2016/06/07 のログ
ご案内:「スラム」に蕎麦屋さんが現れました。
蕎麦屋 > 「――さて。」

夜明け前、最後の客を帰した夜鳴き蕎麦屋。提灯の火を落として、客用の簡易椅子に座る。
周囲は暗く――ならなかった。周囲に浮かぶ球体の光。淡く明滅するそれが――7つ。
片手には急須と湯呑み。こぽこぽと音を立てて緑茶を注ぎながら――

「おいそれと呼ぶなとは言いましたけどねぇ――というか、この烏信用したのが失敗だったか。」

視線をあげながら、注いだそれをずず、と啜る。
見上げた先、担ぎ屋台の屋根には烏が二匹。応えるようにカァカァと、喧しい。

「いや、どういう状況かはわかりませんよ?分りませんけどね?
 昨日の今日ですよ。契約したにしても少し笑えない展開ですよ?」

蕎麦を売り歩いている最中に聞こえた声。声というよりも意識の疎通。
無理矢理『何か』をやり込めてのそれで叩き起こされたわけで――

「まぁ、やり込められた中で、呼んだだけでも及第点、としましょうか。」

溜息一つ。頼まれた以上は、やらねばどちらの名も廃るだろう。
何より、契約はまだ果たされていないのだから。

蕎麦屋 > 「――で、現状、戦力はこれだけですが、どうしたものですか。
 えー…と。凛霞さん?とやらを守るオーダーですが、そこの二匹、ご存知です?」

生憎とこじんまりとした計略は得手ではない。こういう時にアル姉かラーズ姉でも居ればいい知恵も浮かぶだろうが。
8つの意識が向けられた烏が再びカァ、と鳴く。

「なるほど、ご存じ。
 なら、まずは連絡つけないと話になりませんね……あー、もう。」

すまーとふぉん、とやらも持っていない身が少しばかり恨めしい。
契約が果たされたら買いに行こうと思ってたのに、まったく――。

蕎麦屋 > ずず、と。もう一口。ああ、熱いお茶が美味しい。和の心がワビサビですね。
とりあえず落ち着きましょう。

「とりあえず、二匹に頑張ってもらいましょう?
 フギンは件の相手と連絡つけてくださいな。ムニンは周囲の偵察――幸い、人の足元で叫んでくれましたから。」

まさかこんな所に私みたいなのが居るとか誰も思いませんしね。してやった相手も災難ですけれど。
自力で逃げ出すか、誰かが助け出すならよし。そこに少々手を出すくらいなら、きっと許される。
私が手を出すなら――最悪此処から逃げ出す羽目になるだろうけれど、仕方ない。

「そういうわけです。――はい、二匹は行った行った。姉さんたちも戻る。
 出られてるだけでもこっちはしんどいのですから。」

しっし、と追い払えば――二匹の烏が飛び立った。
同時に、周囲に浮いた光もすぅ、と掻き消えて。

蕎麦屋 > 「ホント、どうしましょうかね――」

ずず――あ、飲み干してしまった。
蕎麦と戦争と葬儀以外はからっきしである。情報収集といった所で。

「蕎麦屋が『怪しい人見かけませんでしたか』とか聞いて回るとかもう一つ怪しいですからねぇ――」

白み始めた空を見上げて、溜息一つ。
もう少し。人手が欲しい。出来ればそういう情報に精通した誰か。

蕎麦屋 > 「――まぁ、望むべくもなし。ですね。」

さくり、と考えるのをやめる。
やれることなどたかが知れている。それよりは――

「そもそも――。
 私は世界にとっての脇役。主役にお任せするとしましょう。」

私も主役だった世界は当に滅んで亡く。神は人の世に必要なく、世はなべて事もなし。
今回の舞台の『主役』は明らかにもう一人の方。ならばそちらの動きに合わせるのが筋、というもの。
手早く湯呑と急須を片づけて、椅子と机をたたむ。

蕎麦屋 > よいしょ、と担ぎ屋台を肩へと乗せる。

白んだ空を見上げながら、ゆらりゆらりと起き始めた街の中。

さて、とりあえずは件の『主役』に会いに行きましょうか。

ご案内:「スラム」から蕎麦屋さんが去りました。
ご案内:「スラム」に陽実 凛さんが現れました。
陽実 凛 > スラムの片隅、暗い路地で。
黒い革手袋、黒装束、黒尽くめに身を包んだ少女がいました。

その視線の先の路地にはローブに身を包んだ何か。

そこで、とても深く溜息をつくのでした。

陽実 凛 > ローブに身を包んだ何かがこちらを向く。
うっすらと見えたローブの中身は、頭部の位置にこの世界の生物と言い難い多数の短い触手の様な物に覆われていました。

「お久しぶり、『貴方』ね。何の用?」

触手が少し動いたと同時に、テレパスを聞き取って、お返事。
ふーと、少し張っていた気を抜くように息を吐きます。

はたから見れば、一人で喋っている様にしか見えない会話が始まりました。

陽実 凛 > 「調子はどうって?私は『貴方』の成功作のまま。不調はない。
社会に溶け込む事には時間が掛かる。
戸籍の修正もあちら側の手続きで済ませた。」

近況を聞かれて、報告。
口調は淡々としたもので、感情が込められていない。
姿勢も、変わらず。

「友人関係?枯れたと『貴方』は判断していた。
引っかかる存在?この界隈で薬剤に嵌っていたグループがいた。
謎の無断欠席があった召喚師がいた。
名状し難き猫がいた。
喋る蛇がいた。
もう少し様子見したいのがいくつか。」

指折り、数えて。

陽実 凛 > 「それで、何故こちらに?『貴方』の興味を引く物でもあった?
異界の鉱石なら荒野の方が良い。」

ローブの中身は、問われてテレパスも沈黙。

「……黙秘する事情ありと判断する。
質問を変える。先の薬剤。他の方の実験のアレ?」

肯定に見える、ローブの動き。
それと合わせて送られたテレパスに反応して、大きく溜息をついた。

「つまり、私が見つけたのは汚染度低で発症の危険はなさそう。
発症者がいれば猟犬が来ると思うのだけど。
薬品ごと目の仮面の男が風紀か公安に連れて行ったみたいだから、猟犬がもし発生したらそっち任せで対処能力の確認。」

合ってる?とローブの中身に問いかける。

陽実 凛 > 「そう、まぁ目ぼしい身体や珍しい検体を発見して生け捕りに出来たら『貴方』に取引交渉はする。
生け捕りは苦手だけど。成功作が増えれば嬉しい。
薬品の売人の方は元をたどる必要がありそう。
材料が材料だから在庫処分かつ実験か保身だと思う。」

これで、用件は全部?と首をかしげる仕草を向けた。

その直ぐ後、ジジ…と音がして、ローブごと、話していた相手は、姿を消した。

「ん、また。」

陽実 凛 > 話して、ちょっと思考の整理は出来た。
こちら側に無断欠席者が来ている可能性はなくはない。

連れさられてる可能性ならもうちょっとありそうです。

明日には戻ってきている可能性も十分あるけれど、薬剤の方と一緒に調べる位はしにいきます。

調べる(物理)でもいいかなーと、路地を駆けて。

陽実 凛 > しばらくそのまま駆けていって。

取引現場っぽい所や、人が隠れて足り誰かを閉じ込めるのに都合の良さそうな場所を探して回って。

この夜、スラムから生活音が幾つか消えた、かも知れませんでした。

ご案内:「スラム」から陽実 凛さんが去りました。