2016/06/11 のログ
ご案内:「訓練施設」に美澄 蘭さんが現れました。
美澄 蘭 > 放課後。
ピアノの練習をした後、蘭はその足で訓練施設に赴いた。
もちろん、放射魔術の練習のためである。

「さて、と…」

訓練スペースに入ると、早速端末の操作を始める蘭。

美澄 蘭 > ぐるりと、半円状に水晶体の的が並ぶ。
蘭は、それを確認するとその半円の中心に、的の方に向くように立った。
集中して、魔力を練る。それを、元素に変換していく。

「…えいっ!」

滝のような、激しい水音。
放射状に、人の背丈より高い波が、勢いよく流れていき、水晶体の的を飲み込んだ。

それが収まり、水が消えると…そこに残っていたのは、ラピスラズリの青。
だが、端の方はまだ透明感が残っているように見える。

「…魔力の、密度みたいなのが足りないのかしら…」

水晶体の色を見比べながら、そんなことを呟く。

美澄 蘭 > そんな練習を何度か繰り返したところで、

「んー…だいぶ、バランスはよくなった…かしら?」

「色の比較用に写真撮っとけば良かった」とかぼやきながら、今度は風の放射魔術の練習だ。
魔力を、練り上げる。

「…それっ!」

放たれたそれは「風」というよりは、もはや「分厚い空気の壁」の様相だった。
まっすぐに術者の反対側へ強く吹くそれは、相手を術者へ近づけることはおろか、その場に留まることすら困難にするだろう。
…それでも、蘭の雷の魔術にすら耐えてみせた水晶体の的は、びくともしないのだが。

そして、そこには端から端まで、綺麗な孔雀石の緑に染まった水晶体。

「…うん、割と良い感じ」

特に攻撃性を高める工夫は「今は」考えず、感覚を掴むための練習を何度か繰り返す。

美澄 蘭 > 「…よし」

数回繰り返して手応えをつかんだところで、次は地の放射魔術の練習だ。
魔球魔術等でもあまり得意ではない属性なので、軽く両ほほをぺちっと叩いたりして気合いを入れる。
それから、改めて的に向かい、今までより強めに魔力を練り…

「………えいっ!」

放射状に伝わるように、地面から次々、鋭く尖った大岩が隆起してくる。
それでも、水晶体を貫いて割るには至らず、鈍い音を立てて砕けたが。

鋭い岩石による突きを受けた水晶体は、透明度のないアースカラーだ。
しかし…

「………これ、凄く危なくない………?」

術者たる蘭本人は、その攻撃的な光景を生み出してしまった自分自身にかなり動揺していた。
…もっとも、これに限らず、蘭が本気で使う元素魔術の類は、大体危ないのだが。

美澄 蘭 > 蘭が放った地の魔力が地面を刺激した結果なので、蘭の魔力の影響が消えれば地面は元に戻るのだが…

「………どうせ外で使わないにしても、もうちょっと危なくないように…出来ないかしら?」

端末を操作して的の状態をリセットしながら、考える。

(…そういえば、魔球魔術の練習の時に…)

自分に魔術の実技講義を受けるように勧めてくれた人との会話を思い出す。
…そう、地は岩石だけではないのだ。

「…とりあえず、試すだけ試してみましょう。密度は度外視で」

そう決めると、再び的の方へ向かう。

美澄 蘭 > 再び的の方に向けて手を伸ばすと、今度は「砂」をイメージしながら地の魔力を放つ。
実験なので、魔力はそこまで注がない。
…もっとも、蘭基準なので平均的な魔術の素養の持ち主からすればそれなりの量と映るのだが。

「えいっ!」

今度は、先ほどの水の放射魔術と同規模の砂の波が起こり、ザー、という音とともに水晶体を飲み込んでいく。
波が落ち着いた後のアースカラーは、先ほどよりは透明感があるものの、中央部分は先ほどの岩の槍と比べてもさほど遜色がない。

「…うん、良い感じ。
一応、「泥」も試しておきましょうか」

蘭自身は納得したようで、的をリセットすると再び魔術を放つ姿勢をとる。

美澄 蘭 > また、適当に(あくまで蘭基準である)魔力を練り、「泥」をイメージして魔力を放射状に放とうとする。
…が、「泥」はその形状から動かすのが重かったようで、実体はないながらもその魔力の「手応え」を感じ取り、咄嗟に魔力を注ぐ量を増やす。

「…えいっ!」

先ほどの砂の波よりも大きな…それでいて、どこか歪な動きをする泥の波。
やや方向が歪んで右に傾くように流れていったそれは、左端の的は掠める程度にしか触れなかった。
左端の的は触れた部分が、他の的は全体が先ほどよりやや薄いアースカラーに染まる。

「…波って、やっぱり制御が難しいのね…」

水晶体を顔を寄せて見つめながら、少し渋い顔。

美澄 蘭 > (泥は粘るから、砂より制御に魔力が必要で…)

そんなことを考えながら、的の状態をリセットして再チャレンジ。
今度は、魔力を適性と思われるだけ、きちんと練ってから放つ。
粘性が高い分速度では劣りながらも質量で砂に勝る泥の波が的に綺麗に覆い被さり…その後の的は、砂の波のときより透明度の低いアースカラーに綺麗に染まっていた。

「………うん、悪くないんじゃない?」

水晶体の色を再度近くで確認して、納得したように頷いた。

美澄 蘭 > そんな感じで、「砂」や「泥」の放射魔術を、何度か繰り返し試して。
それなりの手応えを得た蘭は、空がまだ青みが強いうちに訓練施設を後にしたのだった。

恐らく、この日の訓練で放った放射魔術の数は20発を超えるだろう。
それにも関わらず、蘭はさほど疲れた様子を見せなかった。

ご案内:「訓練施設」から美澄 蘭さんが去りました。
ご案内:「訓練施設」に寄月 秋輝さんが現れました。
寄月 秋輝 >  
いつもの刀の上につま先で立つ精神統一を終え、上を見る。
広い空間だ、少しの練習は出来るだろう。

「……やるか」

練習とはいえ真剣勝負。
これ以降6時間は全力戦闘が不可能になるが、やってみておきたい。

足元の刀を取り、空中に浮く。
小さく、息を吐いた。

寄月 秋輝 >  
魔力を集中する。
高速飛行術は無詠唱・ノンチャージで可能な汎用術だ。
ただしそれは音速越え程度までの話。
音をさらに越えるほどの速度での飛行は、非常に難易度が高い。

「……鈍っていないだろうな……」

魔力をチャージする。
並列思考で二つの魔術を組み上げる。

『光速飛行』と『光の大砲』の二つ。

ご案内:「訓練施設」に八雲咲雪さんが現れました。
八雲咲雪 > 寄月が訓練室でやっていることを覗くように……というよりも、遠くから見るように、覗いている。

寄月の背中を見かけ、声をかけようかどうしようかとなやんでいて、そのままスーキングをしていた。

そして、いまにいたる。

寄月 秋輝 >  
高度にして2メートル。
普段の飛行と比べても、圧倒的に低い位置。
極限の集中、膨大な魔力の奔流。

走れ、光のように早く。
穿て、光のように鋭く。

「加速しろ……誰よりも……『彼女』よりも早く!」

完成させる。
両手をひらき、前に向けて差し出し、手のひら同士を向かい合わせ。
巨大な魔法陣を一つ、その前と両腕に。

「シャインストリーク!」

     ドゴ 
と、爆音が響く。
巨大な光の柱同然の、真っ白な光の砲撃。
一瞬で端まで届きそうなほどの弾速。

それに。

「行くぞ、光速!」

両足の横に巨大な魔法陣。
殺人的な加速でもって、その発射した光の柱に追いつき。
追い越し。
正面へ。

寄月 秋輝 >  
巨大な光の柱が迫る。
当然のことながら、自分の最大威力の攻撃に等しいそれを、生身で受ければただではすまない。

「……ぉぉぉおおあ!!」

追い付いた姿勢のまま、刀に手をかける。

抜刀。

光を反射する銀閃、普通の居合術からはありえない、縦の居合抜き。

サン、と切り裂く。

実際はすさまじい衝撃と、魔力の余波がある。
だがその光の柱を真っ二つに切り裂き、左右へ分かれて飛んでいき。
防壁に直撃し、大爆発を起こした。

多分、下の方に居た少女にもその爆風にも等しい強い風が直撃するだろう。

八雲咲雪 > 「きゃっ」

唐突の風に驚きの声をあげる。
風が咲雪を叩き、おもわずしりもちをつく。

何が起こっていたか、咲雪にはわからない。
ただ、一ついえるのは

「……はや、い」

圧倒的に速く、すごい、ということだった。

寄月 秋輝 >  
振り切った刀は、銀色に輝く。
その刀を一つくるりと回し、キン、と音を立てて鞘に納めた。
そしてすべてを終えてなお、その表情は鋭い。
完璧な残心。

それを終えて、ようやく一息。
ついたところで、最近弟子になった少女が下に居ることに気付いた。
途端に慌てた様子で、ひゅんと降りてくる。

「大丈夫ですか、咲雪?
 怪我は……」

刀を腰の帯に通し、しゃがみこんで咲雪の体を見て確認する。

八雲咲雪 > わざわざ視線を同じ高さにしてくる寄月を少し見て

「大丈夫。
ちょっと転んだだけ、だから」

ちょっと恥ずかしそうに目を背ける。
子供じゃないとでもいいたげに。

寄月 秋輝 >  
「そう、それならよかった……」

ほっと胸をなでおろし、立ち上がる。

「咲雪に教えるためにも、こっそり復習をしようと思ったのですが……
 まさかいきなりから見つかるとは」

タイミングがいいのか悪いのか。
苦笑しながら呟いた。

八雲咲雪 > 立ち上がった寄月を真似するように、咲雪も立ち上がり、スカートについた埃を払う。
復習していた、と聞けばちょっとばつのわるそうな顔をして。

「……ごめん、見ないほうがよかった?
それなら、出直すけど……」

もし良いならこのまま見させてほしい、とは言わず。
控えめに言葉を紡ぎ、じっと寄月をみる。

寄月 秋輝 >  
「いえ、大丈夫ですよ。
 見られて困るようなものでもないです」

ふ、と微笑みを浮かべ。
再び空中へ。
先ほど起動した『光速飛行』を再度展開する。
持続時間は二時間以上ある。

速度ゼロの状態から、一気に音速近くまで加速。
しかしこのままでは壁に激突する……
そんな瞬間、突然の鋭角旋回。
緩やかな旋回ではなく、まるで物理法則を無視したかのような角度の移動。

次は少し速度を落とし、先ほどとは違うゆるやかな旋回で外周を回り始める。
だが回るほどに、加速していく。
周回しながら、秋輝の体もくるり、くるりと回っているのがわかるだろうか。
いわゆるバレルロールによって抵抗を減らし、魔力の消費を抑えたまま加速している。

飛行術の基礎を越える、無茶苦茶にも見える実戦的な飛行方法。

八雲咲雪 > 優しい笑みを浮かべた寄月にたいし、小さく頷き。

(……こんな飛び方。
……できる?
……ちがう、出来るかじゃない。
やらなきゃ、先にいけない)

じっと、飛ぶ姿を見続ける。
真剣に、行なわれる全ての技術を盗もうと。
なんせ、今の自分には何が出来るかはわからない。
なら、全て見て、全て試し、盗めるだけ盗む。
これから教えてもらうものも、教えてもらわないものも含めて。

寄月 秋輝 >  
ぎゅるん、と最後に身を翻し、傍に着地する。
ふぅ、と満足したような息をひとつ。

「実際に今の飛行術で、咲雪に……というより、エアースイム競技者に扱えるのは多くないかもしれません。
 ですがいくつかは実戦で使えますよ。
 特に最後に見せたバレルロールは、使いこなせば周回ルール以外では特に有利になるでしょう。
 被弾を圧倒的に抑え、翻弄できるようになるでしょうね」

全てパフォーマンスでも自慢でもなく、咲雪のための復習。
そして競技者として優位に立つための、自分の中での知識の反芻。

「……楽しみでしょう?
 あなたの知る競技者に、今みたいな飛び方をした人は居ますか?」

八雲咲雪 > 首を横に振る。
もちろん、否定の意味を籠めて。

「誰一人、いない。
皆、技術はたかいけど、あなたみたいなことはやってない」

――だから、と続け。

「すごく、楽しみ。
私が、はじめてになれること」

まだまだ人口の少ない競技。
そんな世界に、新しい技を、革命をおこなう。
これでワクワクしないはずがない。
無表情だが、目を輝かせ、寄月をみている。
早く出切る様になりたいと、言いたげに。

寄月 秋輝 >  
「そう、咲雪をこの世界の第一人者にする。
 誰より速く、美しく、誰にも出来ない飛び方を出来るように。
 それが僕の、今の夢ですから」

輝く瞳、それだけ見ればよくわかる。
夢と希望に満ち溢れた、強い瞳。
小さく頷き、離れた場所に置いてある自分の鞄に向かう。
そこから携帯端末を取り出し、ぱたぱたと操作する。

「僕と咲雪の間にある、飛ぶ者として最も大きな差は『体幹』です。
 飛行中でも地面に立っているときと同じくらいに、強くぶれない体。
 目を閉じたままでも揺れないような……
 どんな角度でも自分がどこにいるかを理解できるような、強い平衡感覚。
 まずはこれらを養う必要があります」

端末のデータを起動し、見せる。
結構な量のトレーニング……こと腹筋、背筋と脚力を重視したもの。
さらに平衡感覚トレーニングとして、目を閉じたままの飛行等。
普通に見れば結構ハード。
加えておそらく半分以上は、咲雪もしたことのない訓練内容。

八雲咲雪 > 正直に言えば、絶対に辛い。
もしかしたら後悔するときが来るかもしれない。
だけど――。

「――わたしが、さっきの飛び方をマスターすれば。
全国で、優勝できる……?」

信用してないわけじゃない。
言われなくても、わかっている。
だけれど、言ってほしい。
安心感が、ただほしいだけ。

寄月 秋輝 >  
「完成すれば、現状で敵は居ません。
 もし周囲がそれなり以上の速度で成長しても、僕が教える技術を習得したら咲雪が負ける道理がありません」

変わらぬ無表情で、断言しきった。
偽りなど無い、本心での勝利宣言。

「これは僕が、空中の戦場で生き残り、勝ち取るために得た技術です。
 競技での飛行術と戦闘での飛行術、優劣を比較することは出来ませんが、
 両方の長所を合わせられれば、強みは一気に増すでしょう。
 まずは咲雪だけの飛び方、それに耐えうる体を作ることが肝要です」

端末に表示したままの訓練メニュー。
あとはこれを、咲雪の持つ端末に送り付けるだけ。

八雲咲雪 > ならば、やるだけだ。
弱音を吐くかもしれないけれど、そのたびに、強く自分を叱責する。
そうして、がんばろう、と。

端末機器を取り出し寄月からデータが送られてくるのを待つ――。

「……コーチ、私の番号、しってる?」

きょとんとした顔で寄月をみる。

寄月 秋輝 >  
「おや、番号が必要でしたか?」

同じようなきょとんとした表情で尋ねた。

秋輝の親指から光の糸が伸び、咲雪の端末に繋がる。
よく見れば、小指からも光の糸が伸びていて、秋輝の端末と繋がっているのがわかるかもしれない。
そしてつながったその瞬間に、そのデータは送り込まれた。
送信を終えると、光の糸は消失した。

「……そうか、普通は必要なのか……」

忘れていた、みたいな表情。

八雲咲雪 > あ、というまにデータの通信がおわっていた。
なにそれ便利、と思いつつも

「今野でいらないのは分かった……それでも一応、しっといて。
私から呼び出すかもしれないから、私もコーチの番号ほしいし」

だからばんごうよこせ、と催促。

寄月 秋輝 >  
「そうですね。
 離れた状態からの連絡は、さすがに必要です」

ぱたぱたと操作し、自分の番号を表示する。
情緒を重視して、今度はさっきの光の糸で送ったりしない。

そして交換を終えれば、端末を仕舞う。

「訓練メニューはそれなりに厳しいでしょうけど、効果は約束しますよ。
 ただどうしても辛ければ代わりのメニューを提示しますから、我慢せず言ってくださいね。
 無理をしないように、怪我をしないように。
 競技者にとって、最も大事なのは体ですから」

そう忠告を残し、ではこれで、と一言言って立ち去る。

楽しみで仕方がない。

彼女が世界で羽ばたく日まで、そう遠くはないだろう。

八雲咲雪 > 寄月の番号をとうろくしておく。
これで用があるときは呼び出せるだろう。

「うん、宜しくお願いします。
きっと、がんばるから」

ぺこ、とあたまをさげ、去る寄月を見送る。

ご案内:「訓練施設」から寄月 秋輝さんが去りました。
ご案内:「訓練施設」から八雲咲雪さんが去りました。