2016/05/29 のログ
■ルギウス先生 > 「……お二人が“そういう関係”であるなら、私は本当に出直しますが?
馬に蹴られると死ぬほど痛いので遠慮したいですからねぇ」
二人に聞こえるように揶揄して声をかけておく。
バレンタインだ三倍返しだ言ってるし。
獅南×ヨキ
何人か生徒が喰いつきそうだ なんて感想も出てくる。
■獅南蒼二 > 「噂の種には面白いが,残念ながら私は贈り物に礼をしただけだ。
尤も,そこの美術教師がどんな趣味かは知らんから私は狙われているのかも知れんがな?」
ククク、と楽しげに笑う白衣の男。
この程度の揶揄でペースを乱されるような精神は持ち合わせていないようだ。
■ヨキ > 「何を言う、ヨキがやるからこそスマートで、似合っているではないか?
このヨキは気遣いの出来る男ぞ」
意味もなく偉そうに鼻を鳴らしてみせる。
と、ビニル袋を差し出すと同時、獅南から放られた木箱を片手でキャッチする。
「ちょっ……なッ?ぬおっ、」
一回、二回、と手の中で小さく跳ねて、危うく取り落とし掛けながらも手に掴む。
闘技場で散々体術を披露しておきながら、球技は苦手であるらしい。
セーフ、と笑いながら、ルギウスの言葉ににやりと笑う。
「は。菓子をやるくらい、どうということもあるまい?
むしろ狙われているのはヨキの方だというのに。なあ獅南」
冗句を飛ばしながら、持っていたビニル袋をさっさと獅南の膝の上に置いてしまおうと。
空いた手で、さっそく木箱の蓋を開いてみようとする。
■ルギウス先生 > 「ああ、掛け算は間違っていなかったようで」
違うそこじゃない的なコメントを返す。
だめだ、まともなやつがここにはいない。
「さて、では私からは……屍人一歩手前の顔色をさらに悪くする為に新しい研究材料を提供しましょうか。
さる筋から手に入れた未完成の技術ですが―――難易度は4種類。
イージー、ノーマル、ハード、ルナティック。
どれにしますか?」
言いながら無造作に机まで歩いて、資料を置いていく。
・大学ノート(表紙に手製のコミカルなイラスト入り)
・スクロール
・少々新しい目の本(表紙は皮)
・明らかに魔道書
■獅南蒼二 > 球技が得意な者でも不意打ちでは対処は難しいだろう。
だとすれば,ヨキの動体視力やら反射神経はまずまずの水準だと言えるかもしれない。
ともあれ,ヨキの反応は獅南を十分に楽しませたようで,ビニル袋は素直に受け取った。
「狙っているのは私か…確かに間違ってはいないな。
お前はお前で,それを避けようともしていない風に見えるが?」
ルギウスの言葉を否定しようともしないのは余裕の表れか…
…いや,しかし,ヨキと獅南は酒場での目撃談やら学園祭での目撃談やら,すでに何度か2人で居るところを目撃されている。
危険な話題は置いておいて,木箱を開ければ中には小さな金属片が入っている。
何の装飾もなく,それこそ美しい輝きをもっているわけでもないが,ヨキならそれが何なのか,すぐに分かるだろう。
それは“怪人”が纏っていた鎧の素材である魔鉱石と,全く同じものだ。
■獅南蒼二 > ビニル袋の中身を眺めて苦笑した後で,ルギウスの方へ向き直り,
「それで,そちらはそちらで厄介な贈り物を持ってきたようだな?
有難く頂戴したいと言いたいところだが……」
小さく息を吐いて,それから並べられた資料に視線を落とす。
「提供する,ということは無償でということなのだろうが…アンタがどういうつもりか私には分からん。
その様子では私に解読を頼みたいという訳でもないのだろう?」
明らかに魔導書であるルナティック難易度以外見ていないのは相変わらずなのだが,
ルギウスの意図が読めなかったのか視線は再びルギウスへと向けられた。
■ヨキ > 木箱を開けながら、ルギウスの獅南への提案の様子を眺める。
「研究者にもルナティックモードなどというものがあるのか。
おお……くわばらくわばら」
ゲーマー脳からなる発想である。
ルギウスの揶揄に乗っかる獅南の言葉には、愉快そうに笑みを返す。
「そりゃあ、人から好かれて悪い気はせんよ。
バレンタインを寄越すくらいにはな、…………」
箱を開いて、その中身にひととき目を瞠る。
魔術学部から借り受けるときには何度も釘を刺されたし、
闘技場でほんの小さな傷を付けただけで始末書を書かされた、あの標本だった。
ふっと笑って、指先に摘み上げる。
石は冷ややかに形を保ったままだ。
「……何だい?魔術研究の標本は随分高価だと聞いたぜ。
計算が苦手どころか、渡す箱を間違えたのではないかと心配になる」
■ルギウス先生 > 「ノーマル以外は私が少々手を加えただけで、中身の理論は同じです。
ルナティックに至っては暗号よろしくしただけですしねぇ」
解読を面倒くさくしただけらしい。
魔術的な鍵も含めて。
「さて、それで私の意図ですが……お暇そうでしたのでね。
暇つぶしになれば幸いかなと思いまして。
知識は、価値のわかる方のところにあってこそ でしょう?」
■獅南蒼二 > 「さて,どうだろう…私の机にはいくつも箱が入っているからな。」
ヨキの反応を見れば,楽しげに笑ってから引き出しを閉じる。
確かに引き出しには,ほかにも沢山の木箱が入っているようだった。
「魔力貯蔵実験で使った鉱石なら芸術家の目にも美しいだろうと思っただけだ。
運が良ければダイヤモンドやらルビーも混ざっていたはずなのだが…ハズレだったかな?」
“芸術作品の足しにでもしてくれ”なんて、肩を竦めて笑った。
もちろん,最初からその木箱を渡すつもりだったに決まっている。
獅南の真意までもがヨキに伝わるかどうかは、分からないが。
■獅南蒼二 > ルギウスの言葉には,僅かに眉を顰める。
「無償で暇つぶしを提供してくれるというのなら有難い。
…が,少々胡散臭いな?」
最強に胡散臭い先生を疑う,相当に胡散臭い先生の図。
いずれにせよ,面倒くさくしただけだと言われてもなお,ルナティック難易度を選択した。
…それは,暇つぶしなら面倒な方が良いし,この男がどのような魔術系統を駆使して暗号化したのかにも興味があるという,彼らしい理由からの選択だった。
「で,その知識をいかなる目的のために行使するか,という部分に,提供者たるアンタは干渉しないのか?」
■ヨキ > 獅南らしい軽口に、目を伏せてはにかむ。
「ふはッ。ヨキはクジ運が悪いことで有名だが、ヨキにはよほど大当たりだ。
……だが獅南、お前にとってこれは有限の石だが、このヨキには無限にも等しいぞ。
いいのかね、異能者を相手に塩を送るような真似をして?」
言って、和らいだ眼差しが獅南を見る。
「ヨキの菓子は、それほど美味かったか」
その言葉には、言うまでもなく含みがある。
贈った文字通りの菓子以上に、あの闘技場での一戦のことが。
机上の指輪の由縁も知らずに、ただ笑う。
■ルギウス先生 > 「ええ、ご自由に。
世界平和に使うもよし、世界制服に使うもよし。
誰を殺そうが私に何か関係が?」
並べていたものを魔道書を除き回収していく。
「貴方達が演じる舞台の足しになれば、私はそれで満足なんですからねぇ」
用事は済んだ、とばかりに入り口に進んでいく。
「ああ、ヨキ先生……またいずれ。月の綺麗な夜にでも。
堕ちた不死鳥についてお話できればいいですねぇ」
■ルギウス先生 > そう言葉を残して、最強に胡散臭い男は去った。
ご案内:「魔術学部棟第三研究室」からルギウス先生さんが去りました。
■ヨキ > 元から芝居のような物言いをする者は多かったし、
実際のところ、ヨキはルギウスについて全くと言ってよいほど何も知らなかった。
だから彼が部屋を去り際に残した言葉には、一拍遅れて振り返ることとなった。
「………………」
“堕ちた不死鳥”の語に、ごく一瞬動きが固まる。
ルギウスへ向き直ったその顔には、事情を察した不敵な笑みが湛えられていた。
「そうか、君は……ああ。
いくらでも話そうではないかね、ルギウス?
いつまでだって、ヨキはその話をしてやれるとも。……」
緩く手を広げて、肩を竦める。
扉が閉まったのち、ぱたりと両手を下ろした。
■獅南蒼二 > 「次はもう少し,ブランデーを利かせてくれると有難いな?」
菓子の話にはそうとだけ笑って,それから,ルギウスがそこに残した魔術書を手に取る。
が,開こうとはしなかった,あの男の事だ。間違いなく何らかのトラップを仕掛けてあるだろう。
「それに……軟弱な美術教師が相手では,魔術学を究めるまでも無い。
せめて鎧くらいは纏ってもらわなくては,やり甲斐が無いというものだ。」
魔術書を本棚の一番端にしまい込んでから,視線はヨキへと向けられる。
……この男はこの魔鉱石をそれこそ,無限に生み出すことができるのだろう。
あの女生徒が,熱を無限に生み出すことができるのと同様だ。
どこまでも理不尽な力だと,思う。否定すべき存在だと,思う。
己の信条としては一片の曇りも無い…少なくともそのつもりだが,
異能者の系統性の無い力を魔術学によって制御することができれば…
魔力の生成,貯蔵,制御,全てが最も効率よく,そして何の障害も無く達成される。
魔術学は,いや,この世界そのものが飛躍的に発展するに相違ない。
「……………。」
この2人が対峙する場面で,こうして獅南が沈黙することは,珍しかったかもしれない。
■ヨキ > 改めて、獅南へ向き直る。
「ブランデーね。覚えておく」
一年先があれば、の話だが。だがヨキはきっと、忘れないはずだ。
そうして付け加える。まるで世間話のように。
「それから――ヨキが本当に弱いのは、雷撃だ。
熱で溶かすよりも早く、ラクに討てるぞ。
それこそ、お前の魔力からすれば呆気ないほどにな」
握り拳を作って、自らの胸を叩く。
骨が当たるにしては低く重い、鉄の音。
唇を結んで、じ、と相手を見る。
「……ヨキなど、所詮はそんなものだ。
それしきのことで討たれるような、ただの魔物だ」
獅南の顔を見返すと、ヨキにもまた珍しい沈黙が漂う。
わずかな間、静かな時間を挟んで、口を開く。
「お前の信条にならば……討たれても構わないと、そう思っていた。
魔物が真の意味で散るならば、お前の最高の魔力が相応しいと」
どこか、言葉を迷うような声。
「……だが、立ちはだかってやりたい、とも思った。
どうせなら、ただでは討たれてやるまいと。
強大な異能を手に立ちはだかれば、お前はヨキを討つのに手こずって……
それだけまた獅南と一緒に酒が飲めるな、とも」
小さく吹き出す。
「そんなことを考えるような男だよ、このヨキは」
■獅南蒼二 > ヨキの言葉を聞けば…獅南は小さく頷いて,笑った。
「ほぉ,それは良いことを聞いた。
雷撃か,なるほど私の魔力をもってしなくとも……
……ほれ、そこに“コンセント”という脅威のアイテムがある。」
壁際のコンセントを指差して,それからその指をそのまま自分のこめかみに当てる。
「私は…そうだな,ここに弾丸を1発もらえば死ぬだろう。
この世に生きている者など大抵は,その程度のものだろう?」
違う。確かに死ぬだろうが,獅南は既にその“死”をも克服する方法を考え,実用化しつつある。
己の構成する魔術への絶対の自信。口には出さないが,表情や素振りからそれがにじみ出る。
何も持たぬ所からここまで這いあがったのだと,異能者などには負けぬと,
「………………。」
声に迷いを内包したヨキに対して,獅南は言葉にこそ迷いは無かったが,
言葉を選ぶには長い時間がかかった。
ヨキの言葉が獅南の信条を揺るがした部分も少なからず、あるのだろう。
「…だからこそ,アンタにはそうそう倒れてもらっては困るという訳だ。
お前が倒れなければ,こうして腹の探り合いをすることもできる。
休戦して,酒を飲むこともできる。」
吹き出したヨキを見て、肩を竦めながら笑う。
しかし、それから、小さく頷き…真っ直ぐに、ヨキを見て…
「………だが、私も歳だ、今更生き方も信条も変えられん。」
■ヨキ > 「生憎と……コンセントは経験済みでな。ばちんとやられて、危うく失神を」
気恥ずかしい記憶を払うように、目を瞑っていやいやと首を振る。
そして続く獅南の言葉には、瞼の陰が落ちる金色の瞳がちらちらと光った。
黙っていても、ヨキの中の逡巡を表すように。
「……ふふ。お前ほど不健康そうでいて、銃弾の一発きりではそうそう死にそうにない奴も居らんよ。
ヨキは人間の身体を傷付ける方法をいくらでも知っているが、そのどれもをゆらりゆらりと躱されそうで」
小さく笑う。
常人には揺蕩うようにしか見えない防護の魔術が、研鑽の果てに築き上げられたものであると知りながら。
それをそうと習ったのは、他の誰でもない獅南からだった。
「ヨキが電気に弱いことは、恐らく一生変わらない。
それでもお前の言うとおり、早々に倒れることはしたくない。
お前の『信頼』を、裏切りたくないと思っている」
高い位置から見下ろす眼差しは、ひどく静かだった。
「お前は研鑽を積んで、どこまでも高みに上ってゆけるんだろう。
それに引き換え、ヨキははじめから頭打ちだった。
恐らくは……お前にとって途方もない高みから、ヨキは始まっていた。
ヨキたちの間には、変わるものも、変わらないものもある。
……変えられぬものがあるならば、それでいいよ、獅南。
ヨキとお前が友人であることが変わらぬのならば、何ひとつそのままで」
頭を掻く。
「この意地の悪さは、魔物よりも子どものようなものだな。
お前を負かすつもりはハナからないが、勝たしてやるのも癪なのだ」
■獅南蒼二 > 「アンタの心臓がどこにあるのか知らんが,左側にあるのなら電気は右手で扱う事だ。
感電死とはよく言うが,心臓麻痺が多いらしいからな。」
無意味なアドバイスを呟きながらも,獅南はヨキの落ち着き払った瞳を見上げた。
………どこまでも高みに上ってゆける。
今この瞬間でも,獅南は己をして,そうであると信じている。
“高みから始まった者たち”を静かに見下ろしてやる日が,いつか訪れるのだと。
やはり,獅南が言葉を紡ぐまでには長い時間がかかる。だが,ひとたび口を開いた獅南はもう,普段通りの調子であった。
「私の友は,随分と付き合いが良いようだな……だが,はじめから頭打ちだと?
まったく、それでは不勉強な学生のような言い草じゃないか。
それでは,やがて私の友は,私に殺されることになるだろう。」
いつもと調子を取り戻した獅南は,魔術書の中から1つを選び出し,ヨキへと差し出した。
「電気に弱いのなら,工夫をすることだ。例の“お返し”にこれも付けてやろう。」
それは防護魔術を中心に扱った中程度の難度の魔術書である。
特に物質に魔法防御効果を付与する術式などを中心に書かれているが…誰かの助けが無ければ,きっと意味不明だろう。
「次回までの宿題だ。帰ったら暇なときにでも読んでみろ。
……次回がいつかは,知らんがな。」
■ヨキ > 「……それも覚えておく」
ブランデーの件と併せてのことらしい。
「ヨキは……どうにかして、人間になりたかった。
習っただけ多くのことが糧になる、人間に。
……そうして、どれだけ人間に近付けたかは判らんが。
少なくとも、気に入った相手に意地悪をしたいと思うくらいには、
ヨキは子どもの真似事をやっているようだよ」
差し出された魔術書を、わざとらしい苦笑いを作って受け取る。
「それから……気に入った相手からの意地悪を、まんざらでもないと感じるくらいには?」
徐にぱらぱらと開いて、さっそく目がしょぼしょぼした。表紙を閉じる。
「……これはまた、大層な気遣いをどうも。
特待生みたいに中途入学させてもらえるのは有難いが、いきなり敷居が高いなこれは」
もう一度、机の指輪に目をやる。
次の瞬間には、受け取った鉱石が指輪のひとつとほとんど同じ形に変じていた。
途方もない魔力との親和性を示す代わり、何ら力を蓄積していない紛い物だ。
「まるで教師に見張られてる気分だ」
右手の人差し指に指輪を嵌めると、手にした本の背表紙で己の肩を小さく叩く。
「……見張るでもなく、お前にはこのヨキに対する調べがとっくに付いているのだろうがな」
何も証拠などない。だが自分はどこまでも知られているのだという確信があった。
■獅南蒼二 > ヨキの言葉を,獅南は否定しなかった。ただ,小さく肩を竦めて笑うのみ。
「さて,名前と性格と,あとは魔術の才能が無さそうなことくらいは分かるがね。
他の事は,アンタが酒に酔いながら話してくれた事くらいしか知らんかもしれんな?」
“レコンキスタ”の魔術師クローデットをけしかけたのだが,それ以降連絡を密に取り合っているわけでもない。
だとすれば,獅南の情報源は島に散らばる卒業生たちと,凡人教室の生徒くらいのものだ。
案外と何も知らないし,調べるつもりもさほどないのかも知れない。
「人間になりたかった……か。
私の生徒の1人として,お前に教えてやろう。
全ての不可能を己の努力と研鑽によって可能にするのが魔術学という学問だ。」
不出来な学生がどこまで頑張るか見ものだな。なんて、笑った。
■ヨキ > 「知られて恥ずかしいことはあれど、後ろ暗いことなど何一つないからな。
ヨキは未だお前が底知れぬというのに、ヨキばかり見透かされては不公平だ」
明るく笑う。
“全ての不可能を己の努力と研鑽によって可能にする”という台詞には、
遠い希望を視界に掠めたような、薄らとした晴れやかさが過った。
「……さあ、ヨキの努力と研鑽が、どこまで通用することだか。だって、――」
獅南の笑い声を余所に、指輪を嵌めた人差し指を見遣る。
じっと見て、何事か言葉を思い出す。
「《 》」
短い一語。
少なくとも、この地球上の言語圏にはない言葉。
明らかに見様見真似だが――それは紛れもない魔術の詠唱だった。
ぱん、と乾いた破裂音がして、ヨキの右手に紫電が走る。
判っていながらそうしたかのようなヨキが、びくりと身を強張らせた。
「いッてえ!」
外から押さえ込む力が、魔術の放出を遮っているような有様だった。
顰めた顔でびらびらと振る右手の肌が、熱に赤く染まっている。
「……と……いう訳だ。
才がないのか、持っていた才を封じられたかは――恐らく後者であろうかな。
時間が掛かりそうなことだけははっきりしてる」
頑張ってはみるがね、と、にやりと笑う。
■獅南蒼二 > 「さて、私ほど裏表のない教師が他に居るか?」
そんな風に笑い飛ばしながらも,ヨキが“魔術”を行使する様を眺めた。
もっとも、ただ単に眺めているわけではない。
術式の構成,魔力の源泉,出力と変換,事象の再現…全ての流れを,決して見落とすことなく……
「……これは,なるほど,面白い。」
……対抗術式があったわけでも,発動に失敗したわけでもない。恐らくはヨキの身体そのものが魔術の発動に抵抗したのだ。
それが誰の意志であるのか,獅南はヨキの昔話から想像することしかできなかったが……
「……入門編としては甚だ難解な問いだが,不可能ではない。
あまり信頼できんが,努力に期待しよう。」
■ヨキ > そりゃあそうだな、と、軽口には軽口を返す。
ヨキが披露したのは、一語からなるごく単純な術式だった。指輪を介し、魔力を放出するだけの。
だがそれを制したのは、ヨキが魔術を行使することを余さず封じんとする、捕縛の魔術――あるいは呪いそのものだった。
獅南の答えに、どこかほっとしたように微笑む。
「不可能ではない。
お前がそう言ってくれるなら、ヨキはやれる気がするよ。
……だが恐らくヨキが魔術を扱うには、『金属を操る力と引き換え』だ。
果たして魔術を会得することが、ヨキにとって良いことなのかは判らないが。
試してみる価値はある……何もかも」
空の木箱と魔術書を手に、踵を返す。
扉の前で、一度振り返る。
「お前に引けを取らぬように――そして何より、このヨキ自身のために」
受け取った品を軽く掲げて、部屋を後にする。
ご案内:「魔術学部棟第三研究室」からヨキさんが去りました。
■獅南蒼二 > ビニル袋からお茶を取り出して,それを軽く掲げて返礼する。
扉が閉まっても鍵をかけようとはしなかった。
「私に引けを取らないように……か。」
この男にどれほど“情”があるのかは分からない。
ヨキへ向ける感情の正体も,まだつかみきれてはいないのだ。
異能者を排斥せず利用すべし,という打算がそうさせているのか,
それともヨキの言葉がそうさせているのか。
少なくとも,ヨキという異能者に対しての感情は,大きく変わっていた。
「才能を鼻にかける学生よりかは,よほど期待できるだろうな……。」
■獅南蒼二 > お茶を一口飲み,静かに息を吐く。
人間になりたかったと、ヨキは確かにそう言った。
異能者が異能者であることを捨ててまでそれを為すとも思えないが………
「………………。」
………その日,獅南の姿を目撃した者は他に誰も居ない。
彼の部屋に“異能学”の分厚い学術書が増えたことに気付くのは,ほんの一握りの人物だけだろう。
ご案内:「魔術学部棟第三研究室」から獅南蒼二さんが去りました。
ご案内:「魔術学部棟第三研究室」に獅南蒼二さんが現れました。
ご案内:「魔術学部棟第三研究室」にクローデットさんが現れました。
■獅南蒼二 > この日も獅南は授業のある時間以外,自らの研究室に閉じこもっていた。
最近のまったくもって無為な状況に比べれば,今日は“暇つぶし”がある分,まだ有意義な時間を過ごしていると言えるだろう。
ルギウスが残した魔術書を1頁ずつ,解読していく。
そこに記された魔術を読み解くにはまだ時間がかかりそうだが,少なくともルギウスの構成した隠蔽のための術式や,間抜けで致命的なトラップをいくつか模倣することができたという点で,有意義だったと言えるだろう。
……いや,もうなんか,読む相手を絶対に馬鹿にしてる。
ページを開くと突然タヌキが無尽蔵に飛び出してくる術式とかもうなんか意味不明すぎる。
「………………。」
何にせよこの日の獅南は,相変わらず酷い顔色をしてはいるが,すくなくとも昨日よりかはマシな顔をしているはずだ。
■クローデット > "門"の仕組みについての研究が一定の成果を見せ、それを形にするための設計図を研究棟のコンピュータを利用して引いていたクローデット。
それが一段落したところで、帰る前に久々にこの男の研究室の扉を叩くことにしたのだ。
お互いに忙しかったのか、「例の件」の報告を出来ていない。
聞くべきこともあるし、今日こそは、それらの件に一区切りをつけようと。
「獅南先生、いらっしゃいますか?」
女性らしく柔らかいソプラノの声と共に、ノックがなされた。
■獅南蒼二 > 昨日と言い今日と言い,来客が多いな,と内心で呟きつつ,
右手をひらりと振って鍵を開ける。ヨキの時とは違って,今日は扉も開かれた。
「随分と,多忙そうだな。」
魔術書を閉じて視線をクローデットの方へ向けつつ,苦笑交じりにそう告げた。
研究室は以前よりも整理整頓が行き届いているように見えるかもしれない。
■クローデット > 「お久しぶりですわ、獅南先生。
…学生として、委員として、一介の魔術師として。
どうにも、為すべきことが多かったものですから…」
「長らく顔も出さず、申し訳ありません」と、品良く頭を下げてから、研究室に入ってくる。
研究室は以前に比べると随分整理整頓が行き届いているように感じるが…
その中に増えた「異能学」の学術書を、めざとく見つけて片眉を動かすクローデット。
…だが、まだその件についての言及はしない。
「先生も、随分顔色が優れないように見受けられますけれど。
お体の具合がよろしくないのでしたら、治癒など承りますが?」
クローデットの語る言葉は気遣わしげではあるが、その瞳には、何か冷たいものがあるように感じられるかもしれない。
■獅南蒼二 > クローデットの表情から何を読み取ったか,小さく肩を竦めて,あえて“異能学”の学術書の隣に魔導書をしまい込む。
隠す気は全くもってないらしい。
「具合が良いのか悪いのか自分でもよく分からんのでな。
治癒魔法の心得ならある程度は私にもあるが,大怪我でもしない限り,自分に使おうとは思わんよ。」
お前がやれば死人も蘇らせそうだ。なんて苦笑しつつ,
静かに立ち上がって,自身は棚の方へと移動した。同時にクローデットにはソファに座るよう促す。
「さて,早速だが,本題に入ろうか。
お前の顔色を見る限りでは,ある程度の収穫はあったようだからな?」
■クローデット > 読んでいた魔術書—見慣れない性質の代物だが、劇的に性質の悪いものではなさそうだ—を、「あえて」「異能学」の学術書の隣に収める獅南。
(…挑発のつもりかしら?馬鹿にして…)
内心、自分の父親より性質が悪いと思いながらも、表情には極力表に出さないように努める。
「ご自身の体調をご自身で測りかねる状況は、下手に悪いよりもよほど良くないのではないかと思いますけれど。
…白魔術は得手とする分野の一つですけれど、流石に死人は蘇りませんわ」
「不死を還すのは得意ですが」と言って、くすりと笑む。
ソファに座るよう促されるが…まだ、固辞して立ったまま。そして、上品ながらもどこか不敵な笑みを浮かべ、
「収穫があったものは…いくつもございますから、どれから話せば良いのか。
もし、「個人的なお話」でしたら…「内密に」、お願い出来ますか?」
と、首を傾げて問うた。
■獅南蒼二 > 中途半端に状況を隠すよりも,それを示したほうが反応が読みやすい。
同様にして,クローデットの性格を知っているからこそ,下手に隠すよりも大袈裟に見せたほうが“動きを見せる”かと期待した部分もある。
尤も,そこまで単純な相手でもないから,表に出さなかったのも想定内ではあったのだか。
「そうかも知れんな…自身が病気だと分かっていれば対処もできる。
だが,まぁ,遠慮しておくよ。そこらの藪医者よりは,お前の方が余程信頼できるだろうが、ね。」
なら,死に切れんかった時はお前に任せよう。なんて苦笑して,
続けられた言葉に小さく頷き,周囲に手を翳せば…窓や扉は閉じられ,防諜のための術式が展開される。
……今なら,もしこの部屋の中で銃撃戦があったとしても,この部屋の外からは決してそれを認識することはできないだろう。
「こんな魔術ばかり得意になっていては,病気でなくとも長生きできそうにないな。」
立ったままの相手を見れば苦笑を浮かべつつ,ソファの前のローテーブルに淡く光る指輪を1つ置いて,自分はクローデットに勧めたソファと対面する長椅子に腰を下ろした。
■クローデット > 獅南に対してふくれあがる疑念と、その裏でじわじわと針を進める「時限爆弾」。
今はまだ「同志」のうちと数えるが故にこそ多少の苛立ちは表に出ているかもしれないが、クローデットの内心は、その見た目以上に危ういバランスの上に成り立っていた。
…もっとも、人心にそこまで聡い獅南でもないのだろうが。
「…残念ですが白魔術自体は、病の診察にはさほど強くありません。生命魔術の使い手の方の方が確実でしょうね。
…今度また、気分のすっきりするハーブティでもお持ち致しますわ」
「簡単にそうなって欲しくはありませんが、覚えておきましょう」と言って、伏し目がちの微笑を見せる。
この邂逅で、この男が真に「同志」たりうるのか、クローデットは見定めることになるだろう。
…もし万が一期待が外れたとしても、「あちらから裏切らない限り」、この約束は守るつもりだ。
「同志」たりえなくとも、魔術師として学ぶべきところのある、先達には違いないから。
(なお、クローデットは白魔術はかなりの高水準で修めているが、生命魔術は教養程度である)
「…世界が「こう」なってしまった時から、「ヒト」の身には寿命が縮むようなことばかりだったと…先生は、そうは思われませんか?」
防諜の術式が展開されたのを確認して、そう言って…恐らくこの場に来て初めてだろうか、いつもの華のある微笑を見せた。
それから、獅南にやや遅れる形でソファに腰を下ろす。
…ローテーブルの上に置かれた淡く光る指輪を見て…目を、見開かせる。
「………また、随分なものを作られましたのね?」
■獅南蒼二 > 疑念を煽ることは意図的に行っている。それ故にクローデットが苛立ちを表出させるのは想定内であった。
だが,彼女の複雑な出自の一部を知るこの男も,その内心までも読み取れるほど,優れた観察眼を持っているわけではない。
「白魔術と呼ばれる魔術体系がそもそも,やや異質なものだからな。
私の構成する白魔術はどちらかと言えば対症療法…修理とでも呼ぶべきものだが,
恐らく,一般的な白魔術師は“治癒”を構成するのだろう?」
再現するのは骨が折れる。などと苦笑しつつ,クローデットの表情を見る。
目を見開いたところを見れば,これが何なのかは理解したのだろう。
膨大な量の魔力を封じた,魔力タンクとでも呼ぶべき指輪。
この指輪と術式構成に関する知識さえあれば,この世の誰もが魔術を行使することが出来るようになるだろう。
「同感だ……尤も,私がやろうとしていることは,その寿命をさらに縮めるような悪魔の所業であるかもしれないがな?」
苦笑を浮かべつつ,指輪をクローデットへ差し出した。
現時点ではこれが限界だ。と楽しげに笑う。そこに封じられた魔力は,いわゆる大規模魔法を発動するにも十分な量であるし,魔力的にも安定している。
「その指輪はお前にとっては無用の長物だろうが,私にとってはその限りではない。
研究に関する報告はそれで十分だな,言葉は必要無いだろう?」
クローデットはきっとこの指輪の価値を理解できる,数少ない人物だろうから。