2015/06/18 のログ
クロノス > 『次があるなら』と答えようと、それは声にならない。
目の前の彼と繋がる口から僅かに息を漏らすだけだ。

「ん……んん……。」

声も出せず、彼の舌を追い出そうとするも上手く行かず、
彼の舌に滑り込むように舌が絡まる。
身体の内側から『吸い出されていく』感覚。
閉じられたその瞳は薄く開き、
どこか遠くを見るように虚ろに蕩けて行く。

―――が、自分の内側にまで入って来ようとすれば
ピクリと体が跳ねるように動く。
自分に差し入れられていた舌を勢いよく噛むと、
彼を下から蹴り上げ、突き飛ばすように離れようとする。

「―――ッ!!!!」

再び手元に鎌を出しつつ、再び頭を抑えつつ彼を睨みつける。

「―――まったく、油断も隙もないですね、何をしようとしたんです?」

照山紅葉 > 唇の重なる感触
吸い上げていくのは朧気な記憶だ
彼女の■■を■■姿が、■■■■の姿が
■■■しようと努力す■■姿が、セピア色となって脳を過ぎ去っていく

それは、戻る事のない過去の記憶だ、それらが、記憶となって自身の意識に吸い込まれていく

「おっ……と……」

ソードオフの銃床を下に立てると、そこにド…と鈍い感触がした
金的をしようと伸びた足だろう、この状況で意志を働かせるとは
なんて女だ…
咄嗟に伸ばした銃床で衝撃を殺したとはいえ、人の足が急所に当たる

「………!」
次いでガリ…と自分の肉がえぐれる感触がした
舌が思い切り噛まれたのだ、鉄錆びのような味が口内に広がった

「ブッ……へへへ…何だろうなァ…いや…調整が難しくてよ…」
血痰のようなものを地面に吐き捨て、僅かに蹲る

「例えば…『初めて立ち上がる事を覚えた記憶』なんかを間違えて吸い取ろうとしちまったぜ…
 いやぁ…うっかりってのは誰にでもあるもんだ…そうだろ…へへへ」
口の中に沸いて出る血の味を飲み込みながら、くぐもった笑いを浮かべた
その記憶の重要な根幹、タブーには触れる事が出来ず、表層しか掬い取る事は出来なかった

「で、だ…どうだ?立てるか?」
とん、とショットガンを肩に担ぐようにして、まだよろよろと呻きながら立ち上がる
瞳で問いかけるのは、どこまで記憶を吸ったか?という質問だ
相手が記憶を奪われジゴクめいた表情をするのを、この男はそこそこ好む

クロノス > 自身も『ペッ』と血を吐き出すと、
口元を拭って彼に微笑む

「……ええ、お陰で気分は良くなりましたよ。」

何度か手を握り、感触を確かめる。
どうやら、あの黒いモノを操る力も、
生み出す力も無くなったらしい。
ついでに、折角蓄えた異能力が明らかに目減りしている。
僅かに顔を顰めるが、こればかりは仕方ない。
―――また『狩れ』ばいい。

「いきなりキスなんてサプライズプレゼントを
 してくれた御礼は、その蹴りだけで済ませてあげましょう。」

鎌をひゅんと消す。
これ以上彼と事を交える気はない。
―――彼は『被害者』で『悪人』ではない。

記憶を覗かれたのは正直気分が悪い、が、
ただ、それだけの事だ、どうやら、『変な所』まで覗かれてはないらしい。

ふぅーと息をついて、彼を睨みつける。

「『厳重注意』は終わりました、速く失せなさい。」

しっしっと手を振り、彼を追い払おうとする。

照山紅葉 > 「良い感触だったぜ…ご馳走様。」
唇のやや上を拭うように指をさする
あたかも余韻をあそんでいるかのようだ

自分はといえば、相手が生み出した新たな己の異能
それを根こそぎ頂いたのだ
能力が倍加している
ただ、単純に能力が二倍かというと、それは違う

どんよりした頭の中の淀みが増しているのを感じる
またもう少し、自分がヒトではなくなった感覚

蝕まれる
食いたい食いたい食いたい…目の前に肉があるだろう
引き裂いて蹂躙したい…白い肌に乱杭歯を立てたい

「グッ…ゴホッ………」
喉まで込みあがった何かを吐き出すように、鈍い咳をした
「いけねぇ、これ以上拗れたら面白くネェからな…ちょっと黙ってろ……」

脳内に住まうイマジナリーフレンドが、「神様」と呼ぶ不確定な脳内キャラクターが
責め苛み続ける、この女を嬲れと、今なら、それが出来ると

「厳重注意…ハッ…あァ…そうするぜェー…面倒臭ぇからなァ…」
だけど、今はその時じゃない…
猛禽類めいて伸ばした黒い暴食生命力を羽ばたかせると
ゆっくりと飛び上がる

「じゃァー…なァー……また会おうぜェー…」
独特な羽ばたく音と共に、飛び去っていこうとするだろう
左手の拘束も、もはや自分の一部のように扱える
指先にそれを集めると、ヘドロがハートマークを形作って、泡のように消える

クロノス > 「それ以上何か言ったら斬りますよ?」
彼が唇をなぞれば、彼女は口元を拭う。
別に初めてというわけではないが、
見ず知らずの、しかも男に唇を奪われるのは屈辱だ。

彼の様子を見れば首を傾げるが、それ以上深入りする気はない。

「―――くれぐれも、気をつけて帰宅してくださいね、監視番号262。」

『……ああ、あと、』と帽子の鍔を握り、顔を隠すように伏せる。
「―――手段はともかく助けてくれてありがとう。」

彼に一言そう呟いて、彼を見送った。

ご案内:「スラム」からクロノスさんが去りました。
ご案内:「スラム」から照山紅葉さんが去りました。
ご案内:「スラム」に朝倉千蔭さんが現れました。
朝倉千蔭 > ざり。
自分の足音が嫌に耳に残る。

朝倉千蔭 > 深夜のスラムにはもう少し人が居るかと思ったが、どうもそうでもないらしい。
当然といえば当然か、とも思った。……この場所は学園の法の手から半ば零れ落ちた地帯。
何が起きてもおかしくないなら、好きこのんで危険に身を晒す必要なんて無い。

ふ、と笑みを漏らした。
――では、こんな時間にここを歩いている自分は何なのだろうか、と。

ご案内:「スラム」にクロノスさんが現れました。
クロノス > 『多少なりとも消耗した以上、新しく力を蓄えなくては。』

そう考えながら獲物を探してスラムを、落第街を歩き回る、
そうして見つけたのはこの場に似つかわしくない少女の姿だった。

「監視番号188、こんな夜更けにこんな場所を歩いていると、危ない人に見つかってしまいますよ?」

そういう彼女の手には血のついた鎌が握られ、服には弾痕がある。
にっこりと笑って彼女に話しかけるその姿は、死神そのものだ。

朝倉千蔭 > 思考に耽っているさなか、声を掛けられた事に気がつく。
漫然と声の方へと視線を向けて――すぐに赤い瞳は見開かれる事になる。

「……ひっ」

小さな悲鳴。
血に濡れた鎌、見慣れない形に破れた服は異様と言ってもいい。
スラムにおいてはそれが正常なのかもしれないが。

――自分自身が『危険に身を晒す』可能性を忘れていた訳ではない。
しかし実際に事が起こると身体が硬直してしまうのも仕方ない話ではあった。

「……あ、の、その」
「ご、ごめんなさい。気を、つけます」

出来る限りの微笑を浮かべ、声の震えをなんとか抑えつつ、そうとだけ答えた。

クロノス > 「はい、存分に気をつけるといいでしょう。」

クスクスと笑う。
そして、彼女に歩み寄ると、
瞳を覗き込むように顔を近づける

「ところで、監視番号188、善良な学生であるなら、
 少し血を分けてはくれませんか?
 ―――ええ、少しでいいんですよ。」

にっこりと歪に口元を歪め、彼女に問いかける。

朝倉千蔭 > 近付いてくる彼女に対し、逃げようにも逃げることが出来なかった。
まるで金縛りにでも遭ったかのように、足がすくんで動けなかったのだ。
彼女の視線がこちらを射抜く。鏡合わせのように赤い瞳が見つめる。
一方は捕食者のように、一方は哀れな獲物のように。

「……っ」

死神然とした存在の言葉に対し、返事をせずに視線を地面へと逸らす。
次いで、ほんの少しの動きではあるがふるふると首を横に振った。
その意思表示は、拒絶と言うにはあまりに弱い。……危険を前にして飛び込む餌はいない、というだけの事だ。

ご案内:「スラム」にサイエルさんが現れました。
クロノス > 「そうですか。」

ふるふると震える彼女の様子を見れば、
帽子の鍔を握って微笑みかけ、彼女の肩に手を置く。

「監視番号188、貴女のような臆病な子は、
 こんな場所に来てはいけませんよ?」

肩に顎を置くように身をかがめ、彼女の耳元、
吐息のかかる距離で囁くと、彼女の頬に口付けをして離れる。

彼女の汗から情報を引き出すと、
顎に手を当ててくすっと微笑んだ

「―――随分と変わった信仰をお持ちのようだ。」

サイエル > 「……あーれ……また、キミこんなとこを歩いてるのかい?」

”声”が聞こえたので来てみれば……おや?

「逢引の途中だった? いや失敬ごめんね? おっさん、空気読めなかったね……」

白衣をなびかせながらお酒を片手にタバコをふかす。

失敗したなぁと苦笑しつつも、そっとその様子を”見ている”だけ

クロノス > 「御機嫌よう」と微笑んで挨拶しつつ、ヒュンと鎌を鳴らした。

「先生こそなんでこんな場所を歩いているんです?
 いけませんよ、職務とは関係ない場所を歩き回っては。」

にっこりと歪な笑みを漏らしつつ、そう声をかける。

朝倉千蔭 > ――喰われる。
肩に手を置かれた瞬間そう直感し、ひ、と小さく息ともつかない声が漏れた。
反射的に目を閉じ、これから訪れるであろう捕食の痛みに耐えようとして。
だから、頬に柔らかい物が触れた時に、何をされたのか理解できなかった。

ゆっくりと彼女の、死神のような存在の気配が離れていく。
……助かったのだろうか。
恐る恐るではあるが瞳を開け、彼女が肌の触れる場所にいない事を理解すると、なんとか息を吐きだした。

「な、なん……!?」

何で、と言おうとして、うまくいかなかった。
思想ということは、今の一瞬で頭の中まで読みとられてしまったのだろうか。
……だとすると、まずい。彼女の力も、自分の思想がバレる事も――。

朝倉千蔭 > 「っ、ぁ、サイエルせんせ……」

鎌が振るわれた刹那、反射的に身体を縮こまらせた。
そしてその対象が自分ではなかった事に安堵すると同時に、別の人物の存在に気付いた。
――それは自分も知っている教師、保険医のサイエルだった。

「あの、……え、っと……」

まずい所を見られたかもしれない。
教師をサボるのが好きだという彼だが、今はどうするのだろう。
直接的な脅威である彼女をどうにかしてくれるのだろうか。
……それとも教師らしく、こんな時間にスラムをうろつく自分を?

赤い瞳は揺らぎながら、サイエルの事を見つめていた。

サイエル > 「あっはっは、あいにくと今は”サボリ”中でねぇ。だもんで、その手のルールはおいてきたんだよ」

くつくつと笑いながら壁にゆっくり背中をつけた。
くいっとお酒を傾けて。

「いやいや、不純同性?交友 してるのにも注意しないし、物騒なもの振り回してるのにも注意しないんだから……」

――許してよ?

なんて言いながら。
ここでは教師はそこまでの権限はない。
むしろ風紀や公安が、職務といいきればそれまでである。
が、しかしなんとなく直接見てみたくなったのでやってきたわけだ。

「あっはっは、でも美味しいところは見られなくて残念?」

サイエル > 「やぁやぁ、何日かぶり?」

くつくつと笑いつつ。特別何かをするようにも見えない。

「大丈夫、今日もサボリ。相変わらずだよ。君も、いつもの散歩かい? 危ないから気をつけつつ、警戒しすぎず。覚えているかな?」

ニッコリと微笑むだけ。
ただいつもどおりへらりとした顔で
良くもなく、悪くもないおっさんの風貌そのままで。
静かにそう告げた

クロノス > 「いくら先生とはいえ、特に用も無いのに落第街に頻繁に来る等のあまり不審な行動を取ると
 『厳重注意』を受けますよ?―――くれぐれもお気をつけて。」

『まして、先生はただの保険医ですしね』と帽子の鍔を握って笑みを零し、
再び、近くにいる彼女のほうに視線を戻す。

「監視番号188、少しお話が聞きたいので、ご同行願えますか?
 ―――ここは『一般学生』には危険ですしね。」

口元を歪めて微笑み、彼女の瞳を覗き込むように見る。

朝倉千蔭 > 「……え、あ……は、はい」

サイエル先生とは一度会っただけだが、彼の性格についてはなんとなく理解していた。
だいたいどんな事があってもサボるというスタンスを貫くのではないだろうか、と。
それは生徒が路地裏に紛れ込んでいてもそうだし――血染めの鎌を振るっていてもそうなのだ。

ということは、彼からの助け船も、……こちらへの干渉も、ありそうにない。
そう認識して鎌の女子生徒へと視線を戻した時、ちょうど彼女も自分の瞳を覗きこんでいた。
再び二対の赤い瞳が交差する。先ほどと少しも立ち位置を変えないままで。

「ええと、その……あの、でも、どこへ……?」

分かりました、と否応なく言わされそうになる。
だがしかし、それを何とか飲み込んで、質問を投げかけることにした。
――この夜闇の中、どこに行っても変わりはないだろうに。

サイエル > 「……いやぁ、用といえばちゃんと用はあったよ? サボリに来たんだっていったろ?」

ふぅっとタバコを加えつつ。
静かに静かに見つめて。

「でも監視番号じゃなくて先生。なんだろ?
だったら、そこまで目くじらたてなくてもいいじゃない?」

――ところで。

「血液って輸血パックでも大丈夫なのかい?」

そう訪ねながら。
今の状況を考察する。
きっと、目の前の鎌をもった女性とは
知り合った彼女、朝倉千蔭と二人になりたい。
なぜ? さっきの”声”が本当ならば血液が欲しいとなるが
さて――

クロノス > 彼女の顎に人差し指と中指を立て、
少し上を向かせてにっこりと微笑む。

「ここで話す事になったら困った事になるんじゃないですか?
 だって、先生には聞かせられない話でしょう?
 ―――悪巧みをする、可愛いお嬢さん。」

にっこりと口元を歪め、口元をべろりと舐める。

クロノス > 「私も一応学生ですから。
 呼び名が『監視番号』にならないように―――というだけですよ。先生。」

血液パックという言葉に首を傾げ
「残念ながらそれではダメなんですよ、
 私はこの子の血が飲みたいんです。ええ。」

にこにこと笑いながら、彼にそう返す。

サイエル > 「はーい、気を付けマース」

どっちが先生だかわからない。
けれど、それも面白そうに笑いつつ
タバコをもみ消して、灰皿に捨てる。

「新鮮な処女の生き血が一番美味しいってやつ?
吸血鬼かなにかだったりする?」

おお、こわい。
実際そうであったなら、とても恐ろしい。

「でも職権乱用は良くないよ? あくまで任意同行、なんだよね?
”ただの”お散歩にしては過剰反応過ぎない?」

――それとも、何かが抜け落ちてちょっと困ってる? 具体的には力とか?

朝倉千蔭 > 「……話、話す……?」

先ほど彼女は、こちらの思想について言及していた。
という事は、自分が今頭の中に持っている企てについて知った、ということ。
あるいは初めから、何かが起きて情報が漏れていたのかもしれないが。

この子の血が飲みたい、という彼女の発言に、もう一度肩を震わせてしまう。
――どの道話しても話さなくても、何をしても、血を吸われるというのなら。

「……お……」
「お断り、します。……いや、お断りだよ」

僅かに震える口調で、否定の意思を告げる。
それを強調するかのように、敬語を取り払った言葉でもう一度。
重なる視線の揺らぐ片方が、わずかに力を取り戻す。

「あ、あなたがどこまで私のことを知ってるか……分からないけど」
「今あなたのことを拒絶して、私がどうなるかも、知らないけど」
「……それでも、今あなたに血を吸われて死ぬよりは、ずっとマシだ!」

クロノス > 彼女の顎に副えた指を滑るように動かして親指を唇にそえると、彼女の瞳を覗き込む。

「なるほど、断わる。そうですか。
 確かに、血は少し怖かったかもしれません。」
―――にっこりと口元を歪める。

「ええ、それは、残念です。
 ―――ではせめて、唾液を、口づけをしても構わないでしょうか。
 それなら怖くありませんよね?」

クロノス > 「―――吸血鬼ではありません、公安委員会です。
 新鮮な処女の生血である必要はありませんが、
 今は彼女の血でなくてはいけません。」

彼のほうに振り返ると、
にこにこと笑ってそう答える。

こんな時間にスラムを歩いているのだから、
何か事情があると考えて汗から少しだけ記憶を読んだものの、
それを見る限りだと彼女は何か心の中に悪巧みを隠している。

明らかに人畜無害な少女ではあるが、演技の可能性もある。
彼女の一部を取り込むか、彼女自身から話を聞かなければ。

その為には、血か、唾液、あるいは身体の一部といいたいところだが、
さすがに明らかに無害そうなこの少女の一部を切り取るのは心が痛む。
……だから彼女の血を飲まなければいけない。―――と、内心で考えて力強く頷くと、

「私には、彼女の血が必要なんです。」

そう、もう一度繰り返した。

朝倉千蔭 > 「……」

「……え?」

一瞬、彼女の言っていることがどういうことなのか、理解できなかった。
あまりにあっさりと退かれたという事もそうだが、話の内容も意図が掴めない物だ。
口づけというと、その、いわゆるキスという奴だろうか。
色恋沙汰には相当縁が無い方だと自負しているが、それでも理解はしている。
     ・・・
その行為が普通は一体どういう意図を持って行われるのか、を。

「い、いや、あのその、……そ、そういうのはダメ、だと思う」
「ほら、そういう事は恋人としなきゃいけないし?」

出来る限り視線を反らし、彼女の言葉を否定する。
唇に這わされた親指から、少しでも逃れられればいいと。

サイエル > 「……なるほどねぇ」

だいたいわかった、理解した
この公安委員は悪ではない。
どこかなにかしら滲むものだが
彼女はそれが感じ取れない。
心理的なものを見ても、だ。

「OKOK。だいたいわかった」

――でも見てる分にはいいよね?

”だから”止めなかった。

なにも助けを求められたりしなければ、この保健医は動かないだろう。
なにせ、”ちょっと知り合ったサボリ仲間”が見捨てるのは忍びない。
そうおもってきただけなのだから

サイエル > ……ところで、朝倉くん

そう声をかけながら

「血液、過剰なほど吸われるのが恐ろしいならここに注射器があるんだけど、採血協力とかはダメなのかい?」

助け舟なのかそうでないのかわからないことを言って

クロノス > 「ダメですか。」

彼女は帽子の鍔を握って考える。
仕方ない、ここは諦めよう、そうやれやれと首を振る

「分かりました、監視番号188、悪巧みはほどほどにするように。
 ―――もし、貴女が『悪』となるなら、貴女は私の敵となります。
 その時は容赦なくあなたを斬り、その血を啜らせて頂きますよ。」

口元を歪に歪めると、ヒュンと音を立てて鎌を消す。

朝倉千蔭 > 「……あ」

ひとまずは助かった、ということなのだろうか。
彼女が手にしていた鎌が消えたのを見ると、大きくため息をついた。

「その、えっと」

この場にいる二人の顔を交互に見る。
不干渉ながらも助け舟に近い言葉を掛けてくれたサイエル先生と。
いつの間にか自分の『悪巧み』を認識していた鎌の女子生徒と。

「……私、は」
「あいにく、あなたに少しも血液を分けてあげるつもりはありません」

やんわりとサイエルの申し出を断った。
血を吸われて死なないにせよ、知らない存在に自分の血を渡すのは相当な恐怖だ。
執拗にそれを求める彼女のことだ、きっと『悪用』するつもりなのだろう。

「でも……」
「……私も、そう易々と、斬られるつもりはありません」

私が『悪』となるなら。
自分の企みを実行に移すに至るだけの、覚悟を持つことができたのであれば。
その時には、今日のように簡単にやられるようなことはするまい、と。
幾分揺らぎの収まった赤い瞳は、どこか無謀で、挑発めいた視線を彼女へ向けた。

クロノス > 『だ、そうですよ』とサイエルに笑顔を向ける。

「先生、もう大丈夫です。本人が断わっているのなら、
 『任意同行』である以上これ以上深入りはしません。
 この子の知り合いなら、この子を家まで送り届けるなり、
 この子の用が済むまで付き添ってあげてください」

帽子の鍔を掴み、ふぅと息をつく。

サイエル > 「おやおや、二人して振られちゃったねぇ……」

あっはっはと笑いつつ。

「かしこまりました、公安殿。サボリ魔の保険医ではあるけれど、しかと承りましょう」

顎を触りながら。

「ひとつ貸しね。今度食事でもいかがかな? 麗しきジャッジメント?」

なんて似合わない言葉を吐きつつ
タバコをふかして

クロノス > 「なるほど『悪人になる覚悟』ですか。」

満足そうに、彼女に向けて歪んだ笑みを向ける。

「貴女が何を企んでいるかは私には分かりかねます。
 ですが、それを実行に移すなら、
 私のようなそれを裁く悪人も相手にする事を十分に理解する事ですね。」

そう彼女に言い残すと、帽子を被りなおす。

「監視番号188番、『厳重注意』はすみました。
 気をつけて帰宅するように。」

クロノス > 「食事ですか?お誘いは嬉しいんですが、
 私の食事は少し特殊ですので」

にっこりと彼に笑みを返すと
『それに、男性と一緒に食事を食べる趣味はありませんしね。』と、付け加える。

「―――まぁ、そうですね、この借りはいずれ。」

クックと笑うと、鉄底の靴が床を叩く音を立ててその場を去って行く。

ご案内:「スラム」からクロノスさんが去りました。
サイエル > 「……あらら、振られちゃった……」

しかも同性愛者だったかぁ、なんて頭を掻きながら。
ナンパ失敗1回目である。
残念極まりない……

「……特殊ってどんな食事なんだろうねぇ」

なんというか、変わり者が多い場所だななんて思いつつ。

「さて、そう言われたわけだけど。どうする? 悪者の卵さん?」

帰るなら、送るし、何かするなら護衛役としてお供しますよ
なんて軽く言いながら

朝倉千蔭 > 「……心得ておくよ」

自分の心の奥底に淀む物を完全に理解されたわけではないと分かり、少し安心した。
けれどそれは今日一日の、それもたった少しの時間の出会いを凌げただけにすぎない。
彼女のような人間と相対する日は、この道を選ぶ限りは、間違いなく来るのだ。

きゅ、と左手を握り、耳に響く足音を聞きながら、去っていく彼女の姿を見る。
そこに残された血の香りを振り払うように、ふう、と息を吐いた。

「その……、……サイエル先生、ありがとうございました」

そうして、その場に残されたもう一人――サイエルの方へと向き直る。
彼は遠回しであるが自分の手助けをしてくれたのだ。私にも貸し一つ、になるだろう。

「……えっと、では……護衛を、お願いしていいですか」

一人は不安だなんて、きっと言っていられないのだろうけど。
今日ばっかりは誰かに護られて家路につこうと、そう思って。
彼に小さく頭を下げる。……彼が了承すれば、家へと向かって歩き出すのだろう。

ご案内:「スラム」から朝倉千蔭さんが去りました。
サイエル > 「いいえ、ではお手を拝借。お姫様?」

なんて冗談っぽく手を差し出しながら。
きっとそれらを払われつつ。
用事を終わるまで、付き添っただろう……

ご案内:「スラム」からサイエルさんが去りました。
ご案内:「スラム」に東郷月新さんが現れました。
東郷月新 > 「……ふーむ」

東郷月新は肩を落としていた。
落第街に現れたという「伝説」。
彼が姿を消してしまったというのだ。

東郷の落胆、如何ばかりか。

東郷月新 > そもそもあの「伝説」とは、ロストサイン時代に戦えなかった。
グランドマスターが彼との接触を禁じたからだ。
曰く、相手にしても組織にとって利が無く害が大きいから。
東郷はしぶしぶその言葉に従っていた。

「……今なら戦えるんですがなぁ」

東郷月新 > が、戦えないものは仕方が無い。
東郷は落第街をぶらつく。
せめて無聊を慰める為に。

「――どこぞに達人でも、居れば良いのですが」

東郷月新 > ちなみに手には団子の串。
もぐもぐと食べながら、のんびりと歩いている。
全く無害そうな人物に見える事だろう。

ご案内:「スラム」にテネス・アルキメスさんが現れました。
テネス・アルキメス > 「ふむ、こんなところで悠々と手に串を持って庭でも歩くか」

その声は興味深そうに東郷へ向けられる幼い子どものような声。
それは前方に仁王立ちする黒っぽい学園のものとは違う制服のような格好をした金髪の少女であった。
しかし、雰囲気だけは少女とは思えぬ気配であり違和感となるだろう。
以前にも見た目と中身がちぐはぐな存在を知っていれば容姿と中身の違いには気がつくだろう。

「配達ついでに荒れた地でも見てみるか、と思ってきたのだがな」

独り言のようにも聞こえるがその少女の瞳は観察するように東郷を眺める

東郷月新 > 「おや……」

ふと見れば、なかなかに立派な子供がいる。
もちろん、子供とて油断はならない。
ここは常世島、世界の異能が集まる場所だ。
現に、ロストサインのマスターの一人は、どう見ても幼女にしか見えない。

「小生に何か御用ですかな?」

テネス・アルキメス > 腕組をやめ、左手を腰に当てて右手を振るう。

「いや、なに。余は面白い者には目がない。お主のような存在は稀有と見る」

年齢不相応の物言いをして笑いながら話しかける。

「故に声をかけて見たくなった。それだけである」

偉そうだが、子供っぽい声が似合わない。

東郷月新 > 「ほほう、それは光栄ですなぁ」

くっくっと笑いながら月新は応える。
彼は、子供だからと言って見くびる事はしない。
そもそも、子供だろうが大人だろうが、斬ってしまえば皆同じなのだ。
だから、彼にとって年齢とは何の基準にもならない。

「それで、小生がお気に召したようですが――どちら様ですかな?」

テネス・アルキメス > 「存分に光栄に思うがいい」

ない胸を強調してる訳ではないが胸を張ってテネスは答える。
東郷の問いに笑いを漏らした。
久しい、とその口からは漏れた。

「それと失礼したな。自らが先に名乗る事など随分と久しい」

大袈裟に、まるで無駄な動き。
胸に手を当てて名乗る。

「余はテネス・アルキメス。異世界から来て今は肉屋のアルバイトをしている最中だ」

そして自らに向けていた手をそちらへと向けて、

「では逆に問おう。汝の名はなんという?」

そう問い返す。

ご案内:「スラム」に遠条寺菖蒲さんが現れました。
東郷月新 > 「なるほど、異邦人でしたか」

世の中には色々な人が居るものですなぁ、と呟く。
実際、異界には様々な人種が居るという。
一度たずねてみたいくらいだ。

「小生は東郷月新。
かつてはロストサインの"殺刃鬼"<ヒトキリ>と呼ばれておりましたな」

まったく警戒心もなく、自分の素性を明かした。

テネス・アルキメス > 「ほう……ロストサインか、それならば納得だ」

ふむふむ、と頷いてその姿をよく見る。

「だが、惜しい……そうでなければ東郷月新、余の配下に欲しかったぞ」

そう言って残念そうに微笑む。

東郷月新 > 「小生を配下に?」

なるほどなるほど。
どうやら、かの魔王殿と同じ人種のようだ。
だが、笑ってはいけない。
彼ら稀有壮大な者は、むしろ尊ばれるべきなのだ。

「面白い事を言う御仁ですなぁ」

うんうんと頷く。
あの学び舎でつまらない事を学ぶ生徒たちよりも、よっぽど面白い。

テネス・アルキメス > 「けれど、残念である。余にはこの学園の大事に関わる人間には『不干渉』でいろ、と約束されていてな」

心底残念そうに自らに科せられた契約をの一部を言う。

「故にこうして挨拶するにおさめねばならないのが惜しい。恐らくこうやって喋るのも契約としては違反かもしれな」

と今度は悲しそう笑う。
やれやれと首を振りながら。

東郷月新 > 「それはそれは――難儀な事ですなぁ」

こういう手合いは、意外と多い。
なかなかに人間というものは、制約が多いのだ。
――もっとも、目の前の存在が人間とも限らないが。

「あ、団子、食べますかな?」

懐からみたらし団子の入った包みを取り出す。
どうやら買いだめしていたらしい。

テネス・アルキメス > 「いや、それは受け取れんな」

自分にかけられている。『契約』は神さえも縛ろうとした呪いであり、自分はそれを認識したらそれに縛られる。

「悪いな。以前の余であれば少しばかり相手もできたのだが、今はそうはいかぬのでな」

笑って、拒絶するように手を振る。

「それに先程も言ったが名も知らぬ面白いものをこうしてアルバイト中に会いに着ている最中でもある。バレたらアルバイト先の店主にも怒られかねん」

こうしてもなにも先程言った肉屋を示すなにかはその手や身体にはない。

東郷月新 > 「それは、重ねて難儀ですなぁ」

どうも、かなり高位の存在らしい。
そんな存在が、ごろごろいるのが、常世島なのだ。
やれやれ、まったく――面白い事この上ない。

「ま、いずれ会う事もありましょう――小生も、皆を退屈させないようにせねば」

テネス・アルキメス > 「恐らく、ここならば遊び相手には困らないのだろう?」

そう笑いかけてから、
改めて東郷をよく見る。

「契約が解除された時に東郷月新、お前が生きている事を余は期待する」

言うだけ言って背を向けて跳躍すると幼女は空に消えていく。

東郷月新 > 「――それは小生にも分かりませんが」

ふむ、と顎に手をあてる。
どうもこの少女は、どうしても自分を配下にしたいらしい。
――ますますもって、面白い。

「その契約とやらが切れた時、あなたを見定めるといたしましょう」

東郷は笑って見送った。

ご案内:「スラム」からテネス・アルキメスさんが去りました。
東郷月新 > 「ふむ……」

東郷は団子を開く。
串からもぐもぐと食べながら。
さて、次はどうするか。

ご案内:「スラム」に鬼道椿さんが現れました。
ご案内:「スラム」に蒼穹さんが現れました。
鬼道椿 > コートを羽織り腰に打刀、背に大太刀を背負った少女がスラムを歩く
不慣れなスラムに迷い込んだのか、小奇麗な服装はこの場所には不相応な雰囲気を帯びていた

ヘドロの様な殺気と鋭い眼光以外は

蒼穹 > (腕章を付け。「警邏」という名のサボリを再開した折の事。)
…あれ…?
(和装と言うものは己にとって結構目を引くものであるのだが、団子をもぐもぐ喰らうその姿はこういった場所にはどうにも似つかわしくない気がする。ので、思わず二度見。それから…)
やっほ、お兄さん。平和だね。
…何してんの?
(「団子を食べている」と言われればそれまで。その何だかこの辺りとは違った雰囲気や、和装そのものも気になったので、手を振りながら馴れ馴れしく、ついつい声をかけてしまった。因みに、この時点で彼の素性は一切知らない。)

東郷月新 > 「おや、風紀委員ですか。
――すみませんが、ちと用が出来ましてなぁ。またの機会にしていただきたい」

蒼穹に向かい、つれなく告げる。

あぁ、心地よい殺気だ。
これは――自分の獲物だろう。
そう直感した月新は、椿の方へとゆっくり向かう。
団子は懐にしまった。

「――名前をお聞きしても、よろしいですかなぁ?」

蒼穹 > あららー残念。
少なくとも挨拶くらいすべきだって思うよ。
(むっとした表情。して…。)

あっれー、不審者Zさんじゃん。
こんなとこで何してんのさ。
(ふと、彼の視線について行けばいつかの女性であった。その纏わりつく様な殺気は知っているのかどうか。)

鬼道椿 > 「ソラ・・・?」
海岸で以前出会った少女を目にして片眉を吊り上げる
あぁ、いけない…蒼穹と出会ってから人前で殺気を振りまきすぐに抜こうとする癖を止めようとしたのに
ここ数日は本当に穏やかな楽しく平和な日々を過ごしていたのに…
いろいろな人と出会った、いい経験もした

それなのに・・・

男の問いに答えるように腰に下げた打刀に手をかける
腰に帯びたまま悠然と東郷に向かって歩く。
鞘をわざと横に広げて、賭博でやくざ者がそうするように
鞘当を誘う

やるのか―
      ―さもなくばどけ、と

東郷月新 > なるほど、言葉は不要、と。
然り。どうも自分も平和ボケしたものだ。
言葉がいらぬと言うのなら。
刀で語りあいたいというのなら。

(それでこそ、剣士というもの、ですなぁ)

東郷は自分の脇差の鞘を少しばかり持ち上げ、
少女の横をすり抜けるような仕草をして――

――カチン

鞘と鞘とが、触れあった

蒼穹 > そうそう、あっはは。剣士同士は惹かれあうっていうのかな。
んじゃまぁ、お邪魔なようだし、私は検挙の書類だけ書いて、さっさとこっから帰るとしようか。
ご苦労様。
(団子一つ、添えて。後ろ手を振りながらその場を立ち去った。)

ご案内:「スラム」から蒼穹さんが去りました。
鬼道椿 > スラムの喧騒にかき消されそうなほどの小さな音
その音が聞こえる瞬間、椿はうつむきそして笑った
恍惚とした表情で

閃光が東郷に向けて走る
予備動作すらない振り向き様の抜刀
チカチカとネオンを乱反射させて真っ直ぐに首を刎ねんと撃ち放たれた

東郷月新 > あぁ、その表情。
この世のどんな男のものよりも精悍で。
この世のどんな女のものよしも妖艶で。
まさしく、生と死の狭間にある――剣士の表情だ。

左手で脇差を引き抜き、首への一撃を防ぐ。
同時に右手は身長ほどもある大刀をやすやすと引き抜き、
椿の銅を袈裟斬りにしようと襲い掛かる。

鬼道椿 > 東郷が刀を受けた瞬間、遅れて初めて見染めた時と同じように
どす黒い殺気が叩き付けられる。
甘く切ない顔をしながらもその内面に渦巻く感情はこのスラムの汚水に流れるものよりもおぞましかった
悪鬼のように心は煮え滾る

背負った鞘で大刀を受け流す。
鞘を走る刀身が彼岸花をまき散らしすり抜ける
受け流す動作のまま流れるように連撃を打ち込む。

くるり狂りと車輪が回るように、目も眩むほどの速さで
先ほどよりも重い一撃

椿の刀は動き続けるほど重く鋭くなる
腰を落とし一撃一撃で魂を削らない
舞い、狂乱する

東郷月新 > 言葉はいらない。
殺気と剣戟。
それだけあればいいと言うが如き剣閃。

だが、軽い。
もちろん鋭く力のある一撃だが、東郷の剛剣に比べれば、それでも軽い。
ひとつ、ふたつと受け流しー―いや、徐々に重くなっている。
ならば、こちらが取るべき手はひとつ。

まるで血のような、赤い、美しい椿が舞い散る中。
再び東郷は、その剛剣の一撃を椿に叩き込もうとする。
まるで、人を斬るには一撃あれば十分とでも言うかのように。

鬼道椿 > 東郷の剛剣
その雄々しい一撃が自分の腰を通り抜ける様子を脳裏に描く
美しい一撃
背骨すら引っかかることなくマップタツに切り離してくれるだろう
じくりと下腹部が熱くなる
違いない、この人に違いない
私の剣鬼

東郷月新

嗚呼―しかしその一撃を受けることはできない
またしても受け流そうとする
あまりにも無駄のない素直な動作
東郷の剛剣に滑り込ませるように自分の刀を添わせる
火花が散り、その先の動きが
線を引くように追撃の動きが東郷には見えるだろう

東郷月新 > なんと美しい動きであろう。
その身のこなしに、ひとつも無駄はない。
無駄があれば、己の刀が少女を両断する事だろう。

だが、剛剣は火花を散らしながら少女の刀を滑る。
力の入れ所を間違えれば、細い刀は根元から折れているだろうに。

美しい、なんと美しい。
まるで神に捧げる舞の如き、神々しささえ感じられる。
嗚呼、だからこそ――


ソノミヲ、タタキキリタクテショウガナイ


東郷の目が見開かれる。
少女の刀は、脇差をもすり抜け、己のわき腹を浅く斬る。
気を抜けばその変幻自在の刀は、いともたやすく自分の身を切り裂くだろう。

ならば――

全力をたたきつけるのみ。
東郷は太刀を再び振りかぶり――
それが下ろされると同時に、抉るように少女へと脇差を突き入れる。

鬼道椿 > 全身が震えた

直観―折れる

鞘を抜き打ち刀と共に追撃を即座に捨て一撃を受けた

何時までも聞いていたくなるような澄んだ金属音が響く

勢いを殺すため少女の体が宙を舞った
空中で弧を描き、着地と共に即座に間合いを詰め殺された勢いを取り戻すために
剣をふるい続ける
遠くに鞘が落ちる音が聞こえた、あれはもう使い物にならないだろう

この男の剣は受けてはいけない
東郷ですら目で追いきれなくなるほどの動きで崩しにかかる
突き入れられる頬をかすめる
足首を狙う低い斬撃

東郷月新 > こちらが一刀振るう間に、二回、いや三回は繰り出される剣閃。
必殺の一撃も、鞘を砕いただけに留まる。
まったく、これが学生の剣だとでも言うのか。

宙を舞った少女の身体は、今度は獣の如く低い姿勢でこちらへ飛び込んでくる。
狙いは足。これは避けきれない――!

東郷は咄嗟に太刀の重量調節を解除しながら地面に叩き付ける。
轟音と共に土がえぐれ、砂埃が舞い、衝撃が椿の方を襲う。
そのまま無理矢理、刀を掬い上げるように斬り上げる。
いわゆる地摺り残月と呼ばれる斬り上げ――少女の一撃を相殺する為の、力技だ。

鬼道椿 > 「!!」

手に持った打刀を捨て、体を逸らし切り上げを紙一重で避ける
しかし衝撃の乗った一撃が肩口を掠めただけで紅飛沫が舞った
凌いだ―背負った太刀を片腕で抜き放つ
無理な姿勢から東郷の小脇をすり抜け撫でつけることしかできなかった
だがこの刀であればそれだけで十分だった
租借刀『紅飛沫』
ぞろりと鋸の様に生えそろった牙が走る!

東郷月新 > 東郷は訝しげに少女を見る。
今の一撃ならば、もっと深く入れられるはず。
そして、疑念と同時に――理解する。

まるで、獣の牙の如き一撃。
東郷のわき腹から血飛沫が舞う。
なるほど、人を喰らう――『妖刀』!

一度飛びずさり、距離を取る。
わき腹は血に塗れているが、その表情は穏やかだ。
当然だろう。


――こんな楽しい事が、やめられるものか。

ご案内:「スラム」に虞淵さんが現れました。
虞淵 > スラムを照らすライト
やがてそれは近づき、この場には似つかわしくない黒塗りの高級車が現れ、停車する

止まった車の後部座席のドアが開き、のそりと大男が姿を現す

「よォ、喧嘩かい…?」

鬼道椿 > 熱にうなされる様に足取りがおぼつかなくなる
ゆっくりと妖刀を手に構え直す
肩口の傷は思ったよりもひどい、ぬめる血の感触が心地よい

「…  … …ぅ …」

何度も、何度も口遊む

東郷 月新の名を

穏やかな顔をした東郷とは対照的に

椿は恋い焦がれ、とろけるような顔で東郷を見つめる

―欲しい、欲しい、あなたが欲しい・・・あなたの・・・首が

東郷月新 > あぁ。
見なくても、声だけで分かる。
同類――かの「伝説」の声だろう。

「――ええ、楽しいですなぁ、死合(ケンカ)は」

くくっと目の前の少女を見て笑う。
まるで恋する乙女か、娼婦のようだ。
ここまで良い女は何処にも居ないだろう――もっとも、求めるのは男ではなくこの首のようだが。

わき腹の出血はひどそうだ。
のこぎり状の刀で斬られたせいで、そう簡単には治らないだろう。
だが、構わない――

死合で『次』など考えるものではない。
生と死の狭間で、打ち合うだけだ。

東郷は太刀と脇差をゆっくり構える。

虞淵 > 値踏みするように、眼前の光景に佇む二人を眺める
───いや、待てよ。コイツは

「懐かしいツラもあったもんだ」

タバコに火をつけると、車のボンネットにどっかりと腰を降ろす
美味そうなら割り込んでやろう、と思ったが。

「お前が出所てきてるとは思わなかったぜ、東郷月新」

くつくつと嘲笑う
───二人の死合を邪魔する気はないようだ

鬼道椿 > 殺意も愛欲も混ざり合い椿本人にも判断が付かなくなってしまった
カフェで剣鬼の話を聞き、どれだけ想いを馳せただろうか
公安委員の散切り頭にその名を聞き、胸が敗れるほどの高鳴りを感じた

殺したい、愛したい、誰よりも深く肌を、重ね傷つけ貫かれたい

虞淵に対し恥じらいの笑みを浮かべる

こんなにも死合っているのに、目の前の男は意地悪だ
もっと私を見て、私を感じて、あぁ

二人の男が視線を戻したそこには鬼が居た

この死合いの終わりの一撃が繰り出された
この男に抱かれたい、もっと言葉を交えたい
許せない、殺せ、死ね、ねぇ、好き、愛してる
死ね、首が


「―貴方が好き」

それはもはや殺気ではなく呪詛に似た何かだった

平然と殺す気で妖刀が滑る

東郷月新 > 「何をおっしゃるやら」

再びくくっと笑う。
邪魔をしないでくれて助かる。
今は目の前の獲物――いや、相手に集中したいところだ。

「小生は、貴殿に会う為に戻ってきたのですよ、『伝説』殿」

そうだ、二年前に果たせなかった立会いをする為に。
もうグランドマスターはいない。
なら――この『伝説』と死合いたい。結果として果てても、本望だ。

だから――

「やはり申し訳ないが、まだこの首はやれませんなぁ」

目の前の少女は大変魅力的だが――殺気のせいか、直線的すぎる。
命を絶つ一撃は、同時に読みやすい。いくら速くとも――

「――――!」

東郷は少女の剣筋を『予測』し。
寸分違わぬ位置に己の剛刀を叩き込む――!

鬼道椿 > お互いの剣が触れ合い火花が散り二人を照らす

嬉しそうに神にその身をささげる様に剛刀を受け入れようとした

しかし妖刀がそれを許さず小手先で刀をわずかに逸らし致命傷を避けた

体を濡らす血の感触、死にはしないだろう

これも悪くはない…

ゆっくりと刀を抱える様に崩れ落ちた

東郷月新 > お互いの刀がぶつかり合う衝撃に、東郷の肩が抉れる。
だが、力での対決ならば分があるのはこちらだ。

そのまま吹き飛ばす刹那――
少女の胸に、十字の切り傷を入れようとする。
まるで、命を奪うのが叶わぬなら、生涯消えぬ傷を与えようとするかのように――

それが、この不器用な男なりの、少女への餞であった。

虞淵 > ふーっと白煙を空に向けて吐き出す

「そんな大仰な呼び名はいらねェよ。
 お前らのグランド・マスターだけで十分だぜ。
 ……ついでに男にそんなセリフを吐かれてもあんま嬉かねェな」
特にお前みたいなのには、とつけくわえつつ。
ボンネットから降りる。

勝負はついたと見たのだ