2018/09/08 のログ
ご案内:「演習施設」に神代理央さんが現れました。
■神代理央 > 風紀委員会の戦力増強が叫ばれる昨今。
力を振るう方法は違えど、優秀な戦闘要員を勧誘・育成する事については穏健派、過激派共にある程度合意を得た意見であった。
其処までは良い。優秀な同僚が増えるなら此方としても喜ばしい限りだ。しかし――
「……移動願いには、広報担当部門を記載した覚えがあったんだがな」
一年生である自分は、風紀委員会に所属しているだけでその中の具体的な課や部署に所属している訳ではない。
というわけで、元々希望していた広報関連の部署を希望していた。
しかし委員会からの返答は『暫く前線で頑張ってね!所属も落ち着くまでは取り敢えず保留で!(要約)』である。しかもご丁寧に新規魔術の修練の為に、演習施設の予約券付き。
「大体、後方支援型の自分に何が出来ると思っているんだ。優秀な近接要員を育てた方が華もあるし見栄えも良い。そもそも、此の島で制圧火力を使用する様な戦闘自体が稀じゃないか…」
と一人愚痴を零しても始まらない。
人気の無い夜の演習施設で、端末を操作して演習科目を起動する。
殺風景なグラウンドに機械音が響き渡り、現れるのは魔術で召喚されたゴーレムや戦闘用のロボット達。
「流石にホログラムからは魔力を吸収出来んしな。こればかりは、委員会の温情に感謝すべきか……いや、余計なお節介と愚痴るべきか」
溜息を吐き出しながら護衛用の異形を召喚。
それと同時に、プログラムに従ってゴーレムやロボット達が行動を開始した。
■神代理央 > 異形達には、迎撃ラインを超えた敵のみ射撃を行う指示を出す。
のそのそと、しかし機械的に此方に前進を始めた集団に対して、異形達は沈黙を保っていた。
「…とはいえ、本来魔術師では無い俺が何処までやれるかは知らんが…」
己の場合、異能も魔術も発動する際に必要なのは【イメージ】であると嘗て祖父から教わった事がある。
異形が放つ兵器は勿論だが、母方の一族が脈々と繋ぎ続けた様々な魔術は【どのような魔術か】であるかを理解出来てもそれを明確な形にイメージ出来なければ発動は難しい。
そう考えると、今回身につけた魔術は一族が持つ魔術の中で一番自分に適正があったということなのだろう。その本質は、己の内面に近似するものがあるのだから。
「強きものが奪う権利。弱き者に施す義務、か。古典的な思想の魔術だが…まあ、嫌いでは無い。」
掌を敵に向けて、己に刻まれた魔術式を起動する。
抵抗する意思すら持たぬゴーレムや機械達から、その身を動かす為のエネルギーが収奪されていく。
身体を構成する魔力。金属の身体を稼働させる電力。それらのエネルギーは無慈悲に収奪され、己の魔力として吸収しやすい様に変換され、そして己の中へと吸収される。
力を奪われたゴーレムやロボット達は、糸が切れた様にバタバタと倒れていくだろう。
「…こんなものか。では、返してやろう。施しは義務だからな」
そして、収奪した魔力は残った敵へと施される。
しかしそれは、施しと言う名の傲慢な押し付け。全く異なるエネルギーと化した魔力が、ゴーレムやロボット達に無理矢理与えられる。
元々魔力で稼働していないロボットは当然の如く異質なエネルギーに対処出来ず、スパークを起こした後爆散。ゴーレムは辛うじて耐えていたが、結局元の魔力とは異なるモノを過剰に注がれた結果、歪な音と共に自壊していく。
倒れ伏したゴーレムやロボット達の周囲に、爆散した機械の破片と崩れ落ちたゴーレムの残骸が転がる。
砲声も硝煙も無く、只々無慈悲に終了した戦闘。その有様は、控えめに言っても良い見栄えでは無かった。
■神代理央 > 結局、異形達は一発も弾丸を放つ事無く演習は終了した。
といっても、今回の演習はあくまで魔術の修練のためのもの。
今後は、魔獣だの機甲兵器だの、より高度な戦闘行動を取る敵との訓練が必要になるだろう。
「…しかし、本当に近接戦闘向けの力が無いな。召喚する異形にそういった機能を持たせてみたいものだが…」
体力測定は平均よりちょっと下。委員会での任務では魔術を使っての肉体強化が欠かせない毎日。
己の護衛となる異形は勿論だが、基礎体力の向上も必要だろうかと頭を悩ませる。尤も、そんなこと委員会に言えば面倒な訓練を押し付けられそうなので思っているだけに留めるが。
■神代理央 > そんな思いに耽っている間に、散らばった残骸の清掃も終了し、端末からは演習終了の通知音が鳴り響く。
時間はすっかり遅くなっているが、次に使う生徒もいるかもしれない。早々に引き上げるべきだろう。
「…せめて、最前線からは離れたいものだがなぁ」
ガチガチの戦闘部署等に配属させられては溜まったものでは無い。小さく嘆息した後、制服を翻して演習施設を後にした。
ご案内:「演習施設」から神代理央さんが去りました。