2017/10/23 のログ
ご案内:「スラム」に陽太さんが現れました。
陽太 > 数日ぶりに出たあばら屋の外の世界はいつものように濁って虚ろだ。
通りを堂々と歩きながら、陽太ははーっと沈痛なため息を吐き出す。

「だめだ.....。なんかますますさむくなってる...」

かじかんだ裸足にはもう慣れた。
問題は、金を持っているようなスラムの住人が
防寒具の上着を着込み始めたことだろう。

つまり、スリの難易度が上がったのである。

陽太 > 元よりスリの警戒は怠っていないらしい連中だ。
冬はお互い生活も厳しいし、一銭でも無駄にはできない。
だからこそ陽太は数日前まで、一日中街を駆け回り
冬の備えを蓄えていたというのに。

「...ぜんぶ、異能のせいだ...」

ぎり、と柔らかい唇が噛み締められ口内に血が染み込む。
いつにもまして澱んだ瞳を宙にゆらりと向けた。
先日異能が暴走し、身体的にも精神的にも陽太は多大なショックを受けてあばら屋で数日寝込んでいた。

そのせいで備えは疎かに。
充分な準備も無いままに、本格的に冬を迎えそうなのだ。

陽太 > 「...ちがう。おれのせいだ」

自分が制御できていないのが悪い。
だから、きっと自業自得。
この忌々しい異能に好き勝手されて、何もできない自分。
それが一番大嫌いだ。

「.....やらないと、生きないと」

恨み言はそのままに、陽太はぶつぶつと呟きながら道を往く。
____足元の陰がぐにゃり、と歪に曲がったことに気づけぬまま。

ご案内:「スラム」から陽太さんが去りました。