2018/01/23 のログ
ご案内:「演習施設」に神代理央さんが現れました。
■神代理央 > 《演習設定:市街地設定9・民兵・脅威度75・開始場所ランダム・終了条件は敵兵力の一定数撃破。敵兵力全滅による得点加算無し。以上の条件で演習を開始します》
無機質な機械音声が演習場に響き渡る。
立体映像に寄って周囲の風景が切り替わっていくのを、少年は無感情な瞳で退屈そうに見つめていた。
広々とした演習場は、一瞬の内に荒れ果てた市街地へと切り替わる。さながら内戦中の地方都市、といった風体であろうか。
少年が位置するのは交差点の正面に位置する最早形を留めぬビルの真下。元は一等地に位置する立派な建物だったのだろうが、砲弾と火災によってかろうじて形を保つだけの瓦礫と化している。
《演習を開始します》
無感情な音声と共に少年の周囲に張り巡らされていた光の膜が消え去る。と、同時に大地から湧き出るのは歪な金属の生命体。
針鼠の様に砲身を生やし、数本の足を生やした鋼鉄の化物が次々と顕現する。
「全部更地にしろ。動く物はどうせ全て敵だ」
別段声を出す必要も無いのだが、何となく己の創造物に命令を発してしまう。
主人の意を受けた化け物たちは、各々がその砲身をゆっくりと振り翳し―轟音と共に、その持てる火力を解き放った。
■神代理央 > 本来は、市街地に隠れ潜むゲリラや敵対勢力と交戦する事が目的の演習プログラム。
数人でチームを組み、協力しながら敵勢力の漸減を目指す事を想定している。
個人での参加であれば、一定時間の生存を目標にするか、或いは、異能や魔術等の能力を活かして近接戦闘の訓練を行う事も出来る。
ただ、少年の場合は著しく火力に偏った異能である。
従って、守るべき対象も無く、援護する味方もいないこの演習内容で取るべき行動は――
「後片付けを考えずに壊し放題というのも中々楽しいものだな。…視界が悪くなるのは考えものだが」
舞い上がる粉塵と瓦礫によって、少年の視界は0に近い。
だが、360度に及び放たれる機関砲の轟音と、周囲の建造物を粉砕し続ける砲弾によって敵勢力の戦力値はみるみる減少していく。
「召喚限界も試したかったところだ。盛大にやらせてもらうとしようか」
噴煙の中から更に湧き出る火砲の化物達。少年の姿は最早掻き消え、砲火に煽られた硝煙の隙間から僅かに金髪が覗く程度だろう。
■神代理央 > 《演習終了条件達成。敵対勢力の全滅。全滅による得点加算無し。お疲れ様でした》
訓練を開始してから20分程。敵対勢力というよりも、建造物が全て瓦礫の山と化した頃、演習終了の合図が鳴り響いた。
「…全く。講義の課題でなければ、こんな詰まらない演習など遠慮願いたいんだけどな」
周囲の風景が元の無機質な演習場へと戻っていく。
あれだけ砲弾を撃ち込んでも傷一つつかない演習場は流石だと言わざるを得ないが、無数に蠢く金属の異形がかえって目立つ結果になってしまう。
「…見栄えを良くする訓練もしておくか。やはりコイツらは今一つ風紀委員らしからぬというか…いや、寧ろ此方の方が良いんだろうか…?」
若干悩みながら異能を解除すれば、ポケットから取り出した飴玉を口に含む。
ゆっくりと消えていく異形達を眺めつつ、口内に広がる暴力的な甘味に表情を綻ばせた。
ご案内:「演習施設」に花ヶ江 紗枝さんが現れました。
■花ヶ江 紗枝 > 砂煙が完全に消えた頃にゆっくりと拍手の音が響いた。
それは演習領域外のベンチに腰かけた人影の方から聞こえてくる。
いつの間にやら其処に腰かけ、演習の模様を眺めていた彼女は
口元に小さな笑みを浮かべつつ、貴方の方をじっと見つめていた。
「お疲れさま。噂の新人さん。
あっちの仕事がメインという割には派手な戦闘方法を好むのね」
笑みを含むような声とともに立ち上がるその腕には赤い風紀委員の腕章。
そして幾振りかの太刀。
■神代理央 > 突如鳴り響く拍手の音に怪訝そうな表情で振り返れば、此方に視線を向ける女性が一人。
自分よりも頭一つ高い彼女を先輩だと仮定――同級生だとしたら心が折れてしまう――し、洋服の埃を払いながら軽く頭を下げる。
「…時に派手な力を見せつけた方が、色々と捗ることもありまして。しかし、私の訓練等見ていても面白くはなかったでしょう?」
自分では動かず、召喚物に指示を出し周囲を焼き払う戦い方は、半ばシステムチックな戦い方である。
彼女が持つ太刀に軽く視線を向ければ、英雄じみた戦い方は苦手だとばかりに苦笑いと共に首を振った。
■花ヶ江 紗枝 > 此方を怪訝そうに振り返る表情を見るに此方に見覚えは無いらしい。
下げられた頭に対して気にしないでと言わんばかりに手を振りながら
無造作とも言える様な足取りで歩いていく。
武術に詳しい者であればその足運びが
刀の使い手に近いものだと気が付いたかもしれない。
「時に圧倒的な力を見せつけた方が楽な時は多いものね。
それに……」
私達の相手はそういう派手な力を使いたがる子も少なくないしねと
笑うように口にしながら数メートル前で立ち止まる。
そのまま袂を探り
「もう少し続ける予定?
噂の新人さんとの事だしもう少し見ていてもいいかしら」
取り出したお茶のボトルを差し出して微笑む。
いかにも手慣れた雰囲気からこういった状況に
彼女自身もよく居合わせているという事が伝わるかもしれない。
……渡そうとしているそれが抹茶汁粉ミルクといういなげな物であるという点以外は。
■神代理央 > 彼女は此方を知っている体ではあるが、此方はどうにも覚えがない。言葉からして同じ風紀委員かと推測は出来るのだが。
――と、其処まで思考が至った時、ふと思い当たる事があった。後方支援が中心の自分とは対象的に、最前線に立って部隊の盾となりながら戦う上級生の存在に。
前線組の同期が目を輝かせながら話しているのを聞き流していたが、確かその名前は――
「尤も、後ろに控えているだけの自分が火力を見せつけたところで、結局は前線で近接戦闘を行う同僚達に頼らねばなりませんから。花ヶ江先輩の様に、皆を守る事も出来ませんしね」
名前間違えてたらどうしよう。とか、フルネームが思い出せない事とか、若干名前を出すに躊躇う部分はあったものの、此処で臆するのもらしくないかと言葉を返す。
武術に詳しい訳では無かったものの、彼女の無造作な足取りがかつて戦った刀使いと似ているな、とぼんやり思考しながら。
「私は構いませんが…本当に見ていても面白くありませんよ?私自身は戦いませんし…あ、有難う御座い………」
先程と似たような言葉を繰り返しながら、彼女から差し出されたボトルを受け取る。
尤も、告げようとした謝礼の言葉は表記された文字に気が付いた瞬間に止まり、何とも言い難い表情で彼女を見上げる――見上げるような体格差が恨めしい――のだが。
■花ヶ江 紗枝 > 「そうでもないわ?砲火を展開できる範囲によっては十分味方も守れるし
前衛に対する迂回や挟撃に対するけん制にもなるのだから
支えられたり守られているのは後衛だけとは言えないじゃない。
一緒に戦ってお互いに守ってこそ、よ。
そういう意味では期待しているのよ?神代君♪」
地味に後衛陣をただのバックアップ扱いする前衛も多いけれど、
そのどちらにも所属する者としてはそれには賛成しかねるし、
何よりそれを気にしている後輩は多い。
実戦慣れしていないうちは特に後衛に回される事の方が多いから。
彼がそれに含まれるかは正直疑問ではあるけれど、もし気にしているなら
あまり気におわないで良いと言外に含ませながら微笑みかける。
「それに前衛としては後衛がどれだけ火力を出すのか
どんな制圧法や能力の運用を行うのか……というのは興味があるもの。
それに合わせて射線をあけてあげた方が良いのか、とかね?
だから後ろに立つ子の事は出来るだけ知っておきたいの」
だから気にしないで?と言いかけて此方を見上げる表情にきょとんとする。
数秒後自分の手にしていたものに目を落とし……
「あ、じょ、冗談よ。
はぃ、本当はこっち。ふふ」
一瞬動揺した後何も無かったかのように別のボトル……今度はちゃんとしたお茶を取り出す。
その後何事も無かったかのようにそのけったいな飲み物を懐に仕舞いつつ
「……結構おいしいんだけどなぁ」
と人知れず小さく呟いた声がもしかしたら貴方の耳に届いたかもしれない。
■神代理央 > 「そう言って頂けると幾らか気も晴れます。それに、先輩に期待されているというのは光栄ですね。同期に自慢出来ますよ」
彼女についての評価はあくまで他人から聞いたもの。それも、半分聞き流していたものだ。だからこそ、どの様な人物なのかとやや身構えてもいたのだが、杞憂だった様だ。
彼女が同僚や後輩達から好かれているという話もさもありなんか、と脳内に留めつつ、微笑み彼女に笑みを返した。
「そういう理由でしたら喜んで。とはいえ、優雅さの欠片も無いものですけどね」
すっかり熟れてしまった社交的な笑みと言葉を浮かべつつ、軽く意識を集中して1体の異形を召喚する。
白い軍服を纏い、太刀を持った彼女が凛とした佇まいであるのに対し、己の召喚した異形はただ火砲を撃ち敵を踏み潰すだけの化物。
やっぱり見栄えを良くする訓練をしないとな、と内心溜息を吐き出したが―
「……先輩の味覚センスは何というかその、独創的ですね」
先輩に対して口の利き方や発する言葉は最大限の注意を払うのがモットー…なのだが、耳に届いた彼女の呟きには思わず反応してしまった。
改めて御茶のボトルを受け取りながら、面白そうにクスクスと笑みを零してしまうだろう。