2016/08/23 のログ
羽切 東華 > ……手当てをしながら気付く。額が割れた傷から出血し、それが左目に入り距離感を狂わせた。
それに間違いはないだろう。が、少年が感じた何ともいえない違和感はそれではない。

「えーと、一応俺の勝ち?だけど、何かすっきりしないというか…これ、水月さんの力が関係してる?」

確か、彼女の力に付いてはちらっとだけ聞いた事があった気がする。
自分が感じた違和感は、上手く言葉にも形にも出来ないが彼女の力だったのだろうか?
よく分からない。そもそも自分自身が使う異能ですら完全に把握していないのだから。

「よっ…し、手当てはこんなもんかな。包帯は大袈裟かもだけど、一応ね」

水月エニィ >  
「どうかしらね。
 私の落ち度の様にも見えるけれど、きっとそうなのでしょうね。」

 溜息を付いて頷く。
 違和感――は覚えても軽微なものだろう。
 少なくとも今回に限っては、大掛かりな力としては働いていない。

「悪いわね。釈然とさせなくて。
 けれど――。」

 目の前の彼を見る。
 少なくともブレーキを掛けている風には見えず、本気で『斬』りに来ていた。
 釈然としない終わり方でなかったら、どうなっていたことやら。
 斬られていたら、無事では済まないだろう。

 …故に、何かを言いかけた。

羽切 東華 > 「……因果系の力って、制御も干渉も難易度が高そうだしなぁ」

ぽつり、と呟くように言って。異能の感知能力が高い訳ではない。
あくまで本当に僅かに違和感を感じただけ。それ以上は彼女の力を感じ取れない。
気付けたのも、戦いという集中力が研ぎ澄まされる状態にあったからこそだ。
これが平常時なら確実に気付けなかったであろう。

「ああ、いや。水月さんの戦い方見れたし俺はいいんだけどさ…ん?」

途中で言葉を切って、こちらを見てくる友人の視線に首を傾げる。
例え軽い手合わせでも、戦いとなれば相手が誰であろうと斬る事しか考えない。
直接手合わせした彼女なら、ある種の危うさをこの少年から感じ取れるかもしれない。

水月エニィ >  
「利益にならないものなら尚更ね。
 ……良い暮らしができるようになったのだから、贅沢は言えないけれど。」
 
 目頭を押さえて溜息を付きながら立ち上がる。

 感知のし辛いものではあるが、同時に軽微であることも伺える。
 もっと言えば 、生じてさえしまえば誰かないし何かによって発生する現象自体は防げるのでは?
 エニィにとっては敗北の引き金になる要素でも、発生している事象としては些細なものだ。

「……お婆ちゃん、貴方の戦い方について何か云っていなかった?」

 危うすぎる。
 が、それを直接告げても漠然としたものにしかならない。
 そう判断すれば、遠回しに話を訊く。
 

羽切 東華 > 「うーん、でもさ。そういう力に邪魔されずに勝負したいじゃない。俺がどうこう言っても意味無いんだけどさ?」

苦笑い。彼女の力の面倒さは彼女にしか分からないだろう。自分がどうこう言えたものではない。
が、矢張り釈然としないものはある。勝ち負け以前に、横槍を入れられてる気持ちがあるのだ。
もし、彼女の異能に意思があるのなら、こう言ってやりたい。

(勝負に水を差すなよ斬り殺すぞ…なーんて、我ながら物騒かなぁ)

と、考えていた所で我に返る。彼女の質問に、その意図が分からず不思議そうであったが。

「え?あーどうだろ……あぁ、何か育て方を間違った、とか言ってたような。
あと、何だったかな……”傾きすぎてる”とか言われた気がする」

そう口にする彼自身に自覚が全く無い。だからこそ危ういのだ。
それが今回のように手合わせ程度でも、ただ斬る事に集中しすぎて誰かをいずれ斬り殺しかねない。
それが友達であれ、家族であれ、知人であれ、他人であれ関係なく。斬殺に特化した業みたいなもの。
現代の人斬り…そして現代の人外殺し。斬り殺すという一念が異様に強いのだ。

水月エニィ >   
「分からなくもないわね。けど……これも言い訳にできない私の実力とも、思っているわ。
 制御するなり 乗り越える程の実力がないだけとも言えるもの。
 だからずっとずっと努力はやめなかったの。産まれ持った宿命なんかに負けない。ってね。
 でも、そうも言っていられないかしら……他には何か感じた?」

 ……気のせいだろう思いながらも、妙な何かを覚えた。
 口ぶり以上の何かを感じてしまう。戦闘の印象が残っているのだろうか。
 不安に思うものの堪える。紛らわすように話題を振った。

「傾きすぎてる、育て方を間違ったね。
 ……何となく分かる感じ。」

 不安だ。
 このような彼があのような妖刀を持った事が不安に尽きる。
 今でこそ人に使われる事で落ち着き、妖刀の化身である"影打 鈍"もある種の人間らしさを持っているが、

(これが、鈍さんにも影響したら。)

 あの時以上に危険な存在になってしまうのでは。
 杞憂かもしれない思えど、厭な胸騒ぎを感じる。

「……。」

 
 

羽切 東華 > 「成る程、ねぇ。…ん?他に感じた事……あーと。そうだなぁ。
……感じたというか。水月さんは「何時か勝つ」って思いが強すぎると思う。
「何時か」じゃなくて「今ここで勝つ」くらいの気の持ちようがまず必要な気がする。
あと、負けやすいって事は言い換えれば負けても生き延びる、死に繋がる怪我は負わないって事だと思うんだ。
悪運…って言うのかな?」

顎に手をやりながら考えるように。あくまで少年の印象であり、参考になるかは分からない。

「え、分かるの?俺はサッパリだったんだけど…」

別に性格が極端に捩れてるでもなく、どちらかといえば温厚でお人よしだ。
ただ、いざ戦いとなると普段の態度の延長線上で冷徹に相手を”斬り殺しかねない”。
これは、契約した妖刀の少女の影響ではなく、あくまで少年自身が持つ”欠陥”だ。

水月エニィ >  
「そう。ううん。今、勝つ……。
 ……それはともかくとしても、確かに悪運は強いかもしれれないわね……」

 死を恐れて降りれば勝てないし。
 死を恐れずに死んだら勝てないし。

 ……他の何を投げ打ってでも勝つ。
 それで勝てると思えないが故の、"負け癖"としての何時か勝つ。
 そのようなものがあるかないかで言えば、在る。

「ええ。とても。
 嫌と言う程覚えがあるわ。」

 ただただ純粋な念。
 "妖刀の少女が彼に"その様な影響を与えているとは思っていない。
 "彼が妖刀の少女を"その為の妖刀に染め上げる。

 懸念しているのはそこであるし、
 例え妖刀が人を染める要素を持っていたとしても"揺るがない"と睨んでいる。

 強すぎる念。
 当然の如く斬り伏せる事の出来る素養。
 "当たり前と化した殺人剣"。
 考えるまでもなく剣を奮い事を成せるだけの強さ。

 それがどういうものかは、良く知っている。
 その様な聖女は良く知っている。

「取りあえず、そうね。今日の所は帰って休みましょう。
 羽切君の事とお婆ちゃんの事で気になる事もあるけれど……まだダメージが抜け切ってないみたい。」

羽切 東華 > 「別に水月さんの勝つって気持ちに疑いがある訳でも何でもないけどね。
ただ、何時か勝つっていうのは、結局ある意味で先延ばしにしてなぁなぁで終わらせるようなものだし」

今、ここで勝てないなら死んでも構わない。…と、これは極端すぎる例えだが。
だが、そのくらいの強い”ここ一番だけは絶対に勝利をもぎ取る”意志が一つの要因になる、気がする。

「あと、大事なのは多分そんな異能を持った自分自身を見つめ直す事じゃないかな?」

異能は千差万別、個性そのものだが発生には少なからず本人の何かが遠因としてある場合もある。

(て、何かロクなアドバイス出来てない気がするなぁ俺…)

と、内心で溜息。数少ない友人なので、出来る限り力にはなりたいのだけど。

「……うーん、婆ちゃんも遠回しに言う癖があるからなぁ」

苦笑いを浮かべつつ、一度彼女から離れて弾き飛ばされた溶刀を回収する。それをまた竹刀袋へと戻し。
彼女の業が異能ならば、この少年の業はつまりそれなのだろう。
環境や祖母の教育の経緯もあろうが、”生まれついての殺人者”に片足を突っ込んでいる。
そういう素養があったのは、人外殺しをしてきた生まれによる業に近いのかもしれない。
そして、間違った方向に進めば…ただ、相手を…自分すらも斬り殺す。
斬人斬滅の血塗られた道。勿論確定はしていないが、そういう道も確かにあるのだ。

「あ、うん了解。えーと今夜はありがとな水月さん。
あと、何が気になるのかは分からないけど、連絡先も交換してるし友達だし、何時でも話は聞くよ」

そう言って笑う。そこに裏表は無いし、危うい気配は無い。
ただただ、普段のノリは田舎者で好奇心旺盛な少年でしかなかった。

水月エニィ >  
「色々と、難しい話ね……。
 ……そうね。その辺りはまた相談させて貰いましょう。」

 表情には迷いが強い。

 今でなければと踏み込み危害を見せるにしろ、
 立ち返って見つめ直すにしろ、どうにも目途が立てられない。
 ……いずれしても、時間の掛かりそうなものを覚える。

(命まで投げ打って勝ちたいと思えるもの。
 そこまでして勝ちたいと思うこと。……うう、ん。)

 あざむような唸り誤で誤魔化す。
 彼自身も仕合から外れれば何時もの明るいもので、おかしな所は見受けられない。

「はっきり言ってくれたのは眼つき位かしら?
 ……友達、って言ってくれるのはやっぱり嬉しいわね。
 これでもぼっちな方なのね。 

 それじゃあ、また会いましょう。羽切君。
 そうね。今度は美味しいものでも食べに行く?」

 気分よさそうにくすっと笑って見せた後、
 そのまま訓練施設を歩き去る。

ご案内:「訓練施設」から水月エニィさんが去りました。
羽切 東華 > 「うん、俺でよければ相談に乗るよ。ただの愚痴とかでもいいけどね?」

笑って頷く。どちらかといえば、あれこれ語るよりも聞き役の方が好みではあるし。
彼女の表情には迷いの色が何処か窺えて、何だかんだ力に翻弄されてるのを感じる。

(俺も他人事ではないんだろうけどね…異能の完全制御も出来てないし、まだ未知数なトコあるし)

それと、意地でも態度に出さないが、己の剣術は意外と肉体負荷が大きい。
今も全身ギシギシ言ってるが、まぁこのくらいならまだ軽いほうであろう。

「え?水月さん別にぼっちには見えないけどな…そりゃ、もう何度か会ってるし連絡先交換もしてるし。
あ、うんそれは有り難いけど、俺、美味しい店とか全然知らないんだけど大丈夫かな…」

今更ながらそんな心配が。ともあれ、こちらも帰り支度を整えてから引き揚げるとしよう。

「……何か鈍にまた風評被害を撒き散らされてる気配を感じるのが不安だけど」

既に人外殺し→女殺し、女たらしとか言われたりしている。俺にそんな気無いのに何故そうなった!!

と、まぁそれはそれとして少年も訓練施設を後にするのであった。

ご案内:「訓練施設」から羽切 東華さんが去りました。