2016/07/12 のログ
獅南蒼二 > 指輪がぼんやりと輝き,瞬時に無数の術式が展開された。
だがその術式の1つとして発動することはなく,すべてが“発動しかけた”状態で固定化される。

獅南は,引き金に手を掛けながら,あとほんの1μでも指を引けば撃鉄が落ちる,そんなギリギリのラインで全てを静止させた。
空間じゅうにばら撒かれた作りかけの術式は,互いに加害半径が重複しつつも反応半径を重複させないよう配置された。

獅南蒼二 > 一目見ただけでは,空間には何の変化も無い。
殆どの人間は,この空間に展開されている術式を見ることが出来ないだろう。
だが魔術に精通し,魔力親和性が高い人物にとっては,
決して足を踏み入れようとは思えない,凄まじい空間であるはずだ。
僅かな魔力に反応しても,この演習室は焼き尽くされることになるだろう。

だが,その中央に立つ獅南。

敢えてそこに立っているようにもみえるし,
そこから動けなくなったようにも見える。

獅南蒼二 > 全ての術式を構成し終えれば,獅南は小さくため息を吐いた。
確かにこのトラップは魔力を纏う者にも,魔力を纏う鎧を身に付けた者にも有効だろう。
だが,制御されていない力の暴走を利用するなど…

「……洗練されているとは言えんな。」

獅南の求める“最高の魔術”からは遠く乖離しているように感じられた。
全ての不可能を可能にすることは勿論,
それは全て術者の手のひらの上になくてはならない。
手のひらから零れ落ちかねないような力など,その手のひらを焼くかもしれぬ炎など,
魔術学には存在してはならない。

獅南蒼二 > 手を伸ばし,術式の末端,唯一描き切った起点に,僅かな魔力を注ぐ。
パチン、と指を鳴らせば,空間に溶け込んでいた術式が可視光を放ち,
獅南を中心としてまるで絡まる根か,蔦のように広がっていく。

「………。」

パン、と手を軽く撃てば,まるでガラス細工が砕け散るように,
可視光を放つ術式は粉々に砕け,崩れ落ちた。

獅南蒼二 > 構成された術式よりも,砕け散る瞬間のほうが余程美しい。
などと,柄にもないことを考えたのはあの美術教師の影響だろうか。
いずれにせよ,制御できぬものを作り上げることも可能だが…
…それは自分の求めるものとは似ても似つかぬものであった。

もはや求めるものはそこに発現する事象や齎される結果だけにあらず。
過程やその式にさえも,至高の物を求めようとしていた。

「…………。」

ご案内:「演習施設」から獅南蒼二さんが去りました。