2016/06/13 のログ
ご案内:「スラム」に紫刃来十さんが現れました。
■紫刃来十 > スラムの袋小路から響く断続的な悲鳴が響く。
声の主は筋骨隆々の大男、鍛えられ、立っているだけでいやがおうにも
威圧感を与えるであろう立派な体躯は
今は情けなく縮こまり、震え…まるで雨に打たれた野良犬のように惨めだ。
■紫刃来十 > その大男を見下ろすのは、金色の目をした中肉中背の少年。
その目以外にこれといった特徴のない筈の少年だが
その顔が見せる獣じみた獰猛な笑みは、彼の存在を刻むには十分であった。
右腕の間接が2つほど増えた男の腕に、追い討ちの蹴りを叩き込む。
更に間接が増えた男が悲鳴を上げると、中肉中背の男は笑みを深くした。
■紫刃来十 > 「んじゃあな、今度はきちんと期限守れよ…ま、その様子じゃ借りる気も
おきねえだろうがよ」
悲鳴を上げる男の顎を蹴り上げ気絶させると、その懐から財布を抜き取り
「ほらよ、持った感じ利子の分も含めて回収できそうだぜ」
自身の後ろで大男が叩きのめされる様子を見ていた女学生へ、放り投げた。
■紫刃来十 > 「は~いありがとさん♪やーあんたがいてくれて助かったわ柴刃ちゃん!」
にこやかな笑顔と感謝の言葉を、紫刃と呼ばれた男へかける糸目の女。
「このプロレス部の元エース君、部活やめて長いくせにえらい強くてね~
回収に苦労してたのよ、いや~ホント紫刃さまさまだわ!」
大袈裟に両手を広げ、感謝の意を示す胡散臭い女。
彼女はこの辺りを根城とする違反部活のボスであった、主に金に困窮したものに
違法な利息の金を貸付、膨れ上がったところで
あの手この手を使い回収する。
その容赦のない取立ては殆どの場合対象から確実な…無論抵抗した場合は
相応の『利子』も頂いて上での回収を
行っていたが、一方で彼女の手だけでは回収しきれない厄介な案件というのも
少なからず存在していた。
理由は様々だが、確実な回収を行えないままでは自分を舐めて似た様な真似を
してくる者たちが増え、どんどん手間と人件費だの諸々の経費がかかり
それが重なればやがて自分の部活の経営も難しくなる。
■紫刃来十 > そんな時に出会ったのが、今目の前にいる紫刃と名乗った拳法着の男だった。
「いや~初めて出会ったときはもうこいつだ~!ってびびっときたわ
そして、あたしの勘は
間違っていなかった…あんたのおかげで回収困難だった案件が次々と片付き
そこそこ位だったあたし達の部活も、今じゃ結構大きくなれたしね」
嬉しそうにする糸目の女に対し、柴刃の方はといえば、特に何の感慨も無い様で
糸目の女のまくし立てるような賛辞と過去話を聞き流しつつ、報酬がきちんと支払われてるか
確認していた。
「そういやそんな事もあったな…俺はまあ、あんたの金払いがいいからただ付き合ってるだけだが。
しかし貰っといてなんだが、随分と気前のいい報酬だが…これお前損してんじゃねえの?」
どうやら提示額どおり支払われていたのか、確認し終えた柴刃はその金を自身の懐にしまい込む。
■紫刃来十 > 「そりゃあこの手のヤクザなお仕事は舐められたら終わりだからね。
あたし達の面子を保ってくれる信頼できる相手なら、幾らがめついあたしでも
気前がよくなるわよ」
女はがめついが、同時に必要とあらば投資は惜しまなかった。
同業者のひしめくこのスラムの違法部活で柴刃の助けがあったとはいえ
組織を拡大してきたのは、確実に彼女の先見の明あってこその事だろう。
「そういやこの間も何かガッツリ稼いだらしいじゃん、そんだけ貯まれば弟君の入院費を差し引いても
贅沢できるんじゃな」
言い終えるよりも前に、その細い首に紫刃の手がかかる。
「…っとにお喋りだな、お前はよ。次その事迂闊に喋ったら…」
首にかかった手に力が篭る…
「ご、ごめんって…ちょちょ、やめ!あんたの力で絞められたら窒息するより先に
首が折れるって!」
謝罪しつつも表情は笑っている女…だがそれでも恐怖は隠しきれなかったのか
その笑みは若干引きつり額からは冷や汗が一筋、頬へと伝っていった。
「ね、ねえそろそろマジで手離してって…ホントに悪かったって…反省してるから…ね?」
普段ならとっくに離してる手が未だに喉にかかってる事に、流石に隠し切れなくなってきたのか
焦りながら懇願する。
■紫刃来十 > 「…ちっ」
舌打ちをしながら、掴んでいた手を離す。
「お前は鼻も目も利くが…そのお喋りなのと目先の利益に飛びつく癖だけは治らねえな
いつか火傷するぞ」
先程までの剣呑さは薄れ、代わりに呆れた様子で糸目の女へと言い放つ。
「いや~ごめんごめん、次は気をつけるよ…」
舌を出して謝罪する女からは、矯正する気等ないのが感じ取れる。
「…帰る」
そんな女の様子に対し、ため息をつくと、その場を後にした。
■紫刃来十 > 「…くそブラコン野郎が」
紫刃が去ったのを確認した後、既にいなくなった相手を罵倒する女。
そして振り返り、気絶した大男へ向き直ると
「おい、こいつ運びな、今までの利息分、きっちり返してもらわないといけないからね」
控えていた部下達にそう命じると、自分もその場を後にした。
ご案内:「スラム」から紫刃来十さんが去りました。