2017/10/24 のログ
ご案内:「路地裏」に近衛 昴さんが現れました。
■近衛 昴 > 目を覚ましたのは違法なバーの個室、割れるように痛む二日酔いの痛みに悩まされながら目覚めると身に着けていたはずの仮面とパーカーは別の場所にあり、体にかけられていた自身のパーカーと誰かのストール。
取引相手を待っていたが現れず、初めて会った男と飲んだまでは覚えているがその先は何があったのか不鮮明にしか覚えておらず、場所が場所だけに何かされた形跡も調べたがなにもなかった。
とりあえずこの状態では相手を探すのも難しい、とりあえず自室に戻ろうと目立たぬよう裏路地を縫うように移動して帰路に着こうとするも、頭痛と倦怠感にまだ半分も来ていなくて。
■近衛 昴 > おぼつかない足取りで路地を進んでいくも、遥か頭上のビルとビルの間から差し込む太陽の光がいつもよりも眩しく感じ、なんとなく影の中を進むほうが落ち着く感じがするが不意に襲ってくる不快感。
「う、気持ち悪…どこかに…あっ、あった」
目の前に自販機を見つければ駆け寄り、購入した冷たい冷水が満たされたボトルを首元から頬、額へと押し付けると肌を冷やす冷たさが心地よく、喉を上下させながら水に口をつけると不快感がだんだんと引いてゆく。
一休みしようとフェンスに背中を預けながら日陰に座り込んで。
ご案内:「路地裏」に陽太さんが現れました。
■陽太 > 路地裏にろくな思い出は無い。
「ここはあぶないから...。
はやくかえらなくちゃ」
しかし金集めのために訪れた落第街から
スラムへ帰る道には路地裏を通り抜けた方が早い。
...それでも嫌なものは嫌なので、足早に。
ちょっと眉間にしわを寄せながら走っていると、
前方にしゃがみこむ人影を見つけた。
見ると、こんな路地裏に似つかわしくない女性だ。
...気分でも悪いのだろうか?
「だ、だいじょうぶ?!」
急いで駆け寄ると、心配そうにしゃがみこんで
闇色の瞳で相手の顔を覗きこもうか。
■近衛 昴 > 「空が高い…」
いつもよりも高く感じる空にビルの谷間に落ちてしまったような錯覚を覚えながら立ち上がることもできず、ただぼんやりと空を眺めて時折路地に流れ込む風に心地よさを感じながら時間だけが過ぎてゆく。
不意にかけられた声のほうを向くとサイズの合わない痛んだ衣服に身を包んだ少年が心配そうな顔でこちらを見ていて、外見からスラムの子供とおもいながらも近くで見れば顔立ちは整っているように思え、不安げな顔をされてしまうとどうにも心が痛んでしまう。
「ちょっと気分が悪かっただけだから…大丈夫、大丈夫だからそんな顔しないで、ね」
精一杯の笑顔で答えて見せるも、実際のところまた動き出すには、きつい状態なのは変わりない。
■陽太 > 「そう?へいき?むりしてない?」
不安げに何度も尋ねる。
どうも見覚えのある姿が何度も彼女に重なる。
同じぐらいの年頃だからだろうか?
「こんなところにいたら、あぶないよ!
...えっと、ほら!食べる?」
何とか彼女を助けようと、
ぶかぶかの衣服の中から食べようと思っていた
瑞々しい果実を取り出して。
運良く道端の露店から手に入れた、所謂盗品なのだが。
■近衛 昴 > 何度も心配そうに声をかけてくる少年に初対面のはずなのに何故こんなに心配してくれるのだろうと不思議に思い、危険だという言葉にはそうだねと頷くのはこんな状態でこんな場所にいればどこかに連れ込まれても文句は言えない。
なんとか立ち上がろうとすると目の前に差し出された瑞々しい果実に彼の顔と交互に見てしまい、初めはキョトンとしてしまうも優しい笑顔を浮かべてしまうのは昔の優しかった姉と被って見えてしまったからかもしれない。
「えっ、これ…私にくれるの?ふふ、これはキミの大切なものでしょ。キミが食べな、でも、ありがと。」
彼が果実を掴む手を両手で包み込みながら彼へとゆっくりと戻し、立ち上がると隣の自販機に硬貨を入れ始めて飲み物のランプが点灯すると背後から彼を抱くように持ち上げて飲み物を選ばせようと。
少女の行動は彼の目にどう映るのだろう。
「優しいんだね、キミは。お姉ちゃんがジュース買ってあげるから、ほら、好きなの選んで」
■陽太 > 「.....うん、わかった」
思わず、素直に頷く。
完全に重なったからだ。
自分のなによりも大切で、俗に言う最愛の存在が。
____『はいはいありがと』
____『でもこれは陽太のものだしなぁ。
ちゃんと自分で大切にしときなさーい』
思わず、息をこくりと飲み干す。
たちまち目に涙の膜が張るが、慌てて拭って。
しかし、相手がジュースを買ってやろうと自分を抱き上げると
我に返った陽太はぶんぶんと横に首を振っていらない、と拒絶した。
「い、いらない!のど、かわいてないから!」
■近衛 昴 > 「そう?なら、喉が渇いたときに飲むように、ね」
拒絶の反応に暫し迷うも、なら乾いたときのためにと子供ならどんな飲み物いいのかと考えを巡らせ、オレンジジュースを選択。
ボトルを取り出して手渡そうとすると闇色の瞳が潤んでいるのに気づき、少年相手なのに泣かせてしまったのではないかと慌てふためくだろうか。
「えっ?、嫌だった?それとも痛かった?ごめんね、だから、ね、泣かないで」
オロオロとしながら目にかかったざんばらの髪をかきかげて表情を確かめようとし、どうしたらいいのかと考えるもいい考えは浮かばない。
いくら科学に強くても子供の接し方まで強いわけでなく、こういうときはお菓子とかあげたらいいのかと思うと思ってから持っていないことを思い出して頭を抱えて
■陽太 > 「いらない、だいじょうぶ。いらない」
尚も首を振りながら頑なに拒絶する。
その目に浮かぶのは焦りだけ。
『身の丈に合わないものはもらってはいけない』。
それだけで、陽太は硬貨1枚で買えるジュースを受け取らない。
「...うぅ~...っ、ひく、うぁぁ.....」
心配そうな声をかけられると、
我慢していた涙が決壊するように溢れ出す。
声を出すまいと嗚咽を漏らすも、涙が全てを流してゆく。
意地も、なにもかも。
「...ねぇちゃぁぁん.....」
そして耐え切れず、うわごとのようにその名を呼びながら
わんわんと泣きじゃくる。
■近衛 昴 > 本格的に泣き出してしまった少年にますますどうすることもできず、ただただ抱きしめながら胸に顔を蹲せて頭を優しく撫でてあやそうとし、一向に泣き止まない彼にオロオロしていると路地の向こうに人影のようなものが見えた。
「ねぇ、大丈夫?泣かないで、お姉ちゃんならいるから、どこにも行かないから、ね…このままじゃ、どうしよう」
こんな路地でも声を上げていれば注目を浴びてしまうのは当然で、子供に制服の少女、目を付けられてしまえば面倒ごとはさせられないだろう。
辺りを見回すと目に入ったのはビルの裏口、泣きじゃくる少年を強引に抱きかかえると裏口へと足早に駆け込んで。
駆け込んだビルが何なのかもろくに確認せず、駆け込んだ先は…
■陽太 > 必死に宥めようとする少女の胸に抱かれながら、
陽太は子供らしく泣きじゃくりながらも、
...異様にしか聞こえない言葉を吐き出す。
「うそつき...!うそつき、うそつき、うそつきぃ...!
おれを置いていったくせに...!ひとりぼっちにしたくせに...!
...っ、うぁ、ごめんなさい...ごめんなさい...ねぇちゃん...。
ねぇちゃんの未来、ぜんぶうばってごめんなさい...っ!
ゆるさないで...ごめんなさい...ごめんなさい」
少女が自分を抱きかかえて進み出している時も、
そう脈略の無い言葉を呟きながら虚ろな瞳から涙を流す。
■近衛 昴 > 少年を抱きかかえて走る間胸の中から聞こえてくるのは私怨、謝罪の入り混じった言葉ばかり。
そんな言葉が自分を捨てた姉を恨む姿、不完全な力に落胆する父親に謝罪する姿と重なり合って強く抱きしめながら、駆け込んだのは居抜きしたのか物がそのままの雑居ビルの一室に駆け込んでゆくか。
窓から下の路地を確認すれば柄の悪い男が数人先ほど落としてきてしまった飲み物のボトルを拾い上げながら当たりを見回しており、少年を抱きしめながら息を潜めてぶり返してしまった不快感に呼吸を乱して。
「はぁ、はぁ、うッ、また…もう大丈夫だから。私は一緒にいるよ。だから、ね、安心して。いいの、いいから」
窓の下の壁に背を預けながら抱きしめたまま彼が落ち着くまで何度も頭を撫でようとし、抱きしめた痩せた華奢な体が酷く脆く壊れてしまいそうな錯覚に体温を感じさせるように抱きしめようと
■陽太 > 抱きしめられる感触に思い出す。
優しくも力強い声に思い出す。
陽太の脳裏に茶髪を結い上げた少女の後ろ姿が浮かび、
それと同時にようやく我に返った。
「あ、う、ご、ごめんなさい...」
気分の悪そうな姿に、陽太は青ざめる。
相手の背中に腕を回し、気遣うように擦りながら。
■近衛 昴 > 落ち着いてきたのかようやく泣き止んでくれるとホッと息をついてしまうも、気が緩んだのか蘇ってくる不快感は無理に動いたせいもあって悪化していて。
青ざめさながらも新鮮な空気を吸おうと首元のボタンとリボンを緩めて深呼吸すると多少楽になり、さっきまで慰めていた自分が少年に背中を擦られて介抱されるという立場の逆転に苦笑して。
互いに抱き合うような体勢だというのに浮かぶのは弟が居たらこんな感じなのだろうかと思ってしまい、そういえば名前を聞いていなかったことを思い出して抱きしめた少年の顔を覗き込もうと
「ありがと、だいぶ楽になったよ。ねえ、そういえば名前聞いてなったよね、私は昴、キミは?」
■陽太 > 「えっと、陽太っ!
よろしく、すばる」
名前を聞かれれば、泣き腫らした目で笑って答える。
似つかわしくない名前かもしれないが、陽太自身は自分の名前が案外好きで。
そして少し首を傾げながら、気になっていたことを尋ねる。
「そういえばすばるは、なんであそこにいたんだ?
らくだいがいとか、スラムとかに住んでそうじゃないのに」
彼らよりずっと清潔そうで、ちゃんとした身なりだ。
そんな彼女が何故あんな場所にいたのだろう。
■近衛 昴 > 「陽太、か、こちらこそ、よろしくね。」
泣きはらした顔に一瞬心配そうな顔を浮かべてしまうもようやく笑ってくれれば杞憂に終わり、問いかけには至極疑問に思うのは当然だと自分自身でも思うも正直答えにくいのもがあり、子供にどこまで話したものかと考えて
「えっと、用事があってこっちに来てたんだけど…これから家に帰るところだったんだけど、気分が悪くなっちゃってね。そしたら陽太が助けてくれたの」
聞き返すように彼はどうしていたのかを聞くも、それよりも疑問に抱いているのは先ほど泣いているときに口にしていたおねえちゃんの存在。聞いてはいけないことなのかもしれないと考えてしまい、また彼を傷つけてしまうかもしれないと中々口に出せずにいて
■陽太 > 「ようじ...?このへんに?
........よくわかんないけど、ほんとうにあぶないから気をつけて」
陽太もまた、路地裏に引き摺り込まれる若い女や、
首を手折られて食べ物を奪われる裕福そうな人間などを
見てきたため、静かにそう忠告する。
ちなみに、自分はただ家に帰っていただけだ。
「.....すばる」
自分の姉について聞きたそうな彼女の姿を見て、
陽太は迷ったが、覚悟を決めて問うた。
「すばるはさ、かぞくっている?」
■近衛 昴 > 「ん~と、もう少し離れたところでだったんだけどね。うん、わかった、気をつけるよ。陽太は優しいね」
この路地が危険なのは重々承知している、奥へと引き込まれれば様々な意味で何も失わずには無事には帰れないだろうことを。
褒めるように頭を撫でながら少女の身を感じる小さな騎士に微笑ましく顔を緩めていると不意に襲う問い、その言葉に憤りと悲しみが入り混じった感情がふつふつと沸いて来てギュッと抱きしめる腕に力が篭ってしまうだろうか。
暫く話すかどうか苦慮するも彼に近いものを感じたのか、重い口を開いて家族だったものを話して行くか。
「…それは、いたよ。もう随分と前だけど、ね。パパとお姉ちゃんがいたんだけど、パパは事故で死んじゃってね。お姉ちゃん、お姉ちゃんは、私おいていなくなっちゃった」
先ほどまで姉を呼びながら泣きじゃくってた彼の姿が幼い自分と重なり、いつもであれば姉への憤りがわくはずなのになぜか涙が頬を伝って落ちてしまい、少年に苦笑しながらも自分でも理解できないことに次々に涙が落ちて
■陽太 > 「やくそくだからな!
すばるはきれいなんだから、変なやつにさらわれちゃいそうだ」
小生意気なことを言いながら、偉そうに腕組みをする陽太。
色々素直な子供らしい性格は相変わらずで。
...だが、問いの後に強くなった腕の力にはただただ戸惑ったように彼女を仰ぎ見る。
しかし、落ちてきた涙にその意味を理解して。
「...ごめん。つらいこときいた」
手を伸ばして彼女の頬を濡らす涙を、
小さな手で拭ってやりながらそう謝る。
彼女もまた、家族という存在を愛し悩み絶望し、苦しんだ人なのだと。
「おれも、父さんと母さんと...あとねぇちゃんがいたんだ。
みんなやさしくて、にぎやかで、すごくあったかかった」
そこで、陽太は言葉を詰まらせた。
虚ろな瞳の闇が更に濃くなっていく。
「...でも、みんなしんじゃったんだ。
母さんと父さんは、色々あってじこみたいなものだったけど
ねぇちゃんは...」
■近衛 昴 > 「あはは、遇ってそうそうお世辞なんて生意気だぞ」
小さいのになかなか可愛いことをいってくれる少年の頭に顎を乗せてぐりぐりと悪戯してやろうと。
涙を拭う華奢な小さな手の暖かさに心地よさを感じながらも、怒りの底にまだ自分に家族を愛し悲しむ感情が残っていたことに自分の事ながら戸惑いを隠せない。
少年が語る彼の家族とその境遇に自分とよく似ていたからこそ、あの場で彼と別れて帰路に着くこともできたのにしなかったのは偶然ではなく、互いに惹かれるものがあったからなんだと感じてしまうか。
言葉を詰まらせ姉の話になると更に少年の抱える闇が大きくなっていくような気がして、先ほどの言葉から姉を失った事柄に少年が起因しているとは薄々感じていたのか抱きしめ直しながら辛ければそれ以上は口にしなくてもいいと制止しようと
「いい、いいから。辛かったら、無理に話さなくていいから…そんなに自分を責めないで」
■陽太 > 「ほ、ほんとうにきれいなんだって!」
顎で頭をぐりぐりされながらも
あわあわと腕を動かしながら必死に信じてもらおうと。
...陽太は、目の前の少女と似通った点を自分に感じながらも
やっぱり決定的な相違点を感じて目を伏せる。
相手の制止は、はっきり言ってしまえば遅かった。
陽太はそのあどけない顔を、無に塗り替えて呟いた。
「おれが、殺したんだよ」
その声はどこまでも虚ろで、淡々としていて、
それなのに悲哀と憎悪に満ちていた。
そのまま陽太は、
一変してどろりとした視線で相手を見上げる。
「母ちゃんと父ちゃんがしんじゃって、
ねぇちゃんはそれでもおれといっしょにいてくれたんだ。
だいすきな家族だからって。
おれも、ねぇちゃんのことはだいすきだった」
勿論、今もだが。
陽太は無意識に理解していた。
昔の姉への愛とは、今は明らかに異質なものになっていると。
「...そのだいすきって言ってたねぇちゃんをさ、
おれはころしちゃったんだ。絶対まもるっていってたのにだよ?
ははッ、へんなの...!」
けたけたと上げる笑い声は、乾いていた。
____ゆらゆらと、陽太の足元で不明な揺れ方をする影。
■近衛 昴 > あどけない子供かと思いきや男の子らしい一面にこんな弟が居たらよかったのにと考えてしまって。
少年が姉を守りきれなかった、または変わりに犠牲になったのではないかと予想はしていたが、実際はそれ以上。
姉の命を奪った要因が彼自身だったことに言葉を失ってしまうも、腕の中の少年が放つ雰囲気が明らかに変化してゆき、暗く深い想念に言葉が色を失っていくように言葉に明るさは失われ、見上げた少年の瞳に一抹の恐怖心を覚えてしまうだろうか。
「…陽、太?キミは…そう、だったんだ」
絶望に染められた乾いた言葉から彼が姉を家族として愛してだけでなく、家族以上の感情を姉に抱いていた、そんな姉を手にかけてしまったことへの後悔と懺悔に胸が締め付けられるような感覚に襲われて出てしまった一言。
姉を失い恨みと怒りに支配された少女だからこそ出た一言、同じ過ちを見過ごせなかったから、しかしその一言が意味に彼はどう反応するか。
「陽太、私がお姉ちゃんになってあげる、から…ちゃんと陽太のこと離さないから…」
影のほうが多く支配する空間、その影の中でも笑い声と共に揺らぐ彼の影だけ異様で、何が起きているのかも理解できずただ抱きしめるだけだろうか
■陽太 > けたけたと笑いながら、
陽太は少女をどこか憐れむように見て。
「...おれは、ねぇちゃんをころしたからってのもあるんだけど
一番きらいだったのは、なにもできなかった自分なんだ。
...すばるもそうなんじゃないかなぁ」
唇に歪な笑みを刻みながら、陽太は嗤う。
陰がゆっくりと広がり、ゆらゆらと立ち上る。
「.....すばるは、多分おねえちゃんがきらいだって
思ってるだろうけど、なんだかんだだいすきなままだよ」
もう過ぎたこととは言え、とても幸せだったのだから。
こうしてドーム状に広がった陰が、確実に相手を呑み込もうと垂れ下がろうとした瞬間。
「.......え」
相手の言葉に、ぴたりと停止した。
...ゆらゆらと揺れたままの陰を背に、茫然とする陽太。
しかし、すぐにまた笑い出して。
「...はははッ、はは、あはははははッッ!!
...無理だよ、すばるはねぇちゃんにはなれない」
敵意を一瞬剥き出しにした陽太だったが、
しかし思うところがあったのか黙り込んだ。
先程は闇一色だった瞳が、明らかに揺れている。
戸惑いと、迷いと、何故か嬉しさに。
■近衛 昴 > 憐れむような瞳に全てを見透かされているような感覚を覚え、過去の自分が無力で何もできなかった子供だったことを指摘されてしまうとスルリと腕の中から抜け出す彼を掴み損ねてしまい、立ち上がった彼が飲み込まんと広がる影を背後に立ちはだかっても少女の瞳に恐れはなくて。
「…陽太の言うとおりだよ。私は無力だった、何もできなかった。…そうかもしれない。きっと私は嫉妬してるだけなんだと思う。お姉ちゃんを奪われたことに。」
迫る影の塊が新たに作りだした影に体は覆われ、頭上の影が降ってくればあっというまに闇に飲まれてしまうだろう、だが怯えも恐れもない。
少女の言葉に一瞬ではあるが彼に躊躇いの色が見えた、そして明らかな敵意に肌がざわつくも不思議と恐いと感じない。
不意に口にし出したのは少女自身の異能、誰かのなにかを詰め込むだけの器であるだけの能力、中身がなければなにも意味を成さない、そして少女自身も気づくのは内包できるのは何も力だけではないことに。
「陽太、おいで…お姉ちゃんが全部受け止めてあげるから…」
初めてかもしれない奪うのではなく自ら受け入れようとするのは。両手を少年へと広げて無防備なまま優しく招いて。
たとえ彼が拒絶してその闇に飲まれようと構わないと。器として彼の全てを受け止めて受け入れようと
■陽太 > 怯む様子の無い相手に眉を潜めた陽太だったが、
しかし全てを受け入れるつもりである彼女に目を見開いて。
「...すばるって、ばかなの?」
半ば呆れながら、そう呟く。
しかし制御できないはずの影はするするとあるべき場所へ
戻り、陽太の笑顔も完全に消えてしまった。
無ですらない。
それは子供らしい、涙を堪える表情だった。
「ねぇちゃん」
確かに、陽太の愛する姉は後も先も彼女だ。
だけど、それでも。
...陽太は子供らしく、我儘を思いついてしまった。
「ねぇちゃん...っ」
もうどうしようもなかった。
陽太はそう目の前の存在にはっきりそう呼びかけながら、
彼女が広げた両腕の中に倒れ込むように抱きついた。
もうひとりだけ、ねぇちゃんがほしい。
家族がほしい。
■近衛 昴 > 「…かもしれないね。よく言われる」
呆れられながらも苦笑するのは本当のことだから。
覆いつくさんばかりに広がっていた影が元の影へと戻ってゆき、涙を浮かべて胸の中へと飛び込んでくる少年を確かに両手で抱きしめながら受け止め、まるで本物の姉のように甘えるように泣きじゃくる様子に少女も弟のように優しく接しようと。
彼が望めば受け入れよう、姉としても家族としても、血が繋がらなくとも互いの傷を舐め合い、空いた隙間を埋めあおうとも。
もう暫くこのまま抱きとめたままでいよう、今は時間を忘れて
■陽太 > 「...へへ。...じつはおれもなんだよね」
何故かとても嬉しそうにへらりと微笑んで。
姉を忘れたわけではない。その歪んだ愛は変わらない。
これからも意味の無い贖罪は続いていくだろう。
...それでも、陽太は願ってしまった。一抹の幸せを。
陽太は暫し時間を忘れ、優しい姉の胸の中で
もう1人の姉に謝りながらも笑みを浮かべて涙を流しただろう。
ご案内:「路地裏」から近衛 昴さんが去りました。
ご案内:「路地裏」から陽太さんが去りました。