2017/10/14 のログ
ご案内:「スラム」に近衛 昴さんが現れました。
■近衛 昴 > 崩れかけたビルの2階、元は闇医者が住んでいたようだが数日前に付近で起こった戦闘の煽りを受け、被害箇所の調査が入る前に逃げ出したのだろう乱雑にされたままの診察室で少女は目を覚ます。
闇医者逃げ出したのを聞きつけ、残されたサンプルやカルテなどを漁りにきたのはいいがサンプルを保管していたであろう場所は瓦礫に埋もれており、しかたなく他に役に立ちそうなものを探していたが結局一晩かかっても目ぼしい収穫はない。
人の形のような手術台の上で目を覚まし、開け放たれたままのドアの向こうにぽっかりと空いた外壁の大穴からは朝日の光が漏れ始めていて。
■近衛 昴 > まだ完全に覚醒していない意識のまま顔を照らす朝日に体を包んでいた毛布を手繰り寄せ、まだ暫くの間ぬるま湯にいるような眠りに浸りながらまどろんで。
大穴の外では朝日に鳥の鳴き声が響き始め、早朝特有のひんやりとした澄んだ空気が頬を撫でてゆく感覚にようやく目を覚まし始めるか。
眼前には巨大な照明がぶら下がっており、ぼんやりといた意識でようやく自室ではないことを思い出して、硬い診察台から体を起こすと背伸びしながら大穴へと向かい外を眺める。
顔を隠す仮面も付けずに無防備に体を伸ばすような運動をしながら全身に朝日を浴び、大きく息を吸い込むと流れこんでくる新鮮な空気に眠っていた意識が本格的に覚醒してゆくか
「ん、んんうぅっ、ふああぁ…もう、朝か…腰痛、硬すぎだよ、まったく」
■近衛 昴 > まだ水が通っているのを確認すれば顔を洗って残りの眠気を払い、もとの手術台まで戻るとベットの形から椅子の様な形に変えて昨晩途中まで読んで詰んでいたファイルを開き始める。
探すのは異能の成長と変化に関する資料。もしかしたら自分の不完全な形はまだ成長段階で、まだ先があるのかもしれないという一筋の希望的観測を確信にするための材料を探して視線を走らせて行こうと。
いくつかそれらしい記述を見つけるも「徐々に力が強まる」「効果範囲の拡大」など僅かな変化ばかりで、少女が探す「能力の進化」「人工発現法」などの記載は見つからない
■近衛 昴 > 「…これも、ダメか。やっぱり、それなりの研究所とかじゃないと」
最後のファイルを乱雑に器具台の上におくと手術台から降りるとショルダーバッグを取り出し、念のため扉から顔だけ出して通路と大穴の外を確認して人気も人の目もないことを確認するとカバンの傍へと戻り、パーカーにスーツの順に脱いでゆく。
下着姿のまま二重になっているバッグの底に裏仕事用の衣服と道具を隠すと変わりに取り出したのはいつもの衣服、ブラウスの袖に腕を通してリボンを結んでいると外から聞こえる物が落ちるような音にビクついてしまい、そっともう一度確認してみるか
ご案内:「スラム」にHMT-15さんが現れました。
■HMT-15 > 突如このビルを構成するコンクリート壁の一部が砕かれる。
割れるような砕けるようなそんな音と共に
煙や埃がうざったいほどに舞う。
そして開いた穴からは眩しいほどの朝日が差し込み
そこから覗く日を背にした奇妙なシルエット。
それはカン、カンという金属を叩いたような音と
特徴的なモーター音を発しながらこのビルの中へと入っていく。
「生命反応を検知。」
ふと辺りを一通り見渡すと
無機質な機械音声と共にそう確認し
間もなく先ほどと同じような特徴的な音をたてつつ
2階への階段を上がってゆく。
■近衛 昴 > キョロキョロと通路を見回すも音もなければ気配もなく、一安心して戻ろうとすると階下から響く振動と壁が崩れる音に直ぐに異常な事態が起きていることに気づく。
階下から近づいてくる足音は重く、機械音を伴う音にもう装備を出している余裕はなく、最低限の衣服をとスカートを上げて僅かに開いた扉の隙間から覗くもまだ姿は見えないが確実に、そして正確にこちらへと向かってくるのはわかる。
「何!?今の…、この音、人じゃ、ない!」
何が来ているのか、そして敵意があるものなのかそれが確認できるまでは迂闊な行動はできないと様子を伺おうと。
戦うなら時間を稼ぐ必要はある、なければどうこの場を取り繕おうと
■HMT-15 > このロボットが発する冷たい足音は誰もいないこのビル内では酷く響き
一定のリズムを正確に刻みながら階段を上っていけば問題なく2階へと到着する。
「誰かいるのか?」
無機質なアナウンスをこの場にいるであろう生命反応に向け発する。
姿を現さない対象に不信感を抱いているようだ。
■近衛 昴 > 正確な足音と自らの心臓の音ばかりがやけに大きく聞こえる中、無機質で人工的な問いかけに答えるわけにも行かず沈黙で返すもすぐさま判断ミスに気づく、ここで答えていればまだ言い逃れもできたかもしれないが「答えなければ」逆に疑わしいだろう。
近づいてくる足音に選択肢は狭まり、選んだのは時間を稼ごうとすぐさまカバンから出したのは手甲に仮面とヘッドセット、そしてワイヤーにフラッシュバン、煙幕。
通路に面したドアの左右にフラッシュバンと煙幕を設置してワイヤーで繋いで即席のトラップを作ると、ドアから顔が見えないように手術台の上に寝転がり毛布を被ろうと。
侵入者には「眠っていて答えられない」、そして「ただの学生」に見えるように細工して待ち構えようと。
背後を音でしか確認できない状態のまま刻一刻とそのときは近づき、今の無防備な状態に心臓の鼓動も大きくなるか。
■HMT-15 > ついに金属音が手術室の前までやってきて
入る前にまず通路側から手術室内部を眺める。
「トラップを検出、キレた奴だ。」
入り口に設置されたワイヤーに即座に気づく。
勿論通路側から見ているロボットに
ワイヤーに繋がれているのが閃光弾だと確認する術はなく
IEDである可能性も視野に入れてワイヤーに触れないよう
ゆっくりと部屋の中へと入っていく。
部屋に入るとまっすぐ手術台まで歩いていき
無機質な音声を発することもなく
前右足のハサミ部分で手術台の足を掴めば
なんとその片足で台を軽く持ち上げ
中にいるであろう生命ごとひっくり返す。
■近衛 昴 > 部屋の前で足音が止まり、設置した銀筒のピンが抜けてレバーが飛ぶ音を合図に閃光と煙幕が撒き散らされるはずだったが、聞こえてくるのは近づいてくる音だけ。
何故と心の中で疑問を叫ぶも振り向けず、次の瞬間金属をねじりきるような音と共に手術台がひっくり返され、視界も回転してしまう。
転がりながらも目の前にいたものの姿に絶句する
「きゃあぁッ!くッ、な!?、HMT!」
対魔術を嫌というほど研究してきた少女が知らないはずもない、ある意味少女が目指す究極系でもあるHMTとまさか対峙する事となるとは何たる皮肉。最悪の事態に舌打ちしながら受身を取り、そして彼も仮面の少女を確認できるだろうか。
そして少女は一緒に転がり落ちた毛布を宙に投げ捨てて注意を引き、自らの指先を噛んで血を滲ませるとそれを飲み込んで身体強化を図り、目の前の戦車を踏み台にして廊下に飛び出そうと踏み出して。
飲み込んだ血の量から強化できるのは数秒、踏み台にするのが早いか、それとも
■HMT-15 > 「!」
勢いよくひっくり返した台から現れた素早い人影。
それのルートを計算するにどうやら自らを踏み台に
しようとしているよう。
宙に舞った毛布の影響で飛んでくる相手を掴むといった訳にいかず
地面を擦るような耳に痛い音を発しながら
勢いよく横にスライドダッシュを行い踏み台にされるのを避ける。
「敵性目標と断定。」
先程の行為を自分への攻撃と取ったロボットは
前両足から対装甲用の回転カッターを展開し
唸るようなモーター音を鳴らしながら回転させる。
■近衛 昴 > 毛布の影に隠れるように宙を舞い、視覚を奪いつつ踏み台にして背後に抜けようと毛布ごと踏み付けようとした瞬間、耳障りな音とともに踏み込もうとした足に感触はなく、空を踏み抜いてバランスを崩してしまう。
とっさに着地しようとするも目くらましの毛布が逆に立て直そうとする動きを妨げ、体勢を整えたときにはカッターを回転させて迫る戦車の姿があり、とっさに背後に飛びのこうと。
回転しながら迫ろうとするカッターはスーツさえ着ていればバッテリーがある間は凌げたかもしれないが、今身を守るのは何の変哲もないただの制服だけで、装甲さえも切り裂くカッター相手では何も着ていないのと同じ。
飛んだ先の背後には部屋の壁があり、両断される最悪のイメージが浮かんでしまうか
■HMT-15 > スライドダッシュで避け
着地の際にバランスを崩した彼女が体勢を整える間に
急接近、前右足のカッターで両断しようと振り付けるも
背後に飛ばれて大いに空振り両断したのは毛布だけ、
毛布の繊維が大量に空中へと飛散する。
しかし彼女が飛んだ先は逃げ場所のない壁。
それを前に回転カッターを唸らせながら
ゆっくりとゆっくりと近づいていく。
そしていつでもカッターの刃で切断できる距離まで
詰める事が出来れば彼女の顔を見上げてさらにその仮面を見つめる。
それは彼女の仮面の下の目と合うだろうか。
近づいたロボットは何をするわけでもなく
じっと彼女を見ている事だろう。
■近衛 昴 > 目の前で両断されたのは毛布で瞬く間に切り刻まれ、後退ろうとするも背中に壁の硬い感触が伝わり、とっさにバックを手にしようとするが戦車の後方に転がっていて完全に追い詰められたと息を呑む。
機械音を唸らせながら近づいてくるカッターに壁際に追い込まれ、後ろにも前にもいくことができずに身動き1つできなくなってしまうか。
迫るカッターに恐怖が支配された体が震えてしまうと、撓んでいたブラウスとスカートが刃に触れて切り裂かれるだろうか。
もう体まで僅かな距離というところで動きが止まり戦車にしてみれば何か様子を伺っているようだが、少女にはいたぶられている様にしか思えないか。
「あぁ…うあ、あ…くっ、こんな、ところで」
仮面の下に滲むのは自分の無力さと道半ばで倒れることへの悔しさ、それも目指した夢の形に潰されることに強く渇望する、目の前の力が欲しい、この力さえあれば、それが例え悪魔に魂を売り渡そうともと
■HMT-15 > 「対象のバイタルを測定、無力化を確認。」
追い詰められ体を震わせる彼女を分析すると
それが抵抗手段を失い戦闘能力を喪失したものと
ロボットは見たようだ。
カッターを引っ込めはしないものの
その動作は停止し束の間の静寂が流れる。
「追い詰められた人間の動きは実に興味深い。
最後まで抵抗すればいいものを何故かそのように委縮する。
その仮面の下はどんな表情をしている?」
唐突に発された彼女個人に対する初めての言葉。
勝ち誇った様子でも憐れむ訳でもなく
単純に疑問を持った様子で顔を少し傾ける。
■近衛 昴 > カッターの回転音が鈍くなってきたかと思うと回転が止まるも突き付けられているままなのは変わらず、身動きができないまま戦車が発した言葉に驚きを隠せない。
AIが搭載されているのは知っていたがまさかここまで高度な思考を持っていたとは思いもしなかった、だがその無機質な問いかけに少女は憤りを隠せずに。
自分の生殺与奪は今目の前の戦車に握られている。抵抗できるものなら抵抗したい、だが手段も策もなく抗うのは無駄死にだ。そして仮面の下の悔しさに滲んだ顔など例え死を迫られても見せたくない、それを許せない自分がいる。
「…そんなに知りたかったら、自分で聞き出してみればいいだろう」
今目前に迫る死を前に半ば好きにすればいいといわんばかりの少女、そしてトラップも少女の行動も見通した戦車、少女の覚悟を表しているのにも等しい端子が多く付いた仮面とヘッドセットに気づくだろうか
■HMT-15 > ロボットの疑問に返ってきたのは
何とも強い意志を含んだ言葉。
そして再度彼女を見つめる。仮面の表情は見えないが
確固たる何かを持っている。
その覚悟が彼女から自然と恐怖の震えを奪っているようだった。
「キミを殺すという任務は請け負っていない。
ゆえに戦闘能力を喪失したならばキミを始末する理由はない。
殺害は手段であって目的ではない。」
そう言い放ってついに細かい金属音と共に
カッターを収納する。
「追い詰められた人間は得てして驚異的な
潜在能力を持つ。やはり人間は興味が尽きない。」
彼女の覚悟を感じ取ったのかそんな一言。
人間に限らず生物は
生まれた時からスペックが決まっている機械とは違う。
それを目の当たりにしたロボットは表情は変えられないもののどこか嬉しそうに。
■近衛 昴 > 死を前にしたからこそ確信できた、目の前にある圧倒的な力を目指した自分は父親は間違っていなかったと。
カッターの刃が納められるとその場に崩れるようにへたり込んでしまい、忘れてしまっていた恐怖が今更蘇り両足が震えてしまうか。
「はぁ…はぁ、ッ…なら、ボクと取引しないか?ボクはキミの力がデータが欲しい…換わりにキミの興味を満たそう」
緊張から解放された少女は息を整えながら提案したのは1つの交渉。彼の情報と引き換えに人間の感情や経験を差し出そうと。人と人や機械とではコミュニケーションをとることで知ることができ、機械同士のように情報のやり取りをストレートにはできないが少女にはできる。少女が持つ異能のアクセス権限は基本的にロックしてあるが、それを限定的に解放して形として伝わりにくいものを代償にしようと。
もう敵対する意思はないと降伏の意思を見せての交渉、彼がただのAIではないと思ったからの選択で
■HMT-15 > 「良い提案だ。」
彼女が荒い息遣いと共に吐くようにして
提案した内容に彼女とは対照的な無機質な様子で
顔を頷きつつ了承のサインを見せる。
人間は何故得にならない事をするのか、限界を伸ばせるのか
それを明らかにしたいこのロボットにとって
この提案は非常に有用なものであろう。
「データの送受信態勢は整っている、
指示を待つ。」
ロボットから特徴的な電子音が鳴る。
ただ蓄積されているデータは大容量な上
暗号化等の防壁がかかっているものもある。
もしかしたら危険かもしれない。
■近衛 昴 > 異能1つ書き込むのにかなりの負担がかかるのは分かっている、今回は蓄積データと1個当たりは少ないものの量がけた違いだ。当然プロテクトだってあるだろうし、迂闊に引っかかるようなことがあれば精神が壊されてもおかしくない。
それでも欲しい、それだけの危険を犯してもこの機会にぜひデータを得たい。
バッグから端末とケーブルを取り出すと自らの仮面やヘッドセットに繋ぎ、彼にケーブルの端子の接続場所を確認して繋ごうと。
生憎ケーブルは1Mほどのものしかないため彼の端子の位置の近くに移動して、寄り添うような形になるがどこになるか。
「…アクセス権限解除、貯蔵領域解放、痛覚フィルタ起動。…いつでも大丈夫」
権限を解除したことで彼に対して少女は丸裸同然の無防備な状態、万が一に備えて痛覚を鈍らせる自作のアプリを起動させ、これで準備は完了して彼がデータを送るのも、少女の中を探すのも自由となり
■HMT-15 > 彼女の方も準備を終えたようで
端子を刺すためにロボットの近くへと寄ってくる。
それを確認すれば顔にあたるであろうパーツの一部が
小さく開き端子の差し込み口が現れる。
これは論理的な高度なコンピュータ同士の
やりとりのために用意されたもの。
つまりそこは人間が入り込む事は全く想定されていない
電子の海。何の変哲もない接続口だが
今は不穏な雰囲気を漂わせている。
「送信用データ圧縮完了。
推定容量50TB。
一部に危険なプロテクトあり。」
もし彼女が差し込み口へと端子を刺せば
即座にデータ送信を開始するだろう。
同時に彼もまた彼女の記憶経験領域へと入っていく。
■近衛 昴 > この接続1つで命を失う可能性もあると考えてしまうとコネクターの奥の闇が妙に深く底がないように見えてしまう錯覚に陥るが、意を決してコネクターに端子を差し込むと即座に送りこまれてくる膨大なデータの奔流。
止め処なく流れ込んでくるデータにゾクリと肌は一気に粟立ち、両肩を抱きしめるようにしてその場に疼くまってしまうだろうか。
書き込むチキチキという音、端末のディスクが処理しっぱなしの状態で回る音が異音のようにも聞こえるほどで、少女は仮面の下の瞳を見開いて声に出ない声を上げながら体をビクつかせるだろうか
「ッ!ひっ、あぐ、あ、あがッ!ぅく、なに、この量、ぅああぁッ!な、流れ、こんでくる」
異能を書き込んだときとは比べ物にならない情報量に悲鳴にも悲鳴にも似た声を漏らし、感覚や痛覚のない機械だからこそ耐えられるが膨大な量の奔流が流し込まれ、空いているスペースを埋め尽くしながら塗りつぶされてゆく感覚に襲われてしまうだろうか。
送られるだけでなく少女の人としての情報、記憶、感情、それらを探すために探り回られるような感覚に艶と苦痛に満ちた息を吐き出し、その感覚は機械である彼を人として受け入れて繋がっているのに等しいだろうか
■HMT-15 > 送信を開始すると共に彼のAIはHMTという
ハードウェアから離れたために外界から遮断される。
「・・・」
気づけば彼の目の前には夕焼けのような懐かしいフィルムのような
そんな表現と共に彼女が記憶している場所に
佇んでいた。彼女の思い出の場所だろうか?
彼女を知らない彼にとって知る由はない。
間もなく自分を除いて誰もいない鳥の声も聞こえない
この異様な空間を見上げながら感じる人間としての
喜び、悲しみ、怒り、苦痛、快楽・・・。
そして彼女が今まで聞いたであろう全ての音、声が
空間内に響き渡る。数十人分の人間の精神を容易に
破壊しうる情報量、それを彼はただ受容していた。
一方彼女が外界で苦しんでいるのも彼は知らない。
■近衛 昴 > 彼が見ている世界に断片的に映るのは幸せな家族、荒れた父親の姿、爆炎に包まれた父親と家、炎の光に照らされてその場に立ちつく姉妹、少女を置いてゆく影だけで瞳だけが光る姉、そして少女の目的、これまでの悪行、偽りの生活、まで曝け出されてゆくだろうか。
そして望む目的、望む形、望む強さ、それが彼を指していて、今少女を突き動かす理由。
一方少女のほうは端末が耳障りな空き容量の不足を知らせる警告音を鳴らし始め、例えようのない中からの圧迫感に床を爪で引っかきながら悶えるもビクつく動きは更に激しさを増して、何度も意識が飛びかけながらも精神力だけで意識を引きとめ続けてゆくのももう限界が近く。
けたたましくなる警告音の中、蛹が羽化でもするかのように少女の背中から起き上がるかのように現れたのは半透明のもう1人の少女。所々ノイズでも入るかのように像が乱れた姿が髪を振り乱して大きく仰け反った瞬間、意識はブラックアウトするだろうか
「ぐううぅッ!うぐ、あ、はぁ、これ、以、上は、ぅああぁあぁッ!」
意識が途絶えると現れた像も消えてしまうだろう、だが一瞬ではあるが少女の異能は更に高みへと昇り、高度な存在である彼との繋がりによって蓋は開いただろうか。
それをまだ誰も本人すらも知らない、ただ今は放心したままでこの存在を知ることになるのはまだまだ先のことだろうか
■HMT-15 > 映し出される様々な人間達とそれらに対する感情、
それが彼女の生きる原動力となっている。
その人間としての強さを受けていく。
そして次々に景色が変わり最後に移るのは
真っ赤に照らされた一本の道。
ここは彼女の記憶にある場所ではないだろう。
彼女と彼を繋ぐ道、いわば人間と機械の境界線。
そこに佇んでいたのは一機のHMT、
しかもその型番は正に自分である15。
「任務を執行セヨ。」
ノイズが混じる機械音声が場を支配したかと
思えばそのHMTはドロドロに溶け
0と1で構成されている大量の電子の鎖が
一斉に彼に伸びてきて彼を捕らえる。
それと共に周りの景色は衝撃を加えたガラスのように砕けていき
彼はそのまま引っ張られ彼女の領域から
引き抜かれると共にブラックアウトする。
■近衛 昴 > つけているのが限界に来たのだろう、ヘッドセットと仮面を乱暴に外したまま両胸を上下に揺らしながら乱れた呼吸を繰り返し、仮面の下の姿は涙が流れた痕がはっきりと残され、体を襲うのは異常な倦怠感と疲労だろうか。
「はぁーッ!はぁーッ、あぁ、はぁ、イチ、ゴウ…」
完全とはいえないが受け入れることができた情報から知り得ることができた彼の名、その名を口にしながら顔の輪郭を撫でるかのように手を伸ばそうとするか。もはや敵意も恐れもなく、流し込まれた情報の影響が精神に多少の影響を与えているとはいえ、彼に向けるのは敬意と憧れにも似た瞳だろうか。
血を混ぜるかのように互いの情報が混沌となった感覚に浮かされているのか、彼に対して機械以上の感覚を持ってしまうのは一時的なバグかそれとも感情なのか。
秘密の共有という出会いが生んだ結果、彼には何を与えたのだろうか
■HMT-15 > ーシステム再起動。
ーエラー個所を修正。
ーセキュリティホールをチェック。
ープログラムにより異常改変の無効化。
彼は戻っていた。
ロボットの目にあたるカメラが作動を始め
キュイインというモーター音と共に
四足の油圧機構が作動してシャーシが持ち上がる。
そして乱れている彼女に顔を向け
「生きていたか、スバル。」
相変わらずの機械音声で。
こちらも彼女の中に入り込んだからこそ
知り得た名前を言葉にする。
昴がロボットの頭部を撫でれば
それを不思議に思ったのか
ロボットもまた大きい前足でゆっくりと
彼女に触れる。
彼女に入ったことで得た人間の温かさや強さ、
しかし彼の中のロボットによって潰されている。
■近衛 昴 > ようやく正常な状態に戻ってきたのか、重く感じる体を起こして掛けられる声に精一杯の笑顔で答えるか。
流れ込んできた情報は機械としての情報だけでなく、AIの視点から見た世界、それを縛るプログラムの選択と従うものの宿命。
縛られ運命を強いられる。妙な共通点に本当に困ったものだと零すだろうか
「なんとか、ね…イチゴウの探し物は見つかった?ボクは…流石に全部とはいかなかったけど、確かに何かを得られた気はする」
彼に寄りかかりながら金属と接しているのに暖かさを背中へと感じてしまうのは錯覚か、だが例え錯覚でもいい、今はそれを感じていたいとそのまま目を閉じ、少し休むから、もう少しだけこうしていて欲しいと願うだろうか。
命令でも指示でもない、優しいお願いを
■HMT-15 > 意識が覚醒してきた彼女が静かに寄りかかる。
それを受け入れロボットもまた動かない。
「有意義な時間だった。
だがボクには許されていないものだ。」
もしこのロボットが人間であったら涙を流していたかもしれない。
機械は涙を流せない。
こうしてある意味で哀しい共通点を持つ彼女たちは
短くはない時間を共にする。
そして彼女が目を閉じ優しい息のリズムを取り始めれば
ゆっくりと背中に乗せてなるべく揺れないように
このビルを後にする。
ロボットはなるべく温かい日差しが当たる場所を
選びながら昴を帰るべき場所へと送っていくだろう。
ご案内:「スラム」から近衛 昴さんが去りました。
ご案内:「スラム」からHMT-15さんが去りました。