2016/05/23 のログ
ご案内:「演習施設」に東雲七生さんが現れました。
■東雲七生 > 長閑な休日の昼下がりである。
否、長閑と言うには些か熱気があり過ぎる昼下がりだ。
道行く人たちが額の汗を拭う中、七生は涼しい顔で演習施設を訪れて、コンソールをぺちぺち叩いていた。
「こんな日に転移荒野なんて行こうもんなら死んじゃうって、俺でも分かるしー。」
なので今日は施設内での鍛錬である。
ぶっちゃけ屋内でも屋外でもある程度体動かしたら死んじゃうほど暑いのには変わりはないのだが。
■東雲七生 > こんなクソ暑い休日に演習施設なんか使ってる奴は居ない。
そう踏んで来てみれば大当たり。流石に訓練施設の方は人が居る様だが、屋外と大差無いようなグラウンドには人っ子一人居なかった。
「さーてと、何を相手にしようかなー」
これなら人目に付く事も無いだろう、と七生は意気揚々と仮想戦闘訓練に挑もうとしている。
日頃、転移荒野で熊とか猪とか、一眼巨人などを相手にしてやってる訓練が今ならなんと敵を探さず余計な怪我を与えず行える。
なんてお得なんだろう。ぺしぺしと端末に表示されたリストを眺めつつ七生は小さく感動した。
■東雲七生 > ぺしぺしのぺしっとコンソールでフィールド設定をして、最後に仮想エネミーを選択すれば一丁上がり。
あっという間にグラウンドが市街地に、そして目抜き通りの中央にベヒーモスを配置する。
「……よーし、目一杯動き回ってみるか!」
自分の体力が尽きないよう、時間経過で設定がリセットされる様にも設定して、頬を叩いて気合を入れながらフィールドへ入っていく。
「……って、あれ。何で街中にベヒーモス。」
あれー、と首を傾げて咆哮を上げる魔獣を見遣る。確かに自分で設定したのだが。
何も考えずに設定した辺り、七生もちょっと暑さにやられてるっぽかった。
■東雲七生 > 「……ま、いっか。」
はぁーやれやれ、と軽く溜息を吐いてから手足をぶらぶらーと振って脱力する。
七生の存在に気付いた魔獣は、目の前の人間に対して敵意を隠す事も無く叩きつけてくる。
至極当然だ。だってそう設定したのだから。
「うーん、この体格差。一発良いの入ったら気絶だなー」
家屋一棟が丸々動いてる様な存在が、こちらを敵と認識している。
一般人であれば卒倒ものの重圧の中、七生は授業の教室を移動するかのような気楽さで魔獣へ向けて歩き出し──
──直後、言葉の無い怒号が響き渡った
鼓膜どころか周囲の空気もろとも震わせるような咆哮が、七生に向けて放たれる。
敵と見做した存在が自分に近づいて来たのだから当然だろう。だが、
「──怖いなー、怖い。
……何が怖いって、すっかり慣れてる自分がだよな。」
始めて破壊神の攻撃を見た時の方がまだショックが大きかったな。
そんな事を呟いた直後、魔獣の視界から、七生の姿が消えた。
■東雲七生 > 標的を突如見失った魔獣はトラックのエンジン音の様な唸り声を上げながら周囲を見回す。
左右をビルに挟まれた立地で隠れるような場所は無い筈である。
「こっちこっち。」
凛と冷ややかな声が魔獣の真下からしたかと思えば、魔獣の頭が天を仰いだ。
突然の事に魔獣も状況を把握し損ねた様で、目を見開いたまま僅かに動きを停めた。
それが顎を蹴り上げられたのだと魔獣が理解する頃には、既に次の手が掛けられていた。
「はい、次。」
再び至極冷静な、ともすれば冷酷とも聞こえそうな声がする。
直後、魔獣の左の前脚が頽れた。いきなり四肢の一つの支えを失い、面食らった巨体がゆっくりと地面に倒れる。
■東雲七生 > 七生は倒れた魔獣に追い打ちをかけるべく動き出した。
幸い、相手は今、七生自身に対しての脅威を感じていない。それどころかこちらの攻撃を受けた事すら認識できていないだろう。
──その間に、確実に息の根を止める。
体格に限らず、あらゆるものに於いて圧倒的に劣る七生に出来る手段はそれだけだ。
敵の意識の外から攻撃し、それを悟られる前に畳み掛ける。
長期戦に持ち込まれれば、どうあっても不利である事は明白だ。
「さてと、こいつの急所はどこだろな……っと」
軽いステップの様な動きから、一段深く踏み込んで一気に加速する。
そのまま一気に、魔獣の懐へと潜り込むと──
渾身の勢いで放った蹴りは、思い切り空を切った。
突如として魔獣の巨体と、市街地が消え去ったのだ。
何の変哲もないグラウンドの中央で、七生は一人、自分の蹴りの勢いを殺し切れずに盛大に転倒した。
■東雲七生 > 「………。」
むすー、っと完全に拗ねた顔で転んだまま起き上がろうとしない。
時間が来れば全てリセットされる様に設定したのは、間違いなく七生自身だ。
だけれど、こんなに早くだなんて聞いてないぞ。
膨らませた両頬は、言の葉よりも雄弁に感情を語っていた。
不完全燃焼である。
■東雲七生 > 「………暑い。」
地面に転がったまま、しかめっ面のままで七生はつぶやいた。
空では太陽が余計なほど熱を送ってきている。
あれが魔法魔術の類ならきっとシャットしてくれるのに。
そんな事をぼんやりと考えながら、七生は不満げに鼻を鳴らした。
「300秒って入れた心算で3分にしてたのかな……」
ぶつぶつと、自分の設定ミスについて考える。
暑い中で適当に設定した所為か、どうにもおぼろげだった。
■東雲七生 > いっそこのままここで寝てやろうか、とも思う。
しかしそんな事をしてしまえば間違いなく脱水症状まっしぐらだ。
暑さに強くなったとはいえ、直射日光を浴び続けるのは流石に堪える。
「あ~、明日もこんだけ暑かったらどうすっかなー」
よろよろと身を起こしながら独り言。
確か明日の放課後は予定は何も無かったはずである。昼間に何も入らなければ。
■東雲七生 > 「とりあえず、明日の事は明日考えるとして」
……暑い、帰ろう。
やり場のない高揚を適当に長距離ダッシュにぶつけつつ。
七生は居候先のある異邦人街まで帰って行った。
帰った後は1時間ほど水風呂で不貞腐れたのはまた、別の話──
ご案内:「演習施設」から東雲七生さんが去りました。