2016/07/08 のログ
ご案内:「魔術学部棟第三研究室」に獅南蒼二さんが現れました。
ご案内:「魔術学部棟第三研究室」にクローデットさんが現れました。
■獅南蒼二 > 獅南の担当する全ての講義に1ヶ月の休講が通知された。
その日も,次の日も,獅南は自らの研究室から外へ出ることはなかった。
“学ぶ意欲がある者は訪ねて来るように”
と周知されはしたものの,
この重厚な鉄の扉をノックする者は,まだ現れていなかった。
■クローデット > 厳密には、「学ぶため」ではないが。
クローデットは、その足を獅南の研究室へ向けていた。
「お返ししたいものがあって参りました…獅南先生、いらっしゃいますか?」
ノックとともに、柔らかなソプラノが獅南の耳に伝わるだろうか。
■獅南蒼二 > その分厚い扉の向こうから返事は無い。
だが,人の気配も足音も聞こえぬままに,ガチャリ,と鍵の開く音。
入れ,ということだろうか。
そしてその瞬間に,貴女なら感じ取れるだろう。
研究室にはすでに防諜の術式が展開されており,それどころか魔術結界まで張られている。
内側で爆発事故が起きたとしても,外では物音一つ聞き取れないだろう。
■クローデット > 無言で鍵の開く音。
いつにも増して愛想がない。
「失礼致します」
声の硬さに表れるように、あまりいい気分をしないながらも入って…その中で、その「分厚い」魔術防護に目を見開き…それから、呆れたように目を細める。
「…まるで、この中で魔術の暴発が起こることを想定されているようですわね」
防諜魔術もかかっている。遠慮はいらないだろうとばかりに本性を露にしながら、獅南に言葉をかけた。
■獅南蒼二 > 扉の奥はいつもに増して混沌としていた。
普段通りに散らばったメモ,そして山のような魔術書。
様々に術式を発動させた形跡と,恐ろしいことに,発動し掛けた不安定な術式やら,安定性を欠いた魔力結晶やら。
「魔力爆発如きでは,怪物を消し飛ばすことはできても殺すことはできないだろう。」
言葉は冷静に,そして机上のメモに何かを書き記しながら,視線だけを貴女へと向けた。
■クローデット > この男の術式構成は、効率と安定にこそ価値があると認識していたクローデットは、その混沌の山に驚きと…懸念を覚えた。
しかし、返したいものがものなだけに、獅南の近くに歩いていく。
「『消し飛ばす』と『殺す』を分けていらっしゃるのね…ご丁寧ですこと」
皮肉っぽく言いながら獅南の傍まで歩いて来たところで、研究用のIDカードをポシェットから取り出した。
「借りていたものです。
調査のご協力、感謝致しますわ」
置き場を探したが見当がつかなかったため、獅南が書き記すメモ用紙の横に、カードを乗せた掌をすっと差し出した。
■獅南蒼二 > 例えるのなら,それは臨界状態の原子炉。
不安定でありながらも外部から制御され,結果として安定している。
今ここで不用意に魔力を扱おうものなら,全てが跡形もなく消し飛ぶだろう。
この男のことだ,それさえも,防ぎ止める防御策を構築しているのだろうが…。
「相手が人間であれば分ける必要は無いが……そういった相手の経験は無いかな?」
観察が終わりメモを終えたのか,発動しかけた術式を霧散させる。
それから差し出されたIDカードを見て…
「…なんだ,もう済んだのか。流石に仕事が早いな。」
…引き出しを開け,クローデットの手のひらからIDカードを受け取て,それをしまい込んだ。
■クローデット > 不安定ながらも辛うじて制御された魔術に支配された空間。
クローデットは、自らが纏う魔術防御が干渉する危険性を考えると、あまり長居すべきではないと感じた。
「…今まで相手をした存在は、白魔術で浄化か無力化が可能でしたので」
淡々と語る。一応、低ランクのものならば経験はあるらしかった。
IDカードを相手が受け取れば、
「…純粋な変身魔術の可能性が、早い段階で随分下がりましたので…調べるべき項目が、随分絞れましたの。
期限が守れて幸いでしたわ」
と、いつものたおやかさを幾分取り戻しながら返した。
■獅南蒼二 > 獅南の狙いはまさにそこにあった。
魔術的に不安定な空間において,不用意な術式の展開は破滅的な結果を招く。
ヨキがあの魔鉱石の鎧にどのような細工を施したとしても,それが引き金になるのであれば,それは無用の長物でしかない。
「なるほどな…そうであってくれれば,楽でいい。」
貴女の防御術式が何かに反応すれば連鎖的な術式の暴走を引き起こすだろう。
そうなればこの獅南も無事では済まないのだから,恐らく防壁か何かで止めるのだろうが…
「何にせよ,成果があったのだな。
それなら何よりだ……私もコレを貸した甲斐があったというものさ。」
…覚悟,とでもいうのだろうか。
獅南は普段通りに笑っているが,普段と何かが違う。
■クローデット > 「…検討はされないのですか?」
獅南が何を殺そうとしているのか、クローデットは事情を知っている。
その存在の、「穢れ」も。
…ただ、あの「バケモノ」が「「穢れ」を知られたくない」と願って交わした約束を、直接的に破るのは避け、ほのめかすに留める。
周辺に漂う魔術の山には、触れるのを丁寧に避けた。
「変身魔術にはあまり縁がなかったのですけれど、それなりに興味をそそられましたわ。
………それにしても、講義すら犠牲にしてまで、随分と根を詰めていらっしゃいますのね?」
どこか、相手を揶揄するような響きを込めた口調でそう尋ねる。
獅南の覚悟を感じ取るまでもない。ここまで不安定な術式を書き散らしていれば…おまけに講義の長期間休講を申請していれば、その異様さには見当がつく。
■獅南蒼二 > 「……いや,恐らくだが白魔法が有効な類の敵ではないだろう。
嘗て土地神か何かだったのだろうが,今や異なる存在と成り果てた。
いや,違うな……人の皮を被ったのか,被らされたのか。」
クローデットの言葉に小さく頷きながらも,獅南はそれを候補には挙げなかった。
小さく肩を竦めて……
「そうだな……私としてはどれだけ時間をかけても構わんのだが,
あのバケモノは腹が減って仕方ないようでな。」
「首を突っ込みたがる私の教え子が喰われる前に,殺してやらねばならんだろう?」
それはクローデットを示した言葉ではないようだった。
無論,含みはあるが……いずれにせよ,異様な状況でありながらも獅南はまるで今この瞬間を楽しんでいるようにさえ見える。
貴女にその感情が理解できるかどうかは,定かではないが。
■クローデット > 「………「あれ」が、土地神ですか?」
信じられないといった様相で、眉をひそめるクローデット。
クローデットは、あれが纏う「穢れ」は、白魔術で祓える類のものだろうと考えていたのだ。
「………随分、教え子思いでいらっしゃいますのね」
クローデットが大義名分を得てあの「バケモノ」に手を下すためには、空腹による暴走があった方が都合がよくはあったが…獅南は、建前を通すらしい。
本音をぶつけてしまおうか、少し迷って…それから、嫌みっぽくその言葉を投げかけるに留めた。
…その割に、この異様な状況を、目の前の男が楽しんでるように、クローデットの目にも映ったが。
■獅南蒼二 > 「本人の言葉を信じるのであれば,な。
信仰の形など,簡単に変わってしまう…尤も,アレ自身も何か,己を変質させてしまったのかも知れんが。」
さて,どうだろうな,なんて楽しげに笑う。
白魔法が有効であるかどうか,それはあの“紫電”を見た時にある程度察しがついた。
呪いを纏っているのだから,確かに白魔法や解呪は有効だと考えるのが普通だろう。
だが恐らく,呪っているのは怪物の方ではなく,姿形を奪われた人間の方だ。
「さて,獲物を横取りされたくないだけかもしれん。」
楽しげに笑えば,獅南は再びメモを広げ,何かを書き足していく。
この男にとってそれは何よりも優先されるべき事項なのだろう。
貴女がその場に居ることを咎めることもしないが,それ以上用件が無ければ,話しかけることもしないだろう。
■クローデット > 「………そう、ですか」
「敵」が自らの口から語ったことを、楽しげに語る獅南の様子に、何か思うところがあるかのように目を細める。その口元に、いつもの笑みは刻まれていない。
「………どうぞ、「お好きになさいませ」。
また、魔術に関することで相談事が出来ましたら、参ります」
呆れた表情を浮かべながら、あの「バケモノ」を重要な「獲物」の一つと数えることから一旦降りることを、遠回しに宣言して。
それから、獅南が部屋の空間の物理的な遮断を解除すれば、改めて「人形めいた」微笑を自らの顔に貼り付けて「失礼致しました」と一礼すると、獅南に背を向けて、研究室の出口へと向かうだろう。
■獅南蒼二 > 敵であり,同時に友でもある。
友,という表現が適切かどうかは分からないが,少なくとも一定以上の信頼を置いているのも事実だ。
「何時でも来るといい…お前に,学ぶ意欲があるのなら。」
そうとだけ貴女に告げ,獅南はもう,顔を上げることもしなかった。
手のひらだけを動かして鍵を開け,貴女が部屋の外へと出ればその鍵を静かに閉じるだろう。
何者の介入も望まない。
助力も,助言すら必要としていない。
獅南はこの狭い研究室に閉じこもり,ただひたすらに,その刃を研ぎ澄ます。
ご案内:「魔術学部棟第三研究室」から獅南蒼二さんが去りました。