2018/01/16 のログ
ご案内:「演習施設」にイチゴウさんが現れました。
イチゴウ > 異能や魔術を行使する者に最適化された特殊施設。
入り口から入って演習フィールド周りの通路には
一般人目線からはどう使うのかもわからない
特殊な装置や設備などが並んでいる。

その中央をガチャガチャと歩くこれまた変わった四足ロボット。
その足取りはきっちりと目的地を決めているようで
眼の先には一台のコンソール。
その機械はどうやらこの施設に存在する中で
最も巨大な演習フィールドの
制御装置のようである。

イチゴウ > <演習施設へようこそ。>

四足ロボットがコンソールの前までたどり着けば
無機質な女性アナウンスが近くに響き渡る。
ロボットの高さ的にコンソールにタッチは
出来そうもなく操作台を根元から見上げる形になっている。
そこから操作は不可能かと思われたが

<コマンド入力検知、プログラム始動。>

しばしの硬直の後に少しバグを起こしたようなアナウンス。
どうやらロボットにとってはこの程度の装置の
クラッキングは朝飯前のようだ。
演習フィールドの制御システムに直接指令を送り込んだ後は
その奥に広がる広大なフィールドに4つある足を下ろしていくだろう。

イチゴウ > <これより耐熱試験プログラムを開始します。
防壁展開、術式最高レベル。>

アナウンスと共にいわゆるビープ音がフィールドのみならず
施設全体へ響き渡る。ともすればまるでフィールド
を囲むように幾何学的な紋章を映し出す透明なカーテンとも
形容できる魔術壁が伸びるように展開されたことだろう。

「試験開始、温度上昇中、100℃...300℃...500℃...。」

ロボットはゆっくりと刻むように自らの
低い合成音声でゆっくりと確認していく。
そもそもこのプログラムを行っている理由は
自分が所属する風紀委員会からのお達しだ。
シャーシを一度分解しメンテナンスを行ったので
想定内での極限環境における動作テストという所。

プログラムが進行するにつれフィールド上に
存在する金属の障害物が赤く変色していき、
その固さが柔らかさへと変貌しようとしている。
しかしその反面、同じ鋼鉄のロボットは溶けだす所か
変色すらしていない。
これも耐熱合金の性質を持つ超合金の恩恵か。

イチゴウ > 「700℃...設定温度へ到達、
各種動作を確認開始。」

さっきまでどっしり構えて動かなかったロボットは
ついに行動を開始する。
前右足をあげたり前左足をあげたり
歩いたり、前足の鋏をパカパカしたり。
人間でいう所のエクササイズとも見える動きを
フィールド上で行う。
魔術壁で囲まれたフィールドの中で行われるそれは
傍から見れば割とシュールな光景に映らなくもない。

「・・・?、温度上昇を検知。
1,100℃...1,500℃...1,800℃...」

一通りの動作チェックを終え一段落ついたかと思えば
ロボットは疑問と焦りを足したような面持ちで辺りを見渡す。
それもその筈、設定した温度以上にフィールドが
加熱されているのだ。
さっきまで赤色に輝いているだけであった
金属の障害物はまるでクリームか何かのように溶けだしていく。

イチゴウ > <システムオーバーライド、
コンソールより手動操作を行ってください>

ロボットは再度遠隔で制御装置の操作を試みるが
ここでクラッキングの弊害が出たぞと
言わんばかりに無慈悲にもそのアクセスは
ことごとく拒否される。

「1,900℃...2,200℃...2,500℃...
実用限界温度に到達。」

その間にもフィールド内はどんどん加熱され
温度を刻むロボットの声も苦しそうな
ノイズ混じりなものへとなっていく。
プログラム開始時にはフィールド上にあった筈の
障害物は全て溶解しその形の見る影はなく
高音下で形を保つロボットのシャーシも
どんどん赤みを増してしまう。
それどころかこのフィールドを守っている
魔術壁すらうっすらと歪みだしその熱の恐ろしさを物語っている。

このまま温度が上昇し続けてしまえば
自身すらも溶けだしてしまう、そう判断したロボットは
正面方向に駆け出し魔術壁へ勢いよく寄れば
前右足を大きく振りかぶり閉じた鋏で魔術壁を割り砕こうと突く。
コンクリート壁を障子の如く破るその突きは見えない速度で繰り出され
防壁との間に耳を突き抜けるような高音を響かせるが
強力な異能者、魔術師の攻撃を完璧に防ぐそれには
有効打とはなり得なかった。
しかしロボットは諦めずダメージを蓄積させれば考え
何度も何度も突いていく。
その様子はまるでショーケースを中から引っ掻く猛獣のよう。