2016/12/14 のログ
ご案内:「訓練施設」に伊都波 悠薇さんが現れました。
伊都波 悠薇 > 誰の天秤なのか、誰のための天秤、なのか。
天秤とは、いったい何なのか。

何を量っているのか。

それを、ずっと。ずっと、考えている。

そう、あの日から。ずっと――

「ふー……」

息を吐いて、姿勢を正す。
呼吸をして――動く。

「ふっ……」

一息の突き。
だが、それは”突き”ではない。

ただ、手を前に出しただけ。鋭さも全く、ない。
息をのむ雰囲気も全くない。

ただの――

「ふっ」

そこから型を演じてみる――
が、型にはならない。

不可能をつかさどる。彼女にとって――

考えながら、没頭するために。儀式のように繰り返す。
身についていないそれをただ――

伊都波 悠薇 > 静かに息を吐いて、タオルで顔をふく。

姉との、対等のための天秤だと、友人は言っていた。
だが、自分の中では違和感でしかない。

どちらかといえば、人のみで量れないものを量る。
そっちのほうがしっくりきた。

けれど、自分は人間だ。
変わらない、姉より劣って、姉より地味で。
姉のことを信じる――……
妹、だ……

そう自分は――……

「――……いたっ」

頭が痛い。最近、頭痛が多い気がする。
すごく、すごく――頭が痛い。

(何を考えてたんだっけ?)

ぼーっとして上を見る。
空調が聞いているから、特別寒さは感じなかった

伊都波 悠薇 >  
――そういえば、最近姉の挙動が気になるようになった。

気になるといっても、ほんの少しだけ。
前は信じるだけだったのが、ちょっと違う部分があるくらい。

デリカシーがないところとか、人たらしであったりだとか。
優しすぎることだったりだとか――

なんでかいつからか、”まるで他人”のように気にしすぎる部分が増えた気がした。

「――別に、何か変わったわけじゃないのにね」

変わったとすれば、姉も人であるということと。
あと、自分は割とねちっこい性格ということが分かったことくらい。
あとやっぱり、姉が大好きなんだなぁと自覚する程度だ。

「――うん、特別なにも――……」

かわ――……って……

突如襲ってきた眠気。
そして――……

「さて、本当に変わってないのだろうか」

自分と全く同じ声が聞こえてから”悠薇”の意識は途切れた

ご案内:「訓練施設」にルギウスさんが現れました。
伊都波 悠薇 >  
――さて、本当に何も変わってないのだろうか。

彼女は受け入れた。異物を、招き入れた。
拒絶していないと彼女は言う。
そして、今のままの彼女には期待しないと誰かは言った。

変わろうとしている、少女の意思――、意志。
それは、大きな変化といえるのではないだろうか。
そしてその変化は――……

「確実に、如実に。天秤に、働きかける――……」

ルギウス > 暗転からスポットライトが当たるかのように姿を現した司祭服の男。

「お久しぶりですねぇ、お変わりはないようで?」

笑みを貼り付けた男は普通に近づいて、そう口にする。
手には天秤。
片方には羽が、もう片方には心臓……の作り物が置いてある。

伊都波 悠薇 >  
「――……わっ!?」

驚くのも当然。
急に、出てきた。今自分は少しだけ意識が飛んでた。
すごく疲れててうとうとしてたのかもしれない。

「――馬のおにいさん? ……………………が、学生だったんですか?」

指をさして、失礼なことを言ってると気づき

「はっ!? あ、いえ、何でもないですっ。というか、なんかすごいもの持ってますね?」

ルギウス > 「いえ、教師ですよ?
 たまには体を動かさないと鈍ってしまいますからねぇ」

教鞭をとるが、話したいことを話すだけでレポートを書け とか。
思いつきで呪物を提出しろ とか。
まともな授業をしているわけではないのだが。

「次の講義に使えるか、と思って用意してみました。
 ラーの天秤 はご存知ですか?」

伊都波 悠薇 >  
「――……あ、教師。なるほど」

すごく失礼なことを言ってると思ったが
自然と思ったので仕方がない。

「体を動かすって――馬のお兄さん、何か運動してるんですか?」

なんだろう、馬術とかだろうか。
それは楽しそうだと思いつつ。

「ラーの天秤……?」

首を横にかしげて。
オウム返し

ルギウス > 失礼な事は言われなれているのでスルー。
もっと酷い罵倒とかよくされるし。人でなしとか変態とか。

「私は異世界の出身でして……冒険者をやっていた時期もありますので、色々と。
 武器も一通り扱えますし、馬術なんかも嗜んでいますよ。
 なんなら、この場でUMAでも召喚しましょうか?」

UMAと書いて うま と読む。

「ええ、古代エジプトにおける死後の世界における試練の一つですよ。
 死者の書 というものに書いてあるのですが―――。
 要約すると、心臓が羽より重ければ罪人。そのまま地獄に直行となります」

伊都波 悠薇 >  
「冒険者……とれじゃーはんたー……」

確かそんなジャンルのゲームがあった気がする。
トラップとか引っかかってちょめちょめとか、負けたら魔物に――……

首をぶんぶん降って、今日は耐えた。
最近姉に注意されたので絶賛、妄想キャンセルを覚え中だ。

「な、なんかニュアンスが違うような? 馬、大好きですけれども」

頬を掻きながら、話に耳を傾けて。

「――死後の、世界」

ルギウス > 「ええ、最近は攻略するだけでなく趣味でダンジョンの作成も行っております。
 服だけ溶かすスライムとか触手満載のやつもありますよ」

具体的なワードで追い込みをかける男。

「まぁ、普通の馬ではないのでニュアンスは正しいのですけれどねぇ?
 ちょっと角があったり羽が生えてたりしますので」

もしかしなくても幻獣・妖獣・魔獣の類である。
なんなら神獣かもしれない。

「ええ、死後の世界。
 そちらの話には興味ありますか?

 他にも……弁護士なんかで有名なんですが、ギシシャ神話のテミス。ローマ神話のユースティティア なんかも天秤を持ち 悪を裁きますねぇ」

伊都波 悠薇 >  
「――……それ女の人に嫌われそうなダンジョンですね?」

あははっと笑いながら、頭から湯気が出る。
当然想像しているのは、まるわかりであった。
しかし言動が変にならなかったのは成長? といえよう。

「ユニコーンとか、ペガサスってやつですか? よくおとぎ話に出てくる」

この話の流れなので処女が好きとか云々まで思い出して、大変な脳内である。

「――興味はないです。死んだら、負けと一緒なので――……天秤って、悪を裁く、ものなんでしょうか?」

ルギウス > 「一部の女性には大変な好評をいただいております。
 むしろ命があるだけマシな部類なんですがねぇ……」

不思議でならない とばかりに首を傾げる。

「異世界があり、魔法が存在し、異能があるのなら。
 御伽噺や神話は真実である、と思えませんか?」

ニヤリと笑う。

「死んだら負け。
 なるほど、真理ですねぇ……生きていれば次もチャンスがあるわけですし?
 エジプト神話においては、死後も魂は生き続けるそうですが。
 と、話が脱線しましたねぇ。

 古代の神話においては、天秤は量るものであり そこに神という絶対者がいることで 善と悪の基準が明確化し……結果として、悪を裁くという逸話になっているのだと学術的には考えられます。

 ……『アナタには、基準がありますか?』」

最後の言葉は "誰" に向けられた言葉だったのか。
張り付いた笑顔から判断するのは難しいかもしれない。

伊都波 悠薇 >  
「……ひえええ……」

ということは気持ちいいんだろうか。
どうなんだろう、姉に聞いてみたらわかったりするだろうか。
うん、そういえば姉は経験者だった気が――
……経験。なんだか、ちくっとした

「それは――うん。確かに……ってことは馬に会える!? おとぎ話の馬様に!!?」

ペガサスとかそういったものはもう、そういう格付けらしい。彼女の中では。

「はい、負けるのはよくありません。私は別に、あれですけど」

姉が死ぬのは、もう勘弁だ。
たとえ、殺すのが自分であっても。もう想像すらしたくない。

「――基準? 私に? それとも、”天秤に”? どっちの意味で、お馬の先生は聞いていますか?」

どういった、基準だろう。
なんの基準だろう。

ルギウス > 「よろしければ体験してみますか?」

セクハラである。多分。

「貴女が望むのであれば。
 久しぶりに馬を駆るのもよいでしょうからねぇ」

どうします?なんて聞いてくる。
返事なんて決まっているだろうに。

「さて、どちらでしょうねぇ?
 道具は使い手次第で意味合いを変えるものです。
 同じものでも善か悪か……有用か不要か、敵か味方か。
 天秤は量り、また裁くものです。
 『アナタタチ』はどうなりますかねぇ?」

伊都波 悠薇 >  
「え、遠慮しておきます」

顔を真っ赤にしつつうつむく。
冗談にしては激しい、刺激であった。

「――今日はやめておきます。ちゃんと、馬さんぐっつに飾ったときにっ」

ぐっと、握りこぶし。
馬に対しての礼節を忘れてはならない。
ちゃんと馬好きアピールをして、お近づきにならなければっ

「――道具」

そう、道具だ。
だから使うものがいないとおかしい。
自動発動。そういった異能はあるだろう。
でも、これは本当にそうなのか――悠薇にとっては疑問でしかなかった。

「――いつか、私が裁く。もしくは逆もあり得ると?」

ルギウス > 「ストレス発散したいときにでも声をかけてください。
 めくるめく官能をお約束いたしますよ」

くつくつと笑う。
冗談ではあるが、要求したら本気で用意するのだろう。

「本当に馬が好きなんですねぇ。
 好きなものがあるのは良いことです」

うんうんと頷いて。

「ええ。
 道具は使っているからこそ、意味がある。
 本来の使い方をしているかどうかは、また別のお話です。
 同じ“天秤”でも何を裁くか変わってくるでしょうしねぇ?」

これは私の持論ですが と前置きし。

  チカラ
「異能 や 道具 を持っていることに意味はありません。
 それらの手札を如何に使うか。
 それこそが人である意味だと、思っています。
 ……貴女が手札をどう切るかとても楽しみにしているのですよ、私は」

伊都波 悠薇 >  
「――カンガエテオキマス」

オーバーヒート。
妄想の限界を知りそうになった……

「はい、馬さん。大好きですよ」

ふわり微笑む。
そう、馬は大好きだ。凛々しく――走る姿が。
前へと駆ける姿が――
すごく……

だって、自分にはない力強さが彼らの走りにはあったから。

「――私が、どう使うか。ですか?」

自分に興味を持たれていることが意外そうに。

「なんか、そういわれること最近多いな。私なんか、特別なもの特に持ってないのに」

烏丸という友人にも似たようなことを言われてた気がする。
あくまで、気がする程度だが

ルギウス > 「その笑顔が実に美しい。
 憧れであっても、それが活力になる間は尊いのですから」

いつもとは張り付いている笑顔の質が少しだけ、違う気もする。
気づけるかどうかはわからないが。

「貴女の普通が、誰かの特別かもしれませんよ?
 私から見れば世界のなんと眩しい事か。
 サングラスでもかけてないと見る事だってできません」

笑って肩をすくめた。

伊都波 悠薇 >  
「あはは、お世辞でもうれしいです」

前髪を直しつつ、しっかり表情を隠して。

「――そういう、ものでしょうか。あ、でも――……」

自分なんかより、姉のほうがより輝いて見えるのに。
上ではなく、下を見るのも先生の仕事なんだろうかとも思いつつ。
そして思いついたようにぽんっと手をたたいて。

「サングラス、かけてると気づかないこともあるかもしれないです。今度、外してみるのはいかがでしょう」

なんて提案をしつつ――……

ルギウス > 「本心ですよ。
 私がお世辞を言うと、もっと白々しく聞こえると評判をいただいておりますので」

胡散臭くて、軽い。
それがこの男である。

「……たまには、いいかもしれませんねぇ?
 貴女が前髪をあげたら、私もサングラスを外しましょうか」

提案にちゃっかり条件を付けた。

「さて、私は軽く運動してから帰るつもりですが……貴女はどうしますか?」

伊都波 悠薇 >  
「――そぅ、ですか」

あっけにとられたように小声で返事しつつ。

「――うぐ。カンガエテオキマス」

姉や先輩にさせられたことがあるが
あれはすごく恥ずかしいので、保留にしておくことにした。

「――私は、帰ります。家で、もう少し考えたいことがあるので」

荷物を担いで、汗が渇いたのも確認。
ふぅっと息を吐いて。

「さようなら。また学校で、先生」

ルギウス > 「ええ、学校で。
 ……相談内容によっては 教師でなく 司祭として悩みを聞きますよ」

手を振って見送る。

伊都波 悠薇 >  
「――ふふ、馬好きとしてもお願いします」

手を振りながら――……

帰り際、つぶやく。

「――……天秤の使い方」

そう自分は何も知らない。

――天秤のことも、世界のことも。

そして――……下手すると。

「自分のことも」

前を向く。少しずつ、前に進んでいる気がした。

――そして、ボクのことも

その後ろの陰を、少女は――……まだ、知らない

ご案内:「訓練施設」から伊都波 悠薇さんが去りました。
ルギウス > 少女が立ち去るのを確認し。

「いやぁ、本当に面白い方ですねぇ?
 どうなるのか行く末がとてもとても楽しみです」

楽しそうに笑う。

「うっかり壊したり過干渉しないように気をつけませんと。
 スルトの方はちょっかいをかけるだけで出てくるとは思いませんでしたが……これも試練と割り切ってもらいましょうかねぇ?」

そんな独り言を漏らしながら。
やたらと重い棒を振り回したり と がっつり肉体派のメニューをこなしてからスポットが堕ちた。

ご案内:「訓練施設」からルギウスさんが去りました。