2017/07/28 のログ
ご案内:「スラム」に神代 理央さんが現れました。
神代 理央 > 日中でも薄暗いスラム街は、夜の帳が下りれば黒い絵の具で塗りつぶされた様な有様。
すえた臭いと清掃の行き届いていない道に辟易しながらも、小綺麗な成りをした少年は鼻歌交じりに街を闊歩する。

そんな、まるで鴨がネギと鍋に調味料まで抱えて歩いている様な少年の背後から、足音も消さずに近づいていく薄汚い男達の姿があった。

「せめて気配くらい隠せば良いものを。まあ、此方ものんびり準備が出来るから別に構わないのだが」

少年が異能を発動させようとしているのも知らず、近づいてきた男達は下卑た笑い声と共に刃物をチラつかせながら少年に声をかける。
少年の目的も知らず、今宵は御馳走にありつけそうだと舌なめずりをしながら―

神代 理央 > 最初に異変に気が付いたのは、男達を率いるリーダー格の男。
スラム街で鍛えた危機感知能力が、周囲から僅かに軋むような金属音が断続的に続いている事に気がついた。
金を毟り取ろうとした少年が、何かしらの異能持ちである事に気が付いたリーダー格の男は、咄嗟に仲間達に距離を取るように叫ぶが――

「判断能力は中々良いな。野党にしておくのは若干惜しいくらいだ。だがまあ、どうでも良い事だ」

ゆっくりと男達に振り返った少年の周囲から、大地から這い出る様に金属の化物が不快な金属音と共に召喚される。
闇の中で尚鈍く輝く無機質な金属の塊が、その塊に無理矢理混ぜ込んだ様な砲塔を男達に向けるのと、男達が脱兎の如く駆け出して周囲のバラックに飛び込むのはほぼ同時だった。

「確か、此処で何が起こっても余程の事が無い限りは表に出る事は無い…んだったな。それじゃあ、頑張って足掻いてくれ」

何かを思い出す様な独り言を呟きながら少年が緩やかに笑みを浮かべたのと同時に、金属の異形達はその砲塔から一斉に砲火を放つ。
戦車砲まで含まれた異形の砲塔が、野党達が逃げ込んだバラックを血肉すら消し飛ばして瓦礫の山へと変化させるのに、早々時間はかからないだろう―