2016/10/08 のログ
ご案内:「魔術学部棟第三研究室」に獅南蒼二さんが現れました。
獅南蒼二 > ……獅南蒼二は,教師としての平穏な暮らしを取り戻していた。
研究と称して何日もこの部屋に籠りきりになることもなく,何日も食事を摂らないようなこともない。
実に人間らしい,当たり前の生き方をし始めている。

「……………。」

だが,それなのに,その表情は険しいものだった。
整理整頓されていた部屋には無秩序な一角が生まれ始めているし,
積み上げられた魔道書,禁書の類も,埃をかぶるほどに放置されている。

ご案内:「魔術学部棟第三研究室」にルギウスさんが現れました。
ルギウス > 「おやおや、すっかり気が抜けておられますねぇ?
 それとも腑が抜けたのでしょうか」

何時の間にいたのやら。
埃をかぶった禁書を無造作に持ち上げて、埃を払う。

「まぁ、使っていない資料なんてハウスキーパーがいなければこんなものでしょうし。
 内容は頭に入っているのでしょうけれどねぇ」

ああ、もったいない と口に出して本を元に……戻さずに掃除を始めた。
その箒、どこからもってきたものですか。
なんか魔力とか籠ってませんか、それ魔女が空飛ぶのに使うやつですよね?

獅南蒼二 > 獅南はそちらへ視線を向けることもなく,ため息交じりに呟く。
「鍵を開けてやった覚えは無いのだがな?」
もっとも魔術的なロックをかけたわけでもないから,開錠は容易だろう。
それから,ルギウスが手に取った禁書に視線を向けて…

「…それは写本に過ぎない。資料的価値は変わらんが,それだけの代物だ。」

小さく肩をすくめてから…改めて,貴方の方へ体を向けた。

「回りくどい言い方はやめるとしよう,ルギウス教諭……不法侵入をしてまで,私に何の用かな?」

ルギウス > 「知識そのものが価値ですよ。
 書に籠っている魔力とセットで初めて本当の値打ちがでるものもありますが」

箒から手を離しても、掃除は続行。
とりあえず埃よグッバイ。

「いえいえ、最近は研究もされていないのに眉間の皺が深いなと思いましてねぇ?
 ただでさえ生気のない顔が悪人面になっては目も当てられないので、カウンセリングでもやってみようかと。
 私は貴方を評価しているんですから、つまらない事で潰れてもらっては困るんですよ」

獅南蒼二 > 「カウンセリングというものは,来訪者がカウンセラーを信頼するところから始まるのではなかったかな?
 ……私が悪人面なのは認めるとして,アンタも,信頼できそうな顔はしていないと思うがなぁ。」

小さく肩をすくめて,笑う。
箒には手をかざしてわずかに細工をし,無造作に置かれている魔石にだけは触れないよう術式を書き換えた。

「……で,そんなどうでもいい理由のために鍵を破ったのか?」

ルギウス > 「私にとっては、死活問題ですよ?
 まだまだ先が楽しめると思っていた本が、いきなり白紙になったりコピー&ペーストのページだけになってるんですから」

ツマラナイでしょう? と同意を求める。

「まぁ、そうわけでして。
 いつもニコニコと信頼できそうな笑みを浮かべている私が、貴方の興味を引きそうな玩具を用意できれば と思いましてね?」

懐から無造作に水晶球を取り出した。
そこには、花に囲まれる地下神殿が映し出されている。

「まずは、こちら。
 設計者は地獄炉と名付けておりますが……人間の魂を燃料に、エネルギーを鋳造する施設です。
 人間一人から、概算で魔王や勇者一人分程度の純エネルギーが獲得できます。
 異能の有無や、英雄の資質には関係ありません。燃料の量に対して平等に結果が出ます」

獅南蒼二 > 「ははは,それは確かに問題だな。
 と言っても,私の中では少なくとも第一章くらいは終わったと思っているのだが…。」

休載は認められんか。なんて言って笑う。
それから,貴方が取り出した水晶球を見て……わずかに,目を細めた。

「なるほど面白い設備だ。だが,設計者,というのは,どこかの胡散臭い男なのだろうな。
 まぁ,ともかく素晴らしい
 機能はともかくとしてもう少しデザインはどうにかならんのか?」

軽口をたたいているが,内心にはその原理を推測しようと脳漿を絞る。
生物,ではなく人間,を燃料とするのなら,呪術と同様にして人間の感情からエネルギーを得るのか…。

ルギウス > 「第一部が終わった翌週には第二部がスタートしてますよ。
 そもそも生きている間はずっと舞台の上ですからねぇ」

ああ、大変だ大変だ なんてどうでもいい感想を口にして笑みを深める。

「作者と設計者は別ですよ。マーテリオンの名前を調べれば何か残っているかもしれませんが……遥か過去にある、遠い未来の技術ですからねぇ。残滓が残っていれば御の字でしょう。
 あと、デザインは趣味です」

生物でも可能らしいが、魂に地獄の責め苦で負荷を与える構造のために知的生命体である事が望ましいようだ。

「さて、この施設からわかったことは。
 人間に適切な負荷を加えれば、誰であろうと魔王や勇者と言った特異点に……私風に言えば『主役』になれるポテンシャルがある と言うことです。
 それはつまり―――ある種の平等は約束されている という事に他なりません」

獅南蒼二 > 「まったく,できれば脚本を煮詰めて芝居の練習をする時間くらいは欲しいものだが?
 それに,別の物語でもつまみ食いしてくれば良いと思うが…。」

まぁ,そんなことはどうでもいい,と,既に興味は水晶の中に映し出された装置へと。

「アンタの言葉らしい,清々しく矛盾した技術だな。
 その名を調べるのは考古学者に任せよう…まったく,もう少し機能的なデザインを描けなかったのか?」

その原理は概ね獅南の想像と合致していることだろう。
呪術について学んだことが,こうして生きるとは想像もしていなかったが……

「…言いたいことは分からんでもない,それは私の考えにも合致している。
 要は,主役になろうと努力と研鑽を積み重ねるか,それをせずに流れに身を任せるか。その差だということだな。
 尤も,その選択を迫るのは生まれや環境だ……特異点となるポテンシャルを誰もが持っていたとしても,生み出すトリガーを誰もが持っているとは限らん。」

ルギウス > 「人生とは絶え間なく繰り返される即興劇ですよ。
 演じながら練習するくらいの気持ち出ないといけません。
 神が台本を書いている可能性もありますが……その神がいなくなると、世界はどうなるのでしょうねぇ?」

世間話のつもりだろうか、軽く流して本題へ。

「機能美もわかりますが、折角ですのでこいつは様式美を重視したのですよ。
 古き良きゴシック建築を理解していただけそうにないのが残念ですが」

くっくっと笑い。

「ええ、それについては私も同じ結論に達しています。
 磨かない原石にも価値はありますが、ゴミ同然。
 私にとってはそれこそ燃料と同義語ですが……貴方は、どうでしょうね?
 私は結果として……貴方を為していた根幹を根拠の残るデータとして証明しました。
 逆説的に捕らえればトリガーさえあれば、主役になれる という事を知った貴方の行動に、私は期待したいのですがねぇ?」

獅南蒼二 > 「さて,脚本家がクビになるときには,次の脚本家が控えているものだろう。
 少しだけ演出が変わる,それだけの事だろうな。」

獅南もまた,さほど深く考えもせずにそう切り返した。

「生憎と,芸術には疎いのでな…こういうのは私よりも,ヨキに見せた方が良いだろう。
 ……まぁ,あれがいい顔をするかどうかは,分からんが。」

この男の口から特定の人物の名前が出るのは珍しいことだ。
自然に出たようにも見えるが,あえてそれを出して貴方の反応をうかがっているようにも,見える。

「…魔王だとか勇者だとか,私の歳になればそんなものには興味も無い。
 だが,思うに,それぞれを構成する要素は単純なものだ。
 魔王には欲望か自分なりの大義が必要であろうし,勇者には魔王が,つまり倒すべき強大な敵が必要なのだろう。
 “魔王”はその欲望か大義のためなら何者をも犠牲にすることも厭わないだろう。
 “勇者”は魔王を倒すために“敵”と戦い,その屍の山を登っていくだろう。」

「つまり,主役とは常に何者かに犠牲を強いる,ということだ。
 今の私に,それに足る理由があれば…いくらでも主役を張ってやるのだがなぁ。」

肩をすくめて自嘲気味に笑う。
かつて,歪んだ己の欲望と,その建前たる信念を持っていた男は,確かに他者を害する魔王であり,他方で勇者ともなり得た。

今この男にあるのは,一つの欲望が満たされた充足感と達成感,そして,それに伴う虚無感。
……そして,まだ確固たる形を得ていない,新たな建前。

ルギウス > 「ヨキさんの創作とは方向性が違う気がするのですよねぇ。
 こっそりと個展には足を運んだのですが、楽しめました。
 だた、あの方の作品は生命や力強さといったモチーフを好む傾向がありますから、理解は得られても賛同されるかどうかは……」

まぁ今後はわかりませんが、と付け加え。

「魔王も勇者も、強者です。強者と弱者がいるから不平等が訪れる。
 個々の垣根を無くして画一化してしまうか……誰もがみな、強者であるなら。
 そこに不平等は訪れません。

 理由が必要なら、私が幾らでも用意しますがねぇ?
 手に入れたばかりの終末の炎でも、撒き散らしましょうか。
 いつぞやの炎の巨人事件の再来。蘇る不死鳥というのも面白そうですが」

獅南蒼二 > 「まぁ,確かにあれは様式を模倣するような性質ではないな。
 …私にはモチーフやらなにやら,さっぱり分からんのだがなぁ。」

どうやらアンタの方が詳しそうだ,と肩をすくめ…

「正しくその通りだろうな…だが,私がかつて目指した世界は,努力無き者を強者とは認めん世界だ。
 つまるところ,私が最たる強者となりたかったのだよ…これでも,努力だけならだれにも負けん自負はあったのでね。」

腹のうちをすべて語ってしまうのは,それがもはや過去のものになったことの証明でもあり,
同時に,貴方を“理の外”にある存在だと認識してのことでもある。

「……そんな舞台が,客を集めるとでも?」

大げさなため息とともに,そうとだけ呟き……わずかな沈黙の後に,

「ひとつだけ,立つに相応しい理由がある。
 尤もそれは,勇者となる理由でも魔王となる理由でもないが……」

脳裏には1人の女生徒が浮かぶ。
クローデット。同志であり,教え子であり,友人の娘でもある魔術師。
獅南をはるかに凌駕する才能をもちながらも,努力と研鑽を決して怠らぬ,優れた人物。

「……私が少しばかり不幸にしてしまった少女を,この手で救い出す。
 そんなストーリーでは,いささか陳腐すぎるかな?」

ルギウス > 「芸術方面も、ある程度は修めてますからねぇ。
 暇に任せて色々と手を出してますから」

芸術は感じた事が全てです なんてのたまう。

「では、最強の座を諦めた今は何を?
 結末として、強者も弱者もいない世界なら幸せなエンディングじゃあないですか。
 舞台になるのは その過程。
 何世代かかろうと、私はずっとずっとずぅぅぅぅぅぅっと見てますよ。
 それこそ世界が終わり、この劇場の幕が下りるまで」

笑みが深く深く刻まれる。
それしか楽しみが残っていないのだ、と告げるように。

「いえいえ、陳腐だなんてとんでもない。
 大変結構な事だと思います。心に救う怪物を倒せるのは英雄の仕事でしょう?
 その舞台も楽しみになりそうで何よりですよ」

獅南蒼二 > 「そのまま芸術家にでもなってもらえれば,胡散臭い外見と中身がきれいに一致するのだがなぁ。」

惜しいことだ,なんて,冗談らしく笑って,

「なに,私は思ったよりも欲深い男ではなかったようでな。
 さて,強者も弱者もいない世界など,作り出せるものか……」

貴方のその笑みを,あきれ顔で見つめ返す。

「……例えば,絶対的な強者の前に,人間は平等だ。
 だがそれは,理想とすべき世界とは雲泥万里の隔たりをもつ。」

獅南の瞳は,今,澱みに沈んでいる。
盲目的な信念からの解放は,皮肉なことにこの男を停滞させてしまった。

……だが,澱んだ瞳の奥に眠るこの男の本質は…何ら変容していない。

「なら演出家殿に1つ聞きたいことがある。
 どうも今度の舞台に,私は適任でないような気がしてな。
 ……簡単に言えば,魔術を操ることなら望むところだが,
 悲劇のヒロインやら王女の扱い方など,私には到底検討もつかん。」

「代役になりそうな人材は,どこかに転がっていないか?」

ルギウス > 「演劇はある種の芸術ですよ。無形であるが故に、同じ演目でも常に変化し続ける素晴らしい芸術です。
 胡散臭いとは心外ですね、こんなにフレンドリーに接していますのに」

きっと それが 非常に 胡散臭い。

「いいえ、貴方は欲深い男ですとも。
 結局は理想が迷ったものの、他の全てを手に入れた。
 地位も、実力も、友も。
 ああ……今は情熱だけを失いましたか。

 さて、魔王足らんとする少女を救うのに適した役者ですか。
 何人か心当たりはありますが……彼女と近しい方は失ったモノを埋めるのにはちょうどいいでしょう。
 毛色も信念も違いますが、同じ魔術師であった“高峰”なら面白い話は聞けるかもしれません。
 そして、彼女を打ち砕くのに最も適しているのは―――私の目の前に、代役がいますよ」

獅南蒼二 > 「…そもそも,取り繕う気もないのだろう?」

にこやかに,胡散臭く,笑っている貴方をまっすぐにみて,ため息。
こんな胡散臭い笑顔見たことない。

「ははは,確かにアンタの言う通りかも知れんな。
 だがアンタの言うように私が情熱を失っているとするのなら,
 遠くない未来に私は全てを失くすだろう。
 ……舞台だろうと映画だろうと,大抵はそういう筋書きだろうからな。」

貴方の口から出た名前に,心当たりはなかった。
……魔術師だということなら,授業などで見たことがあってもいいのだが…

「その名は覚えておこう…アンタが推薦するのなら,それ相応の理由はありそうだからな。
 だが……なるほど,まさに適材適所だ。
 つまり私が演じる役には“努力を怠らぬ天才を打ち砕くだけの力”が必要ということか。」

小さく肩をすくめて…息を吐いた。

ルギウス > 「これでも、かなり取り繕っていますよ?
 私もかなり磨り減っていますからねぇ……」

もっと清々しい下衆笑いを見た蕎麦屋がいるそうです。

「停滞は緩やかな破滅です。
 そもそも人の身で永遠はまだ遠い奇蹟ですからねぇ。
 情熱を亡くした方が再起し、栄光を掴むのもまた筋書きの定石ですよ」

がんばって と すごく無責任そうにエールを送る。
どちらかといえば煽っているのかもしれない。

「貴方が無理なら、可能な誰かを育てる事をお勧めします。
 育てている間に彼女が取り返しのつかない事になる可能性もありますが。

 なに、折角の同僚なのです。
 今後は愚痴くらいは付き合いますよ? 彼にも話せない事もあるでしょうからねぇ」

獅南蒼二 > 「それで取り繕っているのか…なるほど,努力だけは認めよう。」

くくく,と楽しげに笑って…それから,またため息を吐く。

「永遠など求めてはいないさ。
 つい最近,わが友を永遠から解放してやったばかりだからな。
 ……さて,私が定石通りの筋書きを辿るとも思えんが…。」


「いや,憎まれ役を誰かに押し付けるわけにもいかんだろう。
 それに今の私ならば,そこに在るだけで,彼女にとっては裏切り者だ。」

まさに適役だよ。などと言いつつ笑って,
それから……ルギウスの提案には,小さく頷いた。

「……舞台裏では色々とあるものだからな。
 そういえば,アンタはそうやって演出しながら舞台を見ているのだろう…
 …過去公演の1つや2つ,酒の肴になりそうな話もあるのだろうな?」

ルギウス > 「筋書き通りなら王道ですし、逸れたら逸れたで私は面白い。
 誰も損をしない。
 なんて素敵なことでしょう!」

なお、当事者の感想は無視されます。

「憎まれ役と悲劇の主人公。
 何が間違っていて何が正しいか、それが問題ですが……。
 さて彼女の信念は誰の信念でしょうかねぇ」

小さく肩を震わせて。

「全てを語れば、貴方の寿命が先に尽きますよ。
 悲劇に喜劇、ドタバタコメディにメロドラマ……お望みの肴はございます。
 これから繰り出しますか?」

司祭はいいながら部屋の扉に向かい、“鍵を開け”外に出た。

獅南蒼二 > 「そう言われると,敢えて陳腐な劇にしてやりたくなるのが人間というものだがな?
 アンタは退屈だが,私は楽だ。」

ニヤニヤと此方も笑って見せて…

「多くを知っているわけではないが…そうだな,心当たりはある。
 とは言え,それをどうこうする手があるわけでもなし。
 …ならば私の配役を全うするのが良識ある役者の行動だろう。
 精々,飲み込まれんように努力するとしよう。」

立ち上がった男の瞳は,僅かながら済んだ色を取り戻していた。
何のことはない,やるべきことは,天才であるあの少女を,魔術的に圧倒するための研究だ。
殺すためではなく,あの少女を止めるために。

「……ほぉ,それは楽しみだ。
 アンタの語り口ではどうもすべてが喜劇に聞こえてきそうだが…。」

貴方が鍵を開けたのを見て…再びため息を吐いた。
まったく理不尽極まりない。
異能者だ天才だなんだという前に,この男を消すべきではないだろうか。

だが,それはまた,別の舞台だろう。

ご案内:「魔術学部棟第三研究室」から獅南蒼二さんが去りました。
ご案内:「魔術学部棟第三研究室」からルギウスさんが去りました。