2018/05/19 のログ
ご案内:「路地裏」にイチゴウさんが現れました。
イチゴウ > 路地を照らすのは切れかけたオンボロの街頭、
そして何を作っているかもわからない
コンクリート製の怪しい工場から漏れる蒸気が路地裏を包み込む。
勿論、人通りなどあってないようなもので辛うじて通りかかる人影も
恐らくろくでもない奴らだろう。あるいはどこからか迷い込んだ不運な者か。
しかしその路地では今日、たくさんの人間が横たわっている。
服装はバラバラで私服然とした者も居れば制服を着用している者もおり
彼らのいくつかの手元には鈍器や銃器などの武器。
アスファルトを彩る赤黒い液体と蠅を寄せ付ける腐臭が
彼らに一体何があったのかを自ずと理解させるだろう。

その中で響いているのは金属加工場で耳にするような
冷たく煩い回転音。
腐臭と蒸気に潜んでいるのはややグレーのように彩られた
四足の自律ロボット。
奇妙な愛嬌を含ませる顔を持ったそのロボットは
横たわる幾多の屍に近づいては前足に装備された電子鋸で
一体ずつ細かく規則的に切断しその肉片を眩く
発光させるとその場から直ちに消失させる。

「対象の40%を除去完了。今夜の焼却炉はとても忙しそうだ。」

違反部活と言った奴らは実に身勝手だ。
好きなだけドンパチした上でそのゴミを放置し帰っていく
いわば部屋を片付けられない子供だろう。
その後始末は公式の運営機関が行わなければならない。
本来、こういった作業は生活委員会の管轄であるが
路地裏と言う場所の危険性もあり
さらに機械という理由で都合が良かったのだろう。

イチゴウ > 横たわる彼らに共通点は無い。
種族は人間から獣人、魔術師さらには吸血種まで。
無能力者のみならず残留反応から魔術や異能を
行使する者も居たらしい。
身分も学生から不法入島者、教師や研究者さえいる。
永遠に意識を閉ざしてから初めて平穏に空間を共にする事になったのは
とても皮肉な事であろう。

「そうか、キミ達が動くことはもはや無いのか。」

不意にロボットは機械的な声質で独り言を漏らすと
電子鋸を止めて二つのカメラレンズで転がる数々の屍を見つめる。
彼らは既に死んでいる。もう全てが終わっているのだ。
対照的にロボットは死ぬことは無い。例え木っ端みじんに破壊されたとしても
人工知能は惑星規模に張り巡らされたネットワークへと流れ
いずれ新しいシャーシに辿り着き行動を再開するだろう。
それゆえロボットにとって死は結果ではなく過程でしかない。