2018/08/27 のログ
■イレイス >
「!?」
レーザーキャノンの破壊力は、苛烈。
はっきり言って戦略兵器と同列だろう。
こんなものを野放しにしたら、街が滅茶苦茶になる。
この街を守るために、決して許してはならない相手だ。
建物の上から惨状を見ながら、ヘルメットの中で息を呑んだ。
しかし、どう戦う?
レーザーキャノンの直撃を受ければ良くて変身解除、悪くて即死。
だからってワニの零距離(キル・ゾーン)に入るのか?
考えあぐねている間に、女は瓦礫から這い出してきた。
どういう仕組みかはわからないが、守る必要もなければ目の前で死なれて動揺を誘われることもなさそうだ。
「ったく、どうなってんだ」
呻きながら異能、ポケットディメンションを使用してイレイスバレットを亜空間に放り込む。
中から一振りの大剣を抜く。
え? またデザインがおもちゃみたいだって? バカ言うな、こいつはな。
「死ぬほど斬れるぞ!!」
硬すぎて装甲に使えなかった素材を使って作り上げた、イレイスブレイド。
こいつなら!! ワニの前足を狙って飛び降り様に斬りつける!!
■パンデミック(生体レーザーキャノン) > レーザーキャノンは何の成果も上げないまま、
そのまま二人を素通りする。
パンデミックは知能が低い。
しかし、学習能力はあり、なおかつ、行動理念は存在する。
こいつらを相手にするより、
さっき逃げた雑魚を殺す方が、
より沢山殺し、
より沢山仲間が増やせる。
そう考えた。
「ギュウイイイイイン―――ッ!!!」
生体レーザーキャノンはズシンズシンとその場を通り過ぎて、
悠長に逃れた住民へと照準を合わせ、
高熱を口に溜めていく―――!
しかし、ここで予想外の事が起きる。
「―――ギャルルルルルル…ッ?!」
動こうとした矢先、
前足が何か物凄く硬い物で斬り付けられ、
切り落とされたのだ!
生体レーザーキャノンはゆっくりとその場から動けなくなり、
「ギャァァアアァァァァ―――ッッッ!!!」
代わりに、
今、目に映り殺せるものは全て殺してやる!
そう言わんばかりに、先のレーザーキャノンの数倍はあろうかというエネルギーを蓄え始めた!
周囲の気温が上がっていく…!
■影打 鈍 >
む。
(ゾンビワニは自身らを無視して先ほど逃げて行った者たちの方を向いた。
動くものすべてを狙う、と言うわけではないようだ。)
――いいぞ特撮仮面。
(そこで男の斬撃がゾンビワニの前足を切り落とす。
流石に狙いを自身らへ向けたようだ。
叫び、エネルギーを溜めるゾンビワニへと跳躍し、)
遅いぞ化け物。
(そのデカい口へと刀を叩き付ける。
人外への特効効果の乗った刃を、一振りで二十と一つ。
ゾンビワニを滅多切りにせんと魔力の刃と自身の本体を纏めて振り下ろした。)
■イレイス >
「…いけるか!?」
イレイスブレイドの攻撃は通じる。
あと何回、何十回、いや何百回斬ったらこいつは活動停止するんだ、という懸案はあるが。
「おい、てめーの相手は俺だ!! この街の人間は殺させねぇ!!」
そう叫んで返す刃で斬りつけようとした時。
ワニの周囲に熱量が膨れ上がっていく。
そう、イレイス第二の眼であるセンサー類が感じ取った。
こりゃワンチャン死んだな。
どこか他人事のように考えながら、赤黒の女が斬りかかるのを見ながら刃を垂直に立てた。
あの女は多分、死なない。剣腕も含めて、だ。
幾重の刃もワニにいくらかのダメージを与えるかも知れない。
だが、だからって俺が死ぬわけにはいかない。
一度も実戦で使ったことのないギミックだが、剣から防御用フィールドを貼った。
全身を覆うように六十四層。
作った時には俺は天才だと疑わなかったモンだが、今見ればダンボールの盾より頼りない。
■パンデミック(生体レーザーキャノン) > ―――シュウウウゥゥゥ…。
連撃を喰らうけれど、それでも生体レーザーキャノンは止まらない。
しかし…崩壊した発射口は幾何かレーザーキャノンの集約がおぼつかなくなった。
だが。
逆にそれは、レーザーキャノンがより幅広く広がっていくと言う事。
街の住人にも及ぶと言う事。
防壁を展開する彼へと降り注ぐのは、
生体レーザーキャノンが溜めうる最大出力のレーザー光。
死んだ者の最後の意地が見える、二度目の死をも厭わない文字通りの全力攻撃。
これを六十四の層で彼が抑え切れれば、
人間を殺させぬという彼の意思は成る。
防ぎきれなければ、この熱線は防壁を通過した後、
生体レーザーキャノンの死んだ目に触れた全てを焼き尽くす。
いずれにしても、
これだけの熱量のレーザーキャノンを放った巨大ワニがただで済む筈もなく、
断末魔の一撃を見せた後は、何ら抵抗のない、
呻き声を上げるだけの無力な真っ赤な肉塊へと変わってしまおう。
さあ、スラム街の一角の運命や如何に―――。
ご案内:「スラム」からパンデミック(生体レーザーキャノン)さんが去りました。
■影打 鈍 >
――まずったかな。
(幾度も斬り付けるうちに、ゾンビワニの口から光が漏れだしてきた。
レーザーキャノンの原理はわからないが、それでも発射口を傷付けたのは不味かっただろうか。
ゾンビワニが発射する前にそこから飛び降り、特撮ヒーローの元へ。)
おい開けろ。
やらかした。
このままだとこの辺一帯全部吹き飛ぶ。
汝が私を使って防ぎきれ。
(ガン、と防壁を殴って本体の柄を彼に向ける。
一時的にでも彼が自身の担い手になれば、その防壁に自身の耐久力が上乗せされるだろう。
今のままでは防げない威力でも、そうすれば防げる可能性が跳ね上がる。
果たしてその目論見は間に合うかどうか。)
■イレイス >
これから放たれる最大出力のレーザーキャノン。
守りきれれば、勝ちの目はあると信じた。
降りてきた赤黒の女が防壁を殴って柄を向ける。
この刃がなんだっていうんだ?
守れって? この刀でか?
しかし疑問を抱いている暇なんてない。
「全力ゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!」
吼えながら、イレイスブレイドのフィールド出力を最大に。
『Barrier field on!!』
流れる機械音声にうるっせぇと内心毒づきながら、構えた。
そして放たれるレーザー光。
当然だが、レーザーというのは見てから回避ができない。
見えているならレーザーが眼に当たっているということだ。
予備動作すら取れずに防御フィールドでレーザーキャノンを受ける。
一瞬で四十二層が蒸発した。
嘘だろ、拳銃弾程度なら一層で弾く斥力フィールドだぞ!!
死を覚悟した。
クソ、クソクソクソ。失敗した。やらかした。
すまねぇ、メイジー。バカみてーなご主人サマで悪ぃ。
膨れ上がる熱量に一枚、また一枚と削り取られていく斥力フィールド。
その時、赤黒の女から渡された刃が光を放つ。
「……! こういうことか!!」
二振りの刃を十字に構える。
障壁は強大に、強固に、広範に、輝きを伴って広がる。
それでも防ぎきれずに、すべて蒸発したフィールドを見限って両腕を広げた。
ああ、とんだ貧乏くじだ。
人生最低の日だ。
その直後。
レーザーキャノンが終わった。
全身の各駆動系から火花を散らしながら、ワニに向けて二刀を構える。
しかし。ワニの反撃はなかった。
守りきった。しかし、しかし。周囲の破壊の痕跡を見る。
これが勝ったと言えるのか?
■影打 鈍 >
いや、すまんかったな。
まさか自爆めいた攻撃をしてくるとは思わなんだよ。
(全てが終わり、彼の隣で謝罪の言葉。
それにしても、まさか自身のバックアップを得た防壁をすべて消し飛ばす威力だとは。)
おい特撮仮面、生きとるか。
生きとるなら私を返してくれ。
(バチバチと火花を上げる彼のスーツをぺしぺしと叩く。
彼に刀を返してもらわないと動くこともままならない。)
■イレイス >
「……お前が謝ることじゃねぇだろ…」
かといって手が届かなかった自分が悪いと言うつもりもない。
ただ、自分は手が伸ばせるのにそうしなかったら後悔する。
そう信じてやっただけだ。
あちこち断裂したスーツ内の人口筋肉を無理やり動かして、女に刀を返す。
「私だぁ? なんだ、モノノケの類かよ」
そう言って手首をコキコキと鳴らした。
全身に痛みはあるが、死んではいないらしい。
呻くだけの赤黒いワニ。
あとは風紀に任せて問題ないだろう。
「助かったよ、んじゃな。二度と会うこともないだろうよ」
そう言って余裕のフリをして、ポケットディメンションの亜空間からバイクを引っ張りだす。
バイクの重量を支えた時、気が遠くなる。
想像以上に強敵だった。
早く帰ってゆっくり眠り、明日の事務員としての仕事をこなしてからスーツを修理しなければ。
バイクで夜を駆ける。
ご案内:「スラム」からイレイスさんが去りました。
■影打 鈍 >
いや、私がもう少し考えて動いていれば汝に無茶をさせることもなかった。
――あぁ、すまん。
(本体を受け取れば、彼はどこからかバイクを取り出した。
二度と会うこともない、と言うのはどういうことかと聞こうとしたが、それより早く彼は走り去っていった。)
――まぁいい、次あったときに聞けばよい。
さて。
(そうして元ゾンビワニだった肉片に近寄る。
刀で突き刺してみても何も奪い取れない。
死んでいる――そもそも生きているのかすら怪しいが。
刀を納め、スマホを――)
しまった。
(まだ壊れたままだった。
とりあえずこの騒ぎを聞きつけてやがて風紀が来るだろう。
それまでしばらく待たせてもらうことにした。)
■影打 鈍 >
(そうしてしばらく待ち、風紀委員が来れば主の請けた仕事と、アンデッドの情報について話す。
現場の惨状についてもう少しうまいことやってくれと小言を言われたが、引き続きアンデッドの討伐も続けるようにとも言われ。
とりあえずは帰ることにしよう。)
ご案内:「スラム」から影打 鈍さんが去りました。