2017/01/03 のログ
ご案内:「スラム」に”マネキン”さんが現れました。
■”マネキン” > 「年の変わりか。」
【古びたビルの屋上から、学生服の上から古びた白衣を羽織ったフード姿の男が
学園のほうに視線を向けている。】
「新年など…ここしばらく、祝った記憶がなかったな。」
かつてはそんなようなことも、在ったような気がする。
いつの…だれと―――いつのことだったか。
【その片手に、幻影の壊れた電子秤が浮かんでいる。】
■”マネキン” > 【彼は秤にもう片手で触れようとしたが、通り抜けるだけだった。】
代替えを与えて引きずり出した彼女の一部と、スキルを駆使して偽造した”異能”は歪な形で顕現した。
願みと期待と期待していないと実験には極めてふさわしくないノイズが混じり交ざった壊れた異能もどきがその結果だ。
「表示の変わらない秤など、何の意味もない。
ないはずだが…どうやら何か見落としがあるようにも思える。」
あの天秤の本質は何だ?
そして彼女らはどこに着地しようとしている?
あのおとぎ話は―――
「惑わ…されたか。」
こんなはずではなかった。
手が届くと思ったのに、すり抜けた。
わずかにだけ与えられて、余計に飢えが強くなる。
【鳩尾を押さえて、視線を下げる。】
■”マネキン” > 【男は片膝を立て、もう片足を投げ出していた姿勢で座っていた。
微細な震えが突然大きな反応を見せ、下を向いていた顔をわずかに起こす。】
…!?
【鳩尾を押さえていた手を離し、口元に指をやる。】
■”マネキン” > いま、喋っていたのは誰だ…?
(白衣など、今までつけていただろうか。)
【身に着けている白衣は薄汚れていて、わずかに染みがあり
裾は擦り切れてボロボロになってしまっている。”マネキン”はそれを唐突に脱ぎ捨てた。】
(どこかから唄が聞こえる。
我が強くなっているのは、焦っているからか。
あの事故から我々はもう、長くいきすぎた。)
あの時拒絶したのはどちらだったのか…必要だと?
確かに…そう、適正は…彼女に。
(見届けると、あの終わりで決めた。
あれは…そう、あれはただの時間稼ぎだった。)
実験結果は、出ていない。
【二桁の表示のまま止まった幻影の秤を拳を作り、振り払って消す。】
■”マネキン” > 【青年はよろめいて立ち上がる。】
「ステージは次の段階に進んだ。
だが、足りない。まだ…足りない。」
…。
…。
…。
…。
【顔を上げて学園のほうを見ている。その視線の向こうには青垣山がある。
屋上の冬の風の中でしばらくそちらを見つめたのち、振り返って白衣を拾った。】
「あれもたりない…これもたりない…。」
【白衣を箱に押し込んで、ふらついたままビルの屋上から去っていく。】
ご案内:「スラム」から”マネキン”さんが去りました。