2016/12/16 のログ
ご案内:「研究施設群」にミラさんが現れました。
ご案内:「研究施設群」からミラさんが去りました。
ご案内:「研究棟資料室」にミラさんが現れました。
ミラ > 「……」

常世島の公式研究資料室。
時間と知識が層になって静かに降り積もるようなそんな雰囲気さえあるその場所は
気軽に立ち寄るには少々重々しい雰囲気があるかもしれない。
その一角に小さな人影が一つあった。
資料棚から幾冊か手に取りぱらぱらと目を通した後数分後元の場所に戻す。
そんな所作をもう数時間続けていた。
それにも拘らず特に疲れた様子を見せないのは彼女がこういったものに目を通すことにとても慣れているからかもしれない。

『……再認識』

またしても一冊の資料を数分で読み終え一言つぶやいた。
この島における魔術の扱いはほかに比べるとかなり高水準にある。
とはいえ……それはこの世界で比較してのお話。

「機械との融合、工学、妥当」

重火器との併用やそれの機能としての利用という着眼点はやはりどの世界でもあるのだろう。
とは言えこちらの世界の機械はあちらに比べて便利な分……

『代替手段化、相互発展は将来に期待』

魔術、異能の解析に関してはやはり彼女の故郷に一日の長がある。
必要は開発の母とはよく言ったものだ。

ミラ > 『……システムとして利用可能、介入、媒介手段としては高水準』

手元に板状の機械を取り出し軽く操作する。
タブレットやらスマートホンやらこの世界における通信手段は
いろいろと多機能を必要とするらしい。
あちらにも似たようなものはあったけれど

『……全て軍用』

主に魔導兵器を操作するための物で、もっと魔術寄りの物だった。
とはいえその傾向や概要さえわかってしまえばあとは操作を覚えるだけ。
最初は戸惑ったものの一番の問題である言語をクリアしてしまえば
案外使いやすく設計されていた。
やはり大衆向けに設計されているというのは大きい。
最低限の読解に専門知識を必要としないのだから。

ミラ > 「……」

それを眺めながら少し思考を巡らせる。
この世界はあまり魔術や異能、変異といったものに"慣れて"いる印象を受けない。
それに対して多種多様な世界や種族が今現在存在し、入り混じっている。

「……変異点?収束、拡散……切っ掛け」

別にそれ自体にはあまり興味はない。
この世界にきて数週間、この島に至っては数日しか過ごしていないため
彼女を講師と知っているのは一握りの教師と生徒だけだ。
だからこそこの世界における来訪者の立場というものはある程度肌で感じている。
多少差別や区別をされようと彼女にとってそれは今に始まったことではない。
元の世界ですら彼女は異端だったのだから。

『問題は、それに対応しきれていない事』

多くの流入物にこの世界は未だ戸惑っている。
一部の研究と学問の融合が遅々として進んでいないのもその兆候だろう。
目につく派手な部分が多く、多彩を極めるからこそその奥の原理まで手が回らないのだ。

『……ある意味平和』

ぽつりとつぶやく。
この国にも、この世界にも争いや戦争はあったのだろう。
けれどこの混沌とした島を見る限り……その中でも一定の秩序を保ち続けていたようだ。
良くも悪くも文化が融合する際の軋轢が少ない。
彼女の世界であれば、今頃種の存亡をかけた大掛かりな戦争が勃発しているところだ。
良くも悪くも平和に慣れ、平和を求めている世界だと思う。

ミラ > そして激しい戦闘はより強力な武力の需要を跳ね上げる。
そこに至らないからこそ、こうして表層部分における解析や理論をじっくりと進められるのだろう。
ここは公開資料だけしか置かれていない場所ではあるものの、水準を見極めるだけであれば

『……十分』

公開されている技術と非公開技術というものはどこまで行っても切り離すことができない。
ましてやその進化がすでに起こっている世界から見れば、
公開情報だけでもある程度最先端技術のレベルは把握できる。
多少特化性の違いはあれど、生き物、特に人というものはどんな場においてもそう変われない。進化は目的によって近似するものだからだ。
生物学においてもそれは証明されているように思考の点でもそれは適応できる。

ミラ > 『……問題は』

どこまで授業で盛り込めばいいかという点だ。
彼女自身それを知るためにこの部屋に来たという部分が大きい。
魔術に関して教鞭をとる事になったのはひとえに彼女の魔術理論が
この世界においては数段進んだ世界のものだったからだ。
簡単に言うとこの世界において彼女式のプロセスで魔術に触れた場合
教わることよりも教える事のほうが圧倒的に多い。
その分彼女のあたりまえとこの世界の当り前は大きくかけ離れていて……

『変に情報を漏らすのは、良くない』

急激なパラダイムシフトはその将来の方向性も決めてしまう。
特に彼女の世界のような物騒な方向性に誘導してしまえばどのようなことになるかは火を見るより明らかだ。
そうでなくともこの世界は大きな転機を迎えてたばかりなのだからそれに影響を与えることはあまり望ましくない。

『……困った』

とはいえどこからどこまで説明すればいいのだろう。
元々説明がとても苦手なのだ。
説明したところで理解するもののほうが少なかったのだから。
今までは需要は原理ではなくそれの引き起こす現象の方にあった。
説明など求められていなかったのだから。

ミラ > そもそも思う。
この世界のことはよく知らないが、こんな容姿の存在に
何かを教わろうとか教師として仰ごうと考えられるのだろうか。
年端も行かないような子供に魔術を教わる、師として仰ぐことに抵抗を覚えるものというのはとても多い。
しかもここは学校で、相手は多種多様な年齢と存在ときた。
確かにその中には多少はそういったものに抵抗がないものもいるだろう。
けれど

『……それ以上に抵抗を持つ者の割合が多いはず』

それに反発を覚えるものはその数倍に上るだろう。
一つため息をつく。
教える事が得意ならいざ知らず、生徒がついてくるような教え方なんて
今までしたこともないのだから。

『…研究室、ひきこもりたい』

研究だけできればいいのに。

ミラ > 『……面倒』

中には正面切って喧嘩を売ってくるものもいるはず。
そうなれば問答無用でたたき伏せて行くしかない。
最もそれができると判断されたからこそそういった立場を与えられたわけでもあり、その経験は豊富なので特に懸念はしないけれど。
あちらでも命を取りに来る相手は括って回収に送るほど毎週やってきていたのだから。
ついでに実験対象になってもらう位は許されるだろうか。

『……常識すらわからないのに』

今まで良くも悪くも独りだった。
それで良かったしこれからもそうだと思っていたけれど

『そうも、いかなくなった』

他の資料に手を伸ばしながら独り言ちる。
関わらざるを得なくなってしまった以上、ある程度はしっかりと授業をしなければならない。
受け入れられるかは別としても。
そういう所では彼女は変にまじめだった。

ミラ > 「……オハヨーゴザイマス、コンニチハ、コンバンハ」

ぱたんと資料を閉じ、棚に戻しながら少したどたどしい口調でこちらの挨拶の練習をしてみる。
この島には言語翻訳の術式がいきわたっているけれど
そこで暮らす以上その地域の言語程度はある程度把握しておきたい。
それこそ独り言は彼女の世界の言語で構わないけれど。

ミラ > 「わたし、の、なまえ、は、みら、です?」

正直発音にはまだ少し自信がない。
聞き取りはだいぶ出来るようになったけれど、この国の人々は
語らずに推察するべきといった傾向がある。
それができるのは素晴らしいことだけれど……

『……一番苦手』

母国語でつぶやく。
人の感情などを慮るというのは彼女にとってはとても苦手なことで
それをやろうとも思わなかったから、今更それをしようにも戸惑ってしまうばかり。
そういうのは専門家に任せてしまいたい。

ミラ > そんなことを考えていると一つひらめいた。
自由学習式というのはどうだろう?
勝手に各自勉強してわからないところだけ聞きに来てくれればいい。
そうすれば変に説明しないで済む。意欲があれば勝手に先に進むだろう。
意欲がなければ?そこまでは知りません。

「めーあん」

うん、少し提案してみようと考えいそいそと動き出した後ぴたりと動きが止まる。

(どうやってそれを説明すればいいんだろう)

そもそもそれを探りにこの部屋に来たのではなかったか。
そして今のところ水準はわかってもその喫水線は掴めていないわけで。

ミラ > 「はぁ」

一つため息をつくと近くの机へと向かう。
そして椅子を引っ張り出し、その上に小さく丸まる。
今のところ答えが見つかりそうにない。眠い。
椅子の上で丸くなって眠るのは研究室で身についた特技で……

「……」

程なくして小さく寝息を立て始める。
書物の香りに抱かれているというのはとても心地が良い。
どうせ誰も来ないだろうし、来たところで
こちらの世界では今のところただの一個人に過ぎないのだから。

ご案内:「研究棟資料室」にV.J.さんが現れました。