2016/12/19 のログ
ご案内:「演習施設」にミラさんが現れました。
■ミラ > 「……面倒」
授業チャイム直前、小さな人影が演習施設の扉を開ける。
そこには既に数人の人影があり、大きな声で雑談をしていたが彼女の姿を見ると
少しだけざわつきながらこちらに目を向ける。
年端も行かない少女のような講師を眺める複数の目。
そこに浮かぶのはあまり良い感情とは言えない。
大半が嘲笑の笑みを浮かべており、それを見て小さくため息を漏らす。
全く何も知らないというのは本当に幸せそうだ。
知能指数と幸福度指数が反比例するというデータがあったが
彼らを見ていると確かにと納得してしまいそうだ。
これからの事を思うとため息の一つもこぼれてしまう。
(どうしてこんな無駄な時間を態々……)
並ぶ顔を一瞥してふと現実逃避しそうになる。
事の発端は先週の初授業で……
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「……授業中、五月蠅い。雑談は部屋の外でして」
ホワイトボードの前で壇上から心底ウンザリとした声を漏らす。
目前には授業なんてまるでやる気のない生徒たちの一団。
授業時間中だというのにまともに席に座っている者すらまれで、
その大半は数か所に固まり四方山話に花を咲かせている。
その何れもが下らない話で……。
『動物園みたい』
真面目にそう思う。
容姿だけ見れば大人しそうな年下に見える彼女の姿を見た生徒は完全になめ腐っており
彼女が説明する気も失せている事も相まって
ながらにでも授業に耳を傾けるものはほとんどいない。
何度か注意をしたものの一向に聞く気配のない彼らだが、
別に聞いていてもいなくても彼女にとっては関係なかった。
勝手に単位を落とすのを拾ってあげるほど彼女は親切ではない。
一切を無視してマイペースに授業を進めていく。
(まるっきり時間の無駄。)
本来彼女の授業は希望者がいた場合に講義を開始するという形式のもので、
固定の時間に授業を持つというのは今期のうちにはない予定だった。
けれど、魔術制御学の講師のうち一人……結構なお歳のおじいちゃんだが
流行病で体調不良との事で急遽ピンチヒッターとして代役に立つ羽目になったのだ。
とはいえ、多くの生徒を振り分けている授業はそれぞれ進度が違う。
突然割り振られたクラスを担当するよりは自習のほうがましなレベルだろう。普通なら。
けれどいんふるえんざという病気らしく、一週間は出てこられないらしいことを鑑みると
二回はそのクラスで授業を行うことになる。
そうすると元々ある進度差がより大きくなってしまう。
結果、彼の受け持っているクラスは他のベテラン教師が受け持つことになり、
巡り巡って問題児ばかり集まっているクラス
……一切何も進まなくても対して違いのないクラスの担当をすることになった。
要は体よく面倒なクラスを押し付けられたのだ。
■ミラ > 「みろよ、代理講師って聞いたからどんな美人な講師が来るかと思えば
来たのは可愛げのないクソガキだぜ?つまんねぇ」
淡々と無表情で無視しながら授業を進めるうちに声が上がる。
何が気に入らなかったのか生徒(クソガキ)のうち一人が
彼女にからかいの言葉を投げ始めた。
それは一段とガラの悪い集団の中心人物だった男で
確かどこかの企業の三男坊とかそんな背景の持ち主だった気がする。
覚える価値すらないと思い早々に頭から排除したけれど。
「貧相な体つきだしよぉ、もっとそそられる体つきの講師連れてこいやコラ
そしたら抱くついでに授業聞いてやらねぇこともねぇぜ?」
どこまでもわかりやすい言葉を並べ、周囲の取り巻きと馬鹿笑いをする。
ああもううるさい。
こちらだってこんな動物園に関わるくらいなら
研究室でいろいろ進めたいことがある。冷蔵庫にプリンだって入っているし
あれをゆっくり楽しむのが今日の今頃の予定だったのに。
戯言を無視しペンを浮遊させ勝手に授業を進めていく。
彼女の身長ではホワイトボードの半分程度しか手が届かないため
ほとんど座ったままペンを走らせていた。
「おぃこら聞いてんのか。クソガキ」
無視され続けたことに頭にきたのだろうか。
サル……もとい、風船頭、じゃなかった生徒その一が声を荒げ
立ち上がりながら筆箱を投げつけてくる。
面倒そうに軽く手を振るとそれは空中で横に吹き飛んでいった。
その中のペンのいくつかが壁に突き刺さり、
それに気が付いた一部生徒がぎょっとした表情を見せるがそれに気が付く様子はない。
「……聞いている。そう思う、なら、私にいうだけ、無駄。
クラス割り当て、決めたの、私じゃない
……この応用、から、こちらの、形式へ、と、転換されている、と、推察される
細かい、原理、は、各自で、しらべて。教科書に、載っている」
視線すら向けずに淡々と返すとまた授業に戻ろうとする。
馬鹿に割く時間がもったいない。
■ミラ > 「そういう意味じゃねぇよタコ」
その態度が頭にきたのだろうか。
近づきながら教卓を蹴飛ばし、凄んで見せてくれた。
確かに体つきは筋肉質だし見上げる程度の大柄。
身体制御系の異能の持ち主だろうか。如何にも脳金といった印象。
とは言え生憎こちらは戦場の最前線で戦う元本職な訳で。
問題は蹴られた際に教卓に載せていた教科書と幾本のペンが吹き飛んで行ってしまった程度。
「……何。暇ではない、のだけれど。
見ての通り、授業中。理解できない、なら、質問は、後でまとめて、持ってきて」
それを明らかに面倒くさがってうんざりした雰囲気で眺めながら
やっと正面で肩をいからせる馬鹿その一に目を向ける。
割とまじめに会話すると馬鹿がうつりそうだと思っている。
バカは空気感染するのだから。
「こんな授業なんか必要ねぇって言ってんだよ。
教わらなくても俺らは魔法やら異能やらつかえる選ばれた人類なんだからさぁ
いちいち制御とか安全とかうぜーんだよ。俺らは俺らで勝手にするつぅの。
わかったらお偉いお子様は家に帰ってねんねしてな」
投げかけられた言葉にふと手が止まる。
この馬鹿は今なんと言ったのだろう。
「……確認。異能、魔術制御が必要ない?」
小さなこえでゆっくりとした動きで見上げる。
微かな苛立ちと冷たい光がその瞳に宿っていることに
気が付くものは誰もいなかった。
■ミラ > 「必要ねぇよ。俺らは出来るやつらなんだからさぁ
義務がどうとかうるせぇけど巻き込まれた奴の事なんかしらねっつの」
ああ、こいつこれを本気でそう思っているのね。
一つため息をつきながらこめかみをつつき、翻訳魔術をしっかりと作用させる。
そうしてへらへらと笑う顔を見上げ口を開く。
「……これだから何も知らない馬鹿は。
この国の馬鹿は器用ね。立ったまま、寝ているの?
一山いくらのごみが大層な口を利く。
せめて永眠して、世界の役に立とうとは思わないの?
知能がある分実験用のネズミの方が幾分かマシね。
異能があったから、魔術要素があったから辛うじて価値があった程度の
取るに足らない無知蒙昧が、温情で生きていく場を与えられたのだから
せめて世界の片隅で生きていて御免なさいと震えているといい。
それがお似合いというもの」
しんと教室内が静まり返った。
唖然とした表情でこちらを見つめる顔が次第に上気していく。
この程度の言葉を理解するのにもこんなに時間がかかるなんて。
「……死にたいらしいなぁ?お前」
低く怒りに震えた唸り声が近くから聞こえる。
ああ、やはり形態変化系の異能保持者だったようだ。
怒気と共に眼前の馬鹿に黴、もとい獣のような体毛が生えていく。
これは……ライカンスコープか。
■ミラ > 「……仕方がない。
身の程というものを知る良い機会」
その様子を完全に無視しながら教室に声を響かせる。
「……次回授業は模擬戦形式とする。このクラス全員対私。
異能も魔術も特に禁止しない。全力で来るといい。
私に自発的に触れる事ができたならこの授業単位をあげる。
有効打ならクラス全員に私が付与できる単位をすべて
何ならほかの条件を追加してもいい」
小さくため息をつきわかるように話していく。
馬鹿に理解できるだろうか。
「要は少しでも通用すれば私のできる範囲で好きな便宜を図ってあげる
煮るなり焼くなり好きにするといい」
きっぱりと宣言し、教科書とペンを拾い上げ
目前で変化したバカその一を一瞥。
「なら今ぶちのめして二度と往来を歩けないような目に合してやらぁ!」
とか何とか言いながら殴りかかってきたバカの拳を教科書で軽く受け止める。
そのまま空間ごと固定。
「……馬鹿の相手は疲れる。今日の授業はこれで終わり。
各自予習復習を怠らないように」
そうしてさっさと教室を出ていき……
――今日この時に至る。
■ミラ > 「全校生徒の前で全裸晒して泣き喚く覚悟はできたかよ?
謝るなら今のうちにしておけよ?」
名前なんだったっけ?バカその一でいいや……が下卑た笑みを浮かべながら
こちらにお決まりの一言を投げてくる。
勝ったら何をするかとかいう妄想でもしていたのだろうか。
小さなテントが立っている辺り考えていた事は想像がつく。
……そんな事をたくらむとはやはり生きていてごめんなさい案件だと思う。
そのまま無言でスルー。馬鹿の相手は疲れる。
「覚えるだけの脳がないだろうと思う。再度確認。
戦闘区域はあの四角の中。
ルールはそれだけ。そちらに反則事項はない
戦闘の意思がなければ戦闘区域から離脱すること
その場合追撃は行わない。戦闘前警告は以上。
10秒後チャイムが鳴る。それをもって戦闘開始の合図とする」
淡々と告げる。
相手にとってはかなり好条件。
先に来ていた時点で何か仕込んでいるかもしれないが
そうであってもすることは変わらない。
どんなことをして来ようと
「圧倒的に、ねじ伏せる」
ただそれだけだ。
……そしてそれはチャイムの僅か数分後に宣言通り実現することになる。
■ミラ > 「代理講師が単位を与えるという宣言をする時点で
実際に勝たせる気がないのは明白。
その程度は理解するべき」
もとより技量に天と地の差があるのだから、勝ち筋などあるわけがない。
説明したところで理解できないなら
「その身をもって恐怖を知るといい。
これはそういう物なのだと」
小さく呟く。
それと同時にチャイムが鳴り一斉に詠唱をはじめ、
地を這うように迫る生徒たち。
初撃の推定所要時間は1,2秒
……彼女に到達するには絶望的に足りない時間。
(術式展開、空間指定)
掲げた掌の上に小さな立方体が浮かび上がる。
くるくると回転する半透明のそれは一見無害に見えるだろう。
「おしまい」
それを握りつぶす。
たったそれだけだった。
■ミラ > それと同時に戦闘区域内の全ての生徒が頽れる。
何が起こったか全く理解していない、けれど何かが起こったことだけは確かで。
四肢はピクリとも動かず、動くのはただ眼球だけ。
「意識は残っているはず。そう調整した」
無表情のままゆっくりと口にする。
何かが起こっていることだけ分かればいい。
術者が分かっていればそれでいい。
「簡単な魔術に物質生成がある」
ぱちんと指を鳴らすと空中に漆黒の槍が無数に浮かび上がる。
それは先端部に鈍い紅光を宿し、その下には倒れ伏す生徒たち。
「それを無数に繰り返してやれば、多数の物質の具現化は容易」
その言葉の合間にも空中に浮かぶそれは見る見るうちに密度を増し、
不気味な振動音を響かせ始める。
「あとは」
小さく笑みを浮かべて軽やかに宣言した。
「ごみの上に降らせるだけ」
■ミラ > 「勝てると微塵でも思った?
努力も才能もない塵芥が、この私に。
笑わせる。夢は眠りの中で見るだけにしておくべき」
恐怖に染まる生徒の目を無表情に眺め
そこに一切の躊躇が無いことを悟らせる。
喋ることができたなら命乞いでもしただろうか?
雑音に耳を傾けるつもりはないが。
「それでは、有象無象」
ゆっくりと天高く手を掲げる。
「永遠におやすみなさい」
指鳴りとともに、無数の黒い雨が降った。
■ミラ > 「……ああ面倒」
全員の戦意喪失を確認する。
ここが戦場であれば全員文字通り塵に返したところだけれど
私は今一応講師で、生徒は大事にしなければならないらしい。
正直よくわからないけれど。
「……殺してはいない。けがもさせてない。」
ただ恐怖で意識を奪う。
彼女にとってはかなり手加減した範囲。
一本たりとも制御は失っていない。体の周囲数ミリを縫うように降らせただけ。
一般的に見れば完全にやり過ぎの範疇だったりもするが。
「……他の生徒が来る前でよかった」
漆黒の槍を消していきながらひとりごちる。
一応公開授業という形で告示はしてあったりする。
掲示板には張り出してあるし
実践魔術戦の見学がしたいという生徒がいるかもしれない。
今回の摸擬戦の条件は公開下で行うこと、だった。
■ミラ > 「試験は現時間をもって終了とする。全員落第。
ここから先は任意参加とする。
……これは貴方達が振るうものの一端。
しっかりと理解し復習するべき。
次は外さない。肝に銘じるといい」
コロッサスを呼び出し気絶した生徒を休憩室に運ばせる。
気絶していない生徒にもいろいろ不都合もあるだろう。
それに気を掛けるほど可愛い生徒でもない。
■ミラ > 「……甘いもの食べたい」
どうせ見学など来ないだろう。
告知の張り紙はそう目立たないよう張ってもらうようお願いしておいた。
元々馬鹿に扱っているものの恐ろしさを教えるのが目的だったのだから、
公開部分はほとんどおまけ。
それに高名な教師ならいざ知らず、この学園、しいてはこの世界に来たばかりの
一個人が行う授業なんてそう珍しいものではない。
よっぽど熱心な生徒か物好きか。
そう決め込み、椅子をひっぱりだすと部屋の中央に置き
「……」
のんびりと甘味を味わい始める。
誰も来ないなら別にさぼっていても怒られない…はず…
■ミラ > 「……」
そういえばこの施設にはある程度強固な防壁が張ってあったはずだ。
なら、いくつかの術式をここで試してみるのもありかもしれない。
そのことに思い至りぴょこんと椅子から飛び降りるように立ち上がる。
『空間指定すればいいだけだけど』
小さく呟きながら両手を軽く開き、ゆっくりと術式を展開していく。
即発動させず、わざとゆっくり術式を展開することでその過程を慎重に精査していく。
「……範囲指定、確認。
術式のリンク開始、相互連結後、第二段階、移行」
瞳を閉じ、呟き続ける彼女の周りに白い燐光が立ち上り始める。
それはまるで季節外れのホタルのよう。
ふわりふわりと一見不規則に彼女の周りを飛び回り、その数を増やしていく。
「方向指定解除、仮対象の設定、ロック。
他術式との干渉をチェック……問題ない」
ゆっくりと瞳を開く。
■ミラ > 「射出体の保護、発生衝撃のベクトル固定
そこ干渉、する?
……固有関数収束速度、亜光速、減速。
先端部発生熱量の収束、変換術式……解除」
これは対象に届く前に飛翔体が先になくなるかもしれない。
それはそれで良いデータが取れるのだけれど。
「誘導仮想領域の設置」
燐光が弾け、バチバチと周囲に紫電が走る。
それは周囲を無差別に焦がし、独特のオゾン臭が周囲に立ち込める。
「電磁誘導安定。プラズマ排出、後方真空領域を強制解除。
再度誘導の確認。ターゲット、ロック。
…EML、"展開"」
両手をうちあわせる。
それと同時に轟音と閃光が駆け抜けた。
■ミラ > それは凄まじい衝撃と熱量、そして爆風を巻き起こし、
彼女の長い髪と白衣、マフラーが激しくはためく。
とはいえそれは本来この至近距離で直撃すれば人など軽く蒸発する熱量。
「……んー…」
その衝撃と爆風がひと段落し、うっすらと視界が開ける
そこには無残な大穴が穿たれていた。
例えそこに何かがあったとしてもこの状態ではみじんも残っていないだろう。
けれど、その穴を前に不満げな声を漏らす。
「威力、不足」
これなら戦術術式を展開したほうがよっぽど破壊力と効果範囲がある。
ご案内:「演習施設」に真乃 真さんが現れました。
■真乃 真 > 突如扉が開け放たれて
「実戦魔術学の見学ってここで大丈夫かい!?」
飛び込んでくる一人の男。
白く異様に長いタオルを首に巻いた男である。
その男がそこので眼にしたものは地面に座り込んだ生徒たち。
そして閃光と爆音に続いて入口まで届くタオルをはためかせるほどの爆風!
「…どうやら、あっているみたいだな!」
バタバタというタオルの音が止んだくらいで呟いた。
多分なんかの魔術を実践していたのだろう!!
■ミラ > 「あ、…ぇ?」
まさか来ると思っていなかったため対応が遅れる。
とりあえずわたわたと白衣を撫でつけ慌てて身なりを整える。
「あって、る
見学?今、術式試行、中」
ちいさく頷き、現状を伝えてみる。
とはいえへたり込んでいる生徒の多くが悪い意味で有名な方向に偏っているため
かなり物騒な絵面には変わりはないけれど。
それに何より本人が講師に見えないという問題点もある。
■真乃 真 > おそらく先ほど魔術を使ったのだろうと思われる少女に近づいて話しかける!
恐らく彼女が教師なのだろう!この学園の教師ほど見た目が自由な仕事も無いきっとこの女の子だ!
「えーと、君が先生かな?新任の先生だって聞いてるよ!
ああ、僕の事かい?僕は三年の真乃真といいます!魔術には詳しくないけど時間が空いたので見学に来ました!
よろしくお願いします!」
ピシリとした綺麗な礼をする。
そして周りを見渡せば
「…なるほど!何となく分かった!」
新任の先生がガラの悪い生徒のクラスの授業することになった。…という話を聞いて少し気になったので来てみたが…。
どうやら、思ってたよりは大人しい学生たちのようだ、携帯を弄ってるような様子もないし、みんなしっかり目を見開いて
先生の方をみている!うん!あとはメモとか用意しておくべきだな!!
■ミラ > 「あ、ぇと……そう。ミラ。
先週着任した。専攻は物理魔導学。
3年なら、もしかしたら授業で会うかもしれない」
とりあえず翻訳術式は活性化しておこう。初対面だし。
「よろしく、真。
正直誰か見学に来るとは思わなかった
他の生徒はもう一戦終えている。
えーっと…死ぬほど疲れている?」
周囲の生徒は気にしないでほしいという趣旨を伝えようとするが
あまり上手な言い回しが思いつかず首をかしげてしまう。
なんだかすごく元気な生徒だなぁ…と思いつつ見学に来た生徒に何か見せるべき等を考えていなかったため
内心はかなり焦っていた。
こういう細かいところが抜けるのは彼女の悪い癖だったりする。
■真乃 真 > 「ああ、その時はよろしくミラ先生!!」
無駄にカッコいいポーズを取りながらいう。
あまり、魔術に関する授業を取っていないので機会は多くないかもしれないけど…。
「なるほど!それであんなに膝が笑ってる生徒とかもいる訳だ!!
でも、そっかそれじゃあ少し遅かったかな?
いや、でもまだもう一戦くらいしたい人とかいるんじゃあないかな!?」
そう、言って生徒たちの顔を見渡すも誰とも目が合わない。
「む、そういう態度は良くないぜ!折角の実戦なんだからチャレンジしないと!
そんな風に誰も行かないなら…じゃあ、誰か一人選んであててもらうしかないな…。」
そんな気軽にナニ言ってるんだコイツとか殺意とかそんな感情が合わさった目が一斉に真に向かう!
だが、そんな視線は真には効かない!!
■ミラ > 「ん、よろしく」
ポーズをとりながら挨拶をするというのはこの世界のルールなのだろうか?
とりあえず小さく真似をしながら挨拶を返してみる。
無表情でポーズをとるのはそれはそれで違和感の塊かもしれないが
元々表情のわかりにくい娘だった。
「私は、構わない。
実践経験は、やはり大事」
うんうんとうなずく。
周りの生徒が何言ってくれてるのという空気を醸し出すも
それには全く気が付かない二人。
ある意味そういうところでは似た者同士かもしれない。
「……一理ある」
こちらもこちらで情も容赦もない性格をしていた。
やる気のある生徒なら喜んで相手をするつもりだし、
その訓練の役に立つくらいなら本望だろう。
そういえばあの脳金の一団がまだどこかにいたはず。
ゆっくりと視線を巡らすも、その視線が合った瞬間慌てて目をそらされ
小首を傾げてしまう。
■真乃 真 > 「良いポーズだ!!素敵だと思う!
でも、知らない人の前で急にやったりすると変な人だと思われるから気をつけた方がいいよ!」
少し、キレが足りないが悪くないポーズだ!
これから成長していく事だろう!
それはそれとして、この先恥はかかないようにちゃんと常識は説明しておく。
「…おっと、そこの君!先生と目が合った瞬間逸らしたそこの君!
照れ屋だな!顔が赤くなったり青くなったりしれるぜ!でも、大丈夫だ!
ああ、恥ずかしがり屋でも同じように実践の機会は得られるべきだと僕は思うんだ!」
目ざとくその目をそらした様子を見つけて助け船を出す。
ああ、残念なことに男の中にあるのは善意である。
『…ああ、違いない。あいつは恥ずかしがり屋だからな。』
生徒の一人がポツリと呟くと、生徒たちから口々に言われて。
あっという間にその生徒は恥ずかしがり屋として祭り上げられてミラの前へとやって来たのだった。
彼は選ばれててしまったのだ生贄の羊として!!
「うん、勇気を出したな!君は頑張った!
よし、じゃあ折角だから僕が実況と解説と審判をするよ!
で、どんなルールでしてたの?」
ミラの前に立った今も未だに膝が震えている男子生徒の肩を叩いてそんな事を言う。
■ミラ > 「……そう、なの?」
少しだけ恥ずかしくなってすっと手を下す。
無表情ながら少しだけ朱がさす様に注視すれば気が付いたかもしれない。
『え?俺は…』『恥ずかしがってないで行けよ』『そうだそうだ』
恥ずかしがり屋に仕立て上げられた彼は文字通り白と青に顔色を変え哀れにも逃げ道を探しているものの
次のスケープゴートになりたくないという意図で一致団結していた他クラスメートの洗練された連携により舞台へと引きずり出される。
もとよりお前らのせいだろ的な空気もないでもない。
先ほどあんな目にあわされたのだ。
目の前にいるのが無害な少女ではなく猛獣と知った今その前に立つのはそれはそれは恐ろしかろう。
もっとも残念ながら彼女にそれを推し量るようなそう言った感覚はないに等しかった。
彼女からしてみればいい的役くらいの認識しかない。
「指定範囲内、それ以外は問わない」
要は完全な実戦形式だと簡単に告げる。
実際に戦場で早退したときに一一ルールなんか決めて打ち合ったりはしない。
その瞬間どんな手段でも使える代わりに何をやられてもおかしくないのが戦場というもの。
■真乃 真 > 「ああでも気にすることはないよ!
ポーズも僕ほどに極めれば変な人の評価を覆せるから!」
無駄にカッコいいポーズを取りながらそんな事を言う。
…ああ、このポーズを作るまでにどれほど時間をかけたのだろう
その、動き一挙手一投足にいたるまで髪の先からつま先まで完璧に整ったポーズ!
極めたポーズの先にある評価!そう!凄い変な人である!!カッコいいポーズの変な人である!!
「なるほど!シンプルだな!
もう少し、色々あるのが個人的には好きだけど!
よし、じゃあ戦闘開始!!」
えっ、もう?
明らかにそんな顔で一瞬こっちを見た男子生徒。
そして、巻き起こる応援!!
『いけー!有効打決めろ!!せめて触れ!!』
その声を背に受けて男子生徒は竦む脚を前に踏み出す!
「おっと、初めに仕掛けるのは生徒の方か!!
どうやら魔術を使う様子です!何らかの魔道具を取り出した!
恐らくあれは短杖!魔術を一種類だけ放てるタイプのものでしょう!!詠唱いらずの凄い奴!
そこから、飛び出したのは巨大な火球!!当たればただではすみません!!
いったどうするのでしょう教師ミラ!!!??」
宣言通り実況と解説を同時にこなす。マイクが無くても良く通る声である。
そして、この実況のお陰で少しずつ生徒たちにも活気が戻り始めていた。
■ミラ > 「何事も極めると様になる。
……良い具体例」
かっこいい変な人だった。
この学園には個性派が多いけれど、
彼はまた彼でその個性を突き詰めてきたのだろうと思えるような動き。
それはそれで素敵なことだと思う。
「なんだ、まだ元気」
湧き上がる声援は恐怖への裏返しか。
なんにせよ声を出せれば活気は戻っていくもの。
ある程度は授業ができそうで何より。
ぼんやりと迫る火球を見ながらそんなことを思う。
「さて」
迫りくるそれにすいっと人差し指を向ける。
簡単な術式。たとえ出力があろうとなかろうとこんなものは造作もなく
「誘導可能」
そのまま指を横に滑らせると火球はその指先でくるくるとじゃれるように回り始める。
「制御干渉、事象変換」
そのままくるりと一回転。術者本人を指さす。
それは再び猛然と直進しはじめ、術者へと帰っていく。
「対人戦でまず干渉、介入は想定するべき。
特に簡単な術式は乗っ取られやすい」
まさにモデルケースと目で示しながら男子生徒真横を走り抜けさせた。
それは少し離れた場所に着弾し豪炎と火花をまき散らしていく。
■真乃 真 > 自らのそばに高威力の火球が落ちたことにより明らかに恐怖し唾を飲み込む。
だが、周りの生徒たちは自分に害がないと分かるとあまりにもあまりに薄情である。
その様子を囃したてて接近戦を挑むように言う。
「おっと、生徒の姿が変わっていく!これはライカンスロープ!狼男です!
巨大な体に凄まじい瞬発力!更にどうやら身体強化の魔術まで使っている!!
もともとの身体能力に加えて身体強化!これは手が付けられません!!」
疾い。生徒の動きはとても早い。普通の人間であるのならば目で追って対応するのがやっとだろう。
もし、対応できたとしても彼にはその体がある恵まれた強靭なその身体が生半可な攻撃では傷も与えられないだろう。
雄叫びをあげてミラほうへと狼男は駆ける、その鋭い爪を振るおうとする!!
まるで、目の前の恐怖を少女の形をしたその恐怖を払おうとするかのように!!
それは彼の最大の最速の最高の力で振るわれるだろう!!
「おっと、ピンチです!ミラ先生!魔術師の領域と言えば遠距離!
遠距離からの攻撃こそが魔術の強い利点です!ですがここまで距離を許してしまえば!
その利点も失われてしまう!さあ、このピンチ!どう切り抜けるのか!!」
■ミラ > 「その二」
形ありし恐怖と称される少女はのんびりと告げる。
その目は目前の姿を追ってすらいない。
「心理状態も常に観測されていると考えるべき。
相手の次の行動が読めるだけで対処はとても簡単になる。
平静さを欠けばより介入を許しやすい。常に平静を保つ事」
何事もないようにすっと身をかがめる。
それと同時に振るわれる鉤爪…手の甲で軽い爆発が起こり
"まるで決定されていたかのように"軌道修正する隙さえ与えず
その頭上を鉤爪が駆け抜ける。
「相手の攻撃を流す際は減速よりも加速させるほうがロスは少ない。
到達する前に振り切らせる。軌道修正を防ぎ回避する。
そのどちらも有効。同時にダメージの軽減や体勢を崩すことが期待できる」
思った以上の力で振り切らされる腕は体を流し、体勢を崩してしまう。
それにいくら対応できる身体能力でも……
「隙ができてしまえばなんとでもなる」
軽く手のひらを相手の体に当て
「解放」
圧縮した空気を開放する。
それは狼男が体制を戻すことすら許さず凄まじい勢いではじけ、
大きく吹き飛ばしていく。
が、彼の身体能力であれば地面に叩きつけられる前に難なく着地できるはずだ。
■真乃 真 > 「なるほど!勉強になるな!君らもメモしときなよ!!」
他の生徒にそう言って勧めるが誰もメモを取らない!
不真面目さん達め!!
「上手い!!相手の動きを生かすことによって少ない力で躱した!
そして、それを可能にするのは絶妙な魔術のコントロール!
場所と、時間少しでもずれてしまえば不可能な高等テクニックだ!!」
そう、似たような事であるならば可能だが全く同じことをするのは難しい!
その詰めの振るわれるタイミング、速度、軌道を分かってなければ同じことはできない!!
「おっと、ライカン君吹き飛んだ!だが、体勢を立て直した!
その目に闘志は消えていない!闘志の炎はまだ燃えているぞ!!」
──それはきっと、彼の最後の足掻きだ。
一度顔を覆うと再び彼は駆けだした。
「ライカン君駆けだした!やはり!速い!だが手の内は既に読まれているぞ!!
だが!ここで再び爪!!自信があるのでしょう!ぞの自慢の爪がミラ先生に再び振るわれて…!
また、爆発したぁ!!」
再びの接近、再びの爪撃、そして再びの爆発。
唯一違っていたのはこの爆発を起こしたのが彼自身であったという事!
そう、ただでさえ早いその一撃は自ら起こした爆発により更に加速する!!
ああ、コントロールも正確でない威力ばかりを求めた彼の魔術では彼の腕を無事なままで届かせることなどできないだろう!
いくら頑丈なライカンスロープであったとしても後遺症はのこってしまうかもしれない。
でも彼はその一撃に全てを乗せた。
■ミラ > 「そのさん」
ゆっくりと少女が構える。
「魔術師相手に距離を離してはいけない。
それは鉄則。離せば離すほど近接主体者は不利になる。
けれど」
いつの間にかその手のひらに小さな鈍色の輝き
「魔術師相手に常識にとらわれてはいけない。
なんでもありだからこそ、魔法使い」
まさかのこちらから踏み込む。それは踏み込んだ衝撃で地面に罅が入るほどの踏み込み。
音すらも置き去りにし、流星のように煌めきを残し地を這うように瞬時に距離を詰める。
振るわれる腕を今度は完全に目で見切り、搔い潜ると同時にもう一歩、空気の弾ける音を立てながら踏み込んでいく。
そして…
「良い一撃だった」
唯一懐に飛び込まれた彼にだけは気が付くことができただろう。
彼女の口元がわずかに笑みを形作っていたことに。
それを認識すると同時に先端が空気摩擦で白熱したナイフが振るわれる。
突き刺さる直前にそれはくるりと回転し柄で小爆発。
勢いを殺しながら鳩尾に直角にのめりこませる。
彼女が本気ならそれこそナイフ形の弾丸が音速を超える速度で突き刺さるのと同義。
血と臓物を骨ごとまき散らすような一撃だったと周囲の誰もが理解できただろう。
とはいえ生徒を殺すつもりはない。
ライカンスコープであれば悶絶程度で済むはずの威力に抑える。
とはいえ衝撃波が発生するような速度で交わされた攻防。
周りの生徒にも幾分かの風が駆け抜ける……そんな一瞬。
■真乃 真 > …訪れたのは一瞬の静寂。
そして…それを打ち破る大きな声。
「き、決まったー!!捨て身の一撃を搔い潜り見事なカウンターが決まりました!!
勝者はミラ先生です!皆さん勝者に盛大な拍手を!!あと、誰かライカン君を医務室に!火傷してるかもしれない!」
その場に拍手は溢れない。
その場に喝采は起こらない。
たった、一人を除いては。
「わーーーー!やっぱり凄いな!勉強になったなあ!!
見てるだけでもこんなに勉強になるんだ実際に戦っていたライカン君はかなり得るものが大きかっただろうね!
ポイントについてもミラ先生が説明してくれたから解説もあまりいらなかったしね!!」
シンとしたその中で一人だけテンション高く拍手をする。
勝者は称えるべきだ。全力を出して負けた相手の為にも勝者は称え高くあるべきだ。
その、様子に釣られて一人又、一人から拍手が起こる。
「今回のポイントとしてはやっぱり最後のライカン君の一撃だね!
さっき、やられた事を応用して自分の技にするのは凄いと思う!
より練り上げて行けば必殺技にもなりうるんじゃないかな?」
どこから目線か良く分からないコメントを告げる。
■ミラ > 静寂の中ゆっくりと身を離す。
これができるからこそ実践式の授業はもう少し活発に行うべきだと思う。
火傷にゆっくりと触れ傷を癒していきながら周囲に向けて一応補足をする。
「現状この世界にあるだけの魔術でもこの程度はできる。
今回主に使った呪文はどれも基礎。
慣れればここにいる誰もが同じ程度の動きはできるはず」
その組み合わせ方や術式を具体的に聞けばノートを放り出すかもしれないけれど。
頽れた体を支えゆっくりと座らせる。
小柄な体には似合わない光景かもしれないが、この戦いを見て
それに違和感を持つ者はいないだろう。
「同意」
響く称賛の声とその内容に小さくうなずく。
最後の一撃は彼女の中でも高評価だった。
「捨て身とはいえ、良い応用。
加えて勝ちへの貪欲さは評価に値する。
多少リスクを負っても相手を仕留められれば問題ない
繰り返すけれど、良い手だった」
狼男の体の頑丈さ、一度見せた行動だからこそ誘える相手の油断。
それらをとっさに組み合わせて放った一撃は致死の一撃と言ってもよいだろう。
即席だったため多少コントロールが甘かったがそれは非難すべき点ではない。
「将来に期待」
軽く腕を叩いて、一歩だけ下がる。
それは強者として、相手がそれを一歩退けたという大きな賛辞。
■真乃 真 > 「なるほど、確かに僕も見たことがある魔術ばかりだったな!
でも、精度とか発動の速度はかなりのものだった!
でも、そういう部分は日々の積み重ねで何とか出来るからね!!
あと、戦う時の動き方!これは実際に動いてみないと身につかないから
次回からは遠慮せずにしっかりと参加するようにしていこう!分かったかい?」
生徒たちは皆素直に『ハイ!』と答える。
なんだろう、見学に来ただけという事を忘れているのだろうか?
ああ、生徒たちと真、お互いにである。
『ヘッ、あれが決まってりゃあ今頃はアンタの裸を拝めたってのによ…
いつか、俺がアンタを負かしたらその時は覚えてな。』
冗談めかして笑いながら言う。
きっと彼は最後にはそんな事も単位の事も全て頭に無かったのだろう。
そう、勝つこと、勝つことのみを考えていた。
「えっ!何ミラ先生!そんな破廉恥な賭けしてたの!?
いくら生徒のやる気を出す為とは言えそういうのは良くないと思うぜ!!
いや、本当に良くないと思う!!」
■ミラ > 「……」
解説役というべきか随分となれているなぁと思う。
良い意味でちゃんと先輩をしているというべきか。
完全に立場は講師側だけれど学年とキャラクターがそれをうまく補足している。
他生徒と何やら和やかな空気を醸し出す彼の姿を見ながらわずかに頬を緩めた。
後で感謝を伝えておくべきだろう。お陰でちゃんとした授業になった。
「物は悪くない。真面目に戦術を組めばもしかしたら可能性程度
……はあるかもしれない。
なんにせよ、諦めない事」
冷静に分析する辺りが元軍人というべきか。
けれどこれでもかなり褒めている部類。
本気の彼女は理不尽と称されることが常なのだから。
「……私から体を晒す提案をした覚えはない」
けれどそのあと投げかけられる素っ頓狂な声色の質問に
小さめの声で抗議しつつ僅かに頬を染める。
こんな無表情でも羞恥は人並みにある。多分。多分。
本人は怒りに任せていた部分が大きかったけれど冷静に考えるとすごいことを約束してしまったと内心かなり悶えていた。
いや、負けるつもりは実際は一切なかったけれど恥ずかしいものは恥ずかしい。
■真乃 真 > 「良かったじゃないかライカン君!
早いし強いし魔術まで使えるって凄いからな!
才能もガッツもあるからな君は!」
きっと、その才能が彼の驕りを助長させてしまったのだろう。
一度、自らの弱さを知らしめられた彼はきっと努力を重ねるはずである。
「そ、そうか。まあでも、もしかしたら相手が凄い異能の持ち主だったり
急に凄い異能に目覚めたりするかもしれないから気をつけた方がいいよ!」
安易な約束はするべきではない。
異能はあまりにも不公平で理不尽なことが多すぎる。
「…おっと、チャイムがなったな!
皆、今回の授業で見たものをしっかり覚えて
訓練施設でも練習したりしてみればいいと思うよ!
ミラ先生!見学するだけでもとても為になる良い授業だったと思います!
今日はありがとうございました!!それじゃあ、挨拶で締めだ!
はい!『『ありがとうございました!!』』ああ、良い挨拶だ!
じゃあ、ミラ先生!またよろしくお願いします!!それじゃあ!」
他の生徒たちに揃った礼をさせるだけでさせて去って行く男!
…実際は自分も動きたくなって訓練施設で汗を流しており他の生徒達と
すぐに再開することになるのだがそれはまた、別のお話…。