2016/09/08 のログ
ご案内:「訓練施設」に東雲七生さんが現れました。
東雲七生 > ふらりと立ち寄った訓練施設で、七生はぼんやりと考え事に耽っていた。
何を考えてるかと言えば、もちろん自身に備わっている異能の事である。
結局のところ、夏休み中の課題として出された物理攻撃に対して高い耐久性を持つ対象への効果的な攻撃方法を編み出せていないのだ。

「……うーん。」

もっと他にも色々考えたい事はあるのだが、
授業の担当講師には自身の異能に関して知識を深める様にと言われてしまった。

なので、こうして考え込んでいるのである。

東雲七生 > 「自分の血液を……操る……。」

虚空を暫し見つめた後、自分の掌、そして腕を見て呟く。
この身体に流れる血液が、皮膚が破れ、外気に触れた時。
その刹那から、七生にとっての武器や防具へと、またはそれ以外へも意のままに変化する異能。
その異能を全て把握しているのかというと、実際のところ自信は無い。

「……うーん。」

再び呻き声を上げる。
自身の力と向き合う、と言えば聞こえは良いが実際のところ自分の能力が口を利く訳ではない。
物言わぬ相手と向き合う事は、果ての見えないマラソンと、どこか似ていた。

ご案内:「訓練施設」にセシルさんが現れました。
セシル > 学校の講義が再開してほどない頃合いの、非番の日。
講義を終えたセシルは訓練施設を訪れていた。
言うまでもなく、「宙に浮く」練習のためだ。

「…さて、空いている訓練スペースは…」

と、来て早速施設内をぐるっと見て回り始める。

東雲七生 > 喋らない異能を相手に、問い続ける。
禅問答にも似た状況にたっぷり小一時間ほど浸ってから、堰を切った様に七生は叫び声を上げた。

「んなああああああっ! 駄目だ、ダメダメ!こういうのは向いてないって!」

身体を動かすことは何より好きでも、頭を使う事に関しては二番目くらいに嫌いだった。
わしゃわしゃと癖のある赤髪を掻きながら、今までじっと考え込んでいた分を取り戻すかのようにうろうろ動き回り始める。

「別に良いじゃんか!そもそもさあ!怪我しなきゃ使えない異能なんて最初から戦力外で!」

セシル > そうしてぐるっと訓練スペースの中を伺っていると、近くのスペースから自棄になったかのような叫び声が聞こえる。

「…どうした!」

駆け寄って、入り口の扉を開けて中に向かって呼びかけるが…

「………ナナミか。一体何があった?」

そこにいた知り合いの少年の姿と、(少なくとも見た目上の)無事を確認すると、露骨にトーンを下げた。

東雲七生 > 「でもあんまり異能に関して何もしないで居ると島の外に追い出されるって聞いたしなー!」

わうわう吠えながら頭を抱えて転げまわっていたが、声が聞こえれば我に返る。
赤い双眸を幾度か瞬かせて、声の主を見遣り

「あ、えっと……ちょっと、煮詰まってて……。」

床に転げたまま、気恥ずかしそうに頬を染めた。

セシル > 「そうか…
いや、大事無いなら何よりだが、一人で閉じこもって煮詰まっていてもさほど効率は良くないぞ」

気恥ずかしそうに頬を染める七生に対してそう言って笑いかける。
中性的な強い声、そして笑顔の作り方から、セシルが「異性」であると七生に強く感じさせる可能性は極めて低い。

「…言葉の内容からするに、悩んでいるのは異能のことか?
私も一応異能者の端くれだ。多少は力になれるかも知れんぞ?」

そう言って、床に転がっている七生の横に歩いてきて、あぐらをかいたような形で座った。

東雲七生 > 「それは……そうなんだけどさ。」

掛けられた言葉に、身を起こしながら同意する。
だが、かと言って誰かに相談を寄せる様な類の問題でもない気はしていた。
自分の異能のことだから、解決の糸口は自分で掴めなければならない、と。

「……まあ、うん。異能のこと。
 ひいては戦闘スタイルとか、そういう事になって来る気がするんだけど。」

同様に胡坐をかいて座りながらぽつりぽつりと話し始める。

「やっぱり、自分の力のことを知るには、その力を使わない事には始まらないんだよね、って思ってさ……。」

セシル > 「どうせ、自分の頭で浮かんで来んことは他から取り入れるほかないからな」

そう言ってはははと鷹揚に笑う、見た目王子様。
豊かな発想で勝負、というタイプではないらしい。

「…異能のことと…戦闘スタイルのこと、か。
ナナミの異能も戦闘で役立てられる異能なのだな?」

セシルは「も」という接続助詞を使った。まあ、風紀委員という立場を考えればさほどおかしなことでもないだろう。

「可能性を探るためには「あまりない使い方」をして限界を知っておくのも肝要かと思うが…まあ、そうなるだろうな」

「力を使わないことには始まらない」の言葉に、概ね同意して頷くセシル。

物心ついてほどなく異能に目覚めたセシルではあるが、色んな使い方をして失敗した。
雨の中を駆け抜けようとして結局その距離分きっちり濡れてしまったり、空中に跳び上がったは良いが、当然その位置を維持する術もなく強かに腰を打ってしまったり…。

「…何か、「その異能で出来そうだが試していないこと」はないのか?」

自分の失敗経験を思い浮かべつつ、真顔でそう七生に尋ねた。

東雲七生 > 「まあ、そうだよねえ……」

軽く髪を掻きながら、苦笑を浮かべる。
だが取り入れるにしても何をどうやって、と理屈を考え始めてしまうとどうしようもなくなってしまう。
とことん頭を使う事に関しては不得手なのだ。

「一応、戦闘でも役立てられるけど。」

というか、戦闘の場以外であんまり使いたくは無い。何度か使った事はあるけども。
それから言われた事を反芻する様に繰り返しつぶやいてみる。

「あまりない使い方……出来そうだけど試してない使い方か……。
 生憎、思いついたら片っ端から試したからなあ……ただ、思いつかないけどまだ何かありそうで、気持ち悪いんだ。」

あとは自分の発想力の問題かな、と七生は困った様に笑いながら首を傾げる。
とはいえ、『血液を操る』と聞いて思いつくのは単純な液状での操作と物体の形成以外にパッと思いつく物でも無い。

セシル > 「ヒトの社会にはある程度「恊働」が欠かせんからな。
それは頭脳作業でもさほど違いはあるまい?」

「私では大して戦力にならんだろうがな」と、こちらは開き直ったかのように曇りのない笑いで返した。

「そうか…戦闘でもそれ以外でも使えるのか。
私の異能はシンプルで制御は難しくない分、戦闘以外で使う旨味がさほどなくてな。
不足は感じないから良いが」

そう言って少しだけ笑う。穏やかではあるが、柔らかさというよりは大らかさの印象が強い、男性的な笑み。
そして、七生の口からこぼれる悩みを「ふむ」と真面目な表情で聞いた後。

「………「ありそう」で「気持ち悪い」程度には考えが貴殿の中に存在しているが、具体化に至らない…という感じか。
どういった方面の思いつきか、思い当たるところはないか?」

と、問いを投げかけてみる。

東雲七生 > 「きょ、恊働……?」

大凡の意味は想像できるものの、聞き慣れない言葉に首を傾げる。
とことんオツムは弱い高校二年生である。
向けられた笑みに、ややぎこちなく浮かべた笑みを返して。

「まあ、俺もどっちかと言えばデメリットの方がわんさかあるんだけどさ。」

まず自傷行為とか、と言いかけて口を噤む。
旨みどころか不味さしかない。

「いやー、それがもう駄目でさ。すっからかんなわけ。
 あんまり集中して考え込むのも何だし、気まぐれに違う事しててもどうも気持ち悪さが抜けなくってさ。」

ふるふる、首を振ってから肩を竦めて。
子供じみた所作で返し、苦笑を浮かべた。

セシル > 「…「複数の人間が共通の目的を達成させるために力を合わせること」だ。
………あまり、言葉を覚えるのは好きではないか?」

首を傾げた七生に、苦笑してそう説明した。
流石に「国語は苦手か?」なんて聞けなかったので、言葉をオブラートに包むための間が空いてしまったが。

「使う旨味がないどころか、デメリットか…それは厳しいな。
それでも、何かを為せるような使い道を模索せねばならんのか」

「異能を主に学んでいる者は厳しいな」と、ぎこちなく笑んだ七生に対して、こちらは真剣な表情で。
セシルの場合、学ぶべきはこの世界のことであり、異能ではないのである。

「…ふむ…「気持ち悪い」ということはもう少しだと思うのだがな。
現時点では、どのように役立てる異能なのか聞いても構わんか?無理にとは言わん」

「私は、聞かれても立場上あまり説明出来んからな」と苦笑いしながら。
セシルの異能はシンプルなものなので、説明しづらいということはない。
…しかし、近接戦闘を嗜む人間にとっては、シンプルなりに「切り札」になり得る者なのだ。そのため、セシルは公安・風紀委員関係者以外には異能の細かい仕組みを教えていないのだ。

東雲七生 > 「あは、ははははは。」

流石に気を使われた事は鈍感な七生でも察する事が出来た。
が、変に肯定も否定も出来ず、ただただ乾いた笑いで誤魔化すしか出来なかった。

「あ、いや……別に異能について学んでる訳じゃないんだけどさ。
 この学校に居て、異能を有してることになってる以上自分の能力について把握は学生の義務だって言われてさ。
 ……まあ、当然っちゃ当然だよな、その為の学校なんだし。」

はあ、と溜息を溢す。
いっそのこと異邦人であれば、異能の事なんて考えずとも在籍できたかもしれない、と。

「どのようにって……えっと、武器や防具を創り出すことが出来るよ。
 少なくとも……俺の意識がある限りは。」

何を使って、は伏せる事にする。
主語を省くと随分とシンプルな能力だよなあ、と自分で考えながら小首を傾げて。

「でも、さっきも言った通り『何かを創る』以外にも出来る事はありそうなんだよねえ……具体的には思いつかないけど。」

セシル > 「………鍛錬は良いが勉強も程々にはしておけ。
異能「だけ」で何かが為せるほど、この世界も単純ではないだろう?」

乾いた笑いで誤魔化す七生に、苦笑混じりではあるがきっちりと釘は刺した。
基本的には体育会系のセシルだが、中等教育レベルであれば適応は十二分だ。…ごく一部の教科を除いては。

「…ああ、そういえばこの世界では異能が当たり前ではないのだったな。
そうなると…異能者(われわれ)は「外部」に説明をして「受け入れてもらう」立場か」

「厳しいな」と、柔らかいが苦みの混じった笑みを零す。
異邦人である分も考えれば、セシルの苦労は七生の上をいくかもしれない。

「………どのように作っているかで、出来ることは変わりそうだが…話しづらいか?」

七生の、部分的に仕組みが伏せられた異能の説明などを聞いて、そのように尋ねる。

「何かを創る」能力というなら、それだけの話だ。
応用が可能に思われるのなら、伏せられた部分が鍵になるはずなのだが…。

東雲七生 > 「は、は~い……。」

それもそうだ、と反省しつつ軽く肩を竦める。
しかし、勉強が大事なのは分かる。分かるがじっとしているのが苦手な性分だから仕方ない。

「うーん、俺は世間の事はよく知らないけど、割と一般的になったのはここ最近のことみたい?
 まあ、まだまだ不慣れっぽい感じはこの島の中でも感じるけど。」

でもそれはあくまで世間の──大人たちの事情である。
七生個人としては、さほど気にする様な事ではないと思うのだ。異能の有無や、種族の違いというのは。
むしろ違うからこそ面白いと思う節すらある。

「え、えーと……うーんと……
 ……血をね、使ってるんだ。自分の血。」

少し逡巡する様に視線を泳がせ、そして小さく息を吐いてから白状した。
大体の事はそれで察してくれるだろうか、と淡い期待を込めて。

セシル > 肩をすくめながらも子供っぽい了承の返事を返す七生に、少しだけ笑みを零すも。
七生の「世間」説明が要領を得ないところで、訝しげに眉を寄せる。

「…貴殿は島の外の、「ニホン」という国の出身ではないのか?
それならば、私よりはこの島の「外」のことに明るいかと思ったが」

わずかに感じた違和感を吐き出す。

「………なるほど、な。それは身体に負荷もかかりそうだ。
あまり大きなものを作るのは厳しそうだな?」

逡巡の後に白状する七生の言葉を、重く受け止めるセシル。
受け止めた方向性が、七生の異能の本質とは少しずれてしまったかもしれないが。

東雲七生 > 「えっと、そうだけど……
 よその国は如何か知らないけど、あんまり自分の国の情勢に詳しい子供なんてそう居ないよ?」

産まれ付いた世界についての知識なんてそうあるものでもない。
もっと特殊な環境下に居ればまだしも、七生は普通の、何の変哲もない人生を歩んできた。


………はずだ。

「まあ、そんなとこかな。
 一応、ある程度血液の増加とか抱き合わせで付いてるけど。」

一度貧血を起こすまで異能を使った時は、感覚的には相当量の血を使った気がしたのだが、
どうやら病院で検査して貰った結果、本当に人一人が貧血で気を失うレベルの出血しかしていなかったらしい。
それも、異能の効果の一つなのだと七生は推測している。

セシル > 「………社会に出るための教育なのに、その社会がどのような社会かを教えんのか?」

七生の言葉に、セシルの目が本気の驚愕に見張られた。
一応、仕組みについてのざっくりとした勉強ならば、セシルが現在進行形で講義を受けてはいるのだが…。

「ふむ、出血量「だけ」でどうにかするわけでも無いのだな。
…しかし、血液か…」

うーむ、と唸ったっきり黙り込むセシル。

東雲七生 > 「教わった覚えがないんだよね……もうちょい学年が上がったら教わるのかな。」

小難しい顔で、こてん、と首を傾げる。
少なくとも七生はそういう授業を受けた覚えがない。
もしかしたらこの島に来る前に教わったのかもしれないが、クラスの友人との話に上がる事もなかった。
もしかすると異邦人であるセシルの方が詳しいのかもしれない。

「たぶん、だけどね。
 ……あはは、そこまで考え込まないでよ、俺の異能なんだしさ。
 そろそろ、俺飯食いに行ってくるわ。昼からずーっと考えてて、まともに飯食ってなかったの思い出したからさ。」

よっこいしょ、と掛け声とともに立ち上がる。
そしてそのままぶらぶらと、訓練スペースの入口へと向かって歩き出した。

セシル > 「………いくら選択制でも限度がある気がするな」

「融和出来ねば大義が消えるだろうに」と、呆れたように溜息をつくセシル。
どちらかといえば、分からない七生よりは分からないままにしている学園…ひいては財団に不満を覚えたようだった。

「…ああ、すまんな。
しかし、ここまで聞かせてもらったのだし、私もゆっくり考えてみよう。
…無論、貴殿が既に思いついたものばかりになるかもしれんがな」

考え込まないでと言われれば、そう言いながら笑って。
そして、七生が食事のため訓練スペースを出ようとすれば

「動くには食事は欠かせんからな…それではまた。
ナナミの抱く「気持ち悪さ」の正体が分かったら、教えてくれると嬉しい」

「ここは使わせてもらおう」と言って、朗らかに笑って七生を見送ったのだった。

東雲七生 > 「そもそも、異能と魔法と、ついでに異邦人や外の世界の生物まで学べる範囲が増えて、
 そこに今までの義務教育をやってたら時間がいくらあっても足りないんじゃないかな。」

義務教育だけで従来なら9年掛かるところを、この学校は規定通りなら4年だ。
半分以下の時間で教わる事は倍以上。どう考えてもつり合いはとれない。

「ああ、ありがとうセシル!
 それじゃあ今度会う時までも俺ももっと考えとくよ!」

一度振り返っては、ひらりと手を振って。
満面の笑みを向けると、再度踵を返しそのまま訓練施設を後にするのだった。

セシル > 七生を見送った後。

「………さて、始めるか」

端末を操作して、魔力や術式を感知して記録してくれるようにする。
…セシルの、悪戦苦闘が始まった。

ご案内:「訓練施設」からセシルさんが去りました。
ご案内:「訓練施設」から東雲七生さんが去りました。