2018/06/12 のログ
神代理央 > 「なにせ、お前がそんな見栄えの良い現れ方をするとは思わなくてな。口を開かなければ、良い被写体になるだろうに」

幾分得意げな彼女の言葉に、フンと鼻で笑いながら首を振る。
しかし、次いで彼女から投げかけられた言葉には、たちまち顰めっ面を浮かべる事になるだろう。

「私とて、本来であればそうしたいのは山々だ。こういう無秩序な暴力を引き起こした事は、私の落ち度である事は認めよう。流石に、猿の軍団を指揮して戦争ごっこは出来ん。
……それと、私の容姿と異能は断じて関係無い。仮に私が筋骨隆々の男性だとしても、率いるモノが変わる訳でも無い」

風紀委員達の暴走については、自身の落ち度から苦い表情を。
そして、内心気にしている容姿についての話題になればその表情は更に苦虫をダースで噛み潰した様な表情になるだろう。
彼女よりも身長が高い事だけが、辛うじて己の矜持を保っているラインなのかもしれない。

ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「私が聖母と呼ばれていた理由が少しは理解できたんじゃないですか?
 戦場では口を開く前にこの子が火を噴いていましたから」

見栄えのいい現れ方。
随分昔に同じことをここではない場所で、違う人に言われた記憶がある。
銃さえなければ美しいのに、とも。

「まぁ、いくら風紀委員とはいえ、50口径弾を間近に食らえば驚くようではありましたけど。
 ふふ、その見た目はコンプレックスのようですね?
 鉄屑の眷属に囲まれるあなたも口を開かなければいい被写体ですよ」

自身の容姿を気にしていることを隠そうともしない彼の様子は実に滑稽だった。
明らかに不機嫌になる彼をおちょくる様に言うが、
これはある種彼の言葉に対する反撃なのだ。>

神代理央 > 「随分と口の悪い聖母様もあったものだ。そのM2は、聖母の慈悲とでも言うつもりか?」

彼女の様な少女が機関銃を振り回し戦場を駆け抜ける様を思い描けば、確かに味方の士気は上がるかも知れないなと僅かに思う。まして、その容姿は男性兵士達を鼓舞するのに十分過ぎる程なのだから。
尤も、それを口に出すのは負けた気がするので言葉にはしないのだが。

「煩い。私とて、好き好んでこの容姿に生まれついた訳ではないのだぞ。……まあ、お前が良い被写体というのは撤回しないが、もう少し発育が良ければな。さぞかし味方の士気も上がるだろうに」

容姿について反論する自分は、これまで彼女と対峙した時に比べれば随分と幼い―というより、年相応―になってしまうだろう。
その事実に気がついて更に額の皺を増やしたが、ふと彼女に視線を向けた後、小生意気な表情と共に小さく首をかしげて見せた。

ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「ふふ、一瞬でイエスのもとへと送り届けられるという意味では
 このM2も聖母の慈悲といえなくもないですね?」

50口径弾は一発身体に当たればその部位がちぎれるほどのエネルギーを持つ。
それを連射するのだ。当たれば即あの世に行ける。

「望まずして獣に生まれたわけでもないんですけどね?
 あら、風紀委員様は発育が良い女性が好みなんですか?
 それとも母性にあふれる身体が良いのでしょうか」

味方とは言うが、その言葉には多かれ少なかれ彼個人の好みが含まれるのではないか。
そういう趣旨でからかって見せる。
皮肉にも、不機嫌そうな表情を浮かべる彼はある意味では年相応に見える。
そして首を傾げた意図がくみ取れず、やや不思議そうな表情をして>

神代理央 > 「下手に戦場で死へのカウントダウンを味わうよりは、直ぐに死ねるというのは確かに慈悲なのかも知れんな。感謝されるかどうかは兎も角としても、な」

戦場において、死が救いとなるケースは少なからず存在する。
無論、一番は五体満足で帰還する事ではあるが、彼女の放つ銃弾が文字通り慈悲となる場合もあったのだろう。

「別に発育が良かろうが悪かろうが……というか、私の好み等関係あるまい。一般的な男性ならば、その方が良かろうという一般論だ」

からかう様な彼女の言葉に、ペースを乱されているなとムスッとした表情で頬をかく。
だが、此方の仕草を見て不思議そうな表情を浮かべた彼女に数歩近づくと―

「…まあ、発育が悪くても男を悦ばせる事は出来るだろうしな。それとも、戦場ではそういう事は習わなかったかね?」

先程の首を傾げた仕草は、癖のようなもの。特に深い意味等無かった。
だが、彼女が浮かべた不思議そうな表情――余り見たことのないその表情が随分と無防備に見えたので、彼女との距離を詰めて高慢な笑みを浮かべてみせる。
とはいえ、この程度の下世話な話では彼女が揺らぐとも思っていないのだが―

ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「まぁ、そういう人たちに最期の安らぎを与えるのもまた私の役目でもありましたけど。
 死人に口なし、感謝されるされないの差ではないんですよ。
 どんな時だって大切なのは生きている側がどうすべきかです」

死んだ人間に何を思おうが、生きている側の勝手なのだ。
死ぬほかに道がない人間に対して、生きている側がどうすべきか。
戦場ではそれが全てだ。この銃ですぐにでも送ってやろうが、
この魔術で安らぎを与えようが、生きている側の裁量なのだ。

「その一般男性に、あなたも含まれているのではないんですか?」

それを否定するのであれば、彼は自身を一般と認識していないことになる。
あれだけ自身の"外れた容姿"をきにかけていたのだから、
他の多数と同じ水準にありたいと願っているのだと思っていたのだ。

「……さぁ?私はあくまで殺しの道具でしたから。
 全身を血に染めた獣と交わることを望む男性なんて早々いません」

距離を詰められると、そこで初めて圧迫されるように身じろいだ。
ほぼ反射的といっていい動作だった。>

神代理央 > 「…確かにな。結局は生きている者が勝者だ。歴史を作るのも、死者の言葉を代弁するのも、全ては生きている者の権利だからな」

彼女の言葉に小さく頷き、同意の言葉を返す。
結局は死んでしまえば何も残らない。如何に高潔な死を遂げようと、慈悲のある死を迎えようと、その後を作るのは生者の特権なのだから。

「世間一般と私の好みが重複しているとは限らないだろう。そういった嗜好を否定はしないがな」

自分の容姿を気にしてはいるが、だからといって大多数に染まりたい訳でも無い。あくまで確固たる己を確立することに意義があるのだから。
などと考えていても、結局自身も男性であることには変わりないので、何とも歯切れの悪い返答になってしまうのだが。

「……ほう?成る程。聖母様は随分と純情であらせられる御様子。
だが、高潔な獣を屈服させたいと望む男もいるやも知れんぞ?」

此方の動作に身動ぐ彼女の姿は、何とも新鮮なものだった。
その反応を愉しむ様に更に一歩距離を詰める。そのまま、彼女の手を取ろうとゆっくりと手を伸ばすが―

ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「だからこその倫理観であり、慈悲であるわけですけどね。
 『倫理観というものは、弱者が強者を屈服させるための道具であり、そこに確固たる意志や理由などない』
 そう説いたのはニーチェでしたか。逆に言えば、生き残った強者は縛られて生きなければなりませんから」

特権ととらえるか、責任ととらえるか。そこは意見が分かれるところだろう。

「そこまで言われるとまるで
 『私は発育のいい女も好きだが、そうでない女のほうが好きだ』
 と遠回しに言っているようにも聞こえますが」

何とも歯切れの悪い解答をするのは彼のプライドからなのか。
そんな様子をからかうのは楽しいが、話の内容としてはあまり面白くない。

「聖母として純情なのではなく、道具として忠実なんですよ。
 だから私は聖母ではなく、機関銃になり果てたんです」

聖母に欲情する男は多いだろうが、
機関銃に欲情する男はまずいない。それが事実だ。
さらに距離を詰めて、手を取る彼の意図は何となくわかるが、
どうせからかっているのだと内心で一蹴する。
まさか本気にしているとは思っておらず、それゆえ身じろいだものの態度は一貫して固い>

神代理央 > 「倫理観や道徳等、所詮は人間が作った既存社会を維持するためのルールに過ぎん。尤も、そういったルールを私は好ましく思うがね。
『人は自分で神を作り出し、それに隷属する』とは、どこかのフランス人が生み出し、スターリンが好んだ言葉だそうだ。お前が聖母と崇められるのも、結局はそういう事なのやもしれんな」

死に対しての価値観を作り出す事も、生者に許された特権であり責任でもある。
それが強者を縛るのか、或いは強者の都合の良いものになるのか。それは時代の流れでしかないのだろう。

「…そんな事は言っていない。大体、私の好みがどうあれ別にどうという事は無いだろう。そもそも、私は外見に対しての好みは大して無い」

自分の好みは、どちらかと言えば従属させがいのある相手になるのだろうか。
そういう事は考えた事も無かったな、と僅かに思考を巡らせるが―

「ふむ、道具として不必要な情報は切り捨てたと解釈すべきかな?どちらにせよ、それはそれで面白い」

彼女は自分の事を道具だと告げるが、それはそれで一つの確固たる意思ではあるのだろう。
だからこそ、彼女が見せる反応を愉しむ様に眺めた末、不意に彼女を自身の元へ抱き寄せようと腕を動かす。
無論、振り払おうと思えば一蹴出来る程度の動きではあるのだが。

ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「人間は群れでなければ生存できませんから。
 好む好まないの話じゃないんですよ。
 人間は神ではなく社会基盤に基づいたルールに隷属しなきゃいけません」

だから、彼らが私を聖母とあがめるのは間違いなのだ。
だから、私は自身を道具として貫徹したのだ。
それが、彼らにとっても、我々獣人にとっても、当時の最善だったのだ。

「そういう風に聞こえるという話です。
 人間は曲解するのが好きなようですから。
 見た目の好みが大してないというのは、ある意味で博愛的ですね?」

「私が聖母ではないといえば、彼らは私の思い通り、私を道具として扱いました。
 何とも単純な奴らです。
 自分が獣を家畜として飼育し、道具を正しく使いこなしていると思っている。
 『ものを使っているつもりが、物に使われている』と言い出したのはカントでしたか。
 彼らはカントの言葉をしらないようでした。」

あくまで自身を道具として貫徹しつつも、
使っているのはこちらであるという主張は以前から変わらないようだった。

「……随分大胆なことをしますね?
 私が動揺するのを楽しんでいるのか、それとも投げ飛ばされることを期待しているのか。
 いずれにせよ、私を思い通りに蹂躙しようなんて思わないことです。
 あなたも、彼らの様に足元をすくわれますよ?」>

神代理央 > 「おや、珍しく意見が合うじゃないか。お前の言う通り、人間を人間足らしめているのは知性を持った集団が組織を構築出来る点だ。その組織を維持する為のルールは守らねばならぬし、守らせなければならん」

そういった点では、彼女を聖母と崇めた連中も自身の所属する秩序を守りたかっただけなのかも知れない。
群集心理の中で生まれた崇拝等、始まりは些細なものであっても根は深く張り巡らされる。彼女がその事をどう思っているのかを窺い知ることは出来ないのだが。

「博愛的とまで言われるとそれはそれで考えものだが…。まあ、好きに解釈してもらって構わぬ。
成る程?確かに、自身が生み出した道具に使われるのは人の性とも言えるだろう。だが、それはお前にも当てはまる言葉だろう?道具である事を貫徹しようと利用した連中に、結局は使われているやも知れないのだから」

とはいえ、この論調では堂々巡りだ。
それに、個人的には使う立場であれ使われる立場であれ己の目的が達成されればそれで良い。
目的と手段を履き違えている連中もよく見かけるが、そういった連中こそ彼女にとっては『物に使われている』者達なのだろう。

「流石に投げ飛ばされるのは勘弁願いたいが、そうやって気丈な反応を見せてくれるのは期待通り、と言っておこうか。
例え噛みつかれようと、足元をすくわれようと、獣を従属させるのは実に楽しいものだからな」

小さく口元を歪める様に笑みを浮かべれば、壊れ物を扱うかのようにそっと彼女から離れる。

「…まあ、私の様な意地の悪い人間に捕まらない事だ。道具として生きるのも良いが、お前なりの幸せというものを探すのも一興だとは思うがね」

とはいえ、流石にこれ以上彼女に嗜虐めいた己の本性をぶつける訳にもいかない。理性の鎖で己を縛り、僅かな苦笑いを浮かべて肩を竦めた。

「さて、私はこの乱痴気騒ぎの後始末があるのでな。すまないが、これにて失礼させて貰おう」

彼女と戯れている間に、大凡の任務は完了したらしい。
撤収作業を指揮すべく、制服の埃を払って彼女に背を向けて歩き出す。
だが、最後に彼女に向けて振り返ると―

「……次は、銃声のない場所で再会したいものだな。それじゃあ、帰路には気をつけることだ」

そうして、言いたいことだけ彼女に告げれば再び背を向けて立ち去っていくのだろう。
後ほど、己と合流した風紀委員達は、己が珍しく機嫌の良さそうな様子に逆に戦慄したとの事だったが、それはまた、別の話―

ご案内:「スラム」から神代理央さんが去りました。
ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「意見ではなく、理念ですよ。効率化がお互い根幹にあるんです」

なんのために効率化を進めるのかを見失いさえしなければ、
ある程度のところまでは似た考え方になるのだろう。
ただそれは意見ではなく、なるべくしてなった結果だ。

「私の、いえ、我々の目的は常に貫徹しています。
 生存することが全ての目的。
 そのために道具になり果て、人間と交わり、
 主人を飼いならしたんです」

それは今も変わらぬ。
生きるために手段を択ばなかったのだ。そこに倫理観も慈悲もない。

「あなたのような青二才に舐められるとは。
 こちらとしても一度自身の在り方を見直すべきでしょうか。
 とかく、あなたに気に入られることで生存が保証されるなら、
 気丈であり続けるというのもなくはないです。
 あなたが有用であれば、ですが」

どうやら彼も私も根本的に意地が悪いようだ。
堂々巡りの言い合いは平行線のままだ。
決して交わりそうにないが、不思議と同じ方向を向いている。
やはり根本的に似通っている部分があるのだろう。

そうやって話に区切りがつくと、お互いに目指すべき場所に向けて足を進めるのだった>

ご案内:「スラム」からラウラ・ニューリッキ・ユーティライネンさんが去りました。