2017/08/01 のログ
ご案内:「スラム」に黒峰龍司さんが現れました。
黒峰龍司 > ゆっくりと片手で懐を弄る。取り出したのは、何時ぞやの不良娘から教えて貰った銘柄の煙草。
黒いパッケージが特徴的なそれから一本、抜き出して口に銜えれば魔術で点火する。
――ゆっくりと紫煙を吐き出す。場所が何処だろうがこの一服の美味さはさして変わらない。

「……喧嘩売る相手くらいは選べよテメェら」

そして煙草を蒸かしながら周囲を見渡す。そこには死屍累々、とばかりに倒れ付す男達。
スラムでも幅を利かせている連中のようだが、面倒だから纏めて全員始末しておいた…まぁ死んではいないが。
ただし、金目の物は全て没収してある。後はまぁ、スラムだから放って置けば身包み剥がされるだろう。
むしろ、その肉体や内臓すら奪われてしまうだろうが、それは男の知った事ではない。

「…群れるのも一つの強さだろうが、それじゃ俺には一生勝てねぇよ…ま、聞いちゃいねえだろうが」

既に全員意識が無いので、聞くも何もあったもんではない。さて、少し河岸を変えようと気だるげに歩き出す。
途中、死屍累々の連中が邪魔だったので無慈悲に蹴り飛ばす。何か骨が折れたような音がしたがどうでもいい。邪魔だ。

黒峰龍司 > 無法地帯ではあるが、だからこそそこには弱肉強食に基づいた暗黙のルールみたいなものがある。
それを踏み外せば、まぁ先程の連中のように一方的に叩きのめされ搾取されるだけだ。
殺されなかっただけマシだろう…ああ、殺されるより酷い目に遭うかもしれないが。

「…だったら所詮はそこまでの連中だったって事だわな」

弱いヤツは駆逐され搾取されるのみ。そうなりたくないなら強くなればいい。
骨のある連中はまぁ、居るには居るがそれでもいまいち物足りない気がする。
スラムにはそこそこ出入りしているからか、男の歩く様子に淀みはなく。
さて、学園に所属してそれなりに経過したが…案の定退屈だ。馴染めていないともいう。
どうにも、ああいう平和的に過ぎる空間は苦手だ…元々の育った環境との差が有りすぎるからだろうか。

「……まぁ、一応停学とか退学になってねぇだけ俺にしちゃ我慢してる方だわな…」

元の世界の頃の自分だったら、さっさと見切りを付けて止めていた。その観点から見れば多少は成長した…というより丸くなったのか。

ご案内:「スラム」に和元月香さんが現れました。
和元月香 > 「...だから止めといた方がいいって言ったのに...」

うんざりしたような呟きが傍の路地から漏れる。
相手が見れば、路地に隠れるようにして月香が佇んでいるのがすぐ分かるはずだ。

ただしこの呟きは、知り合いである彼に向けられたものでも、地面に無残に倒れている男達に向けた者でも無い。
悲鳴を上げて逃げ飛んでいく、同じクラスの女子生徒に向けてだ。

席が近く、講座も良く被るので何故か月香はよく話かけられていた。
性格の宜しくない魔術のそこそこ名門の跡取り娘らしく、逆らったら後が怖いともっぱら噂だったので、下手に拒絶するとめんどくさい。

...と思って相手にしていなかったのだが、何故か引きずられるようにしてスラムに連れていかれた。
一度見てみたかった、との事らしい。

そしてこの現場を見てしまった、と。
お嬢様にはなかなかきつい光景だった。

(だめだやめとけわしは帰るって言っても聞いてくれなかったんだよなぁ...。ああいう子嫌われるぞー)

そのクラスの女子に貢がれたアンパンをもふもふと食べながら、
体を壁に半分隠して知り合いである男にまだ声をかけずガン見している月香。
相手の初めて見た一面に、少しばかり驚いているようだ。

黒峰龍司 > 「……で、テメェはそこで何してやがんだ……月香」

案の定というか何と言うか、そもそも相手は気配を隠してもいない。ただ隠れるような位置にいるだけ。
ともなれば、この男が気付かない筈もなく無遠慮に声を掛けていく。
…が、男は何故かそちらを見ていない。煙草を蒸かし眺めるのは、もう後ろ姿も見えるか怪しい逃げたお嬢様の方だ。

(……どっかで見た気もするが誰だっけか?あの小娘…まぁいい)

と、既に興味が失せたのか頭の中からリセット。どうでもいい事は覚えず切り捨てる性分だ。

そこで改めて知り合いの少女の方へとやっとこさサングラス越しに視線を向けた。
まぁ、相変わらずのようではあるが…前と少し違う気がする。何が違うのかと言えば上手く言えないが。

(……何だ、コイツ…前に逢った時より”削れて”やがる…いや、”薄れてる”のか?)

和元月香 > 「ぅえ!?
え、えーっと、張り込み...見学?」

いきなり声を掛けられた事に驚き、大袈裟にのげぞって言い訳のように言葉を連ねる。
気配は隠していなかったが、まさかこちらに視線を向けず声をかけられるなんて思いもしていなかったのだ。
月香の中で、黒龍やっぱやべーやつ説が更に深まる。

(...あ、いや。
こいつら蹴散らしてる時点で既にやべー奴だったわ...)

路地から出て、倒れ伏す男達のすぐ傍にしゃがみ込む。
そしてちょっかいを出したくなったのか頬にブスブスと高速で指を突き刺す戯れを始めた。
少し人差し指で押すのでは無く、抉れる勢いでやっている辺りが容赦ない。犯罪者だから何でもありさ、のノリかもしれない。

「んぐんぐ...、で、こいつら誰なん?」

容赦なく頬に指を突き刺し続けながら、更にアンパンを食べながら黒龍と目を合わせてそう一言尋ねる。
アンパンは単に大好物で、女子生徒が「一緒に来てくれたら買ってあげる」と提案していたので遠慮無く貰ったのだ。
刑事ごっこがしたかったのもあるが、まぁ要は月香は結局物に釣られただけの事だった。

黒峰龍司 > 「……つぅか、気配隠してねぇし魔力の波動も消せてねぇし、ついでに言えばあの魔道書の気配もある。
…3つも揃えば普通分かるだろーがよ…。」

と、男は呆れたように口にするが、そもそも彼女の魔力とか魔道書のそれまで感知するこの男がアレなだけである。
煙草を蒸かしながらサングラス越しに半眼でそちらを眺めていたけれど。

で、何か路地から出てきたと思ったら倒れ付す有象無象共にちょっかいを掛け始めていた。
コイツもコイツで何だかんだマイペースだよな、と男は思っていたり。

「……あぁ?知らん。スラムでたむろしてるギャングか何かだろ。何か喧嘩売って来たから半殺し程度にしておいた。
ついでに、喧嘩売ってきた罰として金目のモンは没収しておいた。大して持ってなかったけどな」

と、堂々とのたまう男である。ヤベー奴通り越してもうこういうシチュエーションに場馴れしてるのがバレバレである。

「…つか、テメェものこのここんな場所に来てんじゃねーよ…まぁ、何だかんだ平気そうではあるが」

男の見立てでは、多分コイツこういう場所でもちゃっかり乗り切るだろうな、という無駄な確信。

和元月香 > 「黒龍のね、魔力感知スキルがね、おかしいだけだとね、私は思います!
...まぁ消せれる気配も消してなかったし、見つかるのは当然かぁ」

はっきりきっぱりと思ったことを言う。
月香自身気配消去、及び感知は得意な方だ。
それをダダ漏れにしていたのは自覚しているが、
多分ダダ漏れにしていなくてもバレていただろうと見当をつける。

「...黒龍ってほんっと裏の世界生きてますよねー。
よく学園の表側でのうのうと歩いてられるもんだわ、拒絶反応とかないの?」

自分の事を思いっきり棚に上げて肩を竦めてみせる。
男達の顔を気の毒そうに眺めながら、またアンパンをもぐもぐと貪る。

「うーん、別に絶対行きたくないって場所じゃないしねー。
なんというか馴染みがあるっていうかー、なんていうかー」

適当にも程がある言葉の濁し方。
ようやくちょっかいも飽きたのか、立ち上がってまたあんぱんを1口食べた。
空を何となしに仰いだような目は、どこか遠くを見ていた。

黒峰龍司 > 「…別にんな大した技能でもねーんだがな…まぁ、気配消したらそれはそれで分かるけどな。
不自然に周囲と比べて気配が”消えてたら”そこに何か潜んでるって逆算出来るしよ」

彼女と違い、輪廻転生はしていないが長く生きて血生臭い人生を送ってきたからか、そういうのは特に聡い。
なので、彼女の見当は実に正しい。と、いうか男自身がアレなのを隠す素振りが無い。

「…あ?退学とか停学になってないだけ俺としちゃマシだっつぅ自己評価だな。
正直、平和っつぅか退屈すぎて違和感ありありなのは否定しねぇよ。
……アレだな、こう落ちつかねぇっつーか何も無いのが逆に不自然に感じるわ…」

常に波乱ばかりだったせいか、何事もなく平和が続くというのに強い違和感を感じる訳で。
そういう意味では、学園生活というのものに馴染めていないと言えるだろう。

「…あン?そういう人生も経験したってオチか?むしろ、テメェはどうなんだよ?
拒絶反応とか違和感があったとして”自分で気付けてる”のか?」

と、真顔で問い掛けながら煙草を蒸かす。一応煙がそっちに行かないようにさり気なく気は遣ってるけど。

和元月香 > 「うん、普通はできねえよ?」

りくつは分かるがおかしいぞ。
そう思ってしまった月香は多分悪くない。
いや、出来なくは無いけれど。

「はちゃめちゃな異能持つ人らが多いのに、平和なのが変だって感覚は分かるよ。黒龍が今まで波乱万丈だっただけかもだけど。
私としては悪くないけど、やっぱり違和感感じる人は感じるんだな〜」

そう呟いて思い出すのは、数日前に出会った赤毛の少年のこと。
彼もこの島を“平和すぎて退屈”と話し、更にそれを一気に変えてしまいたいという願望さえ透けて見えた。

黒龍の場合は単に居心地が悪いということだろうが...。

「あぁ、不快なら謝るわ。なんかちょっとあれだ、センチメンタル...?いや、んー、なんかこう、過去を思い出したくなる時期なんだよ最近。

うん.............。
.........気づけてないって言ったらどーする...?」

自分でもよく分からないので、言葉を濁す他ない。
更に続いた問いには、不意をつかれたのか一瞬黙りこんでしまう。
だが、へらりと軽い笑顔のまま事実だけを述べた。

感じるべきだと理解はしているのだが。
そしてそれを感じないことは、もしかしたら良くないことだということも薄々分かっている。