2017/10/29 のログ
ご案内:「スラム」に狗隠さんが現れました。
■狗隠 > スラム――毎日のように、誰とも知らぬ者が飢え、乾き、奪われ、そして朽ちて死んでいく。
そんな場所で生まれた怪異として、この狗にとってここはホームグラウンドようなもの。
このスラムや落第街、負の淀みが強い場所で死んだ者はこの狗のご馳走であり糧でもある。
言い換えれば…スラム等で死者が出る限り、この狗は半ば不滅の存在でもある。
そんな怪異も、狗の姿では目立つと知っているので、当然擬態…変身は行う。
今、このスラムを歩いているボロボロの服装の長身痩躯。この姿が仮初の人型としての狗の姿だ。
「……ふむ、今の時間帯は矢張り死者は少ないらしい」
歩きながら、それとなくこの近辺の死者の気配を探るが…今の時間帯はまだ少数だ。
とはいえ、最近は例の風紀委員会とやらの大規模な鎮圧行動もあると聞く。
「…君子危うきに何とやら、か。彼らには近づかぬ方が賢明だろう」
もっとも、こちらから近づく気は無くてもあちらから、となると交戦も視野に入れなければならないが。
ご案内:「スラム」にHMT-15さんが現れました。
■HMT-15 > 時間帯が時間帯だからか
スラムに似つかわしい静けさが辺りを支配する。
この点は表の場所とは対照的だ。
そしてその奥から特徴的な金属音を響かせながら
歩いてくるこれまた特徴的なシャーシ。
それはまっすぐ正面を見つめ一定の歩幅で歩き続け
ごく自然にボロボロの身なりをしている長身の人型
追い抜かすだろう。
「怪異を検知、攻撃開始。」
しかしその四足戦車はその人型を追い抜かした瞬間に
素早くターン、それから右前足の閉じた鋏を振り上げ貫かんばかりに突進する。
■狗隠 > 「………む?」
人型には少しずつ慣れて来てはいるが、矢張り本来の狗の姿に比べればまだまだだ。
それでも、擬態に慣れておくに越した事は無い。人の社会に紛れるなら尚更にだ。
そんな折、歩いていれば後ろから金属音が聞こえてくる。そちらへと何気なく振り返り…赤い瞳を瞬きさせる。
「……機械……ロボットというものだろうか?」
小さく独り言をつぶやきながら、ごく自然にこちらを追い抜かして先を行くそのロボットを見送る――筈だった。
「……!」
いきなりのターン…そして突進。ロボットの右前足を注視しつつ、地面を転がるようにして突進をギリギリ回避。
(……参ったな。本来の姿ならまだしも人間の擬態ではかなり不利と見た)
素早く身を起こしながら追撃に備えんと。だが、今ここで露骨に怪異としての本性を見せる訳にもいかない。
■HMT-15 > 「目標が回避。」
やや大ぶりに繰り出された突きは緊急回避によって
避けられてしまう。
しかし攻撃の手を緩めることはなく
両前足から素早く展開されたのは半円だけせり出した
回転カッター、所謂丸鋸だ。
態勢を立て直す人型の方向へ即座に向くと
前右足を前に構えるような位置へ持っていき
後ろ足で地面を蹴ってその人型の方へと飛びあがっていく。
どうやら胴体から真っ二つにするつもりのようだ。
■狗隠 > ロボット…いや、機械と戦うのは生まれたばかりの怪異である狗にとっては初めての経験だ。
当然、そのギミック等も何も知らないので警戒するのは当然。相手との距離を測りながら立ち上がり緩く身構える。
「……君は…何者だ?」
まともな返答が返ってくるとも思えないが、一応そう尋ねて対話を試みる。
だが、目の前のロボットの両前足から展開されたのは半円状に展開した回転する刃。
(……いきなり怪異と見破られたのもそうだが、情報が少なすぎる)
そして、あちらは問答無用…どうしたものか。と、飛び上がるようにして襲い掛かってきたロボットを赤い瞳で見据え。
「……正当防衛、というのだったか?それくらいはさせて貰おう」
右手を前に突き出し、風の防御魔術を瞬時に展開する。学園の魔術に照らし合わせれば上級クラスの防御魔術だ。
右手を中心に円形に直径1メートル程度。だが圧縮された空気の壁を三重に展開して丸鋸の刃を受け止めんと。
そして、同時にバックステップで距離を取ろうと試みる。単純にあちらの方が重量もあるだろうから、彼の飛び上がる勢いを利用しようとする形だ。
■HMT-15 > エネルギーを乗せたカッター攻撃は
そのまま相手を両断するはずだった。
しかし相手が展開したのは高レベルの魔術防御。
相手の目前でカッターは不可視の防壁に阻まれ
激しい火花をまき散らす。さらに四足戦車の足は
地についていないのでパワーで無理やり押すこともできず
反作用で飛んでいき反対側のコンクリート壁を見事に粉砕し
半ばコンクリートの破片に埋もれる形となる。
しばらく動かないかと思えば
急に前右足を動かし始め鋏で邪魔なコンクリートブロックを
容易に粉砕しつつ瓦礫の山から出てくる。
もう一度通りへと復帰すると先程の人型の
質問を思い出したのか
「ボクは風紀委員会、特別攻撃課所属のHMT-15。
与えられた任務に基づき怪異を排除する。」
人型へ向けて発される低音かつ無機質な音声。
同時に停止していたカッターを再度耳障りな音を
奏でながら始動させる。
■狗隠 > (…分かってはいたが、矢張り重量に差があり過ぎるな)
風の防御魔術は功を奏したようだが、あのまま踏ん張っていたら逆にこちらが押し負けてバランスを崩していただろう。
彼の重さと勢いを利用して後ろに跳んだ判断は間違いではなかった。
と、あちらは弾かれる様に反対側へと吹っ飛んでコンクリート壁を派手に突き破って埋もれてしまう。
「……済まない。大丈夫――と、聞くまでも無かったか」
律儀に謝罪する辺り、世間ズレしているか生真面目なのか。暫く動かぬロボットを眺めつつ不意打ちには備えておく。
そして、不意に彼の右前足が駆動し鋏でコンクリート製のブロックを粉砕して崩れた瓦礫から出てきた。
「…もしや、とは思っていたが矢張りか…一番関わりたくない組織だとは」
この狗を主に構成するのは死者の想念。当然、風紀委員会の作戦で死んだ者も含まれる。
風紀委員会、特別攻撃課…死者の記憶からその情報を探り当てていく。
…成る程、表面上の情報しか分からないが兎に角、厄介な部署なのは間違いないようだ。
「……しかし、そうなると見逃したり引いてくれる事は無い…か」
怪異とはいえ、明確な自我があり人間臭い面を多大に併せ持つこの狗。獣と人の感性の双方が訴える。
今はまだ対処できるが、彼が本格的にこちらを殲滅に掛かればおそらく蹂躙されるだろう。
(…私の存在からして滅びる事はまず無いが、戦闘不能からの肉体の再構成は消費が激しい)
しかも、人型の状態では怪異の力もかなり制限される。唯一、魔術を使えるのは人型限定の特権だが…。
素早く死者の記憶を探り、何か戦闘技能に長けた記憶を己の中に定着させていく。
無言で一息。風の魔術を再度、今度は右手に刀剣状に空気を固めて不可視の長大な刃を作り上げ。
「……さて、」
その場から動かず、右手を振り抜いて不可視の刃の一撃を見舞わんと。狙いは彼本体ではなく…その物騒な両前足。斬り飛ばし武器を使用不能せんと。
■HMT-15 > 目の前の人型怪異を見上げその紅眼を見つめる。
怪異には似つかわしい人間のような動作をし
かつ高度な術式も駆使する。
恐らく複数のフォルムを有している可能性も捨てられない。
動かずに相手を分析していると
先に人型が行動に出る。何かの魔術を行使し
構えているが視覚的には変化はない。
「攻撃領域をマッピング。」
四足戦車の視界では相手が展開した不可視の刃に
特殊な色付けがなされる。
勿論、魔術に対応していない者ならば反応すら出来ずに
切り伏せられるだろうがこの四足戦車は
振り下ろされた刃に反応し即座に横方向へスライド。
相手の斜め横方向からもう一度前右足の突きを繰り出す。
■狗隠 > 現状、彼の姿は本来の黒狗の姿と人型の2種類に大別して限定される。人型は性別なども自由自在ではあるが…。
彼の考えているように、複数のフォルム、という程の多彩さは残念ながら現時点では備えておらず。
もっとも、不利なのは現状こちらだ。何せ機械…ロボットとの戦闘経験が無いのだから。
「……む。」
風の魔術で作り上げた不可視の刃の一撃。決して遅い速度ではないつもりだ。
死者の記憶から、刀剣の扱いに長けた者のソレを引き出して応用したのだから。
しかし、不可視の刃が『見える』とでも言うのか、彼は横方向にスライドして回避する。
(…おそらく彼の機能、なのだろう。センサーとやらの類かもしれないが)
怪異とバレたのもそういうシステムなのかもしれない。脳裏で考えを巡らせながら彼の反撃を見据える。
斜め横から右の前足の一撃。即座に接近戦では取り回しに不利な長大な風の刃を解除する。
代わりに、両手に刃渡りの短い不可視の刃を2本形成…両手で交差させるように構えて受け止め…いなす。
反動でその身を真横へと飛ばし、ナイフを消して今度は闇属性の魔術を展開。突き出した右手から黒い砲弾のような衝撃を放つ。
■HMT-15 > 相手の隙を見て繰り出された突きであったが
相手もまた素早く反応して次の一手に出る。
射貫く様に出した前右足は新たに展開された
2つの不可視の刃によって流される。
あちらと同じでこの四足戦車も鈍くはなく
むしろ速い分類になるだろう。その攻撃に反応し
さらに流すとなると高い戦闘力を内包しているのは
間違いがない。
人型は流した際の反動を利用して横へと飛ぶ。
そして間髪入れずに放たれる闇の砲弾、
攻撃を空振った後というのもあり流石に回避不能。
砲弾に対して浅い角度になるようにシャーシを位置取り
その砲弾を受け形先程反作用で壁に飛んだのとは
比べ物にならないほどの勢いで地面に叩きつけられる。
「シャーシへのダメージ軽微。
対象を高脅威目標に指定。」
シャーシを立て直すとバックスライドで
相手と距離を離すように後ろへ下がっていく。
無論逃げるわけではなさそうだが・・・
■狗隠 > 「……速いな。重さはあるが小柄で四本足…機械には詳しくないが…馬力があるというやつか」
人型にまだ完全に慣れているとは言い難い。現状まだ受け流せているが、それでも膠着状態がせいぜいだ。
とはいえ、狗には自覚が無いが彼自身の身のこなしは矢張り速い。少なくともあちらの速度に対処出来る程度には。
攻撃をいなし、その衝撃や反動を利用して真横に飛んでからの即座のカウンター。
闇の砲弾じみた衝撃波の魔術は彼に命中…いや、直撃はしていないとその赤い瞳は捉えていた。
(…角度を変えられた。あれでは直撃には程遠いだろう。命中しただけ御の字というものか)
とはいえ、思い切り地面に叩き付ける程度には衝撃は通ったようだ。
もっとも、あちらがそれくらいで戦闘不能や撤退するとは全く思わない。
そして、彼自身の意思に関わらずあちらからの脅威認定が高まっていく悪循環。
「……?」
彼が今度は距離を取った。一瞬、退却してくれるか?とも思ったが、嫌な予感がする。
人間でいう直感、獣でいう野生の勘というものだ。曖昧な感覚だがこれは馬鹿に出来ない。
何があっても対処出来るように、右手を緩く構えて魔術の展開を可能にしておく。
もし、この開いた距離で攻撃してくるとなれば―…遠距離攻撃…射撃、砲撃だろうか?
■HMT-15 > 「制圧モードへ移行、機能開放ステージ1。」
機械音声と共に背部が眩く発光し
現れたのは相手の読み通り
ロボットの全長をはみ出す大型の大口径機関砲。
レーザーサイトが点灯し4本の砲身を回転させると
次の瞬間耳を塞ぎたくなるほどの轟音が響き渡る。
多砲身だからこそ実現できるその常識はずれな連射速度で
砲弾の雨とも形容できる攻撃を相手へと降り注がせていく。
■狗隠 > 「……あぁ、これは――」
結構マズいな、と思う程度の余裕はどうやらあったらしい。彼の背部が輝いたかと思えば、現れた大口径の機関砲。
そして、レーザーサイトが点灯し、こちらを捉え…次の瞬間、轟音と共に無慈悲に砲弾の雨とも言える多重連射がこちらに襲い掛かる。
着弾の衝撃で狗の周囲の地形も無残な物へと変わっていく中、その中心に居る狗はといえば…。
(…いかんな。これは適わん)
先ほどよりも大きな、全身を覆う直径2メートルくらいの空気の盾を展開。三重どころか五重、六重に重ねている。
が、それでもあちらの連射によりジワジワとだが空気の層が貫かれていく。
普通に考えれば、真っ向から魔術ありとはいえ持ち応えているのが非常識なのだが…そこは怪異だ。
魔力量や質は人間とは比較にならないし、空気を固めるソレも魔力で補強してかなり頑強となっている。
(…いかん、これだと後数秒程度が限界だ。かといって、迂闊に動けば)
それはそれで、別の射撃武器などがあれば的にされてしまう。だが、このままでは数秒後に蜂の巣どころではなくなる。
「――本来の…いや、駄目だな」
黒狗の姿になろうとして即座に却下する。あのロボットは風紀委員会の所属だ。
人型のこの姿はもう記録されているだろう。本来の姿も記録されたら活動し難くなる。
そうこうしている間に、既に空気の盾は最後の一枚。特別分厚いそれを残すのみで。
■HMT-15 > ガトリング砲が唸りをあげながら
装甲車をボロボロにする20mm弾を無慈悲に叩き込んでいき
それはこの人型怪異の展開した高いレベルの魔術防壁
さえも崩していく。
「対象の防御を突破。」
そして相手の防壁も残り最後とあればラストスパートと言わんばかりに
攻撃を実行し続ける。数十秒にも及ぶ長い射撃で
回転するその砲身は赤く変色していた。
相手の防壁が崩れ去るのが先か砲身がオーバーヒートするのが先か
一種の体力勝負の形となる。
■狗隠 > 幾ら魔力の質や量が高く、本来あっさり貫かれそうな空気の圧縮盾を補強しようと限界は当然ある。
それでも、彼の砲身がオーバーヒート寸前までその盾が持ち応えたのはあちらの想定以上、だろうか?
だが、圧縮空気の盾もその最後の一枚がもあちらの砲身が限界を迎える直前、ついに突破され――…
「……くっ…!」
咄嗟に身を横に思い切り飛ばし少しでも弾幕を回避せんと。だが次の瞬間、右腕が丸ごと肉片すら残さず吹っ飛んだ。
鮮血が噴出すのは、この擬態がかなり人間としての肉体を正確に忠実に再現しているからだ。
だが、右腕を失いながらも残る左手を彼へと素早く向け、弾幕で全身が右腕と同じ末路になる前に――
「……せめて痛み分けくらいにはさせて欲しいものだな…!」
次の瞬間、先ほどよりも巨大な闇の砲弾…更に、螺旋状に渦巻く風でコーティングされたソレを彼へと放つ。
螺旋状に渦巻く風は一瞬でその範囲を広げ、周囲数メートルを巻き込みながら闇と風の衝撃波はあちらへと迫るか。
■HMT-15 > 「目標に命中。」
間を入れない砲弾によって相手の防御を突破し
その上で相手の右腕を破壊する事に成功した。
おぞましい量の血が出てくる所は人間のようだが
あの状態で動けることから人間とは考えられない。
そして相手が最後の一撃と言わんばかりに
強大な魔術反応を持つ攻撃を繰り出しそれは
この四足戦車を飲み込まんとする。
勿論そのまま受ければただでは済まないだろう。
制圧モードによって機動力が落ちている以上、
スライドでの回避も無理がある。
しかしこの戦車が持つ防御手段はそれだけはない。
「IFGSオンライン。」
魔術や異能を持つ者ならば辺り一帯にまるで
空間が歪むようなそんな感覚が全身に響き渡るだろう。
これはいわば異能魔術の無効化システム。
相手の放った強大な一撃を激しく減衰させ常識的な威力にした上で
戦車は自身の装甲で受ける。
あとは満身創痍であろう相手に最後の砲撃を叩き込むだけ。
それだけなのだが人型の高度な魔術壁によって
予想を反する長時間砲撃を強いられてしまった。
それによって背部の砲身は真っ赤に変色し
香ばしい音と共に煙をあげている。
とても砲撃できるような状況ではない。
■狗隠 > 実を言えば、例えこの姿が消滅しようと時間が経過すれば復活はするのだ。
だが、人型の状態では痛覚も再現されている。消滅するその一瞬の地獄はあまり体験したくは無い。
(…何より、このロボットに…いや、風紀委員会の者に本来の姿を晒すのは極力避けたい)
それが第一だ。ならば腕一本くらいは止むを得まい。どのみち、死者の想念を吸収すれば肉体再生は可能だ。
ならば、現状はどう彼を退けるか。あるいはこちらが離脱する時間を稼ぐか。
起死回生の一発を狙ってはみたものの、不意に空間全体が歪むような感覚。
それと同時に、明らかに螺旋状の風が弱まり、闇の砲弾も大きさを縮め…彼の装甲で受け止められる程度に減衰されてしまった。
「……参った。仕掛けは分からないが魔術の減衰…いや、無効化手段があるのか」
だが、彼の防御手段が分かったのは大きな収穫だ。迂闊な魔術攻撃…特に、今のような遠距離主体の相手には避けたほうがいい。
とはいえ、身を素早く起こしたはいいが、右腕の出血が酷い。風の魔術で素早く止血しつつも相手の状態を即座に看破する。
(…機会は今しかない。あの砲身ではどのみち直ぐには撃てないだろう。だが別の射撃兵器がある可能性が高い)
ならば、と。彼が別の武器に切り替え、止めを刺そうとする前に離脱する。
全身に風の魔術を纏い、そのまま不意に飛び上がってバラックの一つ、屋根の上に着地。
そこからは、まるで獣のように風の推進力を加算しての全力逃亡だ。
右腕を失ってバランスが悪いし、人型では本来の姿に比べ速度は落ちるが仕方ない。
■HMT-15 > 「現状では対処不能、これより撤退する。」
相手の人型はバラックを利用し離脱を図る。
砲身もオーバーヒートし砲撃不可、
距離と相手の速度を考慮して近距離攻撃は間に合わない。
そう考えた四足戦車もまた離脱を行う。
すると戦車はガトリング砲を出現させた時と
同じ発光を今度はその胴体で発生させると
戦車の姿はその場から跡形もなく消滅する。
辺りもだんだん暗くなり
怪異と戦車との戦闘によっていつにも増して
不毛の地となったスラムには徐々に人が増え始めていた。
■狗隠 > 「…全く、腕一本とはいえ、まだ誕生したばかりの身では再生も多少時間が掛かるのだがな…」
もっと年月を重ね、あるいは捕食して進化をすれば肉体再生の効率は上昇する。
だが、現状では腕一本、死者の想念には困らないが形作るまでに数日を要するだろう。
(…本来の姿が三本足になるとバランスが悪くなるな…仕方ない。人型をなるべく保つとしようか)
不安定なバラックの上を、風の魔術による推進力と怪異らしい身体能力で危なげなく疾走する。
どうやら追撃はされていないらしい。彼の方も撤退を選択したのだろうと推測する。
「HMT-15…だったか。厄介な者に覚えられたものだな」
憂鬱そうにため息を零す仕草は人間そのものだ。そのまま、一時的に隻腕となった黒狗の怪異もこの区域を去るのであった。
ご案内:「スラム」からHMT-15さんが去りました。
ご案内:「スラム」から狗隠さんが去りました。