2016/06/27 のログ
ご案内:「スラム」にステーシーさんが現れました。
ステーシー > 満月の夜にフード姿の小さな影が往く。
ここはスラム街。
常世の瘴気の集積地。

そこを歩けば、子猫は食い尽くされるもの。
しかし、刀を持った影は悠々とそこを進む。

ステーシー > 道端で世界を捨てた(あるいは道端に世界を捨てた)人間が、踏み入ってきた余所者を睨む。
襤褸切れをまとった浮浪者たちも、彼女を値踏みするような視線を向ける。

しかし、外套を着た彼女は立派な刀を持っている。
それを見るや因縁をつける勇気はなかなか出ないようだ。

ステーシー > が、そうでない者も当然いる。
この異能社会にあって、異能を持て余している人間が。

『よお、お嬢ちゃん。立派な刀持ってるねぇ?』
『その刀、お兄さんたちにも見せてよー。代わりにお兄さんたちも刀を見せちゃうからさ』
『ギャハハ、オマエそれ最低すぎじゃね?』

二人組のチンピラに絡まれる。
恐らく、危険度の高い異能持ち。
異邦人街でこの前見た不良とはまるで雰囲気が違う。

……恐らく、血を見慣れているか、血を見たがっている輩だ。
外套の少女は溜息をつく。

ステーシー > 「最低なのは品性の話よね?」

外套のフードを外すと、月光に照らされて猫耳が露になる。

『おお、なかなか可愛い顔してんじゃ……こ、こいつ』
『最近、異能を強化するっていう、変革剤のルートを嗅ぎまわってる女だ』
『ああ……ってことは、あの組織に突き出せば金になるな』

チンピラたちが顔を見合わせる。
ツキが回ってきた、とでも言いたげだ。

「…運が良いわ、私はね………あなたたちみたいなのから情報を聞き出すのが目的なのよ」

猫科の俊獣の如き獰猛な気配を持ち、少女は腰の刀の柄頭に手を置く。

ステーシー > 咄嗟にチンピラの一人が、両手を子供が銃のように構える動きをする。
彼の異能は『人差し指から空気の銃弾を射出する能力』。
手足を撃って無力化を図る思惑がある。

そして異能を発動させようとした瞬間、彼の意識はブラックアウトした。
猫耳の少女は姿が掻き消え、少し離れた位置で納刀していた。

『!?』

残った男が驚いて後退。
何が起こったのか、判断に迷ったようだ。

「恐らく、遠距離放射系の異能。そして、あなたが近距離変化系の異能ね」
『お、お前俺らのことを知っているのかよ…!』
「いえ? あなたたちの立っている位置から何となくね」

鼻白むチンピラを前にステーシーは無形の位を取る。

『お前……風紀委員か!?』

満月に映し出された猫耳の少女、ステーシー・バントラインは答える。

「通りすがりの生活委員会だけれど……掃除させてもらいましょう」

ゆっくりと刀を抜く。美しい白刃が、月の輝きを纏う。

「組織のことを話してもらうわよ…いざ尋常に、参るッ!」

ご案内:「スラム」に東郷月新さんが現れました。
ご案内:「スラム」にルフス・ドラコさんが現れました。
東郷月新 > さて、いつか聞いた声だ。
かつて殺意の衝動に身を任せた少女。
その少女を、東郷はスラムの建物の屋上から眺めている。

「まずは、お手並み拝見ですなぁ」

さて、少女はどう変わったのか。
あるいは変わらなかったのか。

ルフス・ドラコ > ステーシーの歩いてきた方から、どさりと音がした。
ほとんど立て続けに、三つ。
少し時間を置いてから、二つ。

座り込んでいた浮浪者達を表音記号にして、
倒れ伏す音でテンポとリズムを刻みながら近づいてくる。
「……濁った味、と聞いてましたけれど。本当ですね」

ステーシー > スラムの建物の屋上から見る東郷月新に、ステーシーは気づかない。
刀を抜いた瞬間、後ろから音が聞こえる。

「……あなたは、乱子?」

前とは印象が違う気がする。
それに今の不自然な音は。

『何を余所見してやがる!!』

チンピラが右手のひらから鈍く光る刃を作り出してステーシーに襲い掛かる。
彼の異能は『体のどこからでも刃を創造できる異能』である。
刃を傷つけても本体にダメージはなく、切り離しもできる。

「…!」

咄嗟にチンピラの刃を切り払う。
集中しなければ、今は組織の情報と自分の命がかかった戦いなのだ。
演習でもVRでもない。

「なるほど、これなら前に出るわけだわ」

涼しい顔で喋りながらチンピラと打ち合う。
削れて飛ぶチンピラの作り出した刃。
幾度も刃毀れを起こしている。

東郷月新 > 「おや、あれは……」

あらわれたもう一人。
さて、あれは確か……邪霊騎士の獲物だったか?
ならば無闇に手を出せないが……

「ま、それはともかく……」

あの程度のチンピラ、軽くノシてもらわないと困る。
東郷が望むのは、鋭い殺意に塗れたステーシーを斬る事なのだ。

ルフス・ドラコ > 「お久しぶり、でよろしかったでしょうか。
……しかし乱子と呼ばれて答える義理ももう無いので、今はルフスとお呼びくださいな」

掴んでいた浮浪者の頭を落とすと、先程から聞こえていた音がどさり、ともう一度響いた。
そのまま、倒れている遠距離系の異能の男の方へ、つまりステーシーの方へと歩いて行く。

以前とは印象がまるで違う。
それなりに風紀委員らしいところを装おうとしていた時とは異なり、今は―
今は、単純に言い表わせば、ステーシーの目の前のチンピラとひどく似た雰囲気がする。
誰かを害しても構わないという意思。
その癖、そうなるのは相手が弱いとでも言うような怯懦。
人間の屑。

それがゆっくりと、切り結ぶステーシーに向けて歩み寄る。

ステーシー > 「ルフス………?」

掴んでいたのは、浮浪者の頭。
彼らには確かに害意を感じなかった人たちなのに、何故?

いや、違う。違う違う違う。
ルフスは……以前乱子と呼んでいた彼女とは決定的に違う!

思考を切り替える。この場で一番危険な人物はきっと彼女なのだ。
一刻も早く、目の前の敵を倒して備えなければならない。

『死ねぇ!!』

チンピラが刃毀れしたものの、今も殺傷力を持つ右手のブレードを振り上げ。

そして左手からブーメラン状の刃物を射出する。
彼の異能を持ってすれば、遠距離も近距離も思いのままということだろう。

「はぁぁぁッ!」

突進。まず相手の右の大振りを打ち払う。
次に、射出された刃を身を捩りながら跳んでかわす。

『かかったなァ!!』

次の瞬間、男が蹴り上げる。
そのカカトからは、生成された凶刃が突き出ている。
蹴り上げではない、これが彼の斬り上げなのだ。

交錯。

チンピラの後ろに立つステーシー。
彼女の刀……銘刀・旋空は振りぬかれている。

「練度が足りない」

そう言い放つと、チンピラのカカトと右手の刃が砕け散る。
そして峰で強打された腹を押さえて、蹲った。

東郷月新 > 「お見事」

思わず、廃屋の屋上で呟く。
技にはますます磨きがかかっている。
が……残念、磨きがかかって余裕が出たせいか、殺意が無い。
さて……彼女に近づくあの少女。
彼女ならば、ステーシーの殺意を引き出せるか?

「見ものですなぁ」

ルフス・ドラコ > 「よそ見をすると、危険だと思いますけれど」
ブーメランが投げつけられるのとタイミングを同じくして、ルフスが地を蹴る。
ステーシーが集中したにせよ、混乱したにせよ、意識を切り替えるであろうその間隙を待っていた。

自らのところまで至ったブーメランの下を、身を屈めるまでもなく、くぐる。
地を這うように近づくも、チンピラが倒れるのには間に合わない。
もう少し持ってくれるかと思う読みが甘かったか、それとも、

自分に対して迷い無く決断を下せた、彼女の成長か。

屋上の気配には未だ無反応。
一足一刀の間合いより内へ、うずくまる男の影に隠れるほどに身を低くして飛び込んだ。

男ごと切れないだろうと踏んだ上で、自らの無手の間合いになるほど近くまで。

ステーシー > 「!!」

ルフスの動きは速い。
そして、自分が倒した男の影に潜り込んでいる。

ルフスからの攻撃に備えるにも、ルフスを攻撃するにも。
目の前の男を斬り捨てるしかない。

しかしそれはできない。
命だ。これは生きている。

その考えのまま、刀を使って防御の構えを取った。

東郷月新 > 「あー、ダメですなー、ダメダメですなぁ」

厳しいダメ出し。
あれは、あの少女の甘えだ。
男を斬り捨てるように太刀を振るえば、それだけで勝負はついていた。
そして、その甘えを見逃してしまった。
東郷はつまらなそうに舌打ちする。

ルフス・ドラコ > 「申し訳ないのですけれど……"あなた"の最小単位を頂きますね」
左手で男の頭を掴みながら、その障害物を挟んでステーシーと向かい合うと、一方的に宣言した。

男の喉を蹴り上げて引き上げながら、盾にして強引にステーシーの側へ押し付ける。
浮浪者たちと同じくルフスに"吸い上げられた"チンピラには抵抗するような体力はない。

彼女の体勢なり構えを崩せれば、"掴める"。そういう狙いと思しき動きだった。
この行いを説明する素振りも、後悔する様子も、同情する面持ちもなかった。