2015/09/11 のログ
■ヨキ > 「色々だ。
難しすぎて取らなければよかった、とか、難しくてやり甲斐がある、とかな。
それだけ君の授業が『実践的』ということだろう。
ヨキは座学が好きだが、演習はもっと好きだ」
(鉄球の表面から立ち上る陽炎を眺め、溶けた金属の有様に慣れた様子でしゃがみ込む。
とろけた断面を、まじまじと見遣る)
「鉄を溶かす術――か。
先日の炎は凄まじいものだったが、こうして実際に熔かされたものを見るに壮観だな。
これらの魔法を持つ者が、ヨキの金工をも受ければよいのに。
君にとって、『見所のある生徒』は育ちそうか?」
■獅南蒼二 > 「学ぶ意欲の無い生徒には、苦しい授業だろうさ。」
何せこの演習では、ヒントも助言も一切無い。
テキストも無ければ、次時の予告や予定すら無い。
全て、自分で学ばなければならばい…ヨキの語る評判は、頷けるものだった。
「この課題はアンタと話した後に思い付いたんだが…
…科学とは違うからな、鉄を溶かすために炎は必要ない。」
手を翳せば、ヨキの目の前にある鉄球に術式を描き込んだ。
魔力を純粋に熱へと変換し、それを鉄球の中心部に発生させていく。
「『見所』の取り方次第だが『魔術的才能』で言うのなら今期は豊作だ。
『それ以外の部分』で言うのなら……まぁ、何人かは、面白い生徒が居る。」
ぐっと手のひらを握りしめれば、鉄球は内側から、真っ赤に赤熱し融解してしまう。
■ヨキ > 「ヨキが着想のソースになったか?嬉しいね。
『努力と研鑽』……まるで先ゆく君が、魔術の道を先導しているかのようだな。
学ぶ意欲あらば、ついて来い、という訳だ」
(鉄球が赤色を孕む。その沸き上がる熱に照らされながら、興味深げに一部始終を眺めている)
「才能は十分――あとは『君と話が合うかどうか』か」
(融解する鉄球を前に立ち上がる。
身を屈め、灼熱の金属へ左手を伸ばす。
指先が、その表面に触れるほんの寸前。
人差し指の先から、音もなく銀色のきらめきが伸びる。
鉄と似て非なる、金属の輝き――鋼だった。
赤熱する様子も見せず、しかし蝋のように伸びる鋼が、薄絹のように広がって溶けた金属を呑む。
二つの異質な金属が、捻れて伸び、質量を増し、ヨキの手の中に収まる。即席の合金。
――手袋越しに、あちち、と呟きながら握ったそれは、有機的でいて鋭利なナイフの形をしていた)
「見事なものだ」
■獅南蒼二 > 「残念だが、手取り足取り教えるのは苦手でな。
それに、私が指導できるのはたかが数年間…魔術師には不十分な時間だ。」
先導してやれる時間は限られている。
ならば、庭先の道順を教えるよりも、1人での歩き方を学ばせた方が良い。
「残念だが生徒たちは必要に迫られなければ、私の所へは来ない。
アンタと違って、優しく話しかけるような術も知らんからな。
………私の所に集まるのは相当な『変わり者』たちだ。」
肩を竦めて、苦笑を浮かべる…視線だけは、ヨキから決して離さずに。
……貴方の異能を、一切の術式を描くことなく、魔力を消費することなく発動される不可解な現象を、真っ直ぐに見た。
魔術であればどのような術式でも即座に読み取り、その属性や指向性を理解することができる。
だが、“創造”したのか、それとも“転移”させたのか、それさえも理解できない。
これが異能だ。
「アンタの授業を受ける生徒も大変だな…そんな器用な真似は、生徒にはできんだろう?」
■ヨキ > 「先人の教えを酌み、自ら新しい法を編み出すには、学園の四年間はあまりに短い、と。
君は教師としては確かに優しくはないやも知れんが……指導者と仰がれるには、十分な資質があるらしい」
(視線を離すことのない獅南に反して、ヨキはその目線を手元の金属に落としていた。
温く冷たい鋼に呑まれた鉄はたちまちその熱を失い、やがて凝固する。
手首のベルトのバックルに試しに切っ先を打ち付けると、かん、と甲高い刃の音がした。
その真っ直ぐな刃に目を眇め、まるで刀鍛冶のように具合を見る。
獅南へ振り返り、どうだ、と子どものように笑って見せびらかした。
片刃のナイフ。
刀身は測ったように無機的な曲線を描いているが、握りや柄は、鉱物のようにごつごつと節くれ立っている)
「ふふ。斯様な異能を持っているのは、ヨキの他には少ないでな。
授業や制作に、異能は使わんことにしているのだ。
無能力者と同じだ……炉で金属を溶かし、鎚で打って伸ばし、鏨で削って、ひたすら削る。
異能者とて、努力する者は居るということだ」
■獅南蒼二 > 「ははは、指導者とはまた、意識したこともない立場だな。
まぁ、素直に喜んでおこう…この変わり者をそんな風に称する者がいるとは、光栄だ。」
苦笑を浮かべつつ、こちらも煙草を取り出して…視線をヨキから外した。
それは“あえてそう見せた”ようにも見えるし、警戒を解いたようにも見えるだろう。
「随分と物騒な芸術作品だ…美しいと言うよりは、そうだな…荒削りで力強いと言うべきか?」
刀を横目に見て…煙を、ヨキの方へ流れないように吐き出す。
やはり、そこから術式や構成を読み取ることはできなかった。
ヨキの言葉を聞き、小さく、頷いて…
「分かっているさ…アンタが私をどう見ているのか知らんが、この授業にも異能者は居る。
異能など使えばこの通りすぐに分かってしまうからな…努力しているよ、自分の才能を封印してまで。
だが、それを言いに来たわけでも、そうやって鉄を盗みに来たわけでもないのだろう?」
「私がアンタの子らを殺すと思って、監視でもしているのか?」
くくくく、と腹の底から楽しそうに、笑った。
■ヨキ > 「指導者。あるいは先導者――いや、『扇動者』か。
君の在り様に負ける者あらば、鼓舞される者も居よう。
喜べ。ヨキは誰彼構わず褒めて回るが、その時どきで相手に相応しい、いちばんの言葉を選ぶ」
(不遜に笑う。
その手に握られたナイフは、決して相手に向けて振るわれはしない。
冷たく鋭い切っ先を持ちながらにして、ただそこに在る)
「荒削りで力強い……か。有難う。
いくらでも、いくらでも――だ。この異能は。
まるで長い時間を掛けて削ったように、叩いたように見せるのだって一瞬さ」
(弄ぶように、手元のナイフをくるりと翻す。金属は瞬く間に歪み、質量はそのままに姿を変える。
鋼の薔薇、鎚目模様がくっきりと浮かぶ鉄瓶、羽を広げた小鳥……
――そして元のナイフの形に立ち戻る)
「君が異能者を見る目は、随分と剣呑なようだからな。
……魔術と異能とは、本当に相容れないものか?
封印せねば、君の教えを乞うことは出来んのか、獅南よ?」
(室内の中心に置かれたテーブルへ歩み、凭れる。
さながら鉄の彫像でも立て掛けたかのように、ぎ、とテーブルが鳴った)
「監視とは人聞きが悪いな。
ヨキはただ、君と仲良くなりたいだけさ。
君の考えることは、なかなかに面白そうだからな」
■獅南蒼二 > 「扇動者とは、なるほど、面白い言い回しだ。
そうだな、私の教室で暴動でも起きれば、私が黒幕だと思ってくれ。」
楽しげに笑って、それから、転がっている鉄球やその成れの果てを1つ1つ指差していく。
指差されたものから淡く光って、意志をもつかのように獅南の足元に集まった。
「なるほど便利なものだ………いや、日常ではあまり使いそうにない、便利、という言葉は適切ではないな。
形を変えるだけではなく、生み出すこともできるのか?」
紫煙を燻らせながら…ヨキの手のひらの中で様々に形を変えていく金属を見つめた。
素直に見事なものだと、感じる。
……長い修行の時間を経て金属細工を極めた職人、芸術家にも、真似はできないだろう。
「勘違いしないでくれ、魔術と異能に対立構図は存在しない。
…だが、アンタのその業も、異能を持たぬ凡庸な職人から見れば、決して乗り越えられん“脅威”でしかない。」
吸い殻を携帯灰皿へと入れて、パタン、と閉じ…ポケットへ仕舞いこむ。
それから、視線を貴方へと向けて、
「それを知った上で…自分の力を脅威と知ったうえで……だ。
アンタに私から何かを学ぶ意欲があるのなら、私はアンタに教えよう。」
僅かに目を細めて…歩み寄る。
「アンタが、私から学んだ事を何に使うのか、私も興味が無いわけではない。
仲良くなれるかは甚だ疑問だが…な?」
■ヨキ > 「承知した。そのときにはこのヨキが――責任を以って、君を治めにゆこう」
(肩を揺らして笑う。
鉄球が集まってゆくのを見るに、ヨキもまた手元のナイフを小さく振るう。
ナイフはたちまち球体に変じて――それを、テーブルの上にことりと置いた。
半面が融解した鉄球を模した形。平たい底が、文鎮のように安定して接地している。
鋼よりも黒く、鉄よりも白い。重さはおよそ、500グラムほど)
「使いどころは……あまりないな。
先日は、酒を飲むに器が要ってな。即席のタンブラーをこさえた。
だから、便利なときには身悶えるほど便利だ。使いでのないときには、本当にあるだけ無駄な異能さ。
出来るのは……生むことと、生んだ金属の形を変えること、だ。
『冷めた鉄球』に触れれば、鉄球と同じ鉄を生むことは出来るが……
鉄球そのものの形を変えることは出来ん。形を変えられたのは、君によって熱せられていたからだ。
肌に触れさえしていれば、作ることは出来る」
(言って、自らの腕や首を示す。銀の腕輪、鋼の首輪、真鍮のバックル……)
「ヨキに興味があるのは……君と、君が見据えているものだ。
君が異能を、魔術を、そうしてこの島を、どのように見、どのように変えてゆこうとしているのか知りたい」
(近付く獅南を、真正面から見返す。
金属よりも冷たい獣の金色の眼差し。その奥に、どろりと焔が揺らぐ)
「先に教えておいてやろう。
ヨキが理想とするものは――無能力、異能者、魔法使い、ヒトに人外、地球人に異邦人。
あらゆる『人間』の共生、そうして“融和”だ」
■獅南蒼二 > 「さて、アンタ如きに治めることができるか?」
冗談じみた笑いとともに、歩み寄りつつ合金の球体に手を伸ばす。
一見しただけではそれがどのような成分なのか、理解することは不可能だ。
「なるほど、眩暈がするくらいに原理の分からん能力だな。
だがそれこそが異能なのだろう…即席で器を作れるのは、少し羨ましいよ。
そうだな、無駄を嫌うのなら、魔術学を学べばいい…面倒な部分もあるが、概ね便利だ。」
2本目の煙草を取り出せば、指先から魔力の炎を生じさせて火をつける。
どうだ?とばかりにその炎を見せて、ぱっと、霧散させ…
「…と言いたいところだが、アンタが無駄を嫌うような人物には見えん。
装飾品をそれだけ作り上げて、身に着けている…
…そして、こんな私と話に来るようなアンタだからな。」
楽しげに笑い…それから、奥底に焔を湛えた瞳を見つめ返した。
獅南の瞳には悪意も善意も無い、炎も光も無く、ただ、果てしなく、深く広がっているのみ。
「共生と融和、聞こえは良いが…私の立場からすれば、それは緩やかな支配、ともとれる。
優れている者が劣る者をどう扱うか、それを考えたことがあるか?
先ほどアンタも言っただろう?『封印せねば、君の教えを乞うことは出来んのか』と。
……力のある者は、それをあえて封印しようとはしない。」
「“私”の理想を言おう。
共生と融和…そこに、平等、を付け加えたい。
それを可能にするものこそ、魔術学だと私は信じている。
才能ある魔法使いも、人外も、異邦人も、すべてが平等に学び、平等に扱える“力”だ。」
■ヨキ > 「さあ。ヨキはただの――美術の先生、であるからな。
それに獣は、総じて火に弱いものさ」
(先ほどまで赤熱する鉄球をまじまじと眺めていたくせ、悪びれもせずに嘯く)
「原理など、考えるだけ益体もないさ。川を流れてきた大きな桃から、子どもが産まれるようなものだ。
……ふふ、ヨキは無駄をもまとめて愛しているよ。
何てったって、『芸術』ほど生きる上で無駄なことはないからな。
だが……君と話すことを、ヨキは無駄とは呼ばん。大いなる愉しみだ。
煙草に程よい火を点け、呑む。それだけで話をする価値はある」
(『緩やかな支配』。緩く両腕を広げ、小首を傾げてみせる)
「ヒトが集団を形成したとき、そこには首長が自ずと生まれる。
支配と被支配は、有史以来連綿と継がれてきた人間の営みの在り方、その最たる要因ではないかね?
優劣もまた、さまざまな形で判じられてきたではないか。
肌が黒いだけで道具と扱い、顔のパーツが足りないだけで塀の奥へ追いやるような。
平等……平等、か。
例えば君の言う『平等』の下で、異能はおろか、魔術を扱う素養さえないものはどうなる?
理論を学んだとて魔力を備えず、その知識が煙草の火さえ点けられないような『凡人』は?」
■獅南蒼二 > 「覚えておこう。暴徒には火炎瓶を装備させるべきだな。」
冗談は冗談と割り切り、ククク、と楽しげに笑って、
「芸術が無駄だというのは同感だが、芸術が残す爪痕は時に学問より大きいからな。
1,000年の後に名が売れているのは、私よりアンタかも知れん。
……さて、私にとっては無駄なのか、それとも有益なのか。
まぁ、愉しいという部分には今のところ同感だがね。」
小首をかしげた相手を見て、瞳を閉じ、小さく頷く。
「支配と被支配、その理不尽な構造を、ヒトは多大な犠牲を経て乗り越えてきた…これは社会学に近いかな。
人権が叫ばれ、植民地支配の時代が終わり、黒人の大統領が生まれ……まぁ、全てが解決したとは言わんがね。
今回も同じだ、連綿と受け継がれてきた人の営みの在り方に従うなら、
緩やかに理不尽な支配をされるより『犠牲を経て乗り越える』ことを、私なら選ぶ。」
どこか楽しげに、そう語ったのちに…肩を竦めて、笑い、
「だから言っているのだ。……学ぶ意欲があるのなら教えよう、と。
それに、魔力を備えていないのは私も似たようなものだ。
……そのために、私の研究がある。以前見せた、あの指輪だよ。」
魔力を、まるで電池のように貯蓄し、使用する。
この男は本当に、すべての凡人に魔力を授けるつもりでいるのかもしれない。
■ヨキ > (おお怖い、くわばらくわばら、と。演技じみて身を抱く素振り)
「このヨキは……千年ののちも、変わらず生きているだろうさ。
こうして人の子を、無責任に冷やかしながらにな。名を売るには有利だ。
……ふ。ヨキは福の神ではないからな。益など齎してやるものか。
だが無為な楽しみを提供することには、少なからず自信がある」
(旧友との語らいさながらに、目を細め、ぺらぺらと言葉を並べる)
「犠牲。……君が踏み付け、乗り越えてゆくものはいったい何だ。
すべての人間にあの指輪や、魔術の教えを授けてまで?
かく言うヨキも、また。
融和と共生、共存共栄。それは異能や魔術を厭い、忌避する者たちを踏みつける行為に他ならん。
煙草を吸う者と吸わない者が、傍目には共にあるように見えて……
実際のところ、喫煙者だけが仕切られた区画へ追いやられているのと同じで。
こうして見るに、我々は随分と残酷らしいじゃあないか、獅南。
融和を謳うヨキは、保守主義者を諸共呑み込まんとし――君は魔術学の平等さこそが至上と信じてる」
■獅南蒼二 > 「千年も生きるか…まったく想像も付かんな。
そのころには私の理想も、私の教え子たちも…その子らも死に絶えているかも知れんな。
アンタが死ぬことがあるのなら、地獄で顛末を聞かせてくれ。」
冗談を交えながら…どこか楽しげに、語る。
愉しい、という言葉には、どうやら嘘はないようだった。
「革命を起こすのは“民衆”だ。扇動者ではない。
民衆が何を踏み付け、何を乗り越えるのかなど想像もつかん…が、1つだけ予想を述べるのなら…
…この世界に後から現れ、我が物顔をしようとする者たちだ。」
…異能者や異邦人全てではなく、我が物顔をしようとする者、に限定した。
「どうやらそうらしい。そして、相容れない…残念だ、仲良くはなれそうにないな。
我々の間が、精々冷戦どまりで、世界大戦にならんことを祈ろうか。」
■ヨキ > 「獣の千年と人間の千年は、違う。
……ヨキが人の姿を取って、十年。途方もなく満たされていたよ。
これがこの先千年続くとしたら――眩暈がするね。
ふ……地獄に堕ちると判っているのだな、自分が?
仏の御許に召されるようなことはしていないと、負い目でもあるのか」
(顔の筋肉の動きに、声のトーンに。
滲む楽しさを読み取って、笑みを深める)
「『後から現れ』『我が物顔を』……おやァ。何やら聞いたような。
例えば――人の姿になって十年ほどしか経たぬのに、この島を我が土地と、人間を我が子と呼ぶ獣が居るそうじゃあないか。
もしかすると、踏まれて悦ぶ趣味の持ち主だったりして」
(続く獅南の言葉に、なんだ、と、然して残念がってもいない顔。
ゆらりとテーブルから離れ、獅南と向かい合う。
異邦の装束が揺れ、金属の飾りが涼やかに小さく鳴る)
「――ヨキが呑もうとしている人びとの中には、もちろん獅南、君もまた。
厄介な犬に目を付けられた不幸を、呪うがいい」
ご案内:「第一演習場」に虞淵さんが現れました。
■獅南蒼二 > 「おいおい、アンタが言ったんだろう、我々は残酷だ、と。
それなら二人とも、仲良く地獄行きが当然の成り行きではないか?」
大袈裟に肩を竦めつつ、楽しげに笑って…
…それから、真っ直ぐに、ヨキの瞳を、見つめる。
「……それとも、ヨキ先生は神の国に召されるつもりだったかな?」
そう言ってから、また、笑った。
「ついでに火炎瓶で焼かれたいらしい、どうしようもない変態だな。
……おっと、人間の基準で考えるのは酷か?」
皮肉めいた発言とともに、一歩、歩み寄る。
「時間とは残酷だ…満たされた世界も、やがて陳腐なものに変わる。
千年の時間でアンタがそうならん前に、私がアンタを人間のままに焼いてやろう。」
冗談じみた笑いとともに、しかし、目は笑っていない。
ひたすらに深く広い闇が、貴方を、貴方の瞳の奥底を、見据える。
「ははは、随分と穏やかじゃないことだな。ヨキ先生。
どちらが倒れるか、楽しい“演習”の始まりだ。」
■虞淵 > 「へェ、随分と立派なモンが作られたモンだなァ。血の気の多い不良なんかが暴れるにはもって来いってところか」
物見櫓で現れた男は楽しげに声を上げる
「そんでまぁ…随分と殺気に満ちてるが、此処は殺し合いの場だっけなァ。
俺の目に狂いがなきゃァ、演習場って書いてあンだが」
手元の地図をバサリと捨てる
少し離れた位置には対峙する2つの影が見えた
■ヨキ > 「人を導くには、得てして残酷さが必要なものだ。
……いいや、ヨキの行く先には、何も。
天も地もなく、死すればそれだけだ。ヨキは信ずるものを持たんでな」
(獅南の瞳を見据える。その奥を見透かし、覗き込まんとするように。
自ずと望んで、闇の底へ手を伸べるように)
「く……ふふ。ははは。
美しく在るうちに、このヨキを灼きに来るがいい。
ヨキは座学よりも――『演習』が好きだ」
(受けて立ち、大きな口を裂いてにたりと笑う。
そうして踵を返そうとして――)
「………………、」
(大柄な人影に歩みを止める。
尖った靴底がぴたりと止まり、床を鳴らして反響する)
「――やあ。
少なくとも、今この時間に血は流れていないな。
チェスのようなものだ。殺し合いの代わりさ。平和だろう」
(諸手を広げて飄々と笑う、優男然とした顔)
■虞淵 > 「活きのいい喧嘩相手でも転がってねェかと覗き見にきてみりゃ、くたびれたような先コーが二人でイチャイチャするトコだったとは」
口の端を歪めて笑い、胸元から煙草を取り出して口に咥える
「俺も遊びに加えてくれよ。それとも異能ももってないヤツはお呼びじゃねェかい?」
■獅南蒼二 > ヨキの瞳から、何を感じ取ったか…僅かに目を細めて、苦笑した。
「人になったのなら、人の死に方をしてみろ…
…それとも、この世で苦しみを味わい尽くしたか?」
背を向けても呼び止めようとはせず、追うこともしない。
ただ、新しい煙草に火をつけて…
「…約束しよう。アンタを失望させることはせんよ。
あぁ、生き飽きたら連絡をくれないかな?」
相変わらず冗談じみた言葉で、ヨキを見送りつつ…
…現れた男を、横目に見て、
「お前の見立てが正しいのだとしたら、アンタの登場で殺し合いを止めてしまったかもしれんな。
血の気が多いのは良いことだ……それに、私も異能など持っていないさ。」
火は要るか?と、指先から魔力の炎を生じさせて、虞淵に差し出しつつ。
■虞淵 > 「あちゃァ、そいつぁつまんねェ真似しちまったなァ。
これから楽しくイチャつくトコを、知らねェやつに突っ込まれたらそりゃ冷めるってェモンか。ククッ」
火を差し出されればさしたる警戒もなく咥えた煙草を近づけてその火をもらうだろう
「するってェと魔術分野の教師か。俺が在学中には見なかったツラだな。
まーァ何にせよ邪魔ァこいたなら悪かったぜ。
そのうち埋め合わせでもしてやるよセンセー、あーあいい暇つぶしになると思ったんだがなァ」
大げさに天を仰いでみせる巨躯の男
■獅南蒼二 > 「折角の機会だったんだがな……というのは冗談だ。
流石に教員がここで殺し合いをしていては、学生らへ示しもつかんだろう?
尤も、お前が学生だったのは……随分昔の話だろうが、な。」
紫煙を燻らせて…静かに、大柄な男を見る。
どう贔屓目に見ても、学生には見えない。
「暇潰しがほしいのなら…そうだな、落第街のスラムにでも行くといい。
抵抗も出来ず袋叩きにされるかも知れんが。
……あとは、そこの『演習好き』なヨキ先生が、いつか相手をしてくれるかもしれんぞ?」
■ヨキ > 「紛い物さ。全うな獣に戻れない代わり、人間にも成り切れん。
だが真似事をすることは出来る。
――期待しているとも、君の行く末を。無下に地獄へ捨て置くには、勿体ない。
ヨキが連絡を寄越すまで、その信念曲げるでないぞ」
(獅南の魔術が、虞淵の煙草に火を点ける。その横に、弛緩した立ち姿で然したる警戒も見せずに笑う)
「その出で立ち――グエン、と言ったか。噂は聞いている。
美術を教えているヨキという……見た目どおりの草臥れぶりでな」
(軽々しく笑う――が、獅南の『演習好き』という言葉に、ふっと吹き出して)
「……あっはは!バラすでないよ、獅南。
グエン、君の暇を潰してやれたらよかったんだが。
残念ながら、ヨキは真っ当な先生をしているでなあ」
■虞淵 > 「ククッ、どっちもまともな教師ってツラァしてねェけどなァ?あといちおーまだ学籍はあるらしいぜ」
ぷかぁ、と白い煙を吐き出し
「ま、いいや。
別の日なら楽しく遊んでもらえそうじゃねェか、なぁ?センセー。
今日のところは挨拶だけだ、じゃーな」
くるりと踵を返す男
何気なく壁に手を触れ、そのまま演習場から姿を消した
───数秒後、壁が繰り抜かれたように円形に砕け落ちる
そこには異能力や魔術を使った痕跡は一切感じ取れなかった
ご案内:「第一演習場」から虞淵さんが去りました。
■獅南蒼二 > 「……この学園の寛容さは異常だな。」
学籍が残っている、という衝撃の事実に肩を竦めて笑う。
演習場の壁を破壊するなど、尋常なことではないが…
…魔術や異能を使ったようにも見えない。
「…しかし、真っ当な先生とは、よく言ったもんだ。
真っ当な魔術教師は次の授業へ向かわねばならんのでな、そろそろ失礼するよ。」
「あぁ、それと……待つだけなのは苦手だ、あまり連絡が遅いと、勝手に初めてしまうかも知れん。」
それだけは、覚えていてくれ。
ご案内:「第一演習場」から獅南蒼二さんが去りました。
■ヨキ > (壁が崩れ落ちるのを見る。
驚きはしないが、じっとりとした半眼にはなった。見事な現行犯だ)
「………………、弁償……」
(どいつもこいつも好き勝手しおって、と、がっくりと肩を落とす。
額を指で押さえながら、横の獅南に笑い掛ける)
「何を言う。ヨキほどまともな教師は居らんぞ。
幸いにも、専門教科担当は暇なのでな。
……事務室に、報告に行ってくるとするわい」
(無論のこと、崩された壁についてだ)
「ヨキは未だ、子どものように毎日が楽しい性分でな。
それに、不幸にも大それた気の長さだ。
連絡を寄越さず居るうち、すっかり忘れてしまうやも」
(笑いながら、再び歩き出す。別れ際、ひらりと手を振った)
「――討ちに来い、魔の術に殉じるならば。
魔を以ってしてのみ討たれうる、ヨキはその名の通りの魔物ぞ」
(唱えるように、低く呟く。
は、と、笑う声が廊下に響いて、すぐに消える)
ご案内:「第一演習場」からヨキさんが去りました。