2017/03/20 のログ
東雲七生 > 身体は動かない、けれど意識は大分はっきりしてきた。
先程まで時折ふわっと意識が飛びそうになり、その都度どうにか引き戻している。
これが所謂“幽体離脱”や“金縛り”なんかの正体か、などとぼんやり考えながら、部屋の天井を見つめる事しばし。

「……てか今の状態、知り合いに見られたら結構恥かしくね。」

ふと思い至って真顔になる。
生憎と七生の見知った顔の中に足繁く訓練施設に通っていそうな者は居なかったが、誰が何の気まぐれで訪れるか分からない場所でもある。
ちょっとした運動不足解消とか、ダイエットとか、隠れ筋肉フェチとかが来るかもしれない。

「………来たらどうしよう。」

とりあえず逃げも隠れも出来ない。出来るだけの体力も無い。
大人しく辱めを受け入れる覚悟も決めないとな、とやっぱり疲れているのか思考が変な方向に飛躍する。

東雲七生 > そもそも居るのか隠れ筋肉フェチ。
いや居ないと言いきれないから“隠れ”なのだろう。
もし居たら、現れたら、どうしようか。そもそも御眼鏡に適う筋肉してるだろうか。
結構筋トレはしてきているものの、元来そこまで筋肉のつきにくい体質であるのか、一向に成果が見えてこない。
胸板だって厚いとはいえない。そんな自分の身体がとても頼りない。

「……って、なーに考えてんだ、俺。」

飛躍し過ぎた思考を慌てて引っ込めつつ、七生は何度目か分からない溜息をついた。
もし溜息に重さがあるのなら、この部屋は良い感じの重力に包まれている気がする。

全部 気がする だけ、なのだけれど。

東雲七生 > 身体を動かしていないと要らない事ばかり考えるのは、入学した当初から何も変わっていなかった。
そもそも、運動を始めたきっかけが一人で過ごす時間に余計な不安や寂寥感に潰されそうになったからで、
それらから逃げるように走って、走って、走って、走り続けたのが発端である。

「………ん」

でも、その頃には既に何も考えないで走り続けられるだけの体力、は備わっていた。
島に来る以前、常世学園に入学する以前の記憶が喪われている現状で、
元々体力を付ける様な学生生活を送っていたのか、と推測出来るのは七生にとっても重大な事だった。

東雲七生 > 「……あ。」

一時的に意識を高揚させていたのが引き始める。
身体の疲労に引っ張られる様に、頭も休息を求め始めて、七生の意識は急激にブラックアウトしていった。

薄れゆく意識の中、訓練施設の天井を見つめたまま、
既視感が心の何処かに引っ掛かるのを感じつつ、七生は目を閉じたのだった。

ご案内:「訓練施設」から東雲七生さんが去りました。