2017/10/16 のログ
ご案内:「スラム」に神代 理央さんが現れました。
■神代 理央 > スラム街の一角。街灯も、建物から漏れる灯りも無い薄暗い通りの一角で、下卑た笑いを浮かべる男達に囲まれる少年の姿があった。
普段引き連れている異形の姿も無く、男達には小柄な少年が格好の獲物に見えたのだろう。
彼等が多少なりとも風紀委員についての情報を得ていれば。或いは、歓楽街や落第街の情報を得ていれば。此の少年が普段は醜い金属の化物を引き連れていることを知り得たかもしれない。だが、そうはならなかった。
「…格闘術というのは今ひとつ不得手でな。上手く出来ないが、其処は勘弁して欲しい。何、命まで取る事はせぬよ」
無作法に手を伸ばしてきた男の手を掴み、握る。
身体中に流れる魔力が掌に集中し――男の手首が、肉と骨が砕ける破砕音を立てる。
「…加減が分からん。此処までするつもりではなかったのだが。いや、本当だ。軽く捻ってみるつもりだったんだ。すまない」
困ったように表情を曇らせながら、手を離して自分の掌を見つめる。
尤も、その声は男の上げる絶叫によってかき消されているのだが。
■神代 理央 > 手を離した少年に怒声と共に殴りかかる男二人。
だが、少年の身体にその拳が触れた瞬間、鈍い音と共に男達の拳は奇妙な方向に折れ曲がる。
「…此方は上手く機能している様だな。防御系統の方が向いているということか」
先程と同様に体内の魔力を皮膚の上層部に纏わせる事により、その硬度を飛躍的に高める魔術。
鋼鉄を思い切り殴りつけたに等しい行為を行った男達は、拳を庇い悲鳴を上げながら後ずさる。
「となると、やはり習熟すべきは攻撃面か。どう加減して良いか、しっかりと身体で覚えねばならん…な」
先程手首を粉砕され、蹲る男に歩み寄れば無造作に蹴り上げる。
刹那、男の身体はサッカーボールの様に跳ね上がり、路地裏の奥へと消えていく。
呻き声が聞こえるので、死んではいないだろう。
「筋力量の増加、というよりも、魔力によるブーストという方が正しいか。魔力切れにも留意せねばならんな」
さて、と残った男達に視線を向けるが、路地裏に蹴り飛ばされた仲間を見捨てて既に脱兎のごとく駆け出していた。
やれやれ、と小さく首を振ると、ポケットから取り出したハンカチで手を拭う。