2017/05/04 のログ
ご案内:「スラム」に裏々築々さんが現れました。
■裏々築々 > 道に転がる男の片手には酒瓶が握られている。
既に空であるそれを舐めまわしている男。
「酒が欲しいのか?飲みすぎは体に良くないぞ?」
そんな男に声を掛けたのは奇妙な男だった。
ピシっとアイロンのあたった真っ黒な制服、そこには黒字に赤い刺繍でなにか文字が記されている。
そして、それよりなにより奇妙なのが男の顔面は夜の黒色をベタリと塗りたくったみたいに真っ黒だった。
顔の黒い靄から取り出したのは大型のペットボトルに入った安いだけの焼酎。
男は奪うようにそれを取り浴びるように飲み始める。比喩ではなく。
「飲みながらでいい。私は君の話が聞きたい。
見たところ君は正規の学生だったように見える。
何が君をここまで堕としたのかね?」
■裏々築々 > 一息ついた男は喋りはじめた。
自らが学生であった事。異能による不正のお陰で試験は上位に食い込めていた事。
友人にそれを見咎められた事。一時は止めていたが成績が落ちてしまう恐怖からまた不正を働いた事。
そして、それを友人だった相手のバラされてしまった事。
涙を流しながら男は酒を飲む。流した分をこれで補おうとするかのように。
『友だちだと思っていたのに!!あいつのせいで!俺は!俺は!』
男は嘆く。
自らの罪を認めぬように。
男は喚く。
全ての責任を友人に押し付けて。
「なるほど。悲惨な人生だな。同情するよ。」
黒い靄の下で男を憐れむような顔を浮かべた…そんな気がした。
■裏々築々 > 「でも、それ結局は全部自分のせいだな!グサーっ!!」
■裏々築々 > 男の身体に注射器が突き刺さり薬液が注入される。
『なにをした?』酩酊した男は何が起こったのか未だに理解できていない。
「おめでとう。君に<復活>のチャンスをやろう。
異能を持っているというのがラッキーだったな。
さあ、祝え!祝え!祝うがいい!!」
男のまるで人とは思えなかった肌の色は血気を取り戻す。
黄疸で黄色くなった白目の色も作りなおされて白い色を取り戻す。
それに伴い古くなった目は涙のようにポロポロと瞼から転がり落ちる。
次々に、次々に転がり落ちて零れ落ちて宙に浮かぶ。男の周囲を漂いそして体にまとわりつく。
「ふむ…これはどうやら失敗してしまったようだな。」
そういうと携帯端末を取り出してどこかに連絡をとる。
「私だ。ああ、失敗した。
サンプルとして体の一部?分かった。」
電話を切るが早いか浮遊する眼球が黒い男を襲う。
早さはそれほどでもないがその分一つ一つの追尾性能が高い!
■裏々築々 > 後ろに距離を取るも死角から現れた眼球にぶつかる。
すると、それは弾けてぶつかった箇所に強い痛みと衝撃が走る。
…これはおそらく呪いに近いものだろう。
「…ぐうっ!!弾けるのではサンプルに出来んな!」
そう言いながら虚空から現れた帯のような黒い塊を振るう。
宙を浮くそれらはシャボン玉のように弾けその衝撃で本体を守る盾となる。
…それが普通の攻撃であったならばだ
この黒い塊は宙に浮くそれらを通過し男だった怪物の腕を奪う。
『あいつのせいで、あいつのせいで、あいつのせいであいつのあいあいつの…』
「すまなかったな。でも、痛くは無かっただろう?」
呻き喚く怪物から距離を取る。
仕事は果たした。もうこれに用事はない。
■裏々築々 > そのまま黒い男は靄に包まれて消えていく。
「折角出来た余生だ。酒におぼれて無駄にせんようにな。」
その言葉を残してそこには目を大量に持つ怪物だけが残された。
ご案内:「スラム」から裏々築々さんが去りました。
ご案内:「スラム」に真淨在処さんが現れました。
■真淨在処 > 「おーーう、参ったねぇ、こりゃ…道に迷っちまったぞー俺様ちゃん」
等と、この場所に不釣合いなくらいに能天気な呟き。赤毛に赤い瞳の軽薄そうな男がスラムを歩く。
正直、”あっち”と違って落第街やスラムの地理にはそんなに明るくないのだ。
ちなみに、何でわざわざこんな場所に居るのかと言えば……ただの暇潰しである!
「…ん~~?…おー何か人影はっけーん…ありゃりゃ?」
遠めに人影っぽいものを発見すれば、のらりくらりとした足取りで無防備に近づいていく。
が、様子がおかしい、近付いてみればその姿を見て僅かに目を丸くする。
「おーー何か目玉が沢山浮かんでるなぁ。つーか、そこのにーさん大丈夫?」
どう見ても異常極まる光景だが、恐怖や脅威といったものを感じないのか、気楽に笑いながら声を掛けてみる。
■真淨在処 > 次の瞬間、目玉の怪物が呪詛のような言葉にならない言葉を上げる。が、赤毛の青年はヘラヘラした笑顔を崩さない。
「おーぅ、おっかねぇなぁ。落ち着こうぜ?にーさん。煙草でも吸う?」
と、呑気に懐から煙草を取り出して差し出――瞬間、無数の宙に浮かぶ目玉が青年に殺到し、同時に破裂する!!
…が、青年は何事も無かったかのようににこやかな笑顔。…煙草の箱も無傷である。
「う~ん、マル○ロはお気に召さなかったかねぇ?ラー○とかピー○とかの方が良かったんだろーか」
等と呑気さ極まる呟きを漏らしながら、改めて目玉の怪物さんを眺め…。
(…うーーん、中々にキモいねこれは!…と、いうか目玉ファ○ネルとか奇抜だなぁ)
■真淨在処 > 「…と、ゆ~訳で…来世は美少女に生まれてきてほしい!」
と、笑いながら指をパチンと鳴らす。次の瞬間、無数に浮かぶ目玉の全てが炎に包まれて跡形も無く燃え尽きる。
…と、思ったら怪物さんが瞬く間に無数の目玉を復活させた。
「…ありゃ?無尽蔵に生み出せるとかそーいうオチ…あ、やっべぇ」
次の瞬間、先ほどよりも大量の目玉が青年に殺到し…破裂、どころかむしろ爆発に近い衝撃を撒き散らす!!
「…おおぅ、中々いいパンチ?持ってるじゃねーの目玉のにーさんや…」
その場にうつ伏せでぶっ倒れていた青年だが、あちこち破裂の衝撃で服をボロボロにしながらもケロリとした顔で立ち上がる。
「…あーーこの服、地味に気に入ってたんだぜー?にーさん、せめて弁償…あ、ハイハイ無理よねウン」
目玉の数が3倍くらいに増えていた。おいおい、どうせ増えるならせめて美少女に擬人化してくれないかな!
■真淨在処 > 「…しっかしまぁ、こりゃ誰の仕業なのかねぇ。…んーどうせなら美少女を量産して欲し――おおぅ?」
目玉の不意打ちをヒョイッと上半身を反らすようにしてギリギリで回避。
駄目だ、この怪物さん人の話を聞きもしない。と、いうか…。
「うむ、冷静に考えたら別に美少女じゃないから、このにーさんがどうなっても知ったこっちゃねーんだよなぁ」
めっちゃ正直だった。良くも悪くも。そして、無防備にそのまま目玉の怪物へとのらりくらりと歩み寄って。
「…あー…んー…まぁ~その~…アレだ。取りあえずさ?」
ヘラヘラと笑う。目玉の怪物が何かを感じ取ったのか、一際大きな…既に人とは思えぬ咆哮を上げ―…その首を青年が、何時の間にか鷲掴みにしていた。
「うん、こう成仏しろよみたいな?…と、いうか――さっさと死ねよ」
最後の一言だけ冷たく呟けば、鷲掴みにした目玉の怪物が”一瞬で跡形も無く燃え尽きた。文字通り塵一つ、消し炭すら残さない。
…目玉の怪物は最初から居なかった。そう形容してもいいくらいにもうその怪物の痕跡は何処にも無く。
ご案内:「スラム」に真淨在処さんが現れました。
■真淨在処 > 「…な~~む~~…」
そして、跡形も無く元人間の怪物を燃やし尽した赤毛の青年は、呑気に両手を合わせて拝んでいた。
うん、今夜は結構イイ事したんじゃね俺?と、いう晴れやかな笑顔を浮かべてみつつ。
「…うん、これはナンパが成功しそうな気がしてきたぞ!…ここ美少女とか居そうにねーけど!」
そして、もう目玉の怪物の事とかどうでもよくなった。そんな事より美少女とお近づきになりたい。
「んー…ま、いーか。帰ろ帰ろ」
そして、のらりくらりとまた歩き出す。人知れず生み出された怪物は、こうして人知れず消されたのである。
ご案内:「スラム」から真淨在処さんが去りました。