2016/05/28 のログ
ご案内:「魔術学部棟第三研究室」に獅南蒼二さんが現れました。
獅南蒼二 > この魔術学教師の顔色が悪いのはいつもの事だ。
だが、最近は“凡人教室”の生徒の前にもあまり姿を見せていないという。
上級生や卒業生に指導を任せ,獅南は研究室に籠るか,どこかへ姿をくらませてしまう。

以前なら誰もが“獅南蒼二は研究に全てを捧げているのだろう”と考察するところだ。
だが,ここ数週間は彼が建設的な研究や実験をしている姿さえ殆ど見かけられていない。

高出力魔術を試射したり,対人演習の真似事をしたりと,
時折,その姿を見せては,無意味な実験を繰り返していた。
とうとう狂ったかと囁く声もあれば,普段通りだろうと嗤う声もある。

今日もこの男は特に魔術書を開くわけでもなく,静かに机に向かっていた。

獅南蒼二 > 机の上には,色とりどりの宝玉をはめ込んだ指輪がいくつも転がっている。
そしてそのいずれもが,ぼんやりと淡い光を放っていた。
技量の高い魔術師が見れば,そのすべてに膨大な量の魔力がチャージされていることが分かるだろう。

見る人が見れば,それは途方も無い価値の宝に見えるだろうし,
見る人が見れば,それはあまりにも危険な爆薬に見えるはずだ。

けれどそれを,まるで文房具か何かのように,机上に転がしている。

ご案内:「魔術学部棟第三研究室」にヨキさんが現れました。
ご案内:「魔術学部棟第三研究室」にルギウス先生さんが現れました。
獅南蒼二 > 努力とも出自とも関連性を持たず,無作為に与えられる理不尽な力。
系統性すら皆無であり,過程や論理を無視して結果を齎す不条理な力。
それこそが“異能”であり,それは人間的な力と呼べるものではない。
人類をして対抗しうるのは魔術学のみであり,魔術学の発展と昇華こそが全ての不可能を可能にする。
そして,誰もが理不尽な力に怯えることなく,不条理に巻き込まれることなく,
己の努力と研鑽によってのみ,無限の力を得ることができる世界を構築する第一歩を踏み出す。

その理想が潰えたわけではない。情熱を失ったわけでもない。
だが今は,前に進む気になれなかった。

机上に転がる無数の指輪に充填された魔力は,確かに彼の魔力生成術式によって生成されたものだ。
だがそれは,とある異能者の協力によってはじめて,可能となったのである。

ヨキ > 備品を返しに立ち寄った魔術学部棟で、帰る前に寄り道をしようと思い立った。
片手には学食の小さなビニル袋があり、口からペットボトルが覗いている。
いかにも部外者の顔であちらこちらを見渡しながら、部屋の一つを目指す。

漸う辿り着いたのは、獅南蒼二の研究室だ。

「しーしなーみせんせえ」

妙な抑揚をつけた暢気な声と共に、扉をノックする。

入口に立っているのは、過日の地下闘技場で負った火傷など幻であったかのような、
普段どおりのまっさらな土気色の顔をした美術教師ヨキである。

獅南蒼二 > 探知魔法などは展開しておらず,ノックの音が響くまで気付くことはなかった。
その音と,相変わらずの陽気な声が聞こえれば…僅かに目を見開いてから、苦笑をうかべる。

「……また五月蝿い奴が来たか。」

言いつつ右手をひらりと振れば,ガチャリ,と金属音が響いてロックが解除される。
扉を開けてやるほどのサービスをするつもりは無いようだが,鍵が開いたということは,入れということなのだろう。

ルギウス先生 > 「おやおや、また珍しい所で珍しい事になるものですねぇ」

まさかここでバッティングするとは思わなかったらしい。
変わらぬ笑顔でコンニチハ、ルギウス先生です。

「私もご一緒させてもらってよろしいですか?
 ご都合が悪いようなら、出直しますが」

そう、廊下で鉢合わせた教師に声をかける

ヨキ > 鍵が開けられた後、棒立ちすること数秒。

「開けんのかい……!」

笑みを引き攣らせて突っ込む。
徐にドアノブへ手を掛けながら、やって来たルギウスへ目をやる。

「……おや。君は確か……ルギウスだったか。
 ああ、ヨキは別段構わない。特に用事があって来た訳ではないんだ」

言いながら、邪魔するぞ、とまるで通い慣れた家のように扉を開ける。

「久しいな、獅南。
 近所に用があったついでに寄ってみたのでな。
 これは差し入れだ。適当に食ってくれ」

室内を見渡しながら、獅南へビニル袋を差し出す。
中にはペットボトルの茶やら、ブラウニーやら、キャラメルやら、眠気覚ましのガムが入っている。

「部屋が整頓されている方が、研究も捗るか。お前らしい」

言いながら、何気なく机上の指輪を見た。

獅南蒼二 > 扉の向こうから聞こえるツッコミに,満足気に笑う。
ヨキが扉を開けば,相変わらずというかさらに磨きがかかった不健康そうな顔色が出迎えるだろう。

「差し入れとは有り難いが,相変わらず似合わん事をするものだな。
 まったく,バレンタインの時と言いお前は……」

そこまで言って,何かを思い出したように、目を泳がせる。

「……あぁ、そうだ、そう言えば忘れていた。」

ヨキの視線や表情,研究室を見た感想にもこたえる事は無く,机の引き出しを漁る。
そこには,手のひらに乗るほど小さく簡素な木箱がおさめられていた。

「3倍返しが相場だそうだが,計算は苦手なのでな。遅くなった利子付きだ。」

木箱を投げ渡す。まだヨキはビニル袋を持ったままだというのに。