2018/10/22 のログ
ご案内:「旧強化外骨格研究所」に神代理央さんが現れました。
神代理央 > 廃棄された研究所としては、比較的―いや、大分綺麗な状態が保たれている。
それも当然。此処は経営者が違反部活との取引を暴かれて閉鎖されたものの、閉鎖にあたって抗争も銃撃戦も無い。
何も知らない従業員達が粛々と閉鎖作業を進め、技術者や研究者達は他の研究所へ移籍し、捜査に必要なデータは風紀委員会が回収済み。

所有者が勾留中であるためそれ以上の設備改修や取り壊しも行われず、取り敢えず封鎖してある、といった状況。
元々産業用の強化外骨格を研究していた事もあり、違反部活に狙われる様な設備も資産も無い。
こんな場所に訪れる者等、自分以外には存在しないだろう。

「…さて、電気が生きているのは僥倖だったな。後は、マスターデータが残っているかどうか、だが」

今回の目的は、自分が召喚する異能の強化。
近接用の異形―要するに、人型の異形―を召喚する為には、どうしてもそのイメージの図案となるデータが必要だった。
実家に頼るのも手ではあったが、お誂え向きの施設が存在することを風紀委員会のデータから発見し、己の求める情報を得るために設備内を散策していた。

「…パワードスーツの類を研究しているなら、人体工学のデータも転がっているだろう。後は、当たりを引き当てられるかどうか、だが」

所長室や製造現場には目もくれず、辿り着いた場所は設計室。
軽く捜査パネルに触れれば、乾いた空気音と共に部屋の扉が開いた。

神代理央 > 設計室は所謂デザイナーズデスクとも言うべき小洒落た机に大型の液晶が設置されたものが数台。
壁際に置かれた無骨な棚には、捨て置かれた資料や書きかけの設計図が乱雑に放り込まれていた。

足取り軽くデスクに近づき、液晶に触れる。鈍い電子音と共に起動した画面に、捜査時に風紀委員会が入手していたパスコードを入力。一瞬の静寂の後、社員用のホーム画面が液晶に表示された。

「社内機密だの個人情報だのは時間がかかるだろうが、特段必要も無い。…目当てのものはそんな厳重に保管されていなければ良いがな」

デスクに投影されたキーボードを操作し、必要なデータを検索。
この研究施設で設計されていた強化外骨格。人体工学理論。人造筋肉理論等。
社外秘だが機密では無い、といったレベルのデータなら、セキュリティを解除せずとも保管されているだろうと踏んで検索を開始する。

暫しの間、設計室に響くのはPCの駆動音と投影キーボードを叩く己の指の音のみ。
無音に近い静寂が、この場を支配していた。

神代理央 > 「…流石に制作段階の最新型はデータが無いか。だが、これだけあれば…」

強化外骨格の設計図。開発中のデータ。研究資料として残されていた人体工学や人工筋肉の理論。
そういったデータを次々と転送用に選別していく。中にはセキュリティコードのかけられたデータも存在したが、別に企業スパイになった訳では無い。
己にとって必要なデータを選別し、黙々と作業を続ける。

「………よし、こんなものか。後は転送が終われば、こんな場所まで足を運んだ甲斐があったというものか」

一通りデータを選別し終わり、端末を転送モードに切り替える。
作業を終えた安心感から、僅かに気を緩めて小さく息を吐き出した。
甘味が欲しいところだが、生憎今日は持ち合わせが無い。流石に、この施設の自販機を使う気にはなれなかった。

神代理央 > 「……さて、得るべきものは得た。長居は不要か」

転送完了の電子音が鳴り響き、端末をしまい込む。
後は、このデータを解析し、理解し、異形の召喚に組み込む実験を行わなければならない。

「…上手く行くと良いのだが。まあ、期待はせず、全力を尽くすとしよう」

理想としては、砲撃する異形の盾が欲しいところではあるのだが。
演習場の予約を抑えなければな、等と思考を走らせながら、固い足音を響かせて研究所を後にした。

ご案内:「旧強化外骨格研究所」から神代理央さんが去りました。