2017/09/06 のログ
ご案内:「路地裏」に神代 理央さんが現れました。
■神代 理央 > 薄暗い路地裏に金属の軋む音と小さな足音が一つ。
幼子が練り上げた粘土細工に無理矢理砲身と足を継ぎ足した様な異形を従えて、少年は路地裏を闊歩する。
周囲の建物から僅かに溢れる灯り以外には光源も無く、月明かりすら陰るようなこの場所で、今日も今日とて任務に励んでいた。
「…自衛の為とはいえ、コイツは見回りには向いていないな。此方が何処にいるか、足音で丸分かりじゃないか…」
異形が一歩前足を突き出す度に、周囲に響き渡る僅かな地響きと騒音。ぱらぱらと零れ落ちる埃に閉口しながらも、腰に下げたホルスターの重量を感じつつ、緊張感の無い表情で学園都市の暗部を散策していた。
ご案内:「路地裏」に刃々斬鈴音さんが現れました。
■神代 理央 > 尤も、最初から自身の異能を発動させていた訳ではない。
路地裏に入る前から風紀委員である自分に目をつけ、柄の悪い連中に散々絡まれた結果がこれだ。
拳銃を向けただけで逃げていった連中はまだ可愛げもあるし、別に追いかけ回す事はしなかったが、小柄な自分を与し易いと思った者。数に任せて蛮勇を奮った者達は、犬も食わない挽肉になって路地裏のそこかしこに飛び散っているだろう。
そんな阿呆な連中の相手に疲労と呆れが溜まった結果、こうやって異形を引き連れて路地裏を見回りしている次第―
「…喧嘩を売って良い相手の見極めがつかないようでは、どのみちこの街でも長くはなかっただろう。そう考えると、拳銃だけで逃げ出した連中は中々賢しいと見るべきやもしれんな」
勝てないと分かった相手に無駄な抵抗をしない。
そういった連中の方が寧ろ厄介であるなと考えながら、足元のガラス片を踏み砕いた。
■刃々斬鈴音 > 「うんうん、拳銃で撃たれたら痛いからね。
撃たれたら逃げるのは賢いよね!」
建物の陰から少年の言葉に同意するように頷きながら
ヒョイと姿を現したのは刀を腰にさげた制服姿の少女。
刀からは相変わらず血の匂いがする。
「元気だった?鈴音に会えなくてさみしくなかった?」
異形の塊にも臆すことなく男子生徒に近づいていく。
「風紀委員もこんな時間まで大変だねー。
夜はお給料いいの?」
■神代 理央 > 「…お前の場合、撃たれながらでも突っ込んで来るだろう。そういうのを馬鹿の一つ覚え…いや、猪突猛進と言うべきかな?」
全く気配を感じなかったので少し驚いたのは心の中に留めておく。
とはいえ、認識してしまえば彼女の刀から漂う血臭を否が応でも意識せざるを得ないだろう。
尤も、この街ではすっかり嗅ぎ慣れてしまった匂いだが―
「お陰様でピンピンしている。それと、天地がひっくり返ってもお前にあえなくて寂しいなんてことは無いから安心しろ」
知らぬ仲でも無し、彼女が近付いて来ても特に警戒を露わにすることは無い。
少年の下僕たる異形も、その足を止めて沈黙を守っているだろう。
「色々手当が着くことは着くが…余り意識した事は無いな。別に金が欲しくてやってる訳じゃないし、そもそも金に困って無いしな」
■刃々斬鈴音 > 「ちーちゃんで防げる奴なら大丈夫だもん!
そう、猪突猛進ってやつだよね、鈴音馬鹿じゃないし!」
【鈴音、意味はさほど変わらない】
金属的な響きを持つ刀のそんな言葉を気にした様子もなく。
胸を張る、意味は良く分かっていない。
「またまたー!そんな事言ってー!
大丈夫!鈴音そういうの分かっちゃうから!!」
そういうのってどういうのだろう?
少なくとも鈴音には分かってないと思う。
「そうだよね。はじめの頃からお金持ちっぽかったもんね。
恰好とか、動き方とか…あとは…。」
色々とボンボンポイントをあげている時に刀が口を挟んでくる。
【金か…依頼者よ。
依頼は遂行した、代金を払ってもらおうか。】
「そうそう、お金に困ってないなら早めに払ってよね!
異邦部活の幹部とかざっくんざくに襲いまくったんだから!」
■神代 理央 > 「…何だか、お前を見てると微笑ましい気分になってくるよ。よくもまあ其処までポジティブにいられるなと感心するべきなのか、アホの子なのだと憐れめば良いのか」
彼女と言葉を交わしていると、緊張感というものがどうにも保てない。一応は戦った相手なのだが。
苦笑い混じりの溜息を吐き出すと、内心で彼女の持つ刀に同情した。お守役はさぞ大変だろうなあ、と。
「…念の為に聞いておくが、お前には俺が会えなくて寂しかったと思っている様に見えるのか?もしそうなら、腕の良い眼科…いや、子供用の情緒教育の絵本でも用意するが」
彼女の発言に深い意味は無いと信じてはいるが、そんなに人恋しく見えるのなら疲労が溜まっているのかもしれない。
斜め上の心配事を抱えながら、ジト目で彼女に視線を送る。
「そうだな。仕事の内容に関しては十二分過ぎるほどに働いて貰った。各違反部活は疑心暗鬼に陥り、小競り合いよりも大きな抗争に向けて準備を進めている組織も幾つかある事は此方でも確認している。報酬は十分な額を用意……」
依頼した仕事と、達成内容には文句のつけようがない。
相応の謝礼を支払うと彼女に告げたが―
「……因みに、支払方法はどうして欲しいんだ?口座振込…いや、せめて電子貨幣での支払いなら手早く済ませられるんだが」
そういえば、彼女は口座やら電子貨幣の受け取りが出来るのだろうか、と小さく首を傾げる。
■刃々斬鈴音 > 「鈴音はアホじゃないから感心してればいいと思う!
まあ、こんな風になるのはちーちゃんのせいなんだけどね!」
【己は鈴音を開放しているだけだ。
己の責任ではない。】
本人はアホの子じゃないと言い張るがまあ、見た通りだ。
見た目通りのあれだ。
「ううん、見えないけど…
でもあれだよね!ツンデレって奴でしょ!」
…ドヤ顔でそんな風に返す。
そう、見えないのであればツンデレもクソもないのではないだろうか?
とにかく酷い言い草だった。
「鈴音は異邦人だから口座もそういうのもないよ。
今回のお金で偽造学生証作ってそれから色々準備する予定!」
つまり、キャッシュで無ければ受け取れない。
「キミが鈴音に口座とか作ってくれてもいいよ?
なんか足がつかないように工夫とかして!」
風紀委員に対してして良い話であるかどうか。
…いや、既に同じ穴の貉か。
■神代 理央 > 「…あー、そうだな。鈴音はアホじゃないな、うん。しかし、《ちーちゃん》とやらに心底同情するよ。大きな子供を抱えて大変だな。ホント」
棒読み気味な答えを返しつつ、喋る刀に心の底から憐憫の情を覚える。覚えたついでに口に出してしまったが。
「…ツンデレ?何だそれは。ツンドラか何かと間違えているのか?だが、見えていないのなら別に良い。危なく自分の精神状態に危機感を覚えるところだったぞ」
ツンドラの様に冷たい人間に見えているのだろうか、と更に首を傾げつつも取り敢えず納得しておく。
寂しがっているように見えていないならツンドラでも何でも構わない。
「…成る程な。風紀委員の前で堂々と偽造学生証を作る等と公言するのはどうかと思うが、事情は把握した。お前も、口座くらいは無いと不便だろうしな。良い機会だろう」
ふむ、と小さく頷きつつ、彼女の事情を聞いて報酬をどうしたものかと思いを馳せる。
正直、現金で持ち運ぶのは目立つし、何より重いので嫌なのだが。
「…何で俺がそこまでしてやらないといけないんだ。報酬は用意するが、別に俺は現金で渡しても構わない。口座が無くて困るのは、鈴音の方だろう?そこまで世話を焼くメリットが俺には無いな」
彼女に口座を用意するくらいは容易いが、はいわかりましたと頷いてやる訳にもいかない。
少し意地悪そうな笑みを浮かべながら、フフンと偉そうに言葉を告げた。
■刃々斬鈴音 > 「だーかーら!鈴音がこんななのはちーちゃんのせいなんだって!」
手をバタバタしながら言う。
まるっきり駄々をこねる子供の様だった。
【同情は不要、血腐レでいい。】
ちーちゃんと呼ばれた刀はそう返す。
血に濡れた刀身と違ってドライな反応。
「ツンドラ?」
【地下に永久凍土が広がる降水量の少ない地域のことである。
凍原(とうげん)、寒地荒原(かんちこうげん)と訳す。】
「それかな?それかも?でも、寂しかったらいつでも鈴音に言うんだよ!」
間違えたのかな?とか考えながらそんな風に言う。
「違法部活を襲えとか依頼してた風紀委員さんのまえだからね。
偽造学生証って結構高いんだよね。
正規の学生証を流用して作ったりするらしいから。」
あの板切れ一枚でこの街での人の命の値段より高い。
仕方のない事ではあるけど無情な感じがする。
「えー鈴音死にそうになるくらい頑張ったのに…。
あれだよ!あの鋼の両翼のリーダーの鋼ちゃん…龍宮鋼とほぼ相打ちまでいったんだよ。
えーと、えーとそれに現金持ち歩くのも大変でしょ!
落第街の方までそんなお金持ってきたら絶対盗られるよ!
それに何より鈴音の好感度が上がります!」
色々とメリットと現金でのデメリットを提示する。
…メリットはともかくデメリットは納得がいくものだろう。
■神代 理央 > 「はいはい。すーちゃんは賢い良い子だな。…血腐れか。中々に優れた妖刀の類と見た。ちーちゃん等と呼んで悪かったな」
血腐れの事はしっかりと聞いた名前で呼びつつ、彼女の名前は逆にちゃん付けする始末。
そろそろ子供のあしらい方が上手くなってきたんじゃないかと内心嘆息する。
「…俺が寂しいとお前に言ったとして、それでどうなる訳でもあるまい。余り他人の事を気にしても仕方がないだろう?」
どうやらツンドラのことでは無いらしい。ツンデレとはどういう意味なのか帰ったら調べてみるとしよう。
――等と思いつつ、僅かに肩を竦めて言葉を返した。
「まあ、別に一般生徒に手を出さなければ此方とて必要以上に口出しはしないがな。尤も、庇い立てするつもりもないから、偽造学生証で捕まったなんて阿呆な事はしてくれるなよ?」
彼女に比べると、命についての価値観で悩む事は無い。
命が平等であるなんて、持てる者の詭弁である事は自身が持てる者である自分が一番理解出来る事であるし。
「―…あの龍宮とか?良く生きていたな、お前…。というか、お前と龍宮が戦った現場はさぞ荒れただろうな…。しかし、成る程。
……プレゼンとしては今ひとつ魅力に欠けるが、良いだろう。お前の好感度とやらを上げる為に、口座を用意してやっても良いぞ」
龍宮鋼とは自身も戦闘経験がある。彼女とほぼ相打ちと言うのは、眼前の少女の高い戦闘能力を改めて認識せざるを得ないだろう。
となれば、口座の一つくらい作ってやって恩を売るのも悪くない。緩く笑みを浮かべると、彼女の為に口座を作る事を了承するだろう。