2017/05/08 のログ
柊 真白 >  
(予想通りの返事。
 それに答えはせず、無造作に踏み込んだ瞬間。
 黒い塊が襲い掛かってきた。
 構わず無防備に地面に足を付き、)

――警告はした。

(金属同士が激しくぶつかる音。
 刀を鞘から抜き、その勢いのまま迫る刀の横っ腹にぶつけ、刀を鞘に収める。
 ただそれだけの動作を、一瞬でやってのける。
 そこまで強烈な一撃ではないが、刀を弾き返すには充分な速度。)

脚を狙う。

(宣言し、一呼吸置く。
 あえて彼女が体勢を整えるのに必要最低限の時間を置いて、抜刀。
 彼女の攻撃から判断した、彼女であればギリギリ避けられる程度の速度に抑えた抜き打ち。
 それを彼女の右脛を浅く切り裂く軌道で放つ。)

ステーシー >  
「!!」

抜刀一閃、こちらの峰打ちを弾かれた。
速い。それに低い。
自分より低く襲い掛かってくる相手とは、こうもやりにくいのか。

足を狙った一閃を逆に黒刀で受け、その瞬間に刃を返して捌く。

「……ッ!!」

相手はこちらの技量を見て攻撃してきている。
そして忠告染みた宣言、まるで気が抜けない。

「バントライン一刀流―――――」

捌いた勢いのまま身を翻し、一旦相手に背を向ける。
師匠が編み出した、敵に背を向ける邪剣。

「真・黒法師!!」

そのまま姿勢を低くしながら相手の足元を掬うように斬りかかる。
虚を突き浮き足を断つ秘剣。

柊 真白 >  
(パチリ。
 金属音の直後に鍔鳴り。
 彼女が翻る直前には、既に次弾発射の準備を整えている。)

――次、頭を狙う。

(彼女の背にそう声を掛けて、刀を無造作に突き出した。
 座り込んだ男の目には、いつこちらが刀を抜いたのかすら映っていないだろう。
 腕のリーチはあちらが上だが、刀のリーチはこちらが上。
 その射程距離の差を容赦なく使い、彼女の眉間のど真ん中へと刀を突き出す。)

ステーシー >  
「ッ!」

こちらの剣は身を翻し、相手の足元を切り払う円の動き。
あいての剣はこちらの眉間を狙う線の動き。
明らかに、相手のほうが、速い。

切っ先を止め、身を縮めるようにしゃがんでギリギリで回避。
足払いをするかどうか迷ったが、相手の剣速を考えると無防備に足をさらすことなんてできなかった。

そのまま後退し、切っ先を浅く地面に刺す。

「速いわね……じゃあ、こちらも速くなるわ」

全身を紫電が奔る。

「迅雷紫電ッ!!」

電流を全身に纏い、スピードアップを図る。
地面から切っ先を抜いて相手に斬りかかる。

「バントライン一刀流、猫撫で斬りッ!!」

左右の袈裟掛けと左右の逆袈裟、迅速に放たれる四方向からのランダム八連斬。

柊 真白 >  
(狙い通り、脚への一撃を引っ込めた。
 それを見て鞘へ刀を戻す。
 納刀の動きを見せず、鍔鳴りの音だけが聞こえる神速の納刀。)

――そろそろ諦めて欲しい。

(地面へ刀を刺した彼女はまだ諦めていないらしい。
 身体に紫電を纏った彼女の速度はどの程度上がるのか。
 その刀の「元の持ち主」ほど上がると言う事は無いだろうけれど。)

、っ。

(声と共に放たれた刀。
 思っていたより速度が上がっている。
 一歩下がりつつ、刀を鞘から走らせる。
 襲いくる八つの斬撃を弾き返さんと、こちらも刀を振るった。
 肩から先がしなる鞭のようにブれ、八つ全てを叩き落す事には成功したが。)

――退かされるとは。

(思っていなかった。
 男との距離は、後退した分開く。)

ステーシー >  
通じる。
この速度であれば、目の前の敵に。
しかし、同じ土俵で勝負し続ければ相手がギアを上げてくる可能性もある。

「私は諦めが悪いのよ」

やれることが多いというのは、その実思考速度がダイレクトに戦況に影響される。
やっぱりINTほしいなぁ。

「バントライン一刀流……!」

耳をピンと立て、全身の筋肉をフル稼働させる。

「雪童(ゆきわらし)ッ!!」

右肩、左肩、胸部を狙った三連突き。
紫電で強化された今なら、上手く刺して電流を流せるかも知れない。

柊 真白 >  
(僅かに肩をすくめる。
 正義に燃える連中と言うのは諦めが悪いものだった。)

それなら、仕方ない。

(鞘を持つ左腕で鯉口を切る。
 基本的な姿勢は変えず、僅かに攻めっ気を上げた。
 右肩を狙った突きを半身で避け、左肩を狙った突きを刀で弾き、)

――少し、痛い目を見て貰う。

(胸を狙った突きの直前。
 二発目と三発目の間に割り込むように、鞘から刀を抜いた。
 刀を握る手の指をひっぱたくような、峰打ちでの抜き打ち。
 その瞬間だけ、速度を跳ね上げた一撃。)

ステーシー >  
三連突きは、正確に言えば最後まで穿たれることはなかった。
相手の速度を上げた一撃は、正確に自分の刀を握る指を打った。

「!?」

まずい、脳が痛みを感じる前にと後退。
しかし……

「あ、う……!!」

右手の人差し指があらぬ方向に曲がっている。
百鬼の剣閃ともまた違う、精緻なる一撃。
激痛が、普段かかない汗を肌に浮かばせた。

「あなた…………………」

指を押さえたまま、白い影に語りかけた。

「これほどの剣腕があって、何故殺しなんか……」

理由を問う。既に全身を覆っていた紫電は刀身に纏わりつく程度の規模に落ち着いていた。

柊 真白 >  
(力も弱い。
 耐久も並。
 言うほど特殊な能力も無い。
 そんな自分が唯一これだけはと誇れるものが、速度だ。
 多少底上げをした程度で追い付けるものか。
 そのような意思を視線に込めて。)

――出来るから。

(何故と問われれば、こう答える。
 別に崇高な理念があるわけでもない。
 何か強烈な存在にあこがれたわけでもない。)

そう言う生き方を知って、それを出来る能力があるから。
――あなただって、そうでしょう。

(彼女が男を救う理由もそうだろうと。
 男を助けたいとか、命が奪われるからとか、そう言う理由もあるだろうけれど。
 彼女が自分の前に立ちはだかったのは、彼女がそれを出来るからだ。)

――もう一度言う。
攻撃すれば、斬る。
邪魔をすれば、斬る。
動かなければ何もしない。

(そうして歩を進める。
 左手に鞘と刀を下げたまま、無造作に。)

ステーシー >  
「出来るから………?」

左手に黒刀を握ったまま、人差し指の機能が壊れたままの右手で旋空を抜いた。
無理やりだけれど、二刀流の形になる。

「出来るから殺しを?」
「やだな、その言い方………愛がない」

今も続く痛みのシグナルにジンジンと痺れる脳を覚醒させるように喋り続けた。
痛みとは原始的だ。乱暴にいえば、人間らしさだ。
自分の人間性がまだ十全であることを神に感謝した。
そう、旋空に宿る夢を司る神、アルテミドロスに。

「………プログレス」

そう呟くと、白の極光が溢れた。
溢れるプラーナが全身の傷を修復し、人差し指が完全に治った。

白の衣、白い髪。蒼黒から純白に変わったその姿は、剣の聖女。

http://guest-land.sakura.ne.jp/cgi-bin/uploda/src/aca1084.jpg

「斬るなら、斬りなさい」
「できるならね」

彼女の前で二刀を構えた。

柊 真白 >  
そもそも仕事。
やれるか、やれないか、それだけ。

(問答をするつもりも無い。
 先ほどと同じように歩を進め、先ほどと同じように彼女の間合いに。)

――。

(入らない。
 一歩手前で歩みを止めた。
 姿が変わった――だけではないだろう。)

――本当、諦めの悪い。

(一つ溜息。
 直後、抜き打ちを放つ。
 峰打ちではない。
 先ほどまでの彼女に合わせた速度のものではない。
 普段から使う、残像すら残さぬ神速の居合。
 彼女の右脇から左肩へ抜ける、逆袈裟。
 動かなければ命に別状は無いが、まともに喰らえば戦闘不能は免れない怪我となるだろう。)

ステーシー >  
神速の逆袈裟を右手の旋空で切り払う。

「愛がいらないなら人間やめろ」

冷たく言い放つと白い影を追って駆け、二刀で×字に切り裂く刃を振るう。

「私が斬り殺して本物の神にしてやる」

黒刀と旋空は、共鳴するかのように刃鳴りを起こした。

柊 真白 >  
生憎、人じゃない。

(人間ではなく、吸血種――古来、鬼と呼ばれていたものだ。
 自身が放った居合いをあっさりと払われた。
 面の奥の目がやや細められる。)

神に興味は無い。

(その場から姿が消える。
 ただ大きく跳んで壁を蹴り、彼女の後ろへと着地しただけ。
 得体の知れない力に正面から立ち向かうつもりも無い。
 戦闘ではなく暗殺。
 それが自分の武器なのだから。
 二度の抜き打ちを背後から、一息で。)

ステーシー >  
「そう」

普段の能力解放(プログレス)と違う。
殺意が押さえきれない。
恐らく、数多の人間の血を吸った黒刀の影響が出ている。
左手から這い上がるように黒い幾何学模様が浮かび上がってきていた。

「鬼難万魔祓うも神意か」

背中側で二刀を交差させ、二度の剣閃を背面で受け流す。
前方に駆けて相手から離れ小さく跳躍、何もない虚空を蹴って振りむき様に旋空を振るう。

「神刀」

右袈裟懸けに振りぬけば真空の刃が白の暗殺者に向かう。
そして慣性と人の理を無視した挙動で少女に向かって跳ぶ。

「――――――姫神刀」

左からの逆袈裟に黒刀を振るう。
対となる剣閃は、真空の刃と同時に白い影に襲い掛かる。

柊 真白 >  
正義の体現者かと思えば――

(二度の居合いはどちらも凌がれた。
 跳ぶ彼女に向ける目は、一切の興味を失っている。
 放たれた真空刃を、こちらへ向かってくる彼女の両方を視界に捕らえ、)

――舐めるなよ、狂信の殺人鬼風情が。

(殺気と共に剣閃を放つ。
 一度や二度ではない。
 十、二十――下手をすると百を超えそうな斬撃。
 真空刃も黒刀も迎撃するつもりは無い。
 自身が斬られる前に彼女の方を斬って捨てると言う意思。
 あまりの速度と密度で気流が乱れ、結果的に真空刃の威力は多少弱まるかもしれないが。)

ステーシー >  
「私は正義だ」

姫神刀の切っ先を曲げた。
近くに貌のないネズミのような醜悪なる神の虚像が浮かび上がり、その声が私の声とシンクロしている。

「一挙手一投足、余さず神意なり」

二刀による白の暗殺者の剣閃の迎撃。
プログラムされたかのように正確な切っ先。
真空の刃は両者の剣戟の間で掻き消えた。

「疑るか」

最早常人に視ること叶わず。金属音だけが両者の間で圧縮されて鳴り響く。
夢を司る神、アルテミドロスは確かに私の夢を叶えている。

しかし、これは悪夢だ。

柊 真白 >  
ああ、狂信者ではないのだな。
――で、お前は誰だ。
名状し難い冒涜的な邪神の親戚か何かか。

(二刀の斬撃を一刀で凌ぎながら、その目を彼女ではなくそれへと向ける。
 神と言うにはあまりにも醜悪過ぎる。)

――まぁ、貴様が何かはどうでも良い。
そら、手を増やすぞ。

(右腕は刀を振り回したまま、左腕をスカートの中に突っ込む。
 何かを掴んで大きく振るえば、左手から煌く何かが伸びる。
 更に指を動かし、同時に二人の真上の壁が崩れた。
 鋼糸。
 日本刀のように鋭いワイヤーで崩したのだ。)

ステーシー >  
「我こそは夢を司る神格たる存在、我が供物との舞いは楽しいか?」

崩れてくる壁に向けて真空の刃を飛ばす。
斬り合いを中断し、幾つかの石に分割されたそれに向かって跳躍する。

「まだ動けるな、贄よ」

私の口から出る言葉は完全にアルテミドロスの言葉の代弁と成り果てている。
急に視界がスローモーションになった。
戦闘レベル危険域限定解除。
勝手に体のリミッターが外されている。

「決着をつけようぞ、魔なる者よ」

崩れてきた壁片の一つに空中で着地したまま両手を広げた。
視界の中の世界は緩やかに動き続けている。
左腕は服ごと黒い幾何学模様に塗りつぶされていた。

柊 真白 >  
楽しい?
何を馬鹿なことを。

(吐き捨てる。
 崩れ落ちる破片へ向かう彼女を追うように、こちらも跳ぶ。)

私は暗殺者だ。
感情で殺しをするような殺人鬼と一緒にするな。

(黒く染まった左腕を見る。
 あれは良くない。
 しかし魔を払う術もなければ、刀を弾くほどの力量の差もない。
 壁を、破片を、地面を、ありとあらゆるものを足場に跳ね回る。
 落ちてくる破片の影からナイフを投げて。
 それに、ピンを抜いた閃光手榴弾を幾つか混ぜる。)

ステーシー >  
「人の子はそれを大同小異と言うのだ」
「『出来るから』人を殺すことに変わりはあるまい?」

私の顔は今、嗤っているのだろうか。
それすらわからない。
アルテミドロスは人の夢を叶える神。
こうなったのも、私が歪んだ夢を見ているからに過ぎない。
善き夢も、悪しき夢も。私が見るからいけない。
しかし後悔はこの戦いを終わらせてくれたりはしない。

目の前で閃光手榴弾がはじけた。
眩い光に視覚が閉ざされる。
その隙に全身にナイフが刺さった。
しかし既に体は最後の攻撃に向かって動いている。

背骨を含む全身27箇所の関節の回転を連結加速させ、自身の300パーセントの斬撃を放つ。

「白刃一掃」

神の刃は放たれた。
どうなったのか、閃光手榴弾で一時的に潰えた眼ではわからない。

柊 真白 >  
そうだ、私は出来るから人を殺す。

(放たれる閃光から目を守る。
 動きは止まるが、こちらまで視界を潰されては意味が無い。)

――けど。

(光が収まれば彼女を見る。
 今まさに攻撃を放たんとする彼女。
 それを見ても尚、怯みはしない。)

私は人を殺すことを楽しいと思ったことは、一度も無い。

(駆ける。
 地面を蹴り、落ちる破片を蹴り。
 刀を、鞘を捨てて、彼女までの最短距離を駆け抜ける。
 斬撃を避けきれず左腕を掠め、それだけで左腕がボロボロになった。
 それでもまだ、身体は動く。
 黒い彼女の左腕へ右手を伸ばす。
 掴めるならば捻り上げる。
 掴めないならそのまま彼女へ体当たりを。)

ステーシー >  
「!?」

彼女の動きは、速い。
左腕を捻り上げられ、そのまま崩れた壁が散乱していく地面に叩きつけられた。

その衝撃で黒刀を取り落とす。

神化が解除され、黒い幾何学模様も色が抜け落ちるように収まり、蒼黒の髪に戻った私は呻くように呟いた。

「ああ……今の私の言動、殺されても仕方ないわ…」

神の傀儡。いや、生贄。
腕を捻り上げられて身動き一つ取れない。
未だ霞む視界の中で、観念したように目を瞑った。

醜悪なる神の姿は影も形もない。

柊 真白 >  
寝相が悪いにも程がある。

(彼女が元に戻った事を確認すれば手を離す。
 投げ捨てた刀を拾い、上に放り投げてから鞘も拾う。
 そうして落ちてきた刀を鞘で受ける。
 ぱちんと、綺麗に納まった。)

殺さない。
仕事じゃない殺しなんか、ごめんだ。

(そのまますたすたと歩き出す。
 まともじゃない戦闘を見て腰が抜けた男の前を素通りして。)

今日の仕事はあなたに預ける。
――おめでとう、あなたの勝ち。

(邪魔をしてきた彼女との戦闘中、男の事に構っている余裕が無くなった。
 結果的に男が逃げなかっただけで、自身にとっては仕事は失敗だ。
 時間はまだある、腕を治してから改めて仕事に向かっても問題ない。
 彼女に対する賞賛の言葉を最後に残し、路地の闇へと音も無く溶けていく。)

ご案内:「路地裏」から柊 真白さんが去りました。
ステーシー >  
「……逆さ中空納刀…」

それは、それで、すごい。

「あなた………一体…」

それを問う暇もなく、体に刺さったナイフを抜いてプラーナで賦活した。
相手は立ち去るようだ。
殺されそうになっていた男は、助かるらしい。

「………勝ち惜しみついでに言っておくわ」
「ごめんなさい」

剣客として、邪剣を振るう罪は常に重い。
去っていく彼女の背を見ていると、視界の端に黒刀が見えたのだった。

ご案内:「路地裏」からステーシーさんが去りました。