2018/08/20 のログ
ご案内:「路地裏」に神代理央さんが現れました。
神代理央 > 落第街の裏の裏。二級学生も違反部活も手を出さない――というより、出す価値の無い――落第街とスラムの境目。
落第街程欲望の熱気が渦巻いている訳でも無ければ、スラムの様に生存本能で満ちている訳でも無い。
そんな半端な場所。裏社会の黄昏であり、正しい意味で怠惰と堕落が支配する場所。
そんな生気も熱気も無いうら寂しい通りを、異形を引き連れて散策する少年の姿があった。

「…ゾンビ共も、流石に人がいない場所には現れぬか。スラムまで足を伸ばせば多少は痕跡も掴めるやも知れぬが…」

今夜は、特に任務があるわけでもない。
本来であれば、家で休息を取るなり、趣味を散策する為に気分転換なりをするべきなのだろう。
しかし、迷宮の様な落第街やスラムにおいて、地の利を得る為に自分の足で現場を歩く、という事は非常に大事だと考えた。
どのみち、休暇に楽しむ様な趣味も無い。ならば、少しでも情報を得るためにと訪れたまでは良かったのだが―

「…地図すら表示されない様ではな。一般学生が迷い込まぬ様に対策を強化する必要もあるだろう」

と偉そうに呟いたものの、平たく言えば迷子になっていた。

神代理央 > 帰還自体はナビゲーションに従って大通りを目指すだけなので、比較的容易い。そういう意味では、厳密には迷子では無いのだろう。
しかし、此の場所が今何処に繋がっているのかさっぱり解らない、という点では、立派な迷子であった。

「人の気配も無ければ、魔獣やゾンビが現れる訳でも無い。とはいえ、こういう場所の方が色々と物事を進めやすい輩も居るはずだが…」

廃墟どころか瓦礫一歩手前のビルを眺めつつ、その入口から中を覗き込む。
所々浮浪者が住み着いた様な生活の跡は見られるものの、それも随分前の痕跡。
貧しい者は人の集まるスラムへ流れ、チャンスを得た者は落第街の中心部へと流れたのだろう。
此処は、そのどちらにも当てはまらない連中が住む場所。その絶対数も、必然的に少ない様に見えた。

「倉庫街まで足を伸ばして……いや、そもそも倉庫街の場所も分からんな」

スラムか大通りへ向かうだけなら可能かも知れないが、落第街の目標地点へと移動するのは骨が折れるだろう。
取り敢えず、付近の地理を把握しながら偵察に留めるべきかと異形と共に人気のない通りを闊歩する。