2017/05/27 のログ
ご案内:「演習施設」にデーダインさんが現れました。
■デーダイン > とっても熱い初夏の日差しが照り付ける日。
演習施設では、その熱さに勝るとも劣らぬ暑苦しい声が響き渡っていた。
その喧しい音源は、ご存知、赤マントに仮面の不審者、デーダインである。
怪しく楽しい演習の時間だ。しかし、何をするかは通知されておらず…
授業の冒頭でこう切り出したのだった。
「クックック…生徒諸君ッッ!!!
貴様等の中には、理科の実験で『絶対にやってはいけない』と言われた事をやった事がある…
―――やんちゃでアホな奴が居るだろうッッ!!?」
生徒一同の前で真っ白な手袋の指が右から左へ流れていく。
「そう!例えば、電池に電球を繋げずぐるっと導線だけで結んだりな?
…居るだろう―――ッッ?!」
くりんくりんと指先を回してジェスチャーしながら、疑念を向けるのだ。
「―――居るなら、怒らないから素直に手を上げてみなさい。」
■デーダイン > デーダインは今までの暑苦しさを横に置いて、生徒達にそう問いかけた。
ざわざわと演習施設に集まる生徒の間で私語が飛び交い始める。
「お前やった事あるだろ」とか、「あいつじゃね」とか、言ってみたり、
或いは黙って俯いてみたり、まるで他人事の様に内職に勤しんだり、
ともあれ、いつの時代のどんな授業でもそうであるけれど、
手を上げる=何かしらの形で当てられる、みたいな固定観念でもあるのだろう、
生徒達は喋りはすれども中々手を上げたがりはしない。
(もっとも、デーダインもその例に漏れずそのつもりである。)
これもまた、いつの時代のどんな授業でもそうなのだろう。
デーダインの仮面は一切微動だにせず無表情である。
無表情で真っ白なそれが右向き左向き、
誰か手を上げんもんかな~と扇風機の首振りみたいに動いている。
■デーダイン > 大体、こうした時間は長くとも2、3分くらいで終わる。
自身にメリットがないと、生徒は中々挙手と言う物をしないものである。
実際はどうだか分からないが、生徒の意欲を上げると言う事は難しい。
暗黒神にとっても、教師という立場であるならそれは同じであろう。
「……なんだ、やんちゃ坊主は居らんのかッッ!!
優秀だな、貴様等。」
ふむ、とデーダインは質問を切り上げる。
そして、おもむろに生徒たちの前に半透明の水晶玉を見せる様に置いて。
「うむ……では、今日の授業について説明しよう!
今日、わざわこの演習施設へ移動教室させたのは他でもない―――ふははは!!」
「本来であれば、
魔法において『絶対にやってはいけない』事を貴様等に見せてやろうと思ってなッッ!!
とは言え…今時の時代、その例外になる者等数多居るだろうが…というか私もそっち側だし…。
あー、すまんッ!!話が逸れた!!
兎も角、熟練の魔導士なら兎も角、これから魔法を初めて触る貴様等にとっては、
『絶対にやってはいけない』事に他ならんぞ!!良いか!」
■デーダイン > 「さて、では改めて……
―――貴様等の中で、そんな『絶対にやってはいけない』実習、
この罪深き!!闇深き実習に加担したい、身をもって授業に貢献したい!
―――我が暗黒の生贄になりたい!そんな勇気ある者は手を上げろッッ!!!
クックック…!大丈夫だ、死にはせん。きっと!」
一体何処の死にたがりがこんな事を言われて手を上げようか。
だが、無表情の仮面は何だか言ってやったとドヤ顔でもしているようである。
(勿論、仮面の表情が変わったわけではない。)
ご案内:「演習施設」に藤巳 陽菜さんが現れました。
■デーダイン > 一方の生徒たちの反応と言えば、先ほどのユルユルした雰囲気が一辺、
デーダインの暑苦しい言葉に色々な意味で凍り付いてしまっている。
私語も殆ど飛び交わず、概ねの反応と言えば黙りこくって俯くかひそひそ話。
本当にこんな中で挙手しよう物なら、かの暗黒教師の生贄なりたい勇気ある者でしかあるまい。
■藤巳 陽菜 > (何を始めるのかしら?)
列の後ろの方、蛇の下半身を持つ女子生徒はそれを見ている。
黒魔術それ自体には興味があるし、授業も興味深い。
あの先生のノリには少しついて行けない事もあるけれども。
(見えない…。)
身体を曲げている場所を変えて少し頭を高い位置に…。
こんな時、少しだけこの身体が便利だと感じる…。
死にはしないと言ってはいるがそんな危険そうなことには当然手を上げるつもりはない。
■デーダイン > 「―――フン。
誰も手を上げんなら、致し方あるまい。私が指名するぞッ!!
良いのかッ!!?誰に当たっても知らんぞッッ?!!」
何やら実験、実習に使うらしい半透明の水晶玉と、
目に喧しい色合いの赤いマントくらいが目に付く程度であろう。
それは藤巳陽菜の目から見た場合である。
それはさておき、授業で誰も手が上がらない、
となればお決まり、お約束の黒魔術―――「誰も手を上げないなら先生から当てに行く」が発動するのである。
「……ム。」
一方、向かい側のデーダインの目(目?)から見てみるとすると、
後ろから背伸びして見える蛇の長い身体の動きが、良く目立つのだ。
「マスクのキミ」だとか「白い帽子被ってるキミ」みたいに、
身に纏う物がちょっと目立つ、また、それを指して言いやすい人物は、
こういう時に良く当てられる、なんてことはないだろうか。
況や、蛇の身体で背伸びしている少女が目に付かない筈なかった。
今、蛇の身体に恩恵を感じた少女は、次はどのように考えるのか、この教師は知る由もなく。
「……クックック、そこの!そこの……うむ、蛇の身体の少女よッッ!!
見えにくいなら、どうだね、こちらの特等席に……!!」
まごう事のなき闇への誘いであった。
周りの生徒からは御愁傷様的な視線が浴びせられる中、
デーダインの手袋の指先は背伸びして、列からちょっとはみ出て覗いた藤巳陽菜の顔へとしっかり向いていたのだった。
ただ、列の後ろだし…早くすっこめば逃げられそうでもあるけれど。
■藤巳 陽菜 > …やっぱり悪目立ちする。
一瞬前までの少しだけ感じた便利さなんて吹き飛んでしまった。
やっぱり、駄目だこれ早く元に戻らなくては。
…はっきり言ってこんな時に前に行くのなんて当てられたも同然だ。
しかし、目立つ身体であるのでどうしようもない。引っ込みようもない。
「はい…。」
いやいや、という表情を隠さずに前に出てくる蛇の身体の少女。
ああ、このままこの少女は悪の教師の魔の手にかかってしまうのか?
「ここなら確かに実験の様子が良く見えますね。
…ところで、先生は誰を指名するんですか?ほら早く選ばないと時間無くなっちゃいますよ。」
…自分は見えにくいから来ただけで指名された訳じゃありませんけど?みたいな感じを出して
自分が実験対象に選ばれることを逃れようとする。
前に出て目立つがそれは当てられた時点でどうしようもなかった。せめて恐怖の実験だけは避けなければ。
■デーダイン > 「ハッハッハ、素直なのは良い事だ……ん?」
何だか気持ちいいくらい暑苦しい声でカムヒアのジェスチャー。
既に彼女が暗黒の生贄になるべくこの教師にターゲッティングされてしまっている。
「…む…そうだったなッ!貴様の名前を聞いていなかったッッ!!
蛇の身体の少女よ!貴様の名前は何というッッ?!早く言わんと実験の時間が無くなるぞッッ!!」
トボけようとしたのだろうか。しかし、残念ながら藤巳陽菜が逃れる事は出来なかった。
それどころか今からその名を唱えて当てるぞとばかりに彼女の名前を聞き出すのだから、もうどうしようもない。
既に生徒たちからは憐みとお葬式ムードの視線が降り注いでいる。
「さて、貴様等ッ!
これからやる実験だが…、ある意味、さっき例に出した、
乾電池に導線だけグルっと繋ぐ、みたいなものに似ているのだ!
はっきり何をするか言えって?クックック、お楽しみは後にとっておこうじゃあないか?
なぁ、少女よ?フハハハハ…ッッ!!
ところで…少女よ!貴様魔法は使えるかッ!?何かしら魔力を持っているかッッ!!?
それがないと、この実習は成り立たんぞ!!」
■藤巳 陽菜 > 「藤巳です。藤巳陽菜。」
蛇の身体の少女と言われる度に少しずつ表情がムッとなる。
事実だし他に呼びようは無いのだけど…。
いや、ラミアっていう風に種族名を呼ばれるよりは大分正確だしそっちの方がましだけど…。
「…も、持ってないです。
私、本土から来たばかりの普通の生徒なので。」
…目をそらしながら言う。
知らない人が聞いたらツッコミたくなるような事だが本土から来た普通の人間だったことは事実だ。
…魔力についてはおそらく無い事は無い。少し前に魔女の後継者としての印を身体に付けたところだから。
恐らく魔力というものは存在しているのだろう。
本人も自覚はあるのかその仮面から思い切り目を逸らす。
「だ、だから、多分他の人で実験した方がスムーズにいきますよ…?デーダイン先生。」
■デーダイン > 「うむ、藤巳…藤巳陽菜、と言うのだな!!
では、このたびの実験は貴様に手伝って貰うとしようッッ!!」
そして今、思いっきり指名が確定した。
「……ふ、藤巳陽菜…ッッ!!貴様、ちょっとその、なんだ。まぁ、この学園においては普通かもしれんが…
……色々とその、自分でも無理があると思ってるだろうそれは、いくら何でも。
いや、まぁ…この学園では、普通でないのが普通かもしれんが。」
普通について哲学するのは、真っ黒ローブと仮面に赤マントをはためかせる、ごく普通の不審者である。
「くっ、ま、魔法が…使えない…だと…ッ?!そうか…分かった。
では、致し方ない…。
―――それならば、貴様はボールを持って、私の合図で投げるだけで良い。
流石に、貴様…ボール投げが出来んとは言わせんぞ!!!良いか!
さ、これを持ちたまえ。気を付けろよ、見た目より重いからな!」
探れば彼女の魔女の力を受け継いだ事には気付いたかもしれないし、
或いは、その身に宿った魔力には既に気付いていたかもしれない。
それとも、彼女の顔を逸らした意味を取り違えていたのかもしれない。
けれど、それについて深く穿鑿をする事はなく、あっさりと引き下がって代案を出した。
さっき見せびらかしていた半透明の水晶玉(大体テニスボールくらいの大きさ)をボールと呼んで、藤巳陽菜へ差し出した。
どっちにしたって、藤巳陽菜をこの悪魔の実習から逃す気はないらしい。
■藤巳 陽菜 > 「…分かりました。」
諦めたようなそれでもまだ文句を言いたそうなそんな顔。
この身体でさえなければと尻尾の先を地面に叩きつける。
ピシっっと鞭のような音がするが…尻尾の先は特に痛くない。
「…訂正します『普通だった』生徒なので。
魔法とかもテレビでみたり本で見た事があるくらいですよ。
ああ、先生はこの学園でも大分変な人だと思いますよ。」
まあ、自分でも無理あるとは思う。
今は一般的に見ても普通でない事は事実だ。
…早く普通に戻りたい。
「流石にこのボールを投げるくらいは出来ますけど…。
…じゃあこれを合図があったら先生にぶつければいいんでしょうか?」
見た目よりは確かに重いが今の陽菜にとってはそれほどの重さではない。
そのボールを手の中で転がしたり覗き込んだりしながらそんな事を言う。
やはり、この実験の助手に選ばれた事がやはり不満らしい。
デーダインの方に向けて水晶球を振りかぶったり戻したりしている。
…もちろん冗談ではあるのだけども。
■デーダイン > 「…ウ、ウム…素直なのは…良い事だ。」
(な、何だ今のッッ?!?!舌打ちならぬ尻尾打ちと言う奴かッッッ?!侮れんッ!!)
ピシッ!って地面に痛快な音が響いた。
デーダインも何だかちょっと気圧されてるみたいで、暑苦しさがちょっと弱い。
「そうか……今は深くは聞かんよ、授業中だし、プライベートだろうからな。
だが、そう!!相談事があるなら何時でも尋ねるが良いッッ!!
ハッハッハ、そう褒めるな。」
100人いれば102人くらい褒めていないって言うだろう。
だが、デーダインは高笑いしながら言葉を甘受するのだった。
さて、デーダインは生徒一同へ向き直って、やっと授業で何をするかを述べる。
尚、少し長いので退屈であればスルーしてくれて大丈夫である。
「これから、貴様等に見てもらうのは、
『分不相応な魔力を過剰に物体及び、人体に蓄えたらどうなるか?』と言う物だ。
既に教えた通り、限界を越えて魔法を行使するには、魔力の反動(※)が起こってしまうのだが…
その対策に魔力に慣れぬ身体に無理に魔力を蓄えすぎてしまう事は、もっと良くない事なのだ!!」
(※)要するに魔法の使い過ぎは運動のし過ぎみたいに身体へのダメージになる事
「さて、見ての通り貴様等を代表して、この藤巳陽菜という少女にこの水晶を持ってもらっているが…
この水晶こそ!私のもといた世界ではダイヤモンドよりも価値があった魔力媒体の石で作られた、
どんな魔法も魔力に還元し、その中へためこんでしまうスペシャルアイテムなのだ!勿論、コイツにだってためこめる限界はある。人体もそうだ。
因みに、こっちの世界では子供のおもちゃくらいの値段で買えるらしいな。ちょっとショックだ。
流石に人体で実験するのはダメだから、コイツが身代わりとなって貰うという意味でも、
魔力をタンクにして蓄えると言う意味でも…この水晶は最適というわけだ!」
「で、まぁ…いわば魔力の限界、魔力の暴発という事象を今ここで、人為的に起こしてみようと言う事で、
こうして水晶を彼女に持ってもらったわけだ。
フハハ、良かったな、藤巳陽菜よ!!特等席で見れるぞ!!ゼロ距離でな!!
ウム。生徒が居ない方向なら…別に私に投げつけてくれても構わんが、出来れば優しいスローボールをお願いしよう!
私は球技が苦手なのでな。」
しれっとデーダインは壁面にくっつく様に藤巳陽菜から離れるのだった。
「では、これからとっておきの魔力をソイツに込めようかッッ!!
ハッハッハ、なぁに、心配するな!爆発はするが死にはしないッッ!!」
―――とっても、不安な言葉を残して。
■藤巳 陽菜 > 「へー……。」
魔力には容量っていうのがある事とそれを越して貯めたら良くないという事。
そして、今持っているこれは魔力を貯められるものであるという事が分かった。
全然、魔術についての知識がない陽菜にとって実感は全然、湧かないのだけど…。
「へ?爆発?」
魔力の爆発。そのデーダインの言葉とともに陽菜と他の生徒の距離がサッと広がる。
言葉の響きからして危なそうな感じがする。
「え?え?ちょっと待ってください!
コレ爆発するんですか?凄い怖いんですけど!?
だ、誰か今からでも交代しない!?」
泣きそうになりながら他の生徒に助けを求めるが誰も答えない。
「ま、まだ爆発しませんよね…。
って、死にはしないって爆発したらどうなるんですか!?」
さっきまでよりも水晶の持ち方が慎重になっている。
死にはしないと言われてもそれでもやっぱり怖い。凄く怖い。