2016/03/04 のログ
ご案内:「魔術学部棟第三研究室」に獅南蒼二さんが現れました。
獅南蒼二 > 机に座る獅南の眼前には、複数の魔鉱石が並べられていた。
非常に小さなサンプルであるが、そのいずれも非常に高価なものである。
獅南は研究者然とした表情のまま、その1つ1つを手に取って、観察する。
…ひと月ほど前に戦った“怪人”が纏っていた鎧を、思い返しながら。

獅南蒼二 > そのいずれも、鉱石という名がつけられているだけあって金属に近い性質をもってはいる。
だが、その加工には非常に高い技術が必要であり、魔力的な安定を保ったままの造形は事実上不可能に近い。
そもそも、この小さな欠片でさえ相当な額で取引される代物である。

ましてや、この魔鉱石で鎧を作りだすなどと、思いも寄らぬことだろう。
ダイヤモンドがどれほど堅くとも、それを鎧として纏おうとする者はいない、というのと同じ事だ。
有効である部分ももちろんあるが、非効率で、非現実的。
魔術学を少しでも学んだ事のある人間なら、鼻で笑うような馬鹿話だ。

獅南蒼二 > 獅南の技量をもってしても、この魔鉱石を加工するのはほぼ不可能だろう。
できたとして、破砕・分割するくらいが限度だ。
空間飽和量を超えた魔力を吸収し、それを必要に応じて放出するという絶妙なバランス。
それはルビーやダイヤモンド等の宝石と同様、自然界の神秘と言ってもいい。

「……まったく、どこまでも出鱈目なことだ。」

人工ダイヤモンドがこの世に存在するように、いつの日か、それを人工的に構成できる日はやってくるだろう。
そうすれば、誰もがその恩恵を受けられる。

だが、それは今ではない。はるか未来の話だ。
今、この世界で、この出鱈目な未来の力を行使できるのは、ごく限られた出鱈目で理不尽な存在。

“異能者”だけだ。

獅南蒼二 > 2cm四方ほどの小さな欠片でしかない魔鉱石を手のひらに乗せ、小さく苦笑する。
本来であれば1つ1つ手に取って検証するまでもないのだ……借用記録もしっかりと、残っていた。
あの“怪人”がこの貴重な魔鉱石からなる鎧をまとっていたのは間違いない。

「………この小さな欠片から、どこまで出来るのか。」

魔術と異能は似ているが、全く異なる。
魔術はすべてが体系化されていると言っても過言ではない。齎される結果の大半はあらかじめ予測することが可能だ。
だが、異能は容易には予想できない。人の理解が及ばぬ未知なる力である。
例えば、この小さな魔鉱石の欠片から、どれほどの鎧を作り出すことができるのか。
どれほどの精度で形成することができるのか。全てが“やってみなければ分からない”のだ。

獅南蒼二 > 思わず、笑いがこみ上げてきた。
最高の魔術で打ち倒すべき相手には、より大きく、より堅牢であってもらいたい。
いかなる異能をもってしても、いかなる理不尽をもってしても、
魔術学は全てを凌駕すると、見せつけることこそ、世界の全てをかえる第一歩となる。

「……“友人”への“贈り物”としては、少々値が張るな。」

その小さな欠片を、小箱に入れて、蓋を閉じる。
それから、自分自身の言葉を、嗤った。

獅南蒼二 > “友人”などと、ほんの少しでもそう思った瞬間があるのか?
“贈り物”などと、ほんの少しでも純粋な好意があるのか?

世界は確実に異能や異能者との“融和”へと傾いている。
僅かでも世界情勢に通じている者ならだれでもそれを感じているだろう。
そして、それは紛れも無い事実である。
世界の色は変わりつつある。かつて“人権”が叫ばれ世界の色が変わったように。

振り上げた拳を振り下ろす先は無く、拳を振り上げることにさえ、誰も賛同しない。