と言えましょう。
日もあるのにこんな薄暗い所に長居なんかしたくねーんですから!

因幡幸子 > 閑さや岩にしみいる蝉の声――

――もとい人の声。それもどちらかと言えば絶叫といいますか断末魔系の奴でおまけのように鳴る音は銃声でしょうか。
きっと時期遅れのハロウィンをエンジョイしていた方々がお菓子を貰えなかったからって悪戯に走った……と思いたい所ですが
そんな現実逃避をしている場合では無いので周囲を挙動不審に見回したり足踏みしたり……

「……そういえばこのケースの中身ってなんなんでしょうね?」

そんな折に私がそんな事を思うのはスーツケースをダンベルのように上げ下げしていたからでした。
こうして動かしてみても中身が動く様子は無く、液体ではなさそうででも何となく重みがある感じ。
開けてみようかな?としゃがみこんで彼方此方弄ってみるんですがやはりというかなんというか鍵が確りかかっておりました。

「お約束的にはあれですかね。麻薬とか?ドラマなんかだと定番ですよねー」

そして受け渡しの場でどっちかが死んだりするのも定番ですよねー。なんて今更他人事のように気付いて顔が青くなる。
やべーぞ!

ご案内:「路地裏」に濡鼠さんが現れました。
濡鼠 >  
「そら、そこの君」
 
 そのせむしは、暗がりから現れた。
 目深にフードを被り、ずるずるとコートを引きずる、肥満体のせむしの男。
 相貌は、そのフードに隠され、窺い知れず。

「荷運び言伝。その末とみて、相違なしか?」
 
 せむしは小さく首傾げ、僅かに笑ってそう聞いた。
 

因幡幸子 > 「いやいやいや待て待て慌てない慌てない……そんな異世界転生モノ宜しく別世界に来たオチが
なんか抗争的なモノに巻き込まれてなんてどんなファンタジック任侠ですか。私が編集ならボツにしますよ!」

だがしかしこれは現実なので何が起きてもおかしくはない。事実は小説よりもなんとかって名言が私の脳裏に走馬灯のように流れ
BGMは蛍の光辺りかな……等々の他人事思考がぼんやりと浮かび、そして誰かの言葉に撃ち落とされて消えて行く。

「う"わっ……ああもう明るい内から驚かさないでくださいよ!まあ此処薄暗いですし?お化けがでてもおかしくなさそうですけど
お化けよりおっかないものが出たりもしそうですねーってそうそうアルバイトの者です!言伝とかって言ってるんですかね?」

美少女にあるまじき野太い悲鳴を上げて飛び跳ね、空中で向きを変えて声のする方へ正対し着地をして軽口が着地をせずに浮いて行く。
手を御相手様に倣う様に、あるいは幽霊のように前に出して首を傾げ、隙あらば折角だしと窺い知れないお顔を見てみようとするんですが
生憎と良く見えず残念そうにお鼻がなりました。

濡鼠 >  
「概ね聞き及んではいる。しかし、仔細まで承知しているわけではない。
 我らは末端であるが故」
 
 落第街。
 公に存在しないとされる虚の街では、表に出れない違法部活や組織、そしてそれらを取り締まる公務との争いが、常に続いている。
 水面下。もしくは大っぴら。しかし、いずれも、事実は同じ。
 そのような場で、使いを迎えにくる影など。正しく氷山の一角でしかない。
 
「一先ず、モノを確認したい。
 見せて貰って宜しいか?」
 
 どこぞから響く火花か何かが散るような音に、僅か遠くの破裂音。
 それも、此処ではいつものこと。
 せむしはそれらを背にしたまま、ただただ少女に歩み寄る。
 

因幡幸子 > 「ははあつまり貴方もアルバイト。連絡不備とかあったら怖い感じもしますが結果オーライでしょうか?
ほうれんそうは大事なんですけどね~栄養的にも。」

遠くでまたもや派手な音が鳴ったりもするんですが、生憎近づいてくる気配は一先ず無さそうなので
私の耳がレーダーのように音源に向くくらい。目の前の容貌不明の小太りな、声からしてきっと殿方な方の声がかかれば
耳はそっちにも傾きもしました。

「ええ勿論。でも鍵とか預かってませんけど大丈夫ですかね?こう、受取人がモヒカンスタイルにして手斧とか携えたむくつけき大男!
とかだったらヒャッハァー!って斧で叩き割ったりするんでしょーけど、存外一見普通そうなんですよね、此処。
まあ銃声とか悲鳴とか聴こえるしさりとてパトカーの音は聴こえないしでバリバリ無法地帯の魔境って感じしますけど!」

初めて訪れた落第街の世紀末な有様を朗々と語りながら此方からも近づいてスーツケースを渡しましょう。
渡す序にやっぱりどんなお顔か気になるのでフードに手を伸ばしてめくってみようともしてみましょう!

濡鼠 >  
「此処は公には存在を否定された地。
 不法も無法も、端から無いなら法と同じことよ。
 鍵ならそれ、此処にある」

 そういって、また一歩、一歩。
 ずるずる、ずるずる、コートを引きずり、せむしが寄る。
 そして、寄った拍子に、フードに手を伸ばされれば……さして、せむしは抵抗せず。
 ただ、その幕が捲り上げられ。

「戯れを」
 
 そこにあるのは、ただの虚。
 何一つない、暗闇であった。
 
「覆いの内は、覗かぬが華よ」
 
 首なし、せむしがそう笑う。
 

因幡幸子 > 「無秩序なりのルールでもありそうなもんですけど、どうもそうでもないんで――」

物語ならこういった場所を牛耳る組織があったり、1930年代のアメリカ宜しくマフィアの皆様がいらっしゃったりしそうなものなのに
どうも案外そうでもなさそうな事に首を傾げて耳が揺れて鞄を渡して、そして言葉を呑んで尻餅をぺたりと搗く。
そしてそして赤いお目目をぱちくりと瞬かせるんですが、生憎と悲鳴とかはあげなかったんです。
だって容貌魁偉で怪しすぎる人、既に遭ったりしてましたし。

「――は、ははーん?知ってますよ大丈夫大丈夫。それも魔法って奴なんですよね!
いやーこっちの世界だとそーゆーのがあるから色々新鮮で吃驚ですよね。
そうそうこの間のハロウィンの時なんかも獣頭人身のお方と意気投合なんぞしまして
いやあ毛並みが良い仕事してますねえ。FOXEYですか?なんて聞いたら「天然ものさ」なんて言われちゃったりしまして。
ただ緞帳の内を見たくなるのは観客の常とも言うではないですか。まあ好奇心は猫を殺すとか言いますけど
ほら、私ったら兎ですし!」

すっくと立ち上がり懇親のドヤ顔をデュラハンみたいな方に向けるんですが、さて何処に向けたら正しいのかは判らないので
視線がちょっと困ったように泳いじゃったりもし、最終的にそっとフードを被せ直す事にもなりました。

「……で、中身なんなんですかね?やっぱり白い粉なんですかね?」

その後は鞄を開けるだろう様子を興味深げに眺めましょう!よもや鞄から突然魔物が!なんて事もありますまい。

濡鼠 >  
「さて、種はそれこそ、秘するが華よ。
 兎に知れては、茎葉諸共食われてしまう」
 
 得意顔の兎に返し、低い笑いを仕舞うように、フードを再び被り直す。
 鞄をそうして横に倒せば、これまた古風な鍵を差し込み、どうにか中を改める。

 すると、兎の少女の思惑通り、そこにあるのは小麦粉に似た、白い粉。
 それが入った袋がぎっしり。どれも袋は透明で、中身を知るのは酷く容易い。
 
 一つ、試しにせむしがとれば、ただそれのみで静かに頷き、低く笑って肩揺らす。 
 
「確かに相違ない。違え様なき舶来品。
 しかと受け取り候よ」

 そういって、次に懐から取り出すは。
 輪ゴムで束ねた無数の札束。
 相当額を少女に渡す。
 

因幡幸子 > 「根も掘れば葉も掘ってついでに花も掘り上げて壊滅させ……って何言うんですかね!
私みたいなおしとやかーな美少女を捕まえてまったくもう。」

けらけらと相好を崩す私に対し、多分だけど笑っているような声色のデュラハンもどきさん。
何時しか銃声やら悲鳴やらも無くなった昼尚薄暗い路地裏にはなんとも正反対な笑いが静かに鳴っていたのでした。

「おー……白い粉ですね。実は小麦粉だったり……はしなさそうですね……って先に貰った半金より随分多い気がするんですけど?
大丈夫です?金額のほうれんそう出来てます?あ、それとも余分は三途の川の渡し賃だー!とかそういう……?
いやいや待ってくださいよ私は世界に独りしかいないんですから労わったり労ったり大事にした方がいいですよ!」

無造作に渡される札束の重みに目を瞠り相手の顔(?)と交互に見遣った後にHAHAHA!と肩を竦めて笑いました。
笑いましてー……立ち上がりましてー……一目散に明日と言うなの未来へ向かってダッシュ!ダッシュです!
走れメロス!と言いたい所ですがあいつ実は大半歩いて太平楽決め込んだ末のダッシュなので言わずに走って帰ります!

濡鼠 >  
「運びの仕事は荷も責も重い。
 相当額よ、気にせず懐に……ほう」 
 
 続く声を試に掛ければ、既に姿はそこに無く、あるのは脱兎の蹴音のみ。
 正しく兎に相応しい、一目散の逃走劇。
 ふむとせむしは呟いて、またも小さく笑みを漏らす。
 
「なるほど、運びにあれは都合が良い。
 時は金なり。足の速さがあれとなれば……次の運びを頼むも良い」
 
 鞄の蓋を静かに閉じて、その末、持ってせむしは消える。
 闇の奥へとずるずると。コートを引きずり、路地裏へ。 
 宛ら、それこそ、鼠のように。
 

ご案内:「路地裏」から因幡幸子さんが去りました。
ご案内:「路地裏」から濡鼠さんが去りました。