2017/10/18 のログ
■ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「あら、不適切と言われる筋合いはないわ。
この学園に"公式に"立ち入りが禁止されている場所は大してないはずよ。
それとも、この街が所謂"落第街"だってことを、
"公式な組織である風紀委員会のロボット"が認めるのかしら?」
普段ならこんなには喋らない。しかし今は状況が状況だ。
軍隊にいた頃と同じように、あくまで規律に従い、
忠実をもとめる兵のごとく戦車を問い詰める。
――それでも、さっきまで迷子としてこの辺をうろついていた身なのだが。
「大丈夫よ、これ以上痛い思いはしなくていいの。
今はきっと怖くて仕方がないでしょうけど、少しの間がんばって」
足元で恐怖する男。
しゃがんで彼と同じ高さに目線を落とせば、両手を握って魔術を使う。
落ち着きのない人間はそれだけで命を落とすのだ。
まずは彼を落ち着かせなければならない。
魔術を使い始めると黒い狐の耳と尻尾が姿を現し、
手を握られている男は恐怖で震えていたのが嘘であるかのように、
少しずつ落ち着きを取り戻してくる。
「手を下ろしたということは、自身の判断に過失があったと認めるのね?
脅すわけではないけれど、彼に手当てを受けさせるために必要な人員を寄こして」>
■HMT-15 > 「確かに公式の見解と事実とで矛盾が発生している事は
事実だ。」
確かに彼女の言う矛盾に間違いはない。
間違いがないゆえにロボットも矛盾を事実とするしかない。
「ボクが手を下ろしたのはその過失を回避するためだ。
その男の片足は警告を無視し実際に
ボクを蹴ったために反撃したのであって
過失ではない。」
そう語るロボットの胴体を見れば片足分の
靴の痕がついているだろう。勿論可能性でもう片方の
足を潰せば過失だっただろうが。
■ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「あら、あくまで自身の非を認めないのね。
あなたが彼に武力を行使したのは妨害行為に対する警告を無視したためと、
確かにそういったわね?
そして妨害に使用した足を機能不全にする選択をしてこうなったのでしょう?
だとしたらあなたの存在自体が過失よ。
なぜ重傷を負わせることのできる装備しか実装してないの?
人間を相手にする前提でこの場にいるのなら、非殺傷用の鎮圧装備を持ちなさい。
それとも、非公式だからこの区画の人間には何をしてもいいとか、
そうプログラムされているわけじゃないでしょうね?」
もしそうだとしたら、
今ここでこの機体に怒りをぶつけるには十分な理由となりえる。
「もし初めから殺傷兵器しか積んでいないのなら、
もしくは殺傷兵器に準ずる装備の使用のみを想定しているなら、
あなたの中に積んでいるその自立式のフレームと、
この島の風紀委員のありかたには重大な欠陥があるわ。
いずれにせよ、この人を手当てするための処置を行って」
今、この機体に怒りをぶつける理由は十二分にある。
しかし今は怪我人の手当てが優先だ。
目の前の機体を潰してしまっては、手当の手段が途絶える>
■HMT-15 > 「攻撃されたら反撃するのが普通ではないのか。
そもそもその男だって死んでいる訳ではない。」
このロボットにプログラムされたルールの欠陥として
非殺傷はその場の事柄としてしか考えられないこと。
それによって別の要因で死に至る事は考慮されていない。
「オマエの言うとおり風紀委員会は欠陥を備えた組織だ。
自らで決めた信念により自らの行動が制限されている。」
委員会にプログラムされているとはいえ
風紀委員会に狂信的なのではない。
ある程度の自由意志を持つなりに風紀委員会について
分析している。
しかしそこに所属している以上兵器として
逆らう理由はないし逆らうべきではない。
「その男に対する処罰は終了した。
だが任務は続行中、執行せねばならない。」
もう男に危害を加える必要はないが
手当を求む彼女を無視するようにして
歩みを進めようとする。
■ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「ええ、反撃することは意思を持つものすべてに与えられた当然の権利よ。
でもね、それが許されるのはあくまで自身を守る目的だけよ。
現にあなたは自分の任務遂行という目的を守る以上のことをしているわ。
これは十二分に過失よ」
この学園の多脚戦車はAIを積んでいて、意思を持っていると講義では習った。
しかし、この様子を見た限り、ずいぶんとおつむが弱いようだ。
理論的とは違う。理論とも呼べないほどに粗末な思考の上で動いている。
「もし、あなたがこのまま処置を行わないのなら、
そしてあなたが行った独自の基準による罰則が許されるのなら、
私はこの島に住まう市民として、自身の生活の安全を確保する為に、
あなたという危険因子を排除する選択をとるわ」
なぜわからないのか。それは愚問である。
ならば今目の前の存在が基準として採用している世界まで自身が次元を下ろすほかあるまい。
背中に背負ったギターケースを下ろし、ケガの痛みに苦しむ男に「少しだけ、頑張って」と声をかければケースからM2機関銃を取り出す。
「もう一度警告するわ。これが最後だからよく聞きなさい。
私はこの男を救命するためにあなたに救助依頼を要請した。
でもあなたは独自の解釈に基づいて処罰を実行したうえ、
救命処置を怠った。これは立派な過失よ。
この警告に対して適切な対応をとれないなら、
私は自身の安全のためにあなたを排する選択をとるわ」
そう言って、弾室に弾を込め、撃つ用意を整える>
■HMT-15 > 「任務を執行しない兵器に価値はない。」
いつもより一層冷たく抑揚のない合成音声で
それだけ言い放つ。
任務を請け負った彼は任務の達成が全て。
その中に保護という言葉が含まれていない限りは
何人もの怪我人を出そうが達成しようとするだろう。
「こちらからも警告する。
これ以上、任務の妨害をするのであれば
排除する。」
彼女とロボットでは考え方が全く違う
その違いが衝突する。
■ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「なら私からも言わせてもらうわ。
市民の生命を守れない、ただ規則に従うだけで、
優先順位も、安全性も、倫理観もない兵器に価値なんて無いわ。
これだけ言われて、任務遂行以上の理由を述べられないあなたは、
―――"兵器としても無能"よ」
命より優先される任務など、あってはいけない。
少なくとも、彼の手当てをするのに必要な手はずを整える行為が、
この戦車にとってそれほどの妨害になるというのなら、本当に無能だと思える。
むろん、ここで躊躇する必要などない。
引き金を引くのに抵抗などみじんもない。
50口径のフルメタルジャケット弾が、戦車の脚を目掛けて数発飛来するだろう>
■HMT-15 > 彼女が躊躇なく放った50口径弾は
ロボットの弱点めがけて飛来する。
しかしロボットもまたそれをただでくらうわけはなく
スライドで位置をズラし弱点への被弾を極力減らす。
勿論そうすれば胴体及び頭部へ被弾するが
12.7mm弾程度、装甲のあるそれらの部位への被弾は問題にはならない。
「ならこの無能を壊して見せろ。」
理由は不明だが先程とは違いノイズがかった声。
そうすれば前両足から対装甲カッターを出現させ
それを構えながら全力疾走、彼女へ向けて飛びかかる。
■ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「戦争のやり方を教えてあげるわ。感情のないあなたにはピッタリよ?
いつの時代がいいかしら。
おつむの弱いあなたにはWW1以前がお似合い?
でも残念だけれど、聖母は愚者に微笑まないの」
現代の戦車に対して12.7mmはあまりにも非力だ。
貫通するには運動エネルギーが足りない。
しかしそれは"1発の弾丸"での話だ。
狭い路地、こちらに向かうには空を飛ばない限り直進するほかない。
そして何よりも距離が近ければズレたとしても集弾率は黙ってても高くなる。
同じところに弾が当たり続ければどうなるかなど、おつむが弱くたって兵器ならわかるだろう。
「火薬に頼る時代なんてもうとっくに終わったわ。
でも力が勝敗を決する真理だけは昔から変わらない」
カッターの刃に弾を1発、次に異能で加速させた弾丸の雨が降り注ぐだろう。
速度は通常の1.5倍、エネルギーは速度の二乗に比例する。
つまり2倍以上のエネルギーを持った弾だ。
いくら戦車と言えど、装甲を貫くには十二分だろう。
機関銃を支えて撃つその様は、固定砲台よりもはるかに安定している>
■HMT-15 > 「!」
カッターで両断すべく飛びかかるも
それがアダとなり異能で強化された50口径弾を
雨のように浴びてしまう結果となる。
銃弾というには行き過ぎた威力によって
はたき落とされるような形になり地面に叩きつけられる。
しかしすぐに復帰し立ち直る。
「最新素材で構成される複合装甲は
120mm弾の直撃にも耐えうる。砲弾未満の
攻撃を増幅した所で決定打にはならない。」
ただ異能という代物で強化された弾丸をモロに受け
主装甲も全くの無傷というわけではない。
「・・・。」
また突然にしてロボットが前両足のカッターをしまい
その攻撃動作を停止する。
駆動音は消えていないためオフラインに
なっていないのだけは確かだ。
無論この隙に弾を叩きこむも叩きこまないも自由。
■ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「120mm以上の"砲"なら抜けるの?それそれは良いことを聞いたわ。
ならそれに準ずるエネルギーがあれば面積に反比例して衝撃は大きくなるから、12.7mmでも抜けるわ」
大口径の弾を使う理由なんて簡単だ。
質量による運動量を稼ぐためと、弾の直進性を上げるため。
後者の理由た要らない今、必要なのは力だ。
撃てば当たる、ならば抜けるまで加速させればいい。
「あら、そこで止まるのはどうしてかしら。
任務に忠実な兵器が、一度排すると決めた相手を目の前に動きを止めるなんて、それこそ無能もいいところよ」
無論、遠慮などしない。聖母は愚者に微笑まない。
引き金を絞る動作にためらいなどない。
打ち出される弾は、先の被弾でぼこぼこに傷ついた場所に命中するだろう。
今私は軍人として、相手が採用した基準のもと動いている。
この機を逃すわけなどない>
■HMT-15 > 「タイムアップだ、任務は終わった。」
彼は飛び来る銃弾に抵抗はしない。
ただ受け続ける。それは装甲を傷つけ少しずつへこませてゆく。
それどころか空の彼方から聞こえてくる飛来音。
それは航空機から投下されるMOPと呼ばれる爆弾。
それはロボットの直上から襲いかかり辺りを爆炎に包む。
煙が晴れれば装甲のあちこちが剥がれシャーシそのものが
露出したロボットが現れる。
頭部の装甲の3分の1が剥がれ赤く発光する
カメラパーツを覗かせる。
また続けて彼方からもう1発の飛来音、同型の爆弾だろう。
ご案内:「路地裏」からラウラ・ニューリッキ・ユーティライネンさんが去りました。
■HMT-15 > 続けて爆弾が着弾。
「行動続行・・・不能・・・。」
原型こそ保っているもののあちこちの装甲が吹き飛び
もはや油圧機構を動かすだけのパワーもない。
消えゆくカメラの光は何を思っているのだろうか。
間もなく彼はその機能を停止する。
『目標無力化。』
ロボットを強制停止させたのは
他の誰でもない風紀委員会。
暴走したロボットを止めるためという名目で
間もなく多数の隊員がやってくる。
任務を達成しないロボットは必要とされない。
ご案内:「路地裏」からHMT-15さんが去りました。