2018/09/10 のログ
神代理央 > と、慣れぬ事をしたところで、憂鬱な気分が晴れる訳でも無い。
半分程灰になった煙草を放り投げ、靴で踏み潰した。

「…此方神代。任務終了、これより帰還する。……こういうのは、戦い慣れてる委員に任せるんだな」

『君も十分に戦い慣れているだろう?』という通信機からの声は黙殺。大体、召喚型の異能を持つ自分が切ったはったの最前線に慣れている訳が無い。
早く風紀の戦力が充実すれば良いのだが、と小さく溜息を吐き出して、本部への帰路を急いだ。

ご案内:「路地裏」から神代理央さんが去りました。
ご案内:「路地裏」にステーシーさんが現れました。
ステーシー >  
赤い屍人を切り伏せる。
返り血に気をつけるのは骨だけど、今はそんなことを言っている場合じゃない。

パンデミック。
ゾンビが爆発的感染により蔓延っている。
こちらも感染しないように、ひたすら斬り倒していく。

「……成仏してね」

斬り伏せて刀の血を拭い、ぱちんと鞘に納めると手を合わせる。
彼らだって夢があった。
一人一人に名前があり、未来があった。

その未来の残骸を切り伏せるごとに、心が痛んだ。
後で風紀委員会対策本部と生活委員会衛生班に連絡しなければ。

ステーシー >  
ふと、百鬼を思い出す。
あいつはパンデミックを見たらどうするのだろう。
下らないと切り伏せるのか、一瞥だけで済ませるのか。

蒼白き月を見上げる。
体温調節機能の高い自分にはあまり関係ないが、涼しい気候になったのは間違いない。

首斬り風牙との戦いが終わってからも何も終わらない。
この街には、混乱と狂気が蔓延っている。
生活委員会としても、元・怪異対策室三課としても。
まだできることはある。そんな気がしていた。

ステーシー >  
残っていたゾンビがこちらに走ってくる。

「私が今、持っている力がどんなものでも」

黒い刀と旋空、二刀を抜いて構える。
襲い掛かってくるゾンビたちを次々とすれ違い様に切り裂いて。

「この街を守るという理屈に変わりはないッ!!」

刀を鞘に納めると同時に、人をリビングデッドに変える業血が後方で吹き出した。

今はもういない先輩たちがそうだったように。
この街を蝕む闇があるのならば、この切っ先にて祓おう。

ステーシー >  
「…………」

死者を悼む気持ちと、帰ったら刀を念入りに検査・消毒するという思考が混ざり。
邪念かな、と顔を左右に振る。

アンデッドに成り果てればもう斬るしかない。
自分がそうならないために、二刀を清潔に保つしかない。

それはわかっているのだけれど。
目を瞑り、溜息をついた。

ご案内:「路地裏」にモルガーナさんが現れました。
モルガーナ >   
こんな雨の日と言うのは雨だれの音を聞きながらのんびりするに限る。
等と言ったのは何処の詩人だっただろうか。
確かこちらに来て読んだ本だったはずだ。
雨にぬれ、彩度を増した世界は美しいとそれは詠っていたはずだが

「こやつらはそうでもないのよな」

ぱんでみっくと呼称される生物群を前に呆れたように言葉を漏らす。
雨で濡れて見た目上の粘度が増したそれはお世辞にも艶やかとは言えない。

「……はぁ」

少し気が向いたからと言って裏路地に入り込んだりしなければよかった。
見た目があまりにも面白くないので無視して歩いていたらこれだ。
音を聞きつけたのか、それとも彼らなりの連絡方法があるのか
あれよあれよと数を増やし今や前も後ろもヒト型をした変異体に囲まれている。
此処まで頭数が揃うと見目麗しいならまだしも見た目まで面白味もないとなればため息の一つも零したくなるというもの。
苛立ち紛れに片手を振りかぶり平手打ちの要領で軽く手を振ると
まるで巨大な手に吹き飛ばされたかのように目前の数匹が血煙に変わり、
辛うじて形を残す残骸が壁に張り付き燃え上がった。

「加えて恐怖を知る知能もないときた。
 やれんな。」

頭数を揃えたところで勝てないと理解しているのかすら怪しい。
いっそのこと此処で黄色い声でもあげてみるべきだろうかと思う。
自分の容姿なら迷い込んだか弱い女が恐怖に竦んでいるとみられる可能性の方が格段に高い。
そう振舞えば正直に言って演じ切る自信もある。
なら何処か暇な誰かに掃除でも頼んだ方が自分としては楽に違いないのだが……

「……それまでこれらを凌ぐ言い訳を考えるのも面倒じゃの」

なにせ前後を囲まれているのだから助けが来るまで
逃げ回っていたという言い訳が使えない。
不気味に蠢く大群の中で和傘に滴る雨音を聞きつつ
困ったような面持ちで一つ呟いた。

ステーシー >  
轟音が響く。
またパンデミックの変異体か、とそちらの方へ走る。
蒼白い月はとうに雨雲に隠れていた。

白い髪の女性が、リビングデッドに囲まれている。
その現場を見た瞬間、全身の血が沸騰した。
今ならまだ間に合う。
彼女を助けなければ。

「そこを動くなッ!!」

とはいえ、女性に返り血を浴びせないためにちょっと特殊な処理をする必要がある。
旋空を抜き、鍔元をコツコツと鉄拵えの鞘で叩いた。

浄化の蒼炎が切っ先に宿る。
セイクリッドブラッド。
雨の中でも問題なく使える、全身を流れる力、プラーナの応用。

これで斬れば業血はその魔性を無くす。
消耗こそ激しいけど、人命には換えられない。

「…バントライン一刀流!! 猫撫で斬り!!」

袈裟斬りと逆袈裟を繰り返しながら駆ける、それだけの剣技。
だけど、今はこれが一番都合がいい。
蒼炎に斬り伏せられていくリビングデッドたち。

モルガーナ >   
さてどう切り抜けた物かと今にも此方に駆けだしてきそうな屍人を眺め、徐に傘を閉じる。
剛に物を言わせるにしてもこれはお気に入り。
出来る限りは壊したくない。
数分でも持ってくれればよいのだが。

「おや、これは幸運とでもいうべきかの」

濁った行進の合間に確かな足音をとらえ、そちらに目を向ける。
これは生者の気配。それもこの大群に向かってくる。
腕に覚えがあるか、それとも………

「ふむ」

雨音の合間を裂くように走る声にあっさりと従い
歩き出そうとした足をぴたりと止め、目を向け

「ほぅ」

駆け付けた小さな人影から湧く光に目を細める。
一見滅茶苦茶に見えながらも多数を一刀で切り伏せる事を想定した太刀筋は剣に覚えのある者の軌道を描いている。
死人を切り伏せる度に舞うように光を残し輝く剣は街の明かりが届かないこの場所にはよく映えた。

「……ぁ。きゃーー。」

悲鳴を上げるのを忘れていた。

ステーシー >  
雨の中を走る、斬る、走る。
女性を軽い跳躍で飛び越え、最短ルートで屍人を斬り伏せる。

距離を詰めてきたゾンビは回し蹴りで離し、その回転を生かしながら足元を切りつける。
バントライン一刀流、黒法師。

聞こえてきた悲鳴になんか気落ちしながら。

「……なーんか緊張感がないなぁ…っと!!」

最後の一体を斬り倒した。
血塗れの刀を軽く振る。
服にも返り血がついた。
セイクリッドブラッドで無害とはいえ、これは生活委員会に送って処分だ。

振り返って女性と向き合う。
雨で頬に張り付いた髪の行方を指先で気にしながら。

「大丈夫? 今のが最後だと信じたいわね」

刀を握ったまま、自分の体のあちこちを見る。
足元が多少、プラーナの使いすぎで透けている。
…仕方がない。プラーナはこの世界に存在するための力。
使えば使うだけこうなる。