2018/01/17 のログ
イチゴウ > 「プラン変更、制圧モードへシフト。」

既に熱は優に3,000℃を超えており
ちまちまダメージを与えていく手法では
先にロボットのシャーシが限界を迎えてしまうだろう。
現に白一色だった筈のロボットは色変えでもしたかのように
真っ赤に染まってしまっている。

そこでロボットはエアスラスターを使い
勢いよく魔術壁から後ろへバックスライドを行うと
歪むような発光と共に背部に巨大なガトリング砲を繰り出す。
しかし本体のシャーシと違い機関砲の耐熱性は
特別優れているとは言えない。外部に晒された途端
発砲していないのにも関わらず凄まじい勢いで変色が進んでいき
この状態で通常射撃をしている暇はない。

「エクプロージョンプロセス始動。」

勿論この事は砲を操るロボット自身が一番良くよくわかっている。
背負われている機関砲は通常通りのスピンアップを開始するが
今回ばかりは様子が違う。
その回転数はみるみるうちに上がっていき
砲身から唸り声のような音が響きだす。
そして元の灰色が嘘だったかのように
赤く輝くその砲身から地を揺るがす咆哮が
響き渡るとロボットの周辺で叩きつけるような爆発が
発生し重いはずのロボットが反動によってまるで
弾かれたおはじきのように後方へと下がっていく。

その機関砲から放たれた20mm弾は1秒以内に
1000発近く放たれたもの。電磁気の力によって
その鉛の集中豪雨はプラズマ化する寸前の熱が
発生するまでに加速されている。
不可視の巨大光線とも形容できるその弾幕は
フィールドを取り囲むその魔術壁を文字通り叩き割ってしまうだろう。
着弾部位からまるで蜘蛛の巣のようにひび割れが
目にも止まらぬ速度で広がっていく。

イチゴウ > <防護壁が損傷、プログラム中断。>

囲んでいた魔術壁は溶けるように消失していき
先程まで覆っていた灼熱は嘘のようにかき消される。
しかしそこにいたロボットにとっては紛れもない真実であり
急激な温度変化によってシャーシに若干ひびが入ってしまう。

白を取り戻しつつあるシャーシからは煙が立ち込めており
自身の窮地を救った背部の機関砲はすっかり歪んでしまっている。
メンテナンス終わりの動作テストなのに
即メンテナンス送りとなる羽目になってしまった。

「不可解だ。」

ポツンと呟いた無機質な声質の一言。
いくらクラッキングが非正規の手段とは言え
実行したプログラム自体は風紀委員会によって用意されたもの。
容易にエラーが発生するわけが無い。

重々しい足取りのまま様々な思案を電子回路で
巡らせながら歩き出す。
考えすぎだろうか、そう判断する頃には少し足取りも
軽くなっていただろう。

ご案内:「演習施設」からイチゴウさんが去りました。