2016/07/07 のログ
ご案内:「訓練施設」に東雲七生さんが現れました。
東雲七生 > しん、と静まり返った夜の訓練施設に、七生の姿があった。
時刻はそろそろ深夜に差し掛かろうかという頃。
他の利用者なんて居るのか居ないのか、居たとしても極力人を避けて居るかだろう。
七生から興味本位に接触を図る気はあまり無かった。

「…‥んー。」

浜辺での一件から、嫌になるくらい頭の中がクリアになっていた。
しかし、対する七生の心の内は真逆にあって、様々な予感や懸念が渦を巻いていた。
これではどうにも落ち着かない、と。
そっと寝所を抜け出して、体を動かしに来たのである。

東雲七生 > 中途半端に醒めた頭で、さて何をしようかと考えながら歩く。
そもそも運動と呼べるほどでなくとも、とりあえず体を動かせればよかったので、
此処に来た時点で目的は半分達成されている様なものだったが。
異邦人街からこの訓練施設まで歩いて来ても、七生の心は晴れないままだった。

言い様の無い不安が、じわじわと、七生の心を染めていく。
その不安が何に起因するものなのか、心当たりはない事もないのだが。

「……もっと強くなれ、ってこういう意味なのかな。」

告げられた言葉を思い返しながら、独りごちる

東雲七生 > 強くなる、というのは七生の隠すほどでもない目標だ。
そもそもは現在の居候先の家主との約束であり、七生の中で絶対の意味を持つものである。
その終着点がどこであれ、自他共に認められるまで七生は強くなり続けようとするだろう。
……そう、自分で決めた事だから。

しかし、他者から改めて言われるとなんとも不格好な目標だと思う。
あまりに漠然とし過ぎていて、あまりにも幼稚に聞こえる。

「……せめて誰々みたく~とか言えればいいんだろうけど。」

それでは、駄目なのだ。
『誰よりも強くなる』のが約束だから。

だったら島の住人に手当たり次第、というのも考えなかった訳では無い。
でもそれは、七生が思い描く『強い人』とは異なる様に思えた。
だから七生は、考えて考えて、自分なりに答えを見つけようとして、

「うーん、それで今に至ってるよなあ。」

記憶を失って、幻聴が聞こえ始めて、言い様の無い不安に呑まれそうになっている。

……なんだか、目標からどんどん遠退いている気がした。

東雲七生 > 「やっぱり、もっとよく考えないと……かな」

きっと、つい最近言われた「強くなれ」にはもっと違う意味もある気がしていた。
肉体的、そして精神的な強さの他に、もっと別の「強さ」。
それが分かるようになるための第一歩は、

「……おーい、起きてるかー。」

こんこん、と自分の頭を軽くノックしつつ、七生は施設のエントランスへと歩き出す。
とりあえず、帰ろう。帰り道でもっともっとよく考えよう。
別にこのままの足で女子寮に向かって、半ば無理やりにでもどうしたら良いのか問い質しても良いとは思ったのだけれど、

それは、やっぱり正解から遠のく気がして。

先ずは自分の最も身近なところから、と七生は様々な方法で自分の中に居る筈のナニかに声を掛け続けながら帰って行った。

ご案内:「訓練施設」から東雲七生さんが去りました。